「よう鼠。相変わらずそのムカつく口調と呼び名はどうにか出来ないのか?」
「ウルせえ。オレッちにはこれがしょうに合ってるのサ。」
いつでも何処でもムカつくその姿は相変わらずらしい。ていうかβあたりからだよなその辺。口調と変えたの。
「それにしたってナンのようだい?オレッちにだって考えたいことの一つや二つあるんだゼ?」
「おいおい子鼠が何を考えるって?教えてくれよ?」
「オネーさんに向かってその口調はどういうことだい泣き虫のコトリちゃん?」
「おいおい天敵に向かって何言ってんだよ?食むぞ?」
「おいおいそこらへんで止めてくれ。急で何のことだかサッパリだ」
ここでクラインが止めにかかる。いけないいけない。こいつと喋ると止まんなくなる。
「ああ、すまんすまん。こいつはーーー」
「オレッちはアルゴ。情報屋をヤってる。オネーさんって呼んでくれて良いんだぜ?」
いつもながらに相手が誰でも話し方は変わらない。言うなれば平等に接してるんだろうが、見ためが幼いため知らない人からすると背伸びした少女が気取ってる風にしか見えない。
「んん?情報屋とはなんだい?」
少し子供相手に話しかけるような口調でやまとが問いかける。するとアルゴが睨んでヤマトを萎縮させる。怖いもんなぁこいつ、睨むと。
「おいおい子供扱いしないでくれヨ。まぁ今度から気をつけてくれればいいヤ。」
そこからヤマトが謝ったところで情報屋の説明を始める。ざっくり説明するとアイテムやクエストなどの情報をそれと見合った代価で取引する職業である。
と言っても職業と言ってもジョブではないため補正とかはない。なんならアインクラッドにジョブは存在しないまである。
さっきシーフなどジョブ名を言ったのはソレ系のスキルなどは存在し、それを積極的に取得していく人たちを総称しているだけだ。けっしてみんなが厨二病というわけではない。決して。
「なるほど。てことはクグイ。つまり君はーーー」
「その通りだと思うよ。それでアルゴ。早速だがお前に依頼と情報を買いたい。」
「んん?クー坊からの依頼なんて久しぶりだなぁ。昔を思い出すゼ。」
「その時のことは今は良いだろ。とにかくだ。まずは情報から聞きたい。だいたい50人ぐらいが一斉に住めるであろう施設はこの一層に存在するか?」
その情報は200コルでいいヤ、というので早速ウインドウを開いて渡す。
「ン、確かに。それじゃあまずはこの一層のことをある程度話すかナ。」
まず最初にこのアインクラッド第一層はβ自体と遜色ないというより変わらないということが説明書には書いてあったらしい。
マジかよちゃんと見とけば良かった……。まぁ迷宮区だけは違うらしいが。
「モチロン、デスゲームになってそれが嘘かもしれないからナ。裏取るためにある程度クエストやったらβとなんも変わんなかったよ」
デスゲームじゃなきゃ最高だったのにナ、と愚痴をこぼすアルゴ。全くその通りである。
「とまぁここまではともかくダ。次からがアレなんだけどナーーー」
つまり、始まりの街の転移門から北東の方に進むと相当デカイ教会があり、そこであるクエストを受けクリアすると1週間タダで住ませてくれるらしい。それもツレはいくらでもおkというなんともオイシイクエストである。
その後1週間過ぎても一人につき20コルで1日住ませてくれる。最大80人が限界だという。最高な物件だな……。だが上手い話にはそれなりの対価は存在するわけで……。
「まぁそのクエスト、マイナーのくせに異様にむずくてナ……。クリアした奴らが数組しないなかったらしいガナ。」
ということらしい。βでそれとなるとデスゲームと化した今現在ではプレイする奴らは少なそうだな……。なら頑張ってそのクエストクリアすればなんとかなりそうなもんだ。住む場所だけになるが……。
金はどうにかなりそうなもんかねぇ。1人20コルだとすると始まりの街周辺のモンスター一体を倒すと5コル手に入る。モチロン強いモンスター倒したりクエストクリアすればいい量のコルはモチロン手に入る。
子供たちを50人と仮定して1日千コル。後々階層が解放されて金貯めて行けばいつしかホーム買えばいい。楽観的だが、あまり問題無さそうだな。俺たちのぶんや、もしかしたら新しい仲間も増える時が来るかもしれない。その場合のぶんも考えると1週間の間でできる限り貯めときたいな……。
周りを見るとクライン達が任せろという雰囲気を俺にぶつけてくる。こいつらでホント良かったなぁ。
「なるほど……あとは依頼だな。これに関してはコルはお前に任すよ。できる限り子供の情報や場所を知ったり見かけたりしたら俺に随時教えてくれ。」
「フム……その心は?」
「お前なら分かるだろ?察せよ」
なんならこいつはβ以前の知り合いである。いやまぁ知り合い以上なんだが……。
「動機なら分かるサ。オレッチが聞きたいのはそこじゃない。メリットだヨ。」
今までのおちゃらけた雰囲気は存在しない。しっかりとした目つきで話し始めるアルゴ。おいおい、そういう空気が苦手なの知ってるだろ?
「メリットね……それ言わないとダメ?」
「当たり前だナ。クー坊が無駄にそんなこと頼まないのは知ってるサ。動機だけでも動くけド、その場合は1人で突っ走るタイプじゃないカ?」
周りを巻き込んだとするなら、メリットあるんだろと聞いてくる。いつもながらに察しいいな。察しすぎてこの世すべて知ってるんじゃないのってぐらいに。
「んー、まぁメリットはあるにはあるけど、それが確実に作用するのは一つぐらいかな?もう一つは他のプレイヤーの心理状態次第だし。」
と言いつつメリットは後々冷静になってから考えたこじつけであるのは誰にも言えない。
「まず一つはβテスターの状況整理だ」
「なるほどナ。つまり、情報を隠匿するものと、公開するものに分けるということカ?」
その通り、ということで頭を縦にする。こいつのことだ、それに関しては俺とは違う方法で身柄の保護をするのに決まってる。
「えーと、それはどういうこと?」
サミーが赤いままの目で問いかけてくる。それを見たアルゴは少し引いていた気がするけど気のせいにする。
「この状況でβテスターが何をするか。それはまず確実に自身の保護だ。それは今回の初心者プレイヤーと同一なのは変わらないんだが……」
「情報を誰にも譲らず自分1人だけ助かろうとする人間は確実に存在するってことサ。」
それだと確実にβテスター全員が悪者扱いされるのは必然になっていくだろう。まさにネット社会のオンラインゲーム。だからこそ慈善事業を行うプレイヤーがいれば……。
「少なからず善と悪のβテスターは分けられる。まぁこの状況で善も悪もねえし、あるにしてもそれは勝手なエゴみたいなもんだと思うけど。それでもやるやらないでは圧倒的な差がある。これは俺やアルゴとか以外に、キリトみたいに年端のいかない子供や戦闘できなかったり臆病な人たちのための予防線だな」
「それデ?二つ目は何だヨ?」
「次には支援が受けられる行為ということかな。何人かの優良プレイヤーはある程度支援してくれるかもしれないし、そのまま仲間に引き止めることができるかもしれない。こっちは運が作用する方だな」
今は難しいかもしれないが、いつしか階層が上がるにつれ、そういうことが起きてくるかもしれない。希望が湧くから、罪悪感から逃れたいから、そんなことでも充分だ。行動を起こすのなら。
「なるほどナ。流石クー坊と言ったところかナ?
「よせ、お前に言われると素直に照れるが同時に悲しくなる」
ニャハハハハ、と笑うアルゴ。こいつネズミじゃなくて猫なんじゃ……、いやそうすると鳥である俺は食われるのか?ならこいつはネズミでいいや。
正直デメリットは考えたくない。考えたくないが……。これは言わない方がいいだろう。そのデメリットは他の人間に大きく左右する。
「そうだ、あとアルゴ。これと同じ行為を行おうとしてるメンバーがいたら知らせる、または連れてきてくれないか?」
「それは依頼じゃなくてクー坊へのサービスってことにしといてやるヨ。それもできれば女性でナ!」
「お前の場合違う意味も含まれてそうなんだが……」
モチロンこの慈善事業に関しては女性はおそらく必須であろう。大の大人が6人と高校生が押しかけてくれば怖いに決まってる。これが女性全員でも違う意味で怖そうだが。
さてと、だいたい話は決まってきた。そこでアルゴとサヨナラしたあと、先ほど話した教会に向かうことにする。武器などの整理はあとにし、ストレージの売却用をメンバー全員で店に行って売りつける。合計千コル。4時間ほどで1日の宿泊料手に入れられるのは嬉しい誤算である。半日ほどかかると思ってたからなぁ。
武器整理はまだにしたのはクエストクリアの方法がイマイチ理解できていないためだ。
これがもし討伐系ではなくお使い系であった場合、少ないお金を無駄に使うことになってしまう。長い時間を考えるとそんなことはないのだが、今は一コルでも使うのが惜しい。ポーションなどは出るときは必ず1人20個は欲しいとこである。
さてとそんなことに意識を向けながら歩いていると、周りに子供達がうずくまって泣いている姿が目に入る。当たり前だ。こんな状況で泣かない子供は少ない。100人に1人ぐらいだろう。だが、ここで話しかけることもできはしない。クエストクリアができていない今、むやみに希望を与えて絶望を与えるよりかはマシだ。
そんな中、先ほど100人に1人ぐらいと言っていた泣かない子供が1人いた。座りながらも何か強い意志を秘めているであろう顔を空に向け、今にも圏外から出る勇気を作ろうとしている少女である。
決心がついたのか、彼女は片手剣〈スモール・ソード〉を固く握りながら圏外の方に向かう。たまらず待てっとクラインが叫ぶ。
「……何?」
重苦しい声が辺りにこだます。周りの子供達は彼女と俺たちを交互に見ながら、この空気を伺っていた。
「……今決心したのは凄いが、今行動するにはいささか遅すぎる。明日の朝にするんだな。」
「……明日の朝?そんなこと言ってられるほど楽観的になれって言うの?」
「そうじゃない。正しく生きるためには自分の身の丈に合った行動をしろって言ってるんだ。」
「だからと言って、こんな状態で宿に泊まれるほど心に余裕はないの」
「だからこそだ。ねれないからといって、戦いに行ったんじゃ勝てるものも勝てない。少なくとも、もう少し冷静になってからだ」
「冷静?」
そこでクラインと話すのを交代する。
「先ずは俺たちの話を聞いてくれ。今日、俺たちは北東にある教会のクエストを行う。」
「だから?」
「クリアすればある程度の間無料で宿泊が可能となる。俺達はそこで戦えない人たちを集う予定だ」
「だからって、それが私に関係があるの?」
「君がまともに戦えるまでは、そこを利用してくれて構わない。」
「……だからって、今日私が戦わない理由にはならない」
その言葉には、異様なほどに気概さが含まれていた。見た目は13歳ほどのはずなのに、その気配はそれだけでは済まされないオーラが、そこには存在していた。だからといって、ハイそうですかと言えるほど、俺はほったらかしにする勇気はない。
「……そうか。なら先ずはソードスキルをまともに打てるか?」
「……2回に一回程度には」
「なら必ず打てるようにしとけ。そしてソロで行くなら必ず一対一にするんだ。デスゲームだからHPゲージが黄色くなったら即座にポーションを飲め。そうすれば少なからず死にはしない」
最低限の忠告はしておく。これは彼女以外に戦闘をする子供達のための助言も含まれているが。
「今日の宿泊ならマップを確認すれば必ず発見できるはずだ。宿屋ならユニーク施設じゃないかぎり何人でも宿泊できるから安心しろ。」
「そして俺たちのところに来て、この世界の生きる術を得たいなら、明日、さっき言った場所の教会に来い。」
最後にそう言って子供達が多く佇んでいた場所から離れる。
「いいのかよ?あれで?」
クラインが話しかける。
「俺ももう少し付き合ってあげたがったが、今の最優先事項は教会だからな。そのあとにあの子が頑張ってくれたら。いくらでも付き合ってあげるさ。」
それに、と続けて
「俺も気丈ぶってはいるが結局のところ十八のガキなんだよ。少しでも早く落ち着ける場所を手に入れたい。」
これは本心の一つだ。さっきの子供達のためってのは無論だが、何しろ保護しようって奴が気が狂ってたら元の子もない。パニック状態をギリギリの状態で抑えてるようなもんである。
いやまぁちょっとばかしネタが入るぐらいにはなんとかなってるのかもだが……。
そんなこんながあって教会にたどり着く。
ここでとりあえず終わりにします。教会のクエストをどのようにするか今でも正直迷ってる最中なんですよねwそれでは機会があればまた今度