猫又の料理人   作:たるさん

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今回の登場人物紹介


椿原 森道……16才。短髪ツンツンヘアのすこし切れ長の目が特徴。身長は170cm。料理人見習い。

久保 百合奈……16才。黒髪ショートヘアのスポーツ娘。得意なのは走る事と球技全般。嫌いなのは自分の胸と数学。スレンダーで身長は162cm。

久保 真耶……年齢不明。『マヤさん』と作品では表記。百合奈の母。料理上手で森道にちょくちょく教える事もしばしば。実は秘密があるとかないとか。

久保 正武……41才。今回は名前だけの登場なので詳しい説明は後ほど。

ユキ……久保家で飼われている白猫。なぜか初対面の筈の森道に直ぐに懐いた。

少女……白いワンピースの『少女』とは思えない風貌をした少女。一応、少女らしくあどけなさは見えるが、どこか大人びて見える。実は、彼女は……?



一品目 夏野菜のカレー

 

 

ーー蟋蟀(こおろぎ)が寂しそうに鳴いている。

 

 

山に囲まれて、辺りからは気持ちの良い涼しい風が木々を揺らし、幾千本ものの木々喝采が鳴り響く。

しかし、こんな少しうるさい中にも静かな場所はある。それは、川の畔。水流が穏やかに上流から流れ出る。ちゃぽちゃぽと、擬音で表すならこんなのが妥当か。

 

「ふぃ〜……ここは涼しいな〜」

 

水流に面する、大きな岩。その岩に腰掛ける一人の少女がいた。少女は白く綺麗な足をふらふらと放り出し、それに合わせて白いワンピースは風と共に裾を揺らす。髪は黒く、それを肩甲骨あたりまで伸ばしている、年幼い少女だ。

 

「ここは、相変わらず綺麗な水をしてるね」

 

少女は何処かに……いや、誰かに問いかけるように首を傾けた。

問いかけた誰か、はわからないが、少女はとても穏やかな表情をしている。おそらくは自分が信頼できる人物なのだろう。その動作にあわせて、首に身につけている金色の鈴が綺麗な音を鳴らした。

 

「……ねぇ、また……会えるかな?」

 

少女は突然、切ない顔をした。まるで別れを惜しむような……はたまた、もう会えないというような表情。

 

「……じゃあね」

 

ーーその言葉と同時に、少女の目尻から一つの雫が流れ落ちた。

次第にそれは、大粒の雫となって岩に打ち付けられる。なんども、なんども。岩に水の跡をつくっては消えてゆき、またつくっては、消えてゆき……。

 

 

 

 

 

ーーどれくらい、たったのだろう。

 

 

 

 

目を赤くした少女の両手の中には、一匹の蛍が……息途絶えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

♯♯♯♯♯♯♯

 

 

 

猫又の料理人

 

一品目 夏野菜のカレー

 

 

 

♯♯♯♯♯♯♯

 

 

 

 

 

 

 

 

「……すぅ」

 

どこからか、風が吹いてくる。蝉の声と一緒に、草の匂いと一緒に……夏を感じさせる暑さと共に、涼しい風が吹き付けてくる。

しかし、暑いのに涼しいとはこれいかに。我ながら凄く矛盾している。でも、実質この暑さを打ち消す涼しい風がどこからか吹いているんだから嘘は言ってない。

 

「ん……ぉふ!」

 

一瞬、ガコンと揺れたため変な目覚めの声が出てしまった。それと同時に一気に意識が覚醒する……このガッタンゴットン揺れてたのは、電車の中だったからか。それであんなに揺れたのか。

ふと、肘掛けていた窓の縁から先ほど感じた涼しい風が腕に当たる。窓から景色を見てみると…………そこは。

 

ーーそこは、一面の自然だった。

 

線路が走っている土手の周りには一面の田んぼと畑。時期が夏とだけあって、田んぼには青々とした稲の葉が風にたなびき、畑には丸々と育ったナスやらきゅうりやらピーマンやらがたくさん実っていた。

 

「あー……もうすぐ着くかな」

 

……見た感じからわかるように、ここは田舎中の田舎。なんでここにやってきたかと言うと……。

 

 

俺、椿原(つばきばら) 森道(もりみち)はここ、明ノ岬(あけのみさき)で農業のなんたるかを学ぶために来たのだ。

 

 

もちろん、農業については栽培からなにからまでもわからないまったくのトーシローだが、料理には自信がある。

俺の母さん……今もう他界していないのだが、その母さんから受け継いだ店があるんだ。少し前までは母さんを気遣ってくれたのか、たくさんの常連さん達が毎日俺の料理を食べてにきてくれた……のだが。

次第に「君の母さんと味が違う」やら「まだ未熟」やらとちらほら、挙げ句の果てには「美味しくない」ともまで言われ、意気消沈していたのだ。

 

そんなとき、あるテレビで『野菜の固定種』の特集をしていたのを見た。

 

固定種とは、ナスならナスの、きゅうりならきゅうりの親から子へ、子から孫へと変わらない品質と形の遺伝経路をもつ野菜達の事である。在来種や伝来種と呼ばれる種に多いタイプだ。最近の野菜は人が手を加えて品種改良した種が多く、この固定種と呼ばれる野菜の種は現在あまり使用されてないらしい。

 

……で、なんで料理なのに食材生産のノウハウを学びに来たのかと言うもの。まずは、食材の良し悪しをわかる人間になりたいと思ったからだ。

 

『料理を知るには、食材から』

 

これが、うちの店に続く家訓、というか料理の心得みたいなものだ。

母さんは人一倍に食材に詳しく、どんな食材にどんな調理法、味付け、合わせ食材が合うのかよく俺に聞かせていた。そしてその調理法を実践して、俺に味見を頼んでいた。母さんの作る料理はどれも絶品で、なりより食材本来の味が感じられた。

そんな母さんを小さい頃から見てきたからだろうか、次第に俺は母さんみたいな料理人になろうと、そんな夢を考えていたのだ。

 

「次は〜、明ノ岬〜、明ノ岬〜」

 

ーーそんな昔噺を思い出しているうちに、車掌が次の停止駅を教えてくれる。

 

 

……さて、降りる準備をしますかね。

 

 

 

 

 

♯♯♯♯♯♯♯

 

 

 

 

 

 

「…………あちぃ」

 

いやもう、ほんと暑い。

聞いた話では、この辺は山々に囲まれた盆地でかなり暑いとは聞いていたが……これほどまでとは。

 

ーーいやぁしかし、ほんとに田んぼ畑だらけだな。

 

これマジでこの辺に高校とかあるのかよ? 一応学生だからここらに高校あればなぁ、と思っていたのだが……これじゃ希望は薄いかな。

 

 

「ん〜……あ! いたいた!」

 

 

野ざらし駅であれこれ考えていると、遠くから女の子の声がした。

見ると、そこにはデニムのショートパンツに胸に『You Look!』と書かれたTシャツをきた、少し日焼けした黒髪ショートヘアのいかにもスポーツ娘ってな感じの女の子がそこにいた。

てか、『You Look!』て。何見ればいいの俺は。その残念なむnげふん。

 

「ふ〜む、ふむふむ……あたしより高い身長に、ツンツンヘア……それに切れ長の目……あんただね? 母さんの言ってた男の子ってのは」

 

スポーツ娘はまるで俺を品定めするみたいに、顔をまじまじと見つめてきた。

 

「あ、あの……」

 

「ん? あぁ! あたしは久保(くぼ) 百合奈(ゆりな)って言うんだ!」

 

おい、誰が自己紹介しろって……。

……ん? 久保 百合奈? 確か、百合奈って……。

 

「お前、マヤさんとこの百合奈か?」

 

「え? そうだけど……まさか、フォレストロードくん!?」

 

誰だその無駄に痛い名前は。

ってフォレストロードって直訳すれば森道じゃねぇかよ! 素直に森道って言えよまどろっこしい!

 

「たくよ……そういうとこ、かわんねーなお前」

 

「そっちこそ。久々だね、森道」

 

白い歯をみせて、にししと笑う百合奈。

百合奈は昔遊んだくれたマヤさん、つまりはこいつの母さんとこの長女で、よく俺の母さんの店にお昼を食べにきていた。昔っから食欲旺盛で食べたあとは俺を引っ張って公園で鬼ごっこをさせられたものだ。

あの時は小さいまましばらく会っていないわけで、百合奈もいまや高校生。俺と同い年だから……高1か。

 

「ずいぶん大きくなったよな〜。胸以外」

 

「ちょ、ばっ!? 何言うのさっ!? べ、別に胸は関係ないだろ!!」

 

百合奈はそのTシャツの『You Look!』を両腕で隠し、赤い顔で俺に怒鳴ってきた。『見ろ!』を隠したって事は『見るな!』って訳ね。うぇへへへ、見るなって言われたら見たくなるのが人の性ってものだ……変態か俺は。

もちろん、俺は貧相よりはたわわ派だ。大きいは男の浪漫、ロボットよろしく、大盛りカツ丼よろしく、男は『大きい』に弱いのだ。

 

「まったく……ほら、家に行くよ!」

 

「うおっ!? 分かった、だから引っ張るなイダダダ!」

 

ーー以前よりもかなり力が強くなったなこいつ。

昔もこうやって腕を引っ張られてあちこち連れまわされたっけ。懐かしいけど、引っ張られる痛みでそんな余韻など浸る暇がなくなっていた。

 

 

「……変わらないじゃん。ほんとに」

 

 

そんな百合奈の呟きは痛みでまともに聞こえず、俺はされるがまま百合奈に引きずられていったのだった。

 

 

 

 

 

♯♯♯♯♯♯♯

 

 

 

 

 

ーーいい加減蝉の声がうるせぇ。

 

あいつらいつまでミンミンジージー鳴いてるんだよいい加減しろよほんと。こちとら暑さでグダグダなんだからやめてくれよ。

 

……まぁ、こんな事ほざいても意味はない。今はただ、百合奈の家へ向かうだけだ。

そもそも、なんで久保家に向かうかというもの、俺がそこで夏休みの間過ごすからなのだ。

あ、誤解はしないでほしい。百合奈の父、久保 正武

まさたけ

さんから農業のノウハウを学ぶのだ。そのために、地元の都会からここにきた。

 

「着いたよー! ここがあたしんち!」

 

「……ずいぶん立派な御家だこと」

 

目の前には瓦屋根の立派な一軒家がドーンと立っていた。広い庭の一角には農業用と思われるトラクターや山積みになった空き箱があり、いかにも農家らしい家だ。

 

「……あら、いらっしゃい。もう着いたのね?」

 

「ただいま母さん……もう、森道が来るなら早く教えてよぉ」

 

そのあとに「森道だってわかってたら、もっと可愛い格好で出かけたのに……」と呟いたのが聞こえてしまったが、まさか万が一にもそんな事はないだろう、と勝手に自分でわりきった。それを見て縁側から顔を出した女性、久保 マヤさんは「あらあら」と言ってクスッと笑った。

 

「お久しぶりです、マヤさん」

 

「お久しぶりね、森道君。待っていたわ」

 

柔和な笑みと言葉使いで、やんわりと挨拶を返してくれるマヤさん。

……てかこの人、昔とあんまり変わってないくね? いや内面的にじゃなくて外面的にだ。あのときは確かに20代後半だったはずで、今は大体……10年ぐらい前のはずだったんだけど……なんか肌つやつやだしハリもあるし、20歳代ですといわれてもマジで信じることができそうな美貌だった。

 

「あの……マヤさんってもう40近いんじゃ「なんの話かしら?」……いや、だからねんれ「な ん の は な し か し ら ?」……すんません」

 

怖え、マジ怖え。

なんかずっと笑っておだやかな表情をしてる割には後ろから漂ってくる威圧感が半端なかったので、俺は反射的に体をくの字に曲げた。

その行動に、百合奈は小首を傾げて頭にハテナマークを浮かべちゃったりしてる。くそ、なんか可愛い。

 

「……それより、お腹減ったでしょ? ちょっと遅いけどお昼ご飯できてるわよ」

 

「やたーっ! あーやっとご飯だー! あたしお腹ペコペコだよー!」

 

お腹を抑え、駆け足で玄関に向かう百合奈。俺は呆れながらも、百合奈の変わっていない性格に安堵の息をはきつつ、一緒に久保家へ入る事にした。

 

 

 

 

♯♯♯♯♯♯♯

 

 

 

 

 

家に入ると、台所からスパイシーな香りが成長期の俺の胃袋をくすぐった。この香ばしくスパイシーな香りは……カレーか!

日本人なら誰もが大好き、カレー。その種類は王道から本格派、はたまたユーモア派など数多くのレシピがある。中には家で香辛料からオリジナルでカレーを作る家庭もあるし、一言カレーと言ってもドライカレーやグリーンカレーなど、たくさんある。

 

「くんくん……わぁ! この匂いはカレーだね!?」

 

「えぇ、今日直売所で買った新鮮な夏野菜を使った夏野菜カレーよ」

 

ほぉ! 夏野菜カレーとな!

この暑い夏にも嫌なく食べられるカレーに、旬の夏野菜(トマトやきゅうり、ナスなど)を使ったカレー。カレー自体は濃厚な旨味と辛さを持っている。が、夏野菜は辛さを和らげ、さっぱりとした感じに仕上げてくれる。

 

「ふふ、それじゃ今持ってくるから、二人はリビングで待っててね」

 

そう言ってマヤさんは割烹着を着たまま台所へと向かった。

 

「さ、森道! 早くリビング行こうよ〜!」

 

「分かった分かった! だからひっぱんなアイダダダダ!!」

 

強引に引っ張られ、いそいそと玄関をあとにした。

……にしても、ほんとにいい匂いだな。カレーってここまで匂いがするものだったんだな。

 

「ふふ〜、母さんのカレーはねぇ

〜、絶品なんだよ!」

 

「ほほぉ? 百合奈がそこまで言うなら、さぞマヤさんの夏野菜カレーは美味いんだろうな」

 

「と〜ぜんっ!」

 

「……いや、マヤさんの料理なのりお前が威張ってどうする」

 

ここまでいい匂いがして、まずい訳がなかろうに。マヤさんは俺の母さんから料理上手だと聞かされてた(さっき思い出した)から、本当に美味しいはずだ。だって母さんが料理上手と言うまでの腕前だ。相当なものだろう。

 

 

 

「なぁぁお……」

 

 

 

居間につくと、縁側からひょいと一匹の白猫が部屋に入ってきた。しゃらしゃらと鈴が鳴るあたり、誰かさんの飼い猫なのだろうか。

 

「なぁぁお、なぁぁお」

 

「うわっ!?」

 

白猫はごく自然な感じで、胡座をかいた俺へと飛び乗ってきたのだ。そして数秒、俺の又座を調べると、何事もないようにそこで丸くなった。

 

……て、おいおい。なんで自然に俺を寝床にしてるんですかね白猫さん?

 

「あ、その猫、ユキって言うんだ。うちで飼ってる白猫だよ」

 

なんと、誰かさんの飼い猫ではなく久保家で飼われている猫だったか。てか、なんで俺を寝床にするし。別にいいけど、可愛いから。

ふと、丸まったユキの体を頭から尻尾にかけて撫でてみる。するとユキは満足そうに喉をゴロゴロと鳴らし、自分から俺の手へすり寄ってきた。

 

「おぉ、ユキが森道に懐いてる……ユキ、初めて会った人には懐くことないのに」

 

なんか百合奈がそういいながらユキを撫でようとするが、その細い手はユキの肉球により拒まれた。その度に百合奈は「にゃぁぁぁ〜……」と悲しげな声を漏らしていた。なんだにゃぁって、可愛いだろがこのやろ。

 

「は〜い、できましたよ〜」

 

そんなこんなで、奥からマヤさんが二つの皿を持って現れた。その皿にはもちろん、出来たてのカレーが盛り付けてある。

俺はごくり、とツバを飲み込んだ。

 

「美味しそー! いっただっきまぁ〜すっ!」

 

百合奈はおもむろにスプーンを持ち上げると、ルゥとご飯を混ぜ始めた。

そして均等になるよう混ぜ終えると、スプーンで一口分をすくい、それを口へと運んだ。

 

「あむっ、あふっ! あふっ!」

 

「大丈夫かよ……ほれ、水」

 

百合奈は差し出した水を一気に飲み干すと「っはぁぁ〜!」と妙におっさんぽい声をあげた。

 

「ん〜、やっぱカレーは美味しい!」

 

満足そうに言うと、次、また次へと百合奈はスプーンを動かし始める。

 

ーーどれ、それでは俺も一口。

 

「いただきます」

 

俺はスプーンでルゥとご飯をちょうど良い塩梅にすくい、そこに具材を少しのせる。百合奈みたいな混ぜる食べ方も美味いが、やっぱりカレーは混ぜずに綺麗に食べるのにかぎる。

少し冷ますため、息を数回吹きかけ、カレーを口へ運ぶ。

 

 

 

ーーうおっ、旨い!

 

 

 

濃厚なルゥに混じる大粒ご飯。そんな濃厚ルゥにも負けない存在感と味を残すナスとじゃがいも、それにピーマンも入ってるのか。旨い、旨いぜ。

特にナスなんてルゥの旨味を存分に吸っていて、とてもジューシーで旨い。これなら、肉が入ってなくても十分に満足できる。でも、カレーらしくちゃんと牛肉が入ってるな。でも悪くない。

そして極め付けはこのルゥだ! 旨味の中にもちょっとした酸味も感じる……てことはこれ、ルゥにトマトがはいっているのか! ルゥにトマトとは一見ゲテモノにも言えそうだが、食べてみてわかる。

 

断じてそんな事はない!

 

むしろトマトがルゥとよく合い、その旨さを最大限にだしている。このトマトルゥと野菜とご飯の合わせ技……まさに王道を超えた王道! つまりは神道!

旨い、旨すぎるぜ! マヤさん、流石母さんが料理上手って言うのがわかる。

 

「どうかしら? 私のカレーは」

 

「はいっ! 旨いです! 旨過ぎですっ!」

 

本当に旨い。俺は感想を早口で述べ、残りのカレーをスプーンで一気にかきこんだ。かきこむ途中で太腿のあたりがさわさわと動く感触が……あぁ、ユキ。まだいたのか。かまってくれなかった事を怒っているのか、今日に前足で俺の腹をグイグイと押していた。可愛い。

 

「はいはい、ごめんなユキ」

 

股座に寝転がるユキを撫でてやると、また気持ち良さそうに喉を鳴らした。

 

「あら、随分とユキに懐かれたわね、森道くん?」

 

「あはは……なんでっスかね?」

 

台所で仕事を終えたマヤさんが此方へくるとそんな事を言ってきた。百合奈やマヤさんが言うには、この白猫のユキは滅多に人に懐かないらしい。現に百合奈には懐いてないし。

 

「ほらユキ、こっち来なさい」

 

マヤさんがユキを呼ぶ。するとユキはすぐさま俺の元を離れ、マヤさんの正座した太腿へと丸まった。羨ましいぞユキ、ちょっと俺と代わってくれ。

 

「……森道くんも膝枕してほしい?」

 

「なっ!?」

 

よ、読まれたっ!?

……あ、百合奈! そんな顔しないで! 引かないで! 泣いちゃう、俺メンタル意外に脆いからすぐ泣いちゃう!!

 

「……変態、スケベ、フォレストロードくん」

 

「最後最後っ!」

 

なんだフォレストロードくんって罵倒。初めて聞いたぞそれ。てかフォレストロードって罵倒の言葉だったのかよ。英訳されても一応、俺の名前だぜ? ……俺の名前って罵倒だったのか……。

 

 

 

ーーシャンッ。

 

 

 

……綺麗な鈴の音。ユキの首輪についているやつのか?

気づいたらユキはマヤさんの膝を下り、また俺の股座へと戻ってきたのだ。

 

……なぜに? そんなに気持ちよかったのか?

そう思いを込めて撫でる。ユキはまた気持ちさそうに喉を鳴らし続けた。

 

「あらあら、森道くんが気に入ったみたいね」

 

「随分なおませさん♪」と意味ありげなセリフを言うと、また百合奈が「ハレンチ、スケベ、フォレストロードくん……」と罵倒を……だからフォレストロードくんは罵倒じゃねぇよ!

一方、とうの本人

ユキ

はというと……。

 

……未だに俺の股座でゴロゴロしてた。

 

 

 

 

「ちょ、森道ばっかずるい! あたしにも触らせ「にゃぁん!」にゃぁぁ〜……」

 

「あはは……」

 

「うぅ〜……なんだよもう! 森道のバカ! アホ! このマタタビっ!」

 

「俺マタタビっ!?」

 

「あらあら、楽しい夏が来た事♪」

 

 

 

 

 

 

 

ーーこうして、俺の夏は幕を開けた。

 

……あの鳴る鈴と二股尻尾の持ち主に出会うのは、まだ先のお話。

 

 

 

 

 





あとがきでレシピ!!


☆マヤさん特製 夏野菜のカレー

*材料(5〜6皿分)
・具材
ナス……1個
人参……1本と1/3本
じゃがいも……2個
ピーマン……3個
玉ねぎ……2個と1/2個
トマト……1/2個
牛肉……200g

・その他
市販ルゥ……1/2箱
ご飯……お好み
水……750㎗

①材料を切る。
ナス→ヘタをとり、一口大の乱切り。

人参→頭と皮をとり、一口大の乱切り。

じゃがいも→男爵芋は皮をとり四等分。メークインなら一口大の乱切り。(男爵芋なら3個使う)

ピーマン→ヘタ、種を綺麗に取り除き、四等分。

玉ねぎ→ひたすら微塵切り。細かい方がのぞましい。

トマト→だいぶ荒く微塵切り。だいたい1㎤。

牛肉→ブロックが好ましい。その場合、食べやすいように一口大。細切れはそのままでOK。

②カレーをつくる。
⑴玉ねぎをあめ色になるまで炒める(これは作る前日にやっておこう)

⑵鍋に油をひき、牛肉を炒める。まわりが軽く色付くくらいでいい。

⑶そこに野菜達と⑴を加えて少し炒める(この時、トマトは潰すように炒める)

⑷少し炒めたら水を加え、沸騰するまでアクを丁寧に取り除く。(アクをとり過ぎて水が減ったらおたま単位でたす)

⑸沸騰し、じゃがいもが柔らかくなったらボウルに少し汁をうつしてルゥを溶かす(この方がルゥがダマにならない)

⑹溶かしたルゥを元の鍋に戻し、全体になじませるように煮詰める

⑺ふつふつ、グツグツと煮立ってきたら火を止め、皿にご飯をもりカレーをよそれば完成




☆作者から
みなさん、どうも。たるさんです。
お久しぶりの方も、初めての方も、ここまでで読んでくださりありがとうございます。
少し季節を先取りしてしまいました。まぁ仕方ないよね☆ ……あ! ごめんなさい! ごめんなさい! お願いだからダンベル投げないで!
おほん、今回の料理は夏野菜カレーですね。夏バテしそうな時、不意に住宅街から漂ってくるカレーの匂い……ああ、たまらないですね。
カレーに含まれている数十種類のスパイスには食欲増進、疲労回復、夏バテ解消及び防止と様々な栄養がぎゅぎゅぎゅっとつまっています。まさに夏バテ特効薬ですね。
カレーと言いましても、キーマカレー、スープカレー、グリーンカレーと色々ありますが、みなさんはどういったカレーがお好きでしょうか?
私は、よく父親が作ってくれた野菜ごろごろカレーです。あのジャガイモのホクホクさ、玉ねぎの甘さ、そしてそれに絡まる濃厚ルゥが忘れられません。また、食べたいなぁ。


ではでは、長文失礼しました。
次回の『猫又の料理人』でお会いしましょう。

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