憑依召喚   作:虚無_

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燃える村、黒の鎧、聖女、そして逃走

 

 

 

 

 

 

 

あらかじめまとめてあった荷物を掴んで部屋をとびだす。

続いてバルレルが、ハサハが。

何があった!!なんの音だ!!と全員が叫ぶように状況確認をしようとするが、何の意味もなかった。

村の破壊音がその口を閉じさせる。

 

 

「おい、爺さんがいねーぞ!!」

 

 

フォルテのその声を、俺はスタートの合図のようにかけだした。

トリスも素晴らしい瞬発力で俺の後に続いた。

後ろのほうでネスティの呼びかける声が聞こえたが、かまわず走る。

途中に見える村の惨劇とその煙に俺は目を細め、村人の絶叫にはどこか懐かしさを覚えた。

 

あの街では、よく聞いていた音の一つだった。

 

随分危険な過去だ。と今更ながらに思いながら、俺の足はスピードを落とすことなく動き続ける。

トリスは問題なくついてきているみたいだ。このままあの場所へ行こう。

 

気分が高揚している。神経が高ぶっている。興奮している。脳内のアドレナリン物質が大量生産されている…どんな言葉で言い表していいのかわからないが、俺が感じているのは恐怖ではない。

 

もしかしたら、これが狂気というものなのではと思ってしまうが、それもきっと違うだろう。

 

そうであって欲しくないという願望かもしれない。

 

 

 

―――いた!!

 

 

 

「いや、離して!!」

 

 

腕を掴まれているアメル、その黒い鎧の背後から思いっきり横に剣を振る。

切り裂くことはできなかったけども、衝撃でよろめいたところを立て直す前に回し蹴りで倒すことはできた。

ものすごい音がして、同時にものすごい痛みが足をしびらせる。

顔をしかめて、トリスに大丈夫か、と声をかけた。

トリスがまわりの炎から守るようにアメルを抱きしめて、傷がないか調べて元気よく大丈夫!!と返した。

周りを見渡す。

…はやくここから離れないと、二酸化炭素中毒で死ぬか、目か肺をやられてしまう。

あいつらは…まだか!!

 

 

「トリス」

「うん、アメル、動けるね?」

「は、…は、い」

 

 

気配が集まっている。

それは、俺が待ち望んでいるものとは違う。

向こうは俺たちの存在に気付いたらしい。

最悪、三人で切り抜けることになるな。しかもそのうちの一人は非戦闘要員、一人はそれを護衛しなきゃならない。実際には一人で大人数を戦うことになるだろう。

戦いやすそうなところを選んで陣取り、黒い鎧を確認する。

まだかよ、あいつらはっ!!

 

 

「トリス、マグナ!!」

 

 

遅いっ!!そう叫びたくなるけども、なんとかこらえる。

かわりにトリスがみんな!!と、助かった、という声をあげた。

ほぼ同時に、戦闘に突入する。

 

 

「みんな、来るよ!!」

 

 

俺は、叫んで弓兵のおとりに走り出した。

アメルの守りは後ろがなんとかしてくれるだろう。

そのなかで、一番危険なのは弓や銃などの遠距離の攻撃の存在だ。

召喚術も危険といえば危険だが、あれには決められた範囲がある。そこらへんはトリスとネスティがきちんと学んでいるから大丈夫だ。

なによりまだ大した召喚術はでてこないはず。

 

俺の思惑どおり、弓兵は一番最初に動き出した俺を狙ってきた。

だけども簡単にそれをかわす。

弓兵のほうも今のは威嚇射撃くらいにしか思っていないのだろうか。焦ることなく、次の矢をつがえた。

そこで俺は一番近い位置にいた剣兵と切り合いに入る。

 

剣を合わせ、弾きあい、躱し、懐に入る。

炎の音が、金属の音が、鎧の摩擦音が、召喚術による魔力共鳴の音が、気合の声が、乾ききった土の音が、遠くで聞こえる断末魔の声が、集合体になってマグナの脳に不協和音として伝え、朔耶の魂へと知覚させる。

朔耶はマグナの脳を使って、体全ての神経に命令をだし、目の前にいる黒の鎧を着込んだ『敵』を排除すべく、動かせる。

 

 

「お兄ちゃん!!」

 

 

叫んだのは、トリスか、それともハサハか。

次の瞬間には、俺の左肩に矢が生えていた。

さすがに痛みに顔をゆがめ、うめくが構わずに目の前の鎧の間、わき腹部分に剣を刺し、引き抜く。たしかな手ごたえ。

弓兵のほうを見ると、俺を打った直後にケイナの矢によって倒されたらしい。炎の陰にその姿をみることができた。

矢を強引に引き抜き、適当に捨てる。

俺のそばにバルレルがいた。俺の近くに敵を近づけないようにしている。

 

 

「リプシー」

 

 

名を呼ぶだけで現れてくれた精は周りの状況に少しひるんだようだった。

そりゃあ、いきなり村が焚き火されてたらひるむよなと思いつつ、肩を差し出す。

すぐに光が俺の傷を癒し始めるが、時間がない。

表面だけ傷口をふさいだのを確認すると、還した。

血がこびりついてしまった剣を構えなおす。

血が手にまで伝ってきていて、気を抜くとすぐに滑りそうだ。

 

 

「バルレル、いくぞ」

「へ、言われるまでもねェッ!!」

 

 

召喚術の光とともに、大剣を持った兵と、召喚師の間合いに入る。

バルレルが長い射程距離を生かし、頭を狙って半円を描くように振り回した。

なんとか避けた相手に俺は下方から懐に入り、召喚師の足に一閃、兵に足払いを食らわせてバランスを崩し、バルレルにとどめを刺させた。

…息ぴったりだな、と思わず口角を上げる。

バルレルも同じようなことを思ったのか、不敵な笑みを滲み出している。

 

 ざわり

 

ようやくお出ましか。感じた気配に呟く。

それが聞こえたのか、バルレルは俺を見たが、すぐに新しく出てきた男を見る。

 

 

「手こずっていると思えば、こんな子供に手間取っているとはな」

 

 

後方を確認すれば、他とは違う空気に明らかなこわばりを見せるトリスたち。

すこし、距離がある。

下手に動く指揮官らしきこの男を刺激して逃げるチャンスを逃してしまう。

他の黒い鎧の兵たちは彼の指示を待っているのか、体勢を整えながら俺たちの様子を伺っているだけだ。

もう少し、数を減らしたかったなか。

指揮官のあの男は双子とアグラバインが引き止めるとして、他は逃げながら討ち取る、か。

見たところ、遠距離攻撃の兵がいないのが不幸中の幸いというところか。

召喚術はまだ打つことはできる。それほど、マグナの魔力はみみっちぃもんじゃないし。

だけど、ここで実力をさらすのにはまだ早すぎる。

まだ、まだ早い―――。

 

 

「うおおおお!!」

 

 

アグラバインの割り込み、ここぞとばかりに俺は後衛にもどった。

 

 

「おじいさん!?」

「はやく!!アメルをつれて逃げてください!!」

「みんな、逃げるよ!!」

「い、いや」

 

 

震える声。

だけど、そんなこと構っていられるほど、俺たちには余裕がない。

 

 

「いやあああぁあぁあぁぁぁあああ!!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

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