シャンクスがこれでいいとは思いませんが、こんなんでいいんじゃね? とは思いました。
9360字です。
12,シャンクス
シャンクスは憧れていた。
自身の乗らせてもらった船の船長に。
最初は恩返しだった。
自分の友達に横暴をする海賊を止めてくれた麦わら帽子の男への恩返し。
他意はなかった。
自身でもそんなに義理堅い人間だとは思っていなかった。
今思えばあの時から船長に惹かれていたのかもしれない。
俺は副船長に言い渡された看板の掃除を一人でしながらも、俺の掃除した場所で暴れる船長とそれを見かねて怒鳴る副船長の一幕を見ていた。
馬鹿馬鹿しい。こんなものを見るために船に乗ったんじゃない。
俺はあんたの命を危険を助けるためにこの船に乗ったんだ。
シャンクスの自分の実力を烏滸がましくも高いと評し、ふざけるこの船の船長を冷めた目で見ていた。
すると、それに気づいた船長の男はシャンクスに近付いて行った。
「おい、雑用。お前、名前なんだ?」
「はあ……。これで7回目だ。シャンクスだよ」
「そうか! シャンクスか! いい名前だな。俺の名前はロジャーだ。覚えとけよ、この海の王者になる男だぜ!」
「へいへい」
「こ・ど・もは笑うもんだぞ! ほら!」
「うわ! ちょ、やめろって!」
シャンクスの態度はこの船の船長、ロジャーに向けるにはおおよそよろしくない対応であるが、シャンクスのそんな反応も意に介さないように屈託無い笑みを浮かべて、シャンクスの無愛想な顔を崩すためか、乱雑に赤髪を撫で殴る。
そう、殴ると評したほうがいいような乱暴さに、シャンクスは制止の声をあげるが、やめようとはしない。
もういいやと投げやりに掃除を始めると、ロジャーは笑いながら他のクルーにちょっかいをだしに行った。
……なんか、俺の方が大人みたいな気がしてきた。
「雑用。慢心は良くないぞ」
「は、はい。レイリーさん!」
「……なんで、俺にはそんなに固いのか……」
ロジャーはあの子供のような性格が苦手だが、それ以上にこの副船長、レイリーはシャンクスの気楽にいきたいという願望の一番の障害であった。
ロジャーとレイリー、どちらが苦手であるかはシャンクス自身にも甲乙つけがたい。
ロジャーはこちらのペースをかき乱して、終始おちょくってくる小物のガキ大将のような男であり、逆にレイリーはロジャーがアレなせいで真面目というか厳しいというかの上司のようであったためだ。
それを考えればレイリーは普通なのだが、その普通は直面すると好かれるものではないということではないということだ。
もう一つレイリーについてシャンクスの苦手な部分があるとしたら、考えていることをピタリと言い当ててくるのだ。
そのため、シャンクスが自身のことを苦手としていることを知っておきながら、こき使っている。
なかなかに良い性格をしている男なのだ。
大抵レイリーの言うことは奥が深く、その場面に直面しなければわからないことが多い。
それだけ死線をくぐってきた猛者と言えるのだが、その場面まで答えが出せないため、何かと危険に晒されてきたのだ。
『つまみ食いは死ぬ覚悟をしろ』と言われた時には、本当に死ぬ思いをしたのを思い出し、いつでもレイリーには畏まってしまうのだ。
「まあ、いい。
……最近は金獅子との戦闘も多くなってきている。
死者こそ出ていないが、大怪我を負う者は未だに後を絶えない。
お前もこんなところでそんな慢心をしていると本当に大切なものを失うぞ?」
「は、はい!」
シャンクスの返事は気合いだけの空返事だ。
今考えてもわからないことだから、行き当たりばったりで考えても今まで生き延びてきたんだからなんとかなるだろう。
そんな意識が慢心であるのだが、雑用という戦闘要員ではないシャンクスは、戦闘中は船の奥にある厨房のコックの後ろに隠れて待つだけだったため、戦闘というものの脅威を今ひとつ理解していなかった。
レイリーはそんなシャンクスに対して肩をすくめた後、大砲を磨いておけと言うとロジャーの後ろに行き、剣を抜いて本気の峰打ちをしてクロッカスを呼び、医務室へと連れ込んだ。
「本当に大切なものねえ……」
シャンクスは先ほどまで持っていたモップを用具を置いてある部屋に放り込み、雑巾を手に取りながら先ほど言われたことを考えていた。
その場で考えればいいとも思っていたのだが、どうしようにも頭から離れず口に出してしまっていた。
手に取った雑巾はシャンクスが掃除してきた証といってもいいくらいに汚れている。
シャンクスはこの船に乗ってまだ2ヶ月。
掃除だけをやらされているのだから、不満もある。
以前までの俺なら爆発している。
そう、以前までの俺なら。
シャンクスは自分の変容に気づいていた。
これが違和感としてしこりはあるのだが、不思議と嫌な感じはしない。
ただ、目に見える変化がないため自分に悪い何かが取り憑いたんじゃないかと思う自分もいる。
その違和感がなんなのかは今はまだわからない。
シャンクスは変容する自分の大切なものが変容しているのか気になった。
俺には肉親が居ない。
何故かは聞いていないが、両親は既に死んでいるらしいのだ。
これはシャンクスが8歳の時に聞いたことなのだが、シャンクスは聡い子であったため、自身の赤髪が家族である父と母は違う色であることにその可能性を考えていた。
打ち明けられた時の感情はどうでもいいだった。
確かに、本当の両親も見て見たいとは思った。でもそれ以上に天涯孤独の自分を離さずに優しく育ててくれた両親には感謝をしていた。
それからというもの、シャンクスは仲間を大切にする男になった。
からかい、冗談半分に戯れもたくさん仲間と経験して過ごしたが、帰っていく仲間たちに寂しさは拭えない。
両親は優しい。でも、知ってしまうと意識してしまう。
自分が大切にしなければ離れていってしまう。
消えていってしまう。
……怖かった。
そんな時に起こった酒場の一角での事件。
その日、シャンクスは仲間たちといつものようにしている、客の酒のタバスコを混ぜるという遊びをしていた。
もちろん非はこちらにある。
だけど子供の遊びだ許しもらってきた。なら、今度だっていつものように、と思っていたが、その日の相手は海賊だった。
話なんて通用しなかった。
相手は俺が仲間を傷つけるのを嫌がっていることに気づいたら、執拗に仲間を蹴り飛ばし出した。
俺は自分の中の何かが崩れるような音がした。
それと同時に助けに入ってくれたのがロジャーだった。助けたというよりは酔っ払いの絡みだったが……。
ロジャーは過剰な対応を行って、俺たち子供を外にぶん投げたと思ったら、酒場を爆発させた。
何をやったのかはわからなかった。
俺は自分のせいで仲間が傷ついたと自己嫌悪に陥っていたからだ。
それからは急展開だった。俺だって急に決めたし、勝手に決めた。
ロジャーは酒場を爆破させて島から追い出され、俺はガキ大将みたいな立ち位置だったから仲間に危険なことをさせたという非難を受けた。
両親は俺を慰めてくれた。
けれど、俺のせいで傷つく両親を見ていられなかった。
仲間からごめんと頭を下げられる自分がひどくみっともなかった。
俺は周囲の誹りが両親に及び、仲間にまで及んだのが苦しかった。
そして悩んでいた俺の目の前にもう一度現れた麦わら帽子は、『迷うな。答えは見えてるじゃねえか』と言った。
何が答えなのかわからなかった俺は、義理を果たすと麦わら帽子に言い、船に乗り込んだ。
これで仲間への非難も両親への嫌がらせもなくなると思って。
今は、俺は仲間を見捨てたという認識しかない。
俺が離れるのが一番の選択と思ったあの時と違い、今は一緒に過ごしていって汚名を雪ぐのが正しかったと違和感が叫んでいる。
シャンクスは大切なものから、過去の自分の罪から逃げた話に話が切り替わっていた。
考えれば考えるほど、自分に齟齬が生まれる。
しかし、船に大きな振動が襲ったことでシャンクスの思考は打ち切られた。
シャンクスは大きな振動と一緒に感じる今まで感じたこともないような強いエネルギーに恐怖を覚えながら、厨房に逃げ込むために一度看板に出ようとする。
ダダダとあまり早く走っているわけではないのに、足がもつれる。
いや、そう認識しているのはシャンクスだけで、周りから見れば焦りに焦って逃げ回る小僧にしか見えなかった。
看板には強いエネルギーを感じるが、皆ならいつものように俺を守ってくれる。それにどうしようもなければ、俺が戦えばいい。
シャンクスは扉を開け放ち、目の前にある光景に愕然とした。
「……雑用、奥に隠れていろ!」
いつも顰めっ面の副船長がさらに顔を顰めて肩で息をしながら、肩を手で押さえて膝をついている。
唯一、船長が敵の一番前で相対しているが、すでに服はボロボロだ。
船長は相手の隙を見て倒れた仲間を蹴っ飛ばして、こっちに逃がしている。
そう、屈強なはずのこの海賊団のクルーが船長と副船長を除いて皆倒れ伏しているのだ。
船長の相対している男は見たこともないドレスのようなものに身を包んだ、衣服に合わない金髪赤目の男だった。
だけど、その強さは圧倒的だった。
腰に剣を挿している以上は剣士なのだろうが、剣を抜かずに船長と互角、いや遊んでいるように見える。
金髪は一度立ち止まり俺の方を向くと、にたりと邪悪な笑みを浮かべる。
口角が上がるのに伴うように上がった重力。
ギシギシと船は痛み、所々割れている。
俺の中には何かが目覚める感覚と純粋な恐怖、最後に違和感の叫び声が聞こえた。
「おい! シャンクス、ひっこんどけ!」
「ロジャー、あれはシャンクスというのか。
……素質があるな」
「ロジャー! 変わるから、一旦休め!」
「はあ⁉︎ レイリー、休む暇があるなら二人で仕掛けるぞ!」
「お前というのは……! つくづくわがままな奴だ!」
そこからは俺の目には追えなかった。
分かったのは、おそらく空中で戦ってたんじゃないかってことだけ。
雲が細切れになって、船の周りの海が割れて、攻撃の余波で次の目的地だった島の3分の1が削られていたり。
この時に俺の慢心がようやくわかった。
今は恐怖で足が動かない。奥に逃げることはおろか、膝を曲げることも無理そうだ。
恐怖で俺の心はいっぱいいっぱいだった。
海を舐めていた。
俺なんかの若造が付いてきていいような場所じゃない。
俺は初めての戦場に膝を笑わせ、手を震わせ、心を恐怖にとらわれることしかできなかった。
しかし、それもすぐに終わりを迎えた。
ドン!
その音のする方向を見ると副船長が倒れており、ピクリとも動かない。
船首の方を見るといつの間にか船長も金髪の男も帰ってきていた。
船長はボロボロだった。麦わら帽子だけが無事に残っている。
つまり、頭を狙わなかったという余裕なのだろう。
勝てない、無理だ、どうしようもない。
絶望が俺の心中を覆い、心を壊す寸前だった。
「ロジャー、お前はどうして仲間をかばうんだ?」
「……そんなもん、決まってんだろ……!
俺の、大切な!……仲間だからだよ!」
「……それだけか?」
「これ以外にっ!……理由なんていらねえんだよおお!」
俺にはわからなかった。
……わけがわからない。
…………なんで、引かないんだ?
………………どうして、お前は立ち向かっていくんだ⁉︎
現にロジャーは満身創痍の状態でありながらも、立ち向かいボロクソにされながらも膝を屈することなく、金髪の男に向かって拳を振るい続けた。
シャンクスの心の中には疑問に埋もれながらも、絶望は消えていき、一つの感情が浮遊してきた。
あの違和感だった。
なぜここで出てきたのかはわからない。
だけど、この感情が俺を変えてくれる!
だけど、その一歩が踏み出せない。
恐怖が足の制御権を返さない。
俺は棒立ちだった。
船長はそんな俺の様子を見ているわけでもないのに、殴っていく。
「そろそろ、飽きたな……」
「ぐっ!」
遂に金髪の男は船長の顔を拳で殴った。
船長は後ろに後ずさり、とうとう膝をついてしまった。
船長の頭を守っていた麦わら帽子は、止めていた紐が切れたのか浮かび上がって、宙を舞う。
『お前もこんなところでそんな慢心をしていると本当に大切なものを失うぞ?』
俺は舞う帽子にみんなの命が散っていくの幻視した。
ロジャー船長の。レイリー副船長の。クロッカス船医の。ギャバンの。シーガルの。そして、みんなの。
嫌だ!
嫌だ‼︎
こんなことで無くしたくない! 終わりたくない!
……仲間を失いたくない……!
俺は酷い顔をしていたことだろう。
涙が溢れかえるのを感じる。
嗚咽しているのもわかる。
喉は掠れて声は出そうにない。
……これも恐怖のせいだろう。
だけど、やっと、わかったこの気持ちを、仲間を散らしたくない……。
ポス。
俺の頭を何かが覆ったようだ。
何が、と手を頭に乗せればざらつく。
それに血なまぐさいし、汗臭い。
麦わら帽子だ。
俺は麦わら帽子の縁をつかんで涙を隠すように目深くかぶる。
どうすればいいんだ……。
……どうしようもないのか?
『こ・ど・もは笑うもんだぞ! ほら!』
ふと思い出した何気ない一言、ロジャーの鬱陶しさを思い出して、少し口角が緩むのを感じる。
ああ、簡単なことだな。
俺は震えが止まっているのを感じた。
『迷うな。答えは見えてるじゃねえか』
そうだよな。
「そろそろ、終わりにしようか? ……ロジャー」
「……俺は海賊王になる男だぜ?
……こんなところじゃあ死なねえよ」
「なに?」
ロジャーは笑った。まるでこれから起こることがわかっているように。
金髪の男はロジャーに歩みを進め、後、三歩というところでロジャーの後方から声がかかる。
「やめろおおおおおおおお!」
ビリビリ!
空気が震えた。
これこそは覇王色の覇気だった。
覇王色の覇気を放った少年は、麦わら帽子を被った赤髪の少年、シャンクスだった。
シャンクスは、レイリーの持っていた剣を拾って、ロジャーの前に立つ。
「ほう、……さっきまで震えていたガキに何ができる?」
「出来る! 仲間を守ることは、俺にだって出来る!
……たとえ、俺の首を跳ね飛ばしても食らいついてやる!
俺の仲間には手を出させねえ!」
ドン!と音がして、金髪の男の覇気とシャンクスの覇気は鬩ぎ合う。
シャンクスの覇気は拙くも真っ直ぐ。
仲間を守るという、王の素質が覇王色の力を底上げした。
シャンクスは口にしたままの覚悟で金髪の男に斬りかかろうとするが、意外な人物から声がかかり気勢をそがれる。
「雑用! お前のせいで負けだ! チックショウ!」
シャンクスは一瞬惚け、顔をそちらに向けると血まみれのレイリーが寝転がってウガーっと唸っていた。
振り向いてレイリーを確認した直後にシャンクスは首にかかった衝撃とともに、汗臭い何かに引っ張られる感覚が襲う。
「シャンクス! 良くやった! お前ならやれると思ってた!」
「そうそう。副船長次の宴、全額自腹ですね」
「ちくしょう! てめえら、皆して出来るに賭けたら、賭けにならねえだろ!」
「え? え⁇ どういうことだ?」
シャンクスは当惑した。
レイリーが負けといったと思ったら、ロジャーはまるで勝ったようなことを言う。
そして自腹という声が聞こえて、賭けという声が聞こえた。
つまり……。
そこまで思い至ったところでシャンクスは先を考えたくなくなり、現実逃避を始めるが、敵だったはずの金髪の男から正解をもたらされ、現実を直視させられる。
「シャンクス。この勝負は賭けだったんだよ。
……お前に覇王色を目覚めさせることが出来るか、出来ないか。
ちなみに俺は出来るに賭けて、見事勝ち。
いや、負けはレイリーだけだ」
「くそ!」
シャンクスは自分で賭けをされていたことを自覚するとともに、自分の心を弄ばれたようでフツフツと怒りが蘇ってきた。
「お、お前らあああああああ! 全員、切ってやる!」
「おいおい、仲間は俺が守るんじゃなかったのか?」
「ロジャー! 死ね!」
「「「ははははははははは!」」」
シャンクスの怒りはロジャーのが茶化したことによって、ロジャーを
シャンクスとロジャーの追いかけっこを見ながら、金髪の男は船の修理とクルーの怪我の治癒をする。
レイリーは金髪の男に話しかける。
「シンジ、だったよな?」
「ああ」
「お前のせいで負けちまったから礼はしないが、宴の酒くらいは飲んで行け」
「言われなくてもそうさせてもらうさ。
……お前の奢りだからな。ゴチになるよ」
金髪の男、シンジはこの世界では聞かない言葉を使って、レイリーに向け挑発的な笑みを浮かべる。
その言葉の意味を理解した男が一人、真似をし出す。
「おお、ご馳走になる、を略して、ゴチになる、か。
それいいな!
副船長! ゴチになります!」
「「「ゴチ! ゴチ! ゴチ!」」」
「うるせえ! 全員、切ってやるから、そこになおれ!」
「「「うおお! 副船長がキレたぞ!」」」
シンジは子供のようにはしゃぐ仲のいい海賊団を見て笑いながら、マストの上で一騎打ちのようなことをしているロジャーとシャンクスを見てもう一度笑みを浮かべて、つぶやく。
「こういうのもいいな。
……赤っ鼻はいなかったけど」
ドサ!
「痛えええ! クソ野郎! ロジャーをどうやったら切れるんだ?」
シンジが呟いた後に、真横に落ちてきたのは赤髪の少年で、20年ちょっともすれば四皇と称されるシャンクスだった。
シャンクスは慣れていないのだろう、拙い握り方で剣を握っている。
シャンクスはロジャーを叩き落としたくてマストの上を睨んでいるが、後ろから忍び寄ってくるレイリーに気づいていない。
「雑用、俺の剣を盗ってんじゃねえ!」
ゴス! と音を立ててシャンクスは殴られる。
あれは相当痛いと思う。
案の定シャンクスは剣を落とし、手で頭を覆って声を出せずに足をバタバタと動かしている。
陸に釣り上げられた魚みたいだ。
「くそ! 武器を取られた! どうすればいいんだ⁉︎」
シャンクスが痛みから解放されるときには、既にレイリーが剣を握ってクルーの大半を斬り伏せており、目が血走っているあの状況で、貸せと言ったら自分も切りつけられてしまう、そう思い至ったシャンクスは行き場のない怒りを声に出すことで発散するが、マストの上で尻を出して今だに挑発するロジャーを見ると怒りが収まってはくれない。
それを助けたのは、先ほどまでシャンクスに恐怖を植え付けこの海賊団の船員の殆どを余裕で叩き伏せてしまったシンジだった。
「シャンクス。俺が武器を貸そう」
「は? あんたが?」
先ほどまで敵同士だったのだ。
簡単に心を許せるわけもない。
「そうだ。新しい時代を見せてくれた礼だ。
……要らねえなら、あげないけど。どうする?」
「あー……くれるんなら、くれ」
と思ったがそうでもなかった。
ロジャーたちの性格を見てきたシャンクスはこいつも同じような奴だろうと推理した。
シャンクスは正直に自身の本心を言った。
それにこいつの目の色は俺の髪と同じ色だし、妙にシンパシーがある。
「高くつくぜ?」
「金をとんのかよ⁉︎」
「金なんて要らねえよ」
「じゃあ、何をだよ」
シャンクスは世の中甘い話は無いのか! と社会の厳しさを知りかけて、掌を返したシンジに何が目的なのかを問いただす。
視線には疑っているというよりも、安心したというようなものとだからこそ油断ならないという思いであふれていた。
そうだ、シャンクスにとっては金をせびる奴にろくな奴はいな
いと思っており、金じゃないと言ったシンジに安心を。
まさか俺のあそこか⁉︎ まだ一回も使ってねえのに渡すか、馬鹿野郎!
しかし、金よりも大切なものを要求されるんじゃないかと身構えたのだ。
「お前は、俺のいう条件を飲んで、いつか果たして欲しい」
「えええええ。
……うーん、まあいいや。で、条件って?」
えー、そんなことかよ。
しかも口約束って……こいつは意外と抜けてるのか?
んー、でもこいつの強さは見たからわかるけど、こいつほどの男が俺に望むことってなんだ?
少し拍子抜けをしたシャンクスはこれほど強い相手が自身に何を望むのかが気になり、先を話すように促す。
「ああ、いつかお前はロジャーの元を離れ、いや、離れざるを得なくなる。
その時からお前は一人の海賊として出るようになるだろう。
で、条件ってのは、
ーーー俺と同盟を組まないか?」
「見習いの俺とか?」
俺と同盟?
こいつ、そんなことをマジで言ってのか?
その時にならなきゃわからないのに、俺が絶対海賊を続けるみたいに。
というか、離れざるを得なくなるってなんだ?
シャンクスが一番聞きたいことはそれだったが、何故か心のどこかでわかっているのような気がして、違うことを訊いてしまった。
「ああ、お前とだ」
「うーん、宝払いって奴みたいなものか。
俺ってそんなに大物になるのか?」
「ああ、なるぞ。お前は最強の四人の一角になる」
「えらく詳しいな。どっかで見てきたような言い方だし」
え? マジで?
俺そんなに強くなんのか?
でも、こいつの嘘ってことも。
いや、しかし武器をくれるっていうのにそんな不確定なことはしないだろう。
シャンクスは馬鹿馬鹿しいと思いながらも訊いてみるが、妙に現実をはっきりと見たかのように言うシンジに、未来でも見ることでもできるのかなと思い、カマをかけてみる。
「ははは、まあ気にすんな。
で、どうする?」
はぐらかされたが、嘘でも期待してもらえるのは気分が良い。
シャンクスはこの問いに対する返事は決まっていた。
「そんなことでいいなら、幾らでもいいぜ!」
「よっしゃ、交渉成立だ!」
「おー、雑用が交渉したぞ!」
「雑用が超大物になるってよ!」
「「「おお〜!」」」
「うるせえ! どうして他所のやつが信用してくれてるのに、お前らが信用してくれないんだよ⁉︎」
くそ、本当になんでだ?
目の前の男は嬉しそうにニコニコしてくれてんのに。
ロジャーもレイリーさんも他の団員もみんなニヤニヤと笑いながら、踏み倒すんだろ? っていう目で見てくるんだよ。
踏み倒したりしねえよ!
俺も確証がないので絶対に払うとは言えないが、信用してくれてもいいじゃないかという旨をみんなに言うが、ニヤニヤとするだけで柳に風といった風だった。
「よし、じゃあ、お前の武器を出すぞ!」
目の前の男が空間に手を突っ込むのをロジャーを抜いたみんなで唖然とし、ロジャーだけがすげえええ! と叫んでいる。
……大人がはしゃぐのってキモい。
男が手を抜いたときに握られていた剣はカッコ良かった。
サーベルの形をしており、剣の凄さがわからない俺でもわかるほどに精緻な造り。
綺麗な白で、それは正しく英雄が持つような剣だった。
「これの名前は
シャンクス、今日からお前がこの剣の担い手だ」
「お、おう!」
周りのみんなが何に驚いているかはもうわからない。
……ロジャーは、イカすうう! とかうるさいけど。
レイリーさんは目を点にして驚いている。
みんなも目ん玉が落ちるぞ、ってくらいに目をひんむいて、
俺が剣を受け取ると、その時に一つ鼓動が高鳴った。
そして剣は妙に手に馴染む。
ああ、そういうことか。
「よろしくな、相棒!」
キン!
返事が聞こえた。
そうだ、この剣は生きている。
俺と共に。
「おい! じゃあ、雑用の新しい相棒誕生を祝って宴だああああ!」
「「「おおおおおおおお!」」」
ありがたいね。
相棒は嬉しそうに鼓動する。
相棒とともに強くなって、誰も欠けさせない。
俺は心と相棒に誓う。
俺が仲間を守る。
最後がイマイチですが、これ以上掘り下げるには集中力が足りなかった。
シャンクスの悪戯好きっぽいのはロジャーから。シャンクスが海の怖さを理解してるのは、こいつの所為。
シャンクスが後々変な事になりそうなものもこいつの所為。
アロンダイトを振り回して頂上戦争で一人勝ちできそうと読者が思った場合、それもぜーんぶ、こいつの所為。
シンジはレイリーとは親友になり、ロジャーは飲み仲間です。シャンクスはいじり要員。
レイリーは今後もちょくちょく名前が出ます。
ロジャーはこの作品一の最悪の扱いになります。ファンは気をつけて!