ただの文の練習。
とても心地良い夢を見ていた気がする。しかしそれが何だったのかは覚えていない。なぜなら突然起こされたからだ。
「ちょっと起きて! インコが飛んで行っちゃった!」
夢の余韻に浸る間もなく、寝ぼけた頭をフル回転させ何を言っているのか理解する。すぐにベットから飛び起きると何処に飛んで行ったのかを尋ねた。
「肩に乗ってるの気づかなくて……そのまま外に出たら車に驚いて飛んで行っちゃったんだよっ!」
「いや、そうじゃなくて何処に飛んで行ったのか聞いてるんだよ」
「わかんないよ……びっくりしてどうすればいいか分からなくて……急いで起こしに来たのぉ……」
涙で湿った声で説明されるが、それではどうしようもないではないかと内心で毒突いた。
一応確認するために外へと出てみる。辺りを一瞥してみるが、見えるのは電柱や木や家の屋根、そして烏や雀だけだ。
口笛を吹いたり、名前を呼んでみた。普段はそれで飛んでくるのだが、どうにも反応が無い。おそらく怯えて固まっているのだろう。もはや打つ手などなかった。
溜息一つつくと頭を振った。
「だめだ。もう見つかんない」
何で肩に乗せたまま外に出たんだよと悪態を付きたかったが、涙をしゃくりあげながら泣いているのを見てそんな気も失せてしまった。
本当に残念で仕方がない。雛から育てていために大変愛着を持っていた。そして非常に懐っこくて可愛い奴だった。肩まで飛んでくると、撫でろといわんばかりに頭を下げてぐりぐりと押し付けてくる可愛いやつだったのだ。
もう一度溜息をつき、そのままリビングに入った。昨日の夜の状態で置かれている鳥籠がまだ家の中にインコがいるのではないかと錯覚させた。
家ではほとんどの時間インコを放し飼いにしていた。一度出すとなかなか戻らないからだ。しかし、腹がすくと自ら籠の中に入って餌を食べるのだ。だからその時を狙って扉を閉めるのだが、昨日は見逃してしまったのだ。それがまさかこんな事態になるとは、あまりに短慮だった自分に後悔してもしきれない。
気分が沈んだまま朝の支度をし学校へ向かった。授業の内容など全く頭に入らなかった。一日中、寒くないだろうか、他の鳥に襲われていないだろうか、ずっと動けずにいるのではないだろうか、とそんなことばかりを考えていた。
家に帰ると変わらぬ状態の鳥籠が視界に入る。今日何度目になるのか分からない溜息をついた。
今日は最悪な一日だったと思いながらベットに潜り込み体から力を抜いた。そのまま意識は薄れ、眠りに落ちていった。
朝、インコが戻ってきた。肩に乗ると相変わらず頭をぐりぐり押し付けてくる。可愛い奴だと思いながら人差し指で撫でまわす。何故か視界がぼやけてきた。
ふと目を開くと、そこには自室の天井が広がっていた。
溜息をつくと再び目を瞑るのだった。