MUGENと共に   作:アキ山

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 お待たせしました、18話完成です。
 うん、全然話が進んでない。
 あと、スパロボVクリアしました。
 やはりマジンガーZeroがヤバすぎです。
 またスパロボにでないかなぁ。


18話

 一話ぶりのご無沙汰でした、姫島慎です。

 いやあ、オーフィスは強敵でしたね。

 あ、どこぞの霧の人みたいなネタじゃなくてマジで。

 幼女モードで10倍界王拳を使った俺とほぼ同等。

 正体を現してからは、15倍に引き上げないと当たり負けしたからな。

 リョウ師範と手合わせしてまで完成させた『天地神明掌(てんちしんめいしょう)』も奴を第二形態にしただけで終わるし、こんなに苦戦するとは思わなかった。

 世界最強相手にこんな台詞を吐くが、ビックマウスと思うことなかれ。

 力を同格まで引き上げれば、技量はこちらが上。

 さらに奴の『無限』の属性を攻略可能とくれば、あんなのが相手でも勝ち筋だって見えるもんだ。 

 因みに奴の『無限』の属性だが、それはウロボロスの名が示す通り『円環する死と再生』即ち『無尽蔵の生命力』に他ならない。

 ぶっちゃければ、不老不死の存在という事だ。

 聞いただけなら『こんなチート、どうやって勝つねん!?』と思うだろうが、実はそれ程難しくなかったりする。

 まず最初に、奴は無尽蔵の生命力を持つがその能力自体はぶっ飛んでいるわけじゃない。

 奴が一撃で破壊出来るのは一都市、よくて小国一つ程度。

 氣弾一つで星を吹っ飛ばす某戦闘民族に比べたら可愛いものだ。

 身体能力も『狂ランク』底位でしかないし、ある程度の知恵はあっても戦闘スタイルは獣と同じなので、テクニックもない。

 これならば上手く技で抑えれば『Sランク』相当の力しかない俺でも十分相手ができる。

 問題の無限の生命力だが、これは力を伝えるバイパスを破壊、もしくは封印してやればいい。

 それが可能な技は北斗神拳の『醒鋭孔(せいえいこう)』や神楽ちずるの『零技(れいぎ)(いしずえ)』、元の『死点咒(してんしゅう)』か。

 俺はリョウ師範と手合わせした時にパクった『極限流死兆拳(しちょうけん)』を使った。

 これは正拳で相手の体内に氣を送り込み、内氣功を封じる技だ。

 内氣功というのは、自身の体内で生み出した氣、生命力を使って身体を制御したりリフレッシュしたりする技術だ。

 力の大小は有れど、全ての生命が無意識に行っている生命活動も内氣功の延長といえる。

 それを阻害するこの技は、古武術に伝わる『三年殺し』と呼ばれる技である。

 リョウ師範から初めて食らった時は本当にキツかった。

 内氣功を封じられて聖母の微笑も使えずに、三日間もがき苦しんだからなぁ。

 まあ、お陰で外氣功の腕が上がって、ギースが使っていた『真人』への足がかりになったのだが。

 話を戻そう。

 これで厄介な再生を封じれば、後はガチンコ勝負に持ち込むのみ。

 これには『狂ランク千人組み手』の経験が活きた。

 修業に時間が取れない事への苦肉の策だったのだが、その効果は今までの鍛錬の群を抜く。

 一日一回、ほんの数分間の試合だがその中身は濃密そのものだ。

 放たれる攻撃は全て必殺。

 それがこちらの捉えられない超スピードで、360度全方位から飛んでくる。

 さらには時間停止や広範囲攻撃、ガード不能技に一撃当たれば死亡確定な10割コンボ。

 果ては因果律操作による攻撃無効まで。

 カオスと理不尽を煮詰めたような狂気のオンパレードを乗り越えた俺は、気付けばSランクにまで上がっていた。

 三途の川をメドレーリレーして、脱衣婆と茶飲み友達になった甲斐があったというものである。

 この経験があったからこそ、オーフィスを前にしても平然と戦えたのだ。

 そも『無限の龍神』だの何だのと大層な看板を持ってはいるが、奴なんてルガール運送社長やエルクゥ門番役、そして剛の拳よりストロングな病人に世紀末覇者、東方先生に比べたらまだまだである。

 俺に負ける程度で世界最強なんて名乗っていては、彼らが聞けばヘソで茶を沸かすだろう。

 奴が放った氣弾なんかより、東方先生に『ぶぁくはつ!!』される方がよっぽど効いたし。

 まあ、こんな体験をしたお陰で周りから地上最強なんて言われても、実感はまったく湧かないわけだ。

 黒星街道を爆進中の身としては、こんな称号(笑)は早く返上したい。

 ……言われても恥ずかしいだけだし。

 

 さて、過ぎた事を話すのはここまで。

 突然だが諸兄には悲報を伝えねばならない。

 私、この度日本神話を解雇されました。

 理由はもちろんオーフィスとの大喧嘩である。

 嫁入り前の娘を2人も抱えた身にこの仕打ち。

 これが不況の(あお)りと云う奴か。

 世間の冷たさが身に染みる。

「我々としても、貴方を手放すのは不本意ですが、地上最強になった貴方が一神話勢力に属するのは、外交的に周りを刺激してしまうのです。ですので、貴方には日本神話勢から外れてもらいます」

 朱乃姉に土下座ってたところを、問答無用で高天原の謁見の間に転移させられた俺に掛けられた言葉がこれである。

 原因はこちらにあるとしても、世知辛いにもほどがある。

 こんなところまで人間社会を真似なくていいんですよ、天照様。

「それで、俺はどうすりゃいいんですか?」

「二日後の三勢力和平会談の後、多神勢力でサミットを開きます。そこで貴方の処遇を話し合うので、それまでは何処にも属さずに大人しくしていて下さい」

 お互いに深々と溜息をついてしまう。

 うん、天照様の言わんとしている事はわかる。

 しかし、こちらも『はい、そうですか』と飲むワケにはいかない。

 日本神話の依頼は我が家の収入を大きく占めているのだ。

 朱乃姉や美朱の大学入学や結婚等々の重大イベントが控えている中で、これを失うのは痛すぎる。

 なんとかしなければなるまい。

「ちょっと待ってください、天照様。いきなりクビにされても困りますよ、こっちにも収入の問題があるんですから」

「神職の給金では足りませんか?」

「もちろん貯蓄はしてますが、これからの事を考えると厳しいです」

 ガチに今後の生活に直結するので、こちらも直球である。

 こちらの弁を受けて玉座の上で腕組みをした天照様は、妙案を思いついたのか、閉じていた(まぶた)をゆっくりと開く。

「確か、貴方は以前に万屋を開いていましたね。それを復活させてはどうでしょう」

 ……ふむ。

 そういえば、日本に来てからは万屋稼業を疎かにしていたな。

「いいんですか? サミットまで大人しくしてなくちゃならないって言ってたのに」

「構いません。そも、日本神話を離れた以上、私に貴方の行動を縛る権利は無いわけですし。それに貴方のその力が有用である事を示せば、今後後ろ盾になってくれる神話勢力も増えるかもしれませんから」

「後ろ盾、ですか?」

「皆が距離を置こうとしているのは、貴方がどのような存在かが分からないからです。他の二つとは違い、社会の営みの中で生まれ育った『無限』。それが何を思いどのように動こうとしているのかを示せば、味方になってくれる者も現れるでしょう」

 ふむ、天照様のいう事も一理あるか。

 ならば、ここは発案者の天照様にも、一肌脱いでもらおう。

「そちらの意図は理解しました。なら、天照様の知り合いにも万屋の事を宣伝してくれませんか?」

「……そうですね。私の知己から理解者を増やしていくのも良いかもしれません」

 快く承諾してくれた天照様に礼を言った俺は、他に連絡事項が無いことを確認して高天原を後にした。

 いや、このズタボロの恰好であそこにいるのは度胸がいるんだわ。

 なんたって、上は裸に下は(すそ)が膝下から吹っ飛んだボロボロの学生ズボンだからな。

 やむを得ない事情があったとはいえ、どう考えても一国の主神の前に出る恰好ではない。

 世が世なら即打ち首ですよ、コレ。

 溜息交じりで学校に戻った俺を待っていたのは、またしても泣いた朱乃姉と何故か色々豪華になった玉藻によるツインタックルだった。

 

 

 

 あれから一夜過ぎて翌日。

 早くも俺は昨日の言動(主に万屋関係)を後悔していた。

 まさか再開1発目から、こんな濃いネタがこようとは誰が予測できただろうか。

 俺はもちろん、アシスタントを買って出てくれた隣の玉藻、学校を休んで付き合っている朱乃姉達の目も死んでいる。

 その原因は天照様が連れて来た涙を流す褐色のオリエンタル美女と、その前に横たわる蛇の尾が生えた(ふくろう)と狼と人が三身合体したような化け物。

 これがソロモン72柱の魔神の一翼アモンにしてエジプトの太陽神アメン・ラーだなんて、言われなければ絶対にわからないだろう。

 事の経緯はこうだ。

 朝飯を食っていると、突然境内に巨大な神氣が立ち上った。

 慌てて見に行くと、そこにいたのは天照様と件の化け物を背負った褐色美女。

 彼女はこちらを見るなり、涙ながらにこちらへ助けを求めてくる。

 事情は分からんが、このまま放っておくわけにもいかない。

 とりあえず本堂に上げて話を聞いてみると、褐色美女はエジプトの地母神ムトを名乗り、化け物の事を夫であるアメン・ラーだと言う。

 天照様が直々に連れてきている事を考えれば、彼女の言に嘘はないのだろう。

 そこで天照様にアモンの異変について聞いたところ、なんとはぐれ悪魔によく似た形で存在を歪められているのだと言う。

 ムト

様曰く、遙かな昔に聖書の神によって存在を貶められたアメン・ラーは、悪魔アモンとして冥界に墜ちてしまったそうだ。

 しかし、愛する夫を諦められなかったムト様は、さきの三勢力の大戦の折に魔王を討たれて動揺するアモンを捕獲。

 今までエジプト神話勢で保護していたのだという。

 自陣営にいる間、友好的な態度を示さないアモンにもめげずに、彼を神に立ち戻らせようとするムト様。 

 エジプト神話に限らず友好を結んだ他の神話の助けを借りて様々な手を用いたが、その尽くが失敗に終わった。

 それでも諦めずに頑張っていたところ、突如アモンにアメン・ラーとしての記憶と人格が戻った。

 ムト様は大層喜び、数千年ぶりの夫婦の語らいを楽しんでいたのだが、その最中にアモンが苦しみ始め、今の姿になってしまったらしい。

 内面がアメン・ラーへ立ち戻った時期がバチカンへの『禍の団』のテロと一致することを考えると、一神教の信仰の衰退が関係しているのだろう。

 事情はわかった。

 なんでそれを俺にって、まさか……

「天照様、もしかして俺にアメン・ラー様をなんとかしろって言うつもりですか?」

「その通りです」

 ハイ、無茶ぶりキター!!

 思わず白目を剥いたものの卒倒するのは何とか回避できた。

「なんとかって、脳筋デンジャー野郎な慎兄がどうやったら、こんな状態の神様治せるのさ?」

「おいコラ」

 妹よ、さらりと兄をディスるのは感心できんぞ。

 というか、俺はクビになったけどお前にとってはまだ上司なんだから、もう少しちゃんとした態度を示しなさい。

「そうです。慎は戦闘能力に関しては常軌を逸していますが、術に関しては普通だったはずですわ」

「姫島朱乃。貴女が何故ここに?」 

「俺が呼んだんですよ。家族に秘密を抱えるのはやめたんで。まあ、顧客のプライバシーに関しては営業時間前に突撃してきた分と相殺ってことで」

 転生悪魔である朱乃姉がこの場にいる事に難色を示す天照様に軽い調子ながらも釘を刺しておく。

 昨日高天原から帰ると、美朱によって強引に朱乃姉と話し合う様に仕向けられた。

 そこでお互いの思いや考え方を半ば言い合いになりながらも話し合った俺達は、立場上どうしようもない場合を除いて隠し事はしないように約束したのだ。

 俺が日本神話に所属したままなら今回の件に参加させるわけにはいかなかったが、フリーランスになったのならそれは適応されない。

 まあ、三勢力への情報漏えいを防ぐために、最低限の守秘義務は守ってもらうつもりだが。 

「それよりもどうするんですか? 俺の手持ちの術で通用しそうなものは思いつかないんですけど」

「いいえ。ご主人様の桁外れの氣ならば、駒落としの祝詞で何とかなるかも知れませんよ」

 俺の疑問に答えたのは横に控えていた玉藻だ。

 彼女は床に寝そべり何の反応も示さないアメン・ラー様を術で精査しながら、上がってくる情報を見落とさない様に真剣な眼差しを向けている。

「駒落とし?」

「日本神話の秘術の一つ。詳細は守秘義務があるから話せないけど、まあ堕ちた存在を元に戻す術と思ってくれ」

 首を傾げる朱乃姉に当たり(さわ)りのないように説明しておく。

 さすがに転生悪魔を元に戻すなんて言う訳にはいかないからな。

「しかしマジなのか、玉藻。今のアメン・ラー様ってアレで変異してないのに、はぐれ悪魔と同じ状態なんだろ? それで駒落としが通用するのか?」

「駒落としの真髄は経絡を通して魂魄(こんぱく)へと繋がり、外部からの氣によって魂の浄化再生を促すことにある。アレが原因でなくても、外的要因で魂魄が変質しているならば対処は可能なはずじゃわい」

 美朱の肩に留まっている少彦名(すくなひこな)様の説明に、俺達は思わず感嘆の声を漏らす。

 自身の使う術の本質が見えていなかったとは、俺もまだまだ未熟という事か。

 これからは武だけでなく術の鍛錬もしっかりやる事にしよう。

 あと、悪魔の駒の事を伏せてくれてありがとうございます。 

「少彦名殿はともかく、貴女がこちらの肩を持つなんて珍しいですね、藻女(みずくめ)

「そんな気はありません。ただ今後のご主人様の立場を考えれば、ここで日本とエジプトに恩を売っておくのも悪くないと思ったからです」

 天照様の微笑にそっぽを向く玉藻。

 相変わらず天照様には素直じゃない。

『それじゃあこの神様は助かるの?』

『ソンナニ簡単ジャナイゾ、ハティ。コノ者ハ大神。ソノ穢レヲ祓ウノハ容易デハアルマイ』

 アメン・ラー様の膝の辺りに仲良く並んでいた真神(まかみ)様とハティ様が、念話で話しながら小さく唸り声を上げる。

「真神殿のいう通りです。神を浄化再生するとなれば、魔に堕ちた哀れな人間を相手にするのとは比較にならないほどの氣が必要となります。それにアメン・ラー殿が墜ちたのは人々の信仰故。聖書の勢力への信仰に(かげ)りが見えているとはいえ、それを覆そうとすればご主人様への負担は莫大なものになるでしょう」

「ふむ……」

 姉妹二人からこちらを気遣う視線を受けながら、俺は腕を組む。

 さてシンキングタイムだ、我が頭脳。

 玉藻の言う事が事実なら今回の案件はかなりヤバい。

 氣、すなわち生命エネルギーの枯渇はイコール死である。

 エジプト神話とは縁もゆかりもない以上、普通ならそんなリスクを背負う理由なんてない。

 しかし、昨日の弁を考えれば今回の件は天照様がこちらを思って持って来た依頼だ。

 少々というには色々と(とが)ってはいるが、将来のメリットを思えば簡単に蹴る訳にもいかない。

 なにより……

「姫島慎殿、新たな無限を宿す少年よ。どうか、夫をお助け下さい。私達には貴方の助力が必要なのです」

 話が始まってから土下座したまま動こうとしないムト様に、思わずため息が漏れる。

「女にそんな真似までさせて断るなんてしねえよな、坊主」

 壁に背を預けて不敵な笑みを浮かべるクーの兄貴に、俺はしっかりと頷いて見せる。

 ま、そういうことだ。

「ムト様。俺にどれだけの事ができるかはわかりませんが、全力を尽くしましょう」

「ああ……! ありがとうございます!!」

 涙ながらに俺の手に(すが)るムト様を天照様に任せた俺は、横たわるアメン・ラー様の梟と人間がごちゃ混ぜになった顔を見据えながらその額に手を置いた。

「お待ち下さい、ご主人様」

 氣を送ろうとしたところで掛けられた声に振り返ると、巫女服から礼装である青い着物に姿を変えた玉藻が自身の神鏡を手に佇んでいる。

「どうした、玉藻?」

「私もお手伝いしますので、お時間を頂けますか?」

「そうしてくれるのはありがたいけど、あんまり無理すんなよ?」

「はい」

 一緒に氣を送り込むと思った俺の忠告にニコリと笑みを返した玉藻は、手にした鏡を胸に抱きながらゆっくりと祝詞を紡ぎ始める。

「ここは我が国、神の国。水は潤い、実り豊かな中津国(なかつくに)

 淡い燐光が鏡を包むと同時に玉藻の(そで)から呪符が一人でに飛び出す。

「国がうつほに水注ぎ、高天(たかまが)巡り、黄泉(よみ)巡り。巡り巡りて水天日光(すいてんにっこう)

 それは本殿の壁面に規則正しく張り付くと同時に鳥居(とりい)を映し出し、そして鏡を中心とした呪力は室内に強力な結界を作り出す。

「我が照らす、豊葦原瑞穂国(とよあしはらみずほのくに)八尋(やひろ)の輪に輪をかけて、これぞ九重(ここのえ)、天照……! 水天日光天照八野鎮石(すいてんにっこうあまてらすやのしずいし)

 呪符から集約した呪力によって天高く浮かび上がった鏡を玉藻が地面に投げつけると、結界内に呪力が広がると同時に身体の内から力が湧き出てくる。

「これは……氣脈が活性化しているのか?」

「こりゃたまげたわい。不完全とは言え静石の力を解放したのか……!」

「ふわぁ……なにこれ。身体から力が沸いてくるみたい」

「凄い、生成できる魔力の量が格段に増えているわ」

『身体がポカポカだよ! 旦那様、狩りに行こう!!』

『オチツケ、ハティ』

「自身が味方と認識した者にブーストを掛ける宝具か。こいつは合戦だと重宝しそうだ」

 各々が自身に起きた変化に驚きの声を上げる中、此方の視線に気づいた玉藻はこれでもかと言わんばかりのドヤ顔を浮かべる。

「これが私の宝具『水天日光天照八野鎮石』の効力です。本来なら死者を蘇らせることも可能なのですが、今は魂と生命力を活性化させるのが精一杯のようです」

「いいや、十分スゲエよ。これなら30倍界王拳でも耐えられそうだ」

 施術にどれだけの氣が必要か解らない中で、この援護はありがたい。

 呼吸を整えた俺は、ゆっくりと氣を送り始める。

 閉じた瞼の奥に移るのは全てを飲み込むような深い闇。

 はぐれ悪魔など比較にならないその黒さに内心舌打ちをしながらも、額に置いた手からアメン・ラー様の経絡に氣の道を繋げた俺は額に浮かんだ汗を乱暴に拭った。

 まだまだ術式は序盤だというのに、通常の駒落としよりも数倍の氣を食われた。

 さすがは神と言うところか。

 悔しいが、素の能力では最後まで乗り切れそうにないな。

「フッ……!!」

 鋭く呼気を放つと同時に10倍界王拳で送り込む氣を引き上げると、萎えかけていた氣は先ほどとは比較にならない速度で経絡を駆け巡り、身体の中心である魂魄へと到達する。

「これは……!?」

 魂魄の間に到達した俺は、脳裏に浮かぶ光景に息を飲んだ。

 闇に包まれた間の中心にはそれを上回る漆黒の輝きを放つ魂魄があり、それには間の四方に伸びる三本の漆黒の鎖によって拘束されていた。

 それぞれの鎖に『狼』『梟』『蛇』の意匠が付いている事から、これがアメン・ラー様を(おとし)めている信仰の象徴。

 すなわち、はぐれ悪魔における悪魔の駒と同じ働きをしているのだろう。

 この光景に少々気圧されはしたが、それが分かればやる事は一つだ。

 経絡から伸びた氣の道を魂に繋ぎ、出力をさらに跳ね上げる。

高天原(たかまがはら)神留座(かむづまりま)す。神魯伎神魯美(かむろぎかむろみ)詔以(みこともち)て。皇御祖神伊邪那岐大神(すめみおやかむいざなぎのおおかみ)筑紫(つくし)日向(ひむが)(たちばな)小戸(をと)阿波岐原(あわぎはら)に、御禊祓(みそぎはら)(たま)ひし(とき)生座(あれませ)祓戸(はらひと)大神達(おおかみたち)諸々(もろもろ)枉事罪穢(まがごとつみけが)れを(はら)(たま)(きよ)(たま)へと(もう)(こと)(よし)を、天津神(あまつかみ)国津神(くにつかみ)八百萬(やをよろづ)神達共(かみたちとも)聞食(きこしめ)せと(かしこ)(かしこ)(まを)す」

 身滌大祓(みそぎのおおはらい)の祝詞で氣に浄化の力を込めると、漆黒だった魂は太陽を思わせる黄金の輝きを取り戻し始め、同時に三本の鎖が軋み始める。

 施術は順調と言えるが、如何せんかかる氣の量が半端ない。

 10倍界王拳でも少々心許なくなってきた。

 玉藻の張ってくれた結界の中なら30倍までは上げられそうだが、その状態で駒落としに必要な繊細な操作を行うとなると正直厳しい。

 15……いや、20倍で何とかしなければ。

「……ッ!?」

 頭の隅に燻る不安を抑えながら氣を送り込んでいると、突然右腕に激痛が走った。 

 一瞬途切れそうになった集中力を立て直しながら意識を向けると、室内の四方から例の鎖が伸びて氣のラインに絡みついている。

 しかもこの鎖、自身から放たれる瘴気によってこちらの放つ氣を汚染しようとしてやがる。

 このまま放置すれば、経絡を遡って俺まで汚染されるだろう。

 さすが神様を堕とす代物、自己防衛機構付きとは恐れ入る。

 引き剥がそうと氣脈を通じてアクセスしようした瞬間、脳裏を多くの人の声がよぎった。

 それは『唯一神を(あが)める声』

 それは『他の神を認めぬ意志』

 それは『他者の信仰を貶める悪意』

 それは『堕ちたる者への嘲笑』

 それは、それは、それは………!!

 ……ッ!! なるほど、今更ながらこれがどういったモノかを改めて理解した。

 こいつは信仰心によって編まれた、人が神へ向けた悪意そのものだ。

 この方は数千年もの間、魂で直にこんな声を受け続けたってのか。

 これが神を堕とすって事ならば、エゲツないにもほどがある。

 やった本人がこの世にないとしても身内がこんな仕打ちを受けては、三勢力に対する憎しみなど消える訳がない。

「なにこれ!? 慎兄の腕に黒い鎖の痣が出てきてる! それに周りの肌も黒く染まっていってるよ!!」

「美朱様、触れてはいけません! これは強力な呪詛です!」

「この気配は……あの者の、聖書の神の仕業ですか!」

「天照殿、ムト殿を連れて下がれ! この呪いは神を堕とす事を目的に編まれたモノじゃ! 厄介な事に信者の信仰心を利用して効果の増幅もしておる! 太陽神であるアメン殿に巣くっていた以上、掴まればお主もただでは済まんぞ!」

『ハティ!!』

『わかってる。ヒドイ臭い、鼻が曲がりそうだよ』

「そんなっ!? あの子は……慎はどうなるんですか!!」

「わからん。じゃが、いかにあ奴が『無限』の力を有していようとも、ここまでの呪詛を受けてはただではすまん。最悪、悪魔に堕ちるやもしれぬ」

「そいつはどうかね。あの坊主の事だからポンと(くつがえ)しそうな気がするけどな」

 周りの声を聴くに、なんか娑婆(しゃば)がエライ騒ぎになっているみたいだ。

 あと、クーの兄貴正解。

 実は呪詛の浸食なんてとっくに止めて、浄化ももうすぐ終わりそうだよなぁ。

 いや、痛み自体は大した事なかったんだが、頭の中で延々とアメン様の悪口が響くのがどうにもうっとおしくてさ。

 施術用の氣を何割かこっちに回して処置しちゃったんだよ、これがな。

 しかし、こっちは氣脈を侵食されているのだけど、現実じゃあアメン様の接点になってる右腕に影響が出るんだな。

 精神的、もしくは霊的な影響が身体に出るのは知っていたが自分で受けるの初めてだ。

 うむ、中々に興味深い。

 術の検証も兼ねてもう少し様子を見たい気もするが、あんまりみんなを心配させるのも悪い。

 という訳で、ここはサクッと片づけるか。

「滅菌、てなぁッ!!」

 頭に(よぎ)った台詞と共に界王拳を一気に20倍にまで引き上げた俺は、魂魄への供給を完全にカットしてこちらに絡みついた鎖に氣を叩き込む。

 一切の容赦のない氣の奔流を受けた鎖は、激しく軋みを上げると甲高い金属音を上げてバラバラに砕けた。

一時的に施術を中断して対処に当たったおかげで、伸ばした氣脈への被害は軽微。

 (けが)れのほうも今の氣で完全に押し流す事ができた。

 しかも、こちらに来ていた枝だけでなく、魂魄を拘束していた本体にも大ダメージが行くというオマケ付きでだ。

 おかげで魂魄への氣の通りを妨げてた詰まりみたいなのも消えて、先ほどよりも断然スムーズに通るようになった。

 ま、一時中断の所為で施術の再開には更なる細やかさが必要になるだろうが、それを補って余りある成果だろう。

「なんか慎兄の氣が膨れ上がったと思ったら、腕の肌の色が元に戻ったんだけど……」

「何とも呆れた奴じゃ。自身に(かか)った呪詛を力づくで根こそぎ吹き飛ばしおったわ」

「ええと、主神たる夫を貶めた呪い……なんですよね、アレ」

「あー、あれですよ。ご主人様ってオーフィスに勝っちゃいましたし」

「なんつうか、心配のしがいの無い奴だよな」

「弟が良く分からないナニカになっていく……」

 人がしゃべらないからって言いたい放題だな、オイ。

 一応、危険な作業やってんですがね、こっちは。

 まあ、別にいいんだけどさ。 

 軽く息を整えた俺は、界王拳の倍率を15に落として再び魂魄へ氣を送り込む。

 しかし、便利だからと放っておいたが、俺の身体はいったいどうなっているのか。

 昔から擬死や瀕死の重傷から回復すると、耐久性や身体能力が跳ね上がってるんだが。

 直近で言えばギース戦や狂ランクとの連戦、この間のオーフィスとのドンパチもそうだ。

 おかげで一月前までは4倍が限度だったのに、今では20倍まではリスク無しに使えるようになっている。

 いくらなんでもこれは異常だろう。

 ……ムムッ。

 今までは気に掛ける事も無かったが、一度気付くと頭から離れない。

 つうか、瀕死から復活すると強くなるっていったいどこの戦闘民族だよ。

 俺にはサルの尻尾なんてないんだが。

 明日はフリーだから、一度本格的に調べてみるか。

 健康診断はいつもグリゴリで受けてたから、親父に頼めばなんとかなるだろ。

 ……おっと、雑念が入ったな。

 今は作業に集中しないと。

 気を取り直して氣を送り込むことしばし、魂魄に絡みついていた縛鎖も『蛇』に続いて『狼』も音を立てて砕けた。

「ああっ! アメン様の身体が……」

「人型に戻ってる……」

「かの者を『魔』に至らしめている要素は残り一つ。ここが正念場じゃな」

『がんばれ、シン!』

『アトハ顔ノ梟ダケダ』

 周りから聞こえるみんなの声で、アメン様の状態がわかるのはありがたい。

 ならば、こちらもラストスパートとしゃれ込もう。

 再び界王拳を20倍に引き上げて送る氣の勢いを高めると、『梟』の意匠を持つ魂を縛る最後の鎖が大きく軋み、その黒鋼の身に亀裂が入る。

 ようやくラストも片付きそうだ。

 こんな胸糞の悪いモンはぶっ潰すに限るからな。

天清浄(てんしょうじょう)地清浄(ちしょうじょう)内外清浄(ないげしょうじょう)六根清浄(ろっこんしょうじょう)祓給(はらいたま)う。天清浄(てんしょうじょう)とは(てん)七曜九曜二十八宿(しちようくようにじゅうはっしゅく)(きよ)め、地清浄(ちしょうじょう)とは()神三十六神(ちのかみ さんじゅうろくしん)(きよ)め、内外清浄(ないげしょうじょう)とは家内三寳大荒神(かないさんぽうだいこうじん)(きよ)め、六根清浄(ろっこんしょうじょう)とは其身其體(そのみそのたい)(けが)れを祓給(はらいたまえ)(きよ)(たま)(こと)(よし)を、八百万(やおよろず)神等諸共(かみたちもろとも)小男鹿(さおしか)(やつ)御耳(おんみみ)振立(ふりた)てて(きこ)(めせ)(もう)す」

 ダメ押しに天地一切清浄祓(てんちいっさいしょうじょうばらい)の祝詞で練り上げた祓いの力を氣に上乗せしてやると、最後の鎖は甲高い金属音と共に砕け散った。

 天地一切清浄祓とは、その名の通り天と地と内外(人)を浄化し清める術。

 太陽を司る神であるアメン様には効果覿面(こうかてきめん)だろう。

 しかし、鬱陶(うっとう)しい代物だった。

 延々と他人への罵詈雑言(ばりぞうごん)を脳内に垂れ流すとか、どういう脳味噌してたら思いつくんだよ。

 噂を信じる趣味はないが、聖書の神ってのはやっぱりアレだったのかね。

 邪魔するモノも無くなった魂魄はこちらの氣を受けて、徐々に本来の姿を取り戻していく。

 いや、解っていた事なんだけど本当に氣の消費がヒドい。

 20倍でギリギリのラインって、こんなの普通の駒落としなら術者が何人いても足りないんじゃないか?

 非常時に備えて常に仙豆を忍ばせてるから何とかなるだろうが、久々にガス欠になるまで氣を酷使するハメになりそうだ。

 

 ……アメン様の魂魄が太陽さながらの姿を取り戻してから、どのくらいの時間が経っただろうか。

 界王拳の維持と氣の消費にそろそろ限界が見えて来たところで、ようやく施術が完了した。

 アメン様の額から手を放してその内面から意識を戻すと、本堂の窓から夕陽の光が差し込んでいるのが見えた。

 術を始めていた時に居たメンツも、今はムト様と玉藻の姿しかいない。

 まあ、これだけ時間が経っているのなら仕方ないけど。

 こっちも一日仕事になるとは予想もしてなかったし。

「礼を言うぞ、『無限』の少年よ。そなたの献身で我は再び神に立ち戻ることができた」

 掛けられた声に振り返ると、そこには黒絹のような髪に褐色の肌、そして黄金の瞳を持ったイケメンが横たわっていた。

 これがアメン・ラー様の本当の姿なのか。

 さっきまでの化け物とはエライ違いである。

「あなた、意識が戻られたのですね!」

「すまなかったな、ムトよ。我が不甲斐ないばかりに長きにわたって苦労を掛けた」

「いいえ……いいえッ! あなたが受けた辛苦に比べれば、この程度……ッ!!」

 アメン様の上体を支えながら感極まって涙を流すムト様。

 その頬を伝う涙をアメン様は優しく拭っている。

「無理はなさらず安静にしていてください、アメン・ラー様。今回行った術は魂を基点として肉体を作り替えたようなもの。今の肉体が安定するまでには少々時間がかかりますので」

 下着が重く感じるくらい汗だくだったので玉藻の用意してくれた桶の水で顔を洗った俺は、立ち上がろうとしていたアメン様へ釘を刺しておく。

 転生悪魔の症例は多くあるが、神に対しては今回が初めてだ。

 用心はし過ぎるくらいがちょうどいいだろう。

「なんと、それほどの大秘術であったか……! ならば、それを見事に成功させた其方(そなた)には相応の礼をせねばならぬな。何か望みがあるなら申してみよ。我が名において叶えてみせよう」

 寝たままでもカリスマたっぷりなアメン様の言葉に、思わず呆気に取られてしまう。

 急に望みと言われてもなぁ……。

 今回の報酬だって、100万くらいで手を打つつもりだったし。

「どうした? 他の2体とは違い、其方は人の子だ。何の望みも持たんという訳ではあるまい」

 確かに望みはあるが、報酬として臨むのは少々図々しいものだ。なので、今回はこう返すとしよう。

「そうですね……。でしたら、神話勢力の間で私に何かがあった場合、一度だけご助力願えませんか?」

「ほう、随分と抽象的な願いよな」

「少し前に問題を起こしてしまいまして、今の私は世界から腫物扱いなんですよ」

「気になるな。何をしでかしたのだ?」

「この方はオーフィスを一騎打ちで倒してしまわれたのですわ」

 ムト様の説明に面食らった顔をした後、本堂に響き渡る程の声で爆笑するアメン様。

 いや、そんなウケルような話じゃないと思うんだが。

「あの『無限の龍神』を下したか! 何とも豪気なものだな、少年。ならば、我も断るわけにはいかん。なにせ、世界最強の男の頼み故な!」

 だから、恥ずかしいんでそう呼ぶのは勘弁してください。

「慎兄、術は終わった!?」

 呵々大笑(かかたいしょう)するアメン様を前に頭を抱えていると、本堂に美朱が駆けこんできた。

「終わってるぞ。どうした?」

「入り口で天使と朱姉が揉めてるの! 一緒に来て!!」

 その言葉に本堂を飛び出して入り口に向かうと、階段の下で問答をしている巫女服姿の朱乃姉と学校帰りなのか制服を着たイッセー先輩、そして鎧姿の金髪ロン毛な天使の姿が見えた。

 あれって確か、ミカエルだったよな。

「何度も言いますが、ここは弟が任された日本神話の神域です! そのような物の取引に使用するなんて認める訳にはいきません!」

「それは先ほど伺いました。ですが、この地はグレモリーの領地であり、この件は貴女の主が承認した事です。それに何もこの地を奪うと言っている訳ではありません。アスカロンを赤龍帝に譲渡する儀式に、レイラインを使わせてほしいと言っているのですよ」

「だから、俺はそんなモン要らないって、何回も言ってるじゃないですか! それに今の三大勢力って立場がヤバいんでしょう!? ここであいつと揉めたら、それこそ他の神話から袋叩きにされますって!!」

「心配いりませんよ、赤龍帝。姫島慎君とは以前に一度会いましたが、礼儀正しい好青年でした。それに彼が日本神話に身を置いているのは家族の為であり、信仰があるわけではないと聞いています。ならば、主の名の元に私が頼めば、快くこの場を貸してくれるでしょう」

 ……階段を降りる最中、頭痛がしそうな会話が耳に入ってくる。

 何をトチ狂ってんだ、あの大天使様は。

 日本神話との関係はその通りだけど、だからと言ってそんな理由で貸すわけないだろうが。

 つうか、聖剣事件の時に交渉の場にお前居たんじゃないのか。

 あんだけ悪意をバンバン受けたのに、なんでそんな考えになるんだよ。

「随分と騒がしいですが何用でしょうか? ここは神が住まう(やしろ)静粛(せいしゅく)に願いたいのですが」

 声を掛けると朱乃姉とイッセー先輩の顔に安堵が浮かび、対するミカエルは穏やかな微笑を此方に向ける。

「お久しぶりですね、姫島慎殿」

「ええ、ひと月ぶりですか。それでどのような御用なのでしょうか、ミカエル殿」

「はい。この度、我々三大勢力間で和平を結ぶことになりましてね。その証として我々から悪魔に属する赤龍帝に、聖剣アスカロンを譲渡する事になったのです」

 さもめでたい事のように舌を振るうミカエルの横で、心底嫌そうな顔をするイッセー先輩。

 さっきのやり取りを見ていれば、良い印象なんて抱くわけないわな。

 それよりも龍の神器を宿した人間に『竜殺し』の聖剣を渡すってのはどうなんだ?

 普通に考えても嫌がらせとしか思えないのだが。

 もしかして白龍皇対策のつもりなのだろうか。

「成程、それで何故我が社へ?」

「はい。ここがこの街でレイラインの力が最も集まる場所のようですので、譲渡の儀式に貸してもらいたいのです」

 おいおい。なんの躊躇(ちゅうちょ)もなく言いやがりましたよ、この人。

 俺はちゃんと『ここは神の住処だ』っていったんだが。 

 なのに武器渡すのに使わせろとか、本当になに考えてんだ。

 そもそも、この国の龍脈は日本のもんだっつうの。

 そういう事をするんなら、持ち主である高天原に許可を取らんかい。

「ミカエル殿、その事は天照様に伝えているのですか?」

「いいえ。ここは三大勢力の一つである悪魔の領土です、日本に伝える必要はないでしょう」

 ……なんでみんなこの街の事を勘違いしてんだろうな。

 あれか? 極東の一地方都市だから眼中にないのか?

 というか、あれだけ事件が起きてんだから、普通は細部まで調べるもんだと思うんだが。

 三勢力って諜報関係はまるっきりダメだったりするのか?

「ミカエル殿。ここは日本の領地で、悪魔は管理を任されているだけにすぎません。前回の交渉の場にいた身ならば、この程度の事実を把握していないのは問題だと思いますが?」

 こちらが間違いを指摘すると、顔に浮かべていた笑みが消えた。

 カドが立たないよう穏便に言ったつもりなのだが、どうやら気分を害してしまったらしい。

 なに、言い方がキツい?

 むこうの無茶ぶりを考えたら十二分に丁寧だと思うがね。

「お引き取りください、ミカエル殿。ここは神聖な神の住処。そのような目的に使用するなど、神職に就く者として認めるわけにはいきません」

「この儀式は三大勢力の和平の先触れ、しいては貴方の父であるバラキエルの今後にも影響するものです。それでも貸してはくれませんか?」

「生憎ですが、私は仕事に関しては公私を分ける事にしています。これが父に影響のある事柄だとしても答えは変わりません」

「信仰を持たぬ身で神官を気取るですか。極東の教えは随分と緩いようで」

「この国は神と人の垣根が低いのが売りでしてね、我々神職者は信仰でなく親愛を持って仕えているんです。とっくにこの世から去った神の遺影を、後生大事に拝んでいるどこぞの宗教とは違うんですわ」

「あなたは……ッ」 

 俺の言葉にミカエルの目が一気に鋭くなる。

 思わず口が滑ってしまって、言ってはならない事を言ってしまったらしい。

 まあ、所詮(しょせん)は売り言葉に買い言葉。

 ここは水に流してもらうとしよう。

「ミカエル殿、もう一度言います。お引き取りを。この場でいくら粘ろうとも、私が首を縦に振る事はありませんので」

「……わかりました。残念ですが、この件は諦める事にしましょう」

 そう言い残して、背中の羽を羽ばたかせて飛び去るミカエル。

 いや、こんな日の高い内から飛んでいくなよ。

 誰かに見られたらどうすんだ、まったく。

「やれやれ、何をトチ狂ってんだよあの大将は。朱乃姉とイッセー先輩はありがとうな。あいつを抑えてくれて」

「いいのよ。いくら大天使長とはいえ、私達の家であんな事をされるのは嫌だもの」

「こっちも気にしないでくれ。俺がここまで連れて来ちまったようなもんだし。あと、部長がここを使うの認めたって事なんだけど……」

「わかってるよ。これから和平を結ぶ一派の長の言葉だもんな。リアス姉の立場じゃ突っぱねるなんてできないさ」

「すまん。部長も謝っといてくれって言ってたよ」

「あいよ。リアス姉には(るい)が及ばないようにしとく」

 片手を軽く振りながら俺は(きびす)を返す。

 慌ててたから思わずアメン様達を放って出ちまったけど、ヘソ曲げたりしてないだろうな。

「なあ、慎」

 石段の手前でで掛けられた声に俺は足を止めた。

 振り返るといつもとは違う真剣な表情をしたイッセー先輩がこちらを見つめている。

 その顔に陰が浮かんでいるのは、射しこむ夕日の所為ではないだろう。

「どうした、イッセー先輩?」

 問いを返すと、イッセー先輩はチラリと朱乃姉に視線を送る。

 ふむ、なにやら込み入った話のようだ。

「朱乃姉。悪いけど、先に帰って美朱と一緒にアメン様達の相手をしててくれるか?」

「わかったわ。でも、私達じゃそんなに間が持たないだろうから、早めに来てちょうだいね」

 イッセー先輩からの視線に気付いていたのだろう、朱乃姉は微笑みながら境内に姿を消した。

 うん、こういうところで気が利くのは本当にありがたいよなぁ。

「さて、イッセー先輩。話を聞こうか」

「あ、あのさ……今、悪魔ってどれだけヤバいのかな?」

「どれだけ、とは?」

「こっちに戻って来てから俺なりに悪魔の世界的地位ってのを調べようとしたんだ。でも、世界でテロが起こってるくらいしか分からなくてさ」

「それで、俺に具体的な裏の世界情勢を聞こうって訳か」

「うん。教えてくれるか?」

 イッセー先輩のまっすぐな視線を受けながら、俺は内心でイッセー先輩の株を上げていた。

 一番こういう事とは縁遠いと思っていたのに、先輩も将来の事とか真剣に考えてるんだな。

「いいだろう。その前に、立ち話もなんだから河岸(かし)を変えるか」

「河岸を変える?」

「場所を変えて喫茶店でも行こうかって事。本来は飲食や遊びの場所を変えるのに使う言葉でな、もともとは江戸時代の遊女が抱え主や働き場所を変えることで、そこから転じて、そういう意味になったんだ」

「なんつうか、お前って古い言葉とか言い回しを使うよな」

「親父臭いってか? まあ、職業病だと思ってくれや」

 軽口を叩きながら向かった先は、近所にある馴染の喫茶店。

 ドアベルを鳴らしながら中に入ると、染みついたコーヒーの香りと共に昭和を思わせるレトロチックな店内の姿が目に飛び込んでくる。

 カウンターでグラスを磨いているマスターにコーヒーを二つ注文した俺達は、店の奥の席に腰かけた。

「さて、さっきの話の続きだな」

「ああ」

「まず、現状における悪魔、というか聖書の勢力についてだが」

「ええと、ちょっと待ってくれ。聖書の勢力ってなんなんだ。俺達って三大勢力の人間じゃなかったッけ?」

「そこからか。聖書の勢力ってのは三大勢力の正式名称だ。由来は説明するまでもないだろうが十字教な。一応、中東を中心に普及している一神教も同じカテゴリーに入るけど、この辺はややこしいんで今回は説明を省く。あと、『三大勢力』なんて言ってるのは聖書の勢力内だけで、他では『聖書の勢力』もしくは『三勢力』で通ってるから間違えないようにな。ここまではいいか?」

「お、おう」

 しどろもどろになりながらも答えを返すイッセー先輩を一瞥して、俺は説明を再開する。

 しかしメモを取ろうとしているとは、知りたいと思っているのはマジらしいな。

「話を戻すが、現状の三勢力の立場はすこぶる悪い。現政府から離反した三勢力の過激派を中心に構成されたテロ集団『禍の団』が世界各地で破壊活動をやらかしてるせいで、元々低かった三勢力の株価が絶賛大暴落中だ」

「え、でも悪さをしているのはその『禍の団』なんだろ、?なんで三大勢力まで悪くみられるんだよ?」

「そりゃあ三勢力の指導者がしっかりと管理してれば、『禍の団』なんて生まれなかったからな。指導者達の方針は和平を目標にした融和だったけど、それに反対する主戦派や過激派がいるのも彼等は承知していたんだ。そいつらを放置した挙句に結託してテロに走られたんじゃ、責任を問われても仕方がない。他の神話勢力の中には『禍の団』は三勢力の尖兵(せんぺい)だと思っている輩もいるくらいだからな」

「なんだよ、それ!? 俺達は他の奴等に迷惑がかかる事なんて──」

「してるんだよ。過去の事だけじゃなく、現在進行形で」

「俺達がいったい何をしたっていうんだよ?」

「まずは冥界があるにも関わらず、各国の土地を領地と詐称して無許可で占拠してる事。次に信者国民を誘惑して転生悪魔にする事。さらには、堕天使による神器所有者の殺害や悪魔祓いによる民への殺傷もそうだな」

「転生悪魔も悪いのかよ!? 俺達は自分の意志でなったんだぞ!」

「他の神話勢力から見れば、自分の民を勧誘する事自体が悪なんだよ。それにイッセー先輩はそうかも知れないが、力ずくで眷属にされたケースも多いんだ。殺された後、転生悪魔として復活させられたりな」

「そんな……」

「サーゼクス兄やリアス姉、ウチの親父みたいな例外はいるが、基本的に三勢力全てにおいて人間の価値は低い。天使、堕天使、悪魔。どの種族もだいだいは人間を下等生物として見下してる。ここも他の神話からは悪印象みたいだな」

「それはレイナーレを見てて感じた。けど、天使や悪魔もそうなのかよ」

「天使は基本的に信仰を集める道具兼手駒、悪魔は契約によって糧を得る対象。あとは転生悪魔の素体ってとこだな」

 実はこの辺は俺も引っかかるところだ。

 他の神話と関わるようになってわかった事だが、彼等は自分の土地の人間を本当に大事にする。

 信仰心が薄い奴や他の神を信じてる者でも助けようとするし、その神話の悪神や現地の魔物が人を殺めても、魂はしっかりと保護されて冥府へ送られる。

 不思議に思って天照様に聞いた事があったが、その時に返ってきた『人はその地を治める神が生み出したモノ。いわば神にとって人は子と同じなのだ』という答えには納得したものだ。

 もしかすると、三勢力の人間に対する認識が悪いのは、これが原因なのではないだろうか。

「後は『禍の団』のテロで三勢力の信仰が落ちた事から、徐々に古の神々が復権してるのもヤバイか」

「え~と……すまん、解説お願いします」

「以前、三勢力が他の神話の信仰を奪った話はしただろ。今度は逆の事が起こってるんだ」

「逆って、追い出された神様が土地と信者を奪い返してるってことか? なんだってそんなことに」

「『禍の団』がイタリアを襲った時にな、奴等は天使、悪魔、堕天使の三つの種族を使ったんだ。イタリアは一神教の総本山。そこを手を取り合うはずのない三つの種族が仲良くテロったものだから、被害にあった信者は黙示録の時が来たと勘違いしたのさ」

「黙示録って?」

「聖書にある滅びの予言だよ。ザックリ説明したら、堕落した人類に絶望した聖書の神が今ある世界を滅ぼしてリセットするって話。滅びを受け入れた敬虔な信者もいたらしいが、大半の者はパニックになりながらも生き延びようとした。その時、ローマ神話の神々が降りたって人々を護りながら『禍の団』を撃退。さらには街に復興にまで手を貸したらしくて、現地住民のなかで鞍替えする者が続出しているらしい。これと同じことが中東でも起きてるせいで、世界的な三勢力への信仰はダダ下がりだ」

「でも、それのどこがヤバいんだ? どんな神様を信じるかなんて個人の自由だろ」

「信仰ってのは神話勢力にとって活動を維持するためのエネルギーみたいなものだ。前に言っただろ、神は人の信仰の影響を受けるって。で、信仰が減れば当然その神話勢力は衰退する。具体的にどんな影響が出るかまでは俺も分からないけど、三勢力の場合は神器の効果が減衰したりするかもな」

「げっ!? マジかよ」

 顔を引き攣らせながら自身の左手をマジマジと見るイッセー先輩。

 これに関してはこっちも皆目見当がつかない。ただでさえ唯一の神霊がいない状態なのだ、下手をすれば天界や冥界が滅ぶことだってありえるんじゃないか?

「それよりも問題は復権した神話勢力による三勢力への報復だろうな。日本やギリシャみたいに地上にいる神話勢力は嫌悪感はあってもある程度の折り合いを付けてるけど、帰還してきた者達は恨み骨髄だろうからな。『禍の団』の事で難癖(なんくせ)をつけて戦争を吹っかけてきかねん」

「なんだよ、本気で崖っぷちじゃないか……」 

「ホントに頭の痛い問題だよ。でも、どうしてそんな事を知ろうと思ったんだ? イッセー先輩ってそういう事には興味は無いと思ってただけど」

「……この前、中東のテロの事がニュースでやってたんだ。関係のない一般人の被害者が何十人も出た酷いものでさ。それを見た時に前の事件の事が頭を過ぎった。あの時は慎達が解決してくれたけど、もしかしたらこの街でも同じような事が起こったかもしれないって」

「成る程。それを見て悪魔から足抜けしたくなったか?」

「……俺、部長には本当に感謝してるんだ。だから悪魔になったのは後悔してないし、部長にも本気で仕えようと思ってる。でも、そのせいで父さんと母さんが危険に巻き込まれるっていうのなら。俺の所為であんなテロの被害者みたいになるっていうのなら……」

 思いつめた顔で俯くイッセー先輩に俺はため息をついた。

 前の事件ではここがテロの標的になったのだ、そういった最悪の事態を考えるのも当然だろう。

 それに二天龍の神器は戦乱を呼ぶと言われているなんて話も聞いた事がある。

 それが本当なら悪魔であるなしに関わらず、イッセー先輩は厄介事に付きまとわれることになる。

 まったくもって難儀(なんぎ)な事だ。

「わかった。もし本当に足抜けする覚悟が出来たなら俺のところに来てくれ。リアス姉にケジメをつけるのにも付き合ってやるし、その後も何とかしてやる」

 俺の言葉にイッセー先輩は顔を上げる。

 赤龍帝の籠手の所持者であるイッセー先輩が足抜けするのは簡単ではないだろうが、本気で辞めると決めたなら多少強引な手を使ってでもケツは持ってやるつもりだ。

 家族を護る為に身を引くのはきっと間違ってないはずだから。

「いいのか? いや、まだ悪魔を辞めるって決めたわけじゃないけど。お前って、日本神話所属なのに」

「いいんだよ。それなら今朝クビになったし」

「クビィィッ!?」

 テーブルを揺らしながらのけ反る先輩に、まだカップの半ばほど残っているコーヒーを保護する。

 まったく、オーバーすぎるわ。

「え、クビって、なんで!?」

「どうもオーフィスに勝ったのが原因らしくてな。俺が一神話勢力に所属しているのは、外交的に拙いんだと」

「そっか。地上最強なんてのがいたら、そこが一人勝ちしちまうもんな」

(おおむ)ねそんなとこ。所属して一か月で解雇とかどこのダメ社員だって話だよ。まあ、普通の会社でも公衆の面前で喧嘩なんかしたらクビなんだけどさ」

「じゃあ、神主もクビになるのか?」

「あっちは神様じゃなくて日本政府の認定だから別。それまで無くなったら本気で路頭に迷っちまう」

「……なんつうか世知辛いな」

「まったくだ。社会の厳しさを再確認してるよ」

 お互いにため息をついた俺達は、申し合わせたように温くなってしまったコーヒーをいっきに(あお)った。

「そろそろ行くか」

「ああ。コーヒー幾らだっけ?」

「俺が出すよ。店にさそったのはこっちだから」

 財布を出そうとするイッセー先輩を留めた俺は、向こうが何か言うより早く伝票を片手にカウンターに向かう。

「ありがとうな。相談に乗ってもらった上にコーヒーまで」

「気にすんなって。住人の悩みを聞くのも神職の務めの内さ」

 店から出ると日の光はその姿を消し、辺りには夜の帳が降り始めていた。

「これからどうするんだ?」

「部室に戻るよ。ミカエル様の事も部長に言わなきゃならないし」

「そっか。さっきの話だけど、どっちを選ぶとしても後悔の無いようによく考えてな」

「わかってる。サンキューな」

 こちらを一瞥して去っていくイッセー先輩を見送った俺は、社に向けて歩きだす。

 これから戻ってアメン様達の相手をして、その後で親父に身体検査を頼んで、明日は警備の最終点検があったか。

 クビになった俺が関わっていいのかわからんが、外されるとしても次の責任者への引き継ぎだけはしとかないと。

 身が休まる暇もないな、まったく。




 ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
 コロコロと変わる主人公の立場に困惑気味の作者です。
 ええ、世界最強(笑)になってしまったせいで、現実世界では色々大変な彼ですが、『無限の闘争』内では有情破顔拳で『チニャッ!?』と爆発する程度でしかありません。
 和平会議が終わったら、有名無実になってるあの設定の話を始めようかなと思っています。
 主人公は冥界に行けませんしね。
 相変わらずの遅筆ですが、見捨てないでくれるとありがたいです。
 では今回の用語集です。

〉醒鋭孔(出典 北斗の拳)
 秘孔・龍頷を突く事で、相手の全身を、むき出しにされた痛感神経で包むという北斗神拳の奥義。
 指で触れられただけで全身に激痛が走る身体になる。ケンシロウがジャギとの戦いで使用した。
 アーケード版の格闘ゲームではリーチは短いが発生が比較的早く、ガードされても反撃を受けにくい打撃技となっている。
 ヒットすると星を1つ(カウンターヒット時は2つ)奪い、通常技でもケズリが発生するようになる(この間、相手の顔アイコンに電撃のエフェクトがつき、ガード中にも同様のエフェクトが発生する)。
 さらに地上ヒットならよろけを誘発する。

〉零技の礎(出典 ザ・キングオブファイターズシリーズ)
 神楽 ちづる、神楽 マキの超必殺技。
 正式名称は『裏面八拾伍活・零技の礎』
 コマンドは両者ともに↓↙←↙↓↘→+P。
 低い姿勢をとりながら片手を突き出す打撃技で、ヒットすると一定時間相手は通常技しか使えなくなる。

〉死点咒(出典 ストリートファイターシリーズ)
 元のファイトスタイルの一つ『喪流』のスーパーコンボ。
 百連勾(その場で指拳を連続で放つ必殺技)の後、突きを放つ。
 コマンドは喪流時に↓↙←↓↙←+P。
 最後の一撃がヒットすることで相手の頭上に10カウントの数字が現れ、数字がゼロになると気絶する。
 カウントダウン中の相手は毒状態になり体力が削られるが、相手の攻撃を一発でも喰らうと効果が切れる。
 また、カウント数はレベルに関わらず一律だが、カウントダウン中に再度この技をヒットさせるとカウント速度が早くなる。
 出掛かりに無敵判定がある(ZERO3ではレベル2以上のみ)上に発生が早いため、連続技・切り返し・ぶっ放し・ZEROカウンター潰しなど様々な局面で使っていける技である。

〉極限流死兆拳(出典 餓狼伝説【龍虎の拳】)
 二代目Mr.カラテの必殺技。餓狼伝説〜WILD AMBITION〜で実装。
 コマンドは↓↙←+C。
 構えてから威力の低い正拳突きを放つ技で、構え中にガードポイントがある。
 攻撃を受け止めると溜めで突きのタイミングを変えることができる。
 相手の体が光り、ボタンを離すと爆発が起きてダメージを与える。

〉ルガール運送社長(出典 カプコンVSSNK MUGEN)
 ルガール運送(株)とは、ルガール・バーンシュタインが運営する架空の運送業者である。
 MUGENにおいて、ルガール・バーンシュタインの超必殺技『ギガンテック・プレッシャー(敵を掴んで壁に叩き付けるという技)』を誰かが『運送』と呼び始め、そこから定着したネタ。
 このギガンテック・プレッシャーのように、「壁に叩きつける」技は、横に長いステージ(ジョジョの奇妙な冒険が代表的)だと相手を掴んだままかなりの距離を移動することがある。
 ルガールが闇の武器商人と言う設定である事もあいまって、ルガールを社長とした運送業者「ルガール運送」と言うネタが定着。
以降、壁に叩き付ける系統の技を『運送技』と呼称するのがMUGENでは一般的になり、運送技を持つキャラクターを『ルガール運送の社員や関係者』としてグループ化、クロスオーバーのネタにする事が多くなった。
 無論、MUGEN以外の各原作ゲームでは、運送技と言う言葉は一般的ではなく、あくまでニコニコMUGEN界隈限定のネタであることには注意したい。

〉エルクゥ門番役(出典 Leafビジュアルノベルゲーム『痕』 MUGEN)
 ビジュアルノベルスゲーム『痕(きずあと)』に登場する謎の存在。
 形式上では鬼される存在。
 あらゆるものを斬り裂く爪、風の如き疾走、大気を震わす雄叫びなど圧倒的な戦闘能力を誇り、見るものを凍てつかせる凶悪性を放つ。
 MUGENでは手描きキャラクターとして参戦。
 素体はギルティギアのザトー=ONEで、原作通りに爪と高速戦闘を主体とした戦いを得意とする。
 その強さは、ズバリ狂キャラど真ん中。
通称狂キャラの門番とまで称され、狂クラスど真ん中な強さから公開された2007年以降から現在まで、狂クラス下位の代表として君臨し、幾人もの鬼神の如き猛者たちと渡りあっている。
 現在でも現役バリバリで審査員。
 ・体力常時回復
 ・超必殺技ゲージ自動回収
 ・技の発生が早くお手軽ハメ可能
 ・体力残り30%でさらに凶暴化
 ・ゲージ10あれば即死技
 等の凶悪な性能を持っており、今日も狂キャラ候補の前に立ちふさがっている。

〉剛の拳よりストロングな病人(出典 AC北斗の拳 MUGEN)
 剛の拳よりストロングな病人とは、AC北斗の拳におけるトキの事を指すことが多い。
 
 格ゲー史上トップクラスといっても良いほど理不尽な強さを誇る プレイヤーキャラ 。
 あまりの強キャラっぷりから「剛の拳よりストロングな柔の拳」とも言われている。
一応病人であるはずだが、どう見ても病人とは思えない動きと強さから、
「あれはトキじゃないアミバだ」「放射線じゃなくてガンマ線を浴びた」「放射能を浴びる前のトキ」などと言われている。
 その強さはMUGENでも遜色なく発揮されており、本来コンボゲー出身のキャラは、様々な喰らい判定を持つ敵がゴロゴロ群がるMUGENに放り込まれると相対的に弱くなる。
 更に原作におけるトキの強さは流舞による"人間の目には"捉えられない見えない攻めであるため、視覚情報という概念のないAI同士の戦いでは通用しにくいのだが、トキは当て身やぶっぱも強いため原作ばりに凶キャラ(AIによっては狂キャラ)の一角を担っている。

〉世紀末覇者(出典 AC北斗の拳 MUGEN)
 世紀末覇者とは『北斗の拳』ラオウの通称である。
 MUGEN参戦当初は他の北斗勢に遅れを取っていたが、現在は本体・AIともに数が増え、その凶~狂キャラぶりを遺憾なく発揮。
 とある製作者の手がけた「ラオウ」は極奥義版「北斗剛掌波」を搭載している他、所々アッパー調整されており、AC版の「拳王」に近い性能を持ち、外部製作者のAIを積めば火力は通常モードでは常に8~10割、強化モードなら 常に10割 になっている。
 このため超反応による無想転生や無想陰殺での割り込みで10割、低空ダッシュやブーストを駆使した崩しから10割等、狂に食い込む実力を発揮している。
 世紀末覇者のMUGEN界への進軍は今日も着々と進んでいる。

〉東方先生(出典 機動武闘伝Gガンダム MUGEN)
 東方先生とは『機動武闘伝Gガンダム』の登場人物『東方不敗マスター・アジア』の尊称である。
 劇中ではウォン・ユンファが使用していた。
 主人公ドモン・カッシュが師事した高名な拳法家で、10歳で実家を出奔した彼を10年間鍛え、達人の域にまで育て上げた。 
 自らが編み出した拳法『流派東方不敗』を操り 生身でモビルスーツを破壊する ほどの無茶苦茶な強さを誇る。
 勿論モビルファイターに乗れば更に強くなる、まさにガンダムシリーズ最強クラスの人物。
(逆にガンダムファイトする為に仕方なくガンダムに乗ってるとも偶にファンに言われる)
 作中では思想の違いからデビルガンダムの処遇を巡って愛弟子ドモンと対立し、最大最強のライバルとなって最後まで死闘を演じた。
 実は不治の病に冒されている身なのだが、そんなことを微塵にも感じさせぬほどの武術の冴えを示しまくった。
 MUGENでは、手書きキャラとして参戦。
  瞬間移動技やDBキャラのように背後に回り込んでのカウンターなど他に、高速移動(相手の動作を遅くする)など特殊な技も持つ。
 また、病ゲージという独自ゲージも存在。
 これはゲージが赤い時、 技と超必が使えなくなるという有情なシステムで、MUGENでは自重しない病人が多い中、一番病人らしいかもしれない。
 あるパッチを適用すると性能は大きく変わらないが狂上位のキャラとも引けを取らない実力になる。

〉ムト神(出典 エジプト神話)
 ムトはエジプト神話の女神である。
 ヒエログリフでは「禿鷹」で表され、このヒエログリフの読みは「母」をも意味する。
 元々、テーベ(カルナック)の地方神であったと考えられるが、アメン神と関連付けられ、アメンの妻とされた。
 また、コンス神の母ともされ、アメン、コンスとともにテーベ三柱神となる。
 ムトの父はアメン=ラーであるが、アメン=ラー神はアメン神が太陽神ラーと習合されて、太陽神アメンとなったものである。
 アメンはエジプト新王国時代にはエジプトの主神となったので、「エジプトの主」であるアメンの妃としてムトは「エジプトの女主人」の称号を持つこととなった。
 また、アメンが太陽神となり「天空の主」となったことより、ムトもまた「天空の女主人」となった。

〉アメン・ラー神(出典 エジプト神話)
 アメンは、古代エジプトの太陽神。
 アモン、アムンと表記されることもある。その名は「隠されたもの」を意味する。
 元々はナイル川東岸のテーベ(現・ルクソール)地方の大気の守護神、豊饒神である。
 中王国時代第11王朝のメンチュヘテプ2世がテーベを首都としてエジプトを再統一して以来、末期王朝時代の第30王朝までの1,700年余りにわたり、ラー神と一体化。
 「ラー=アメン」としてエジプトの歴史・文明の中心に位置し、エジプトの神々の主神とされた。
 エジプト最大の神殿であるカルナック神殿に祭られており、神殿の大列柱室などに見られる数々の壁画には、2枚の羽を冠した人物像として刻み込まれている。

 今回はここまでとさせていただきます。
 また次回お会いしましょう。

(蛇足)今回登場キャラの容姿(作者執筆時のイメージモデル)

 アメン・ラー オジマンディアス(Fate)
 ムト     ニトクリス(Fate)
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