やはり俺の青春はロックでまちがっている。~Rock of the Rock~ 作:石動 千凪
八幡side
平塚先生に今打ち明けられる事はすべて打ち明けた。
話していない事もあるが、あれだけを知ってもらえれば十分だろう。
俺は、アキ姉に誇ることが出来る人間になれたのだろうか?
忘れた事は無い。それでも、こうして口に出すとアキ姉と過ごした日々を思い出す。
アキ姉に言われた言葉。それは全部、俺の心の奥に刻まれて、俺の動力源になっている。
俺の信念であり、俺の原動力。俺が俺らしくあるために。
そういえば、雪ノ下・・・と言ったか。
平塚先生が言っていたな。変わってほしいと。
先生のような人がそうゆうのだ。きっと雪ノ下にも、それなりの事情があって今の自分を作り上げたのだろう。
人の内側に土足で踏み入るような事は絶対にしない。
俺もアキ姉みたいになってみたい。
アキ姉が俺を助けてくれたみたいに、俺にも、誰かを助けれるのだろうか。
目が覚めると、見慣れた天井が見える。
しばらくそのまままどろんでいると、隣で何かがもぞもぞと動きだした。
疑問と共に布団を剥ぐと、そこには最愛の妹が眠っていた。
小町「ムニャムニャ・・・・・・お兄・・・・ちゃん・・・・」
中学時代、家出をしていた時がある。
アキ姉と出会ってからしばらく、数か月の間お世話になっていた。
家を離れても、何も変わらないと思っていたが、それは違った。
何も言わずに家を出て、両親は朝早くから夜遅くまで仕事をしていたし、俺が家にいないことに気づいていなかった。
でも、小町は違った。
小町は、俺が居ない事に気づいてそこから大騒ぎになった。
警察ごとにもなって、だいぶ迷惑をかけたと思う。
その時初めて知った。俺もしっかりと家族の一員だったのだと。
アキ姉と共に家に帰ってきた時、怒られたりもしたがアキ姉が一緒にいたからもめごとにはならなかった。
両親ならば、なぜ自分の子供の心配をしないのか?なぜ子供の変化に気づかないのか?
その時俺は初めて家族にすべてを伝えた。そして、ゆっくりと両親に抱きしめられた。
そこできっと、俺は初めて家族なんだと自覚した。
小町は、その事がきっかけになったのか、よく甘えてくようになった。
その結果として、このように夜に布団に潜り込んで来たりする。
小町ももう中学3年だし、そろそろ兄離れしてもいいのではと思ったりもする。
八幡「ほら小町、もう朝だから早く起きろ」
小町「うみゅにゅ・・・・あと5分・・・・」
八幡「今日は朝早いんじゃなかったのか?」
小町「まだ大丈夫・・・・zZZ」
八幡「まったく・・・・・朝飯作るから、それまでには起きてこいよ?」
小町「ふぁぁ~い・・・・ムニャムニャ・・・・・」
寝ぼける小町を置いて、着替えをすましキッチンへ向かい朝飯を作る。
出来上がる頃になると、どたばたと小町がやってきた。
小町「お兄ちゃん!時間足りないよぉ!」
八幡「だから言っただろうに。ほら、朝飯は手早く済ませれるものにしてあるから、さっさとしろよ」
返事をしながら朝飯を食べる小町。食べながらしゃべるんじゃありません。
食べ終わるとそうそうに家を飛び出していった。
事故とか起こさないといいけど。まぁ、俺じゃなし大丈夫か。
学校へ向かい、特に為にならない授業を聞き流していると、いつの間にやら放課後になっていた。
教室にはすでに人影がなくなっていた。結構な時間が過ぎていた様だ。
俺は荷物をまとめ、奉仕部へと向かう。
八幡「うっす」
声をかけながら部室へ入る。雪ノ下は本を読んでいて、こちらをちらっと見てただ一言
「あら?来たのね。もう来ないと思ったわ」と言ってきた。
八幡「平塚先生の言うことだからな。信頼出来る人に言うことは聞くことにしてるんだ」
雪乃「そう。今日は、最後までいるのかしら?」
八幡「予定は何もないから、そのつもりだ」
雪乃「そう。わかったわ。」
たった数回のやり取りで俺にでもわかることがある。こいつは自分から人に歩み寄る事は決してないと。
自ら壁を作り、人が歩み寄る事を拒絶する。
やはり過去に何かあったのは間違いないのだろう。
雪ノ下雪乃という人物に関して考察していると、ノックの音が響いた。
??「失礼しま~す」
入ってきた少女は、髪を横に団子にして束ねて明るい茶髪をしたいかにも今時な女子高生といった感じだ。
??「平塚先生にここに行くようにって言われて・・・ってヒッキー!?なんでここに居んの??」
入ってきた少女は、俺を指さして声を上げた。
八幡「それは俺がここの部員だからだ。そしてなんだヒッキーって。初対面の人間を引き篭もり呼ばわりするとかお前失礼過ぎるぞ」
??「引き篭もりってそんなつもりじゃ・・・。それに私たちクラスメイトだし!!初対面じゃないし!!」
たとえクラスメイトであろうと、関わりが無ければ初対面ではないのか?
確かに、同じクラスにこいつの様な人を見おぼえがある。
クラスのカーストの頂点に立つ葉山グループの一員だったはずだ。
自分の意見を何も言わず、ただ空気を読み人に合わせていた奴だったと思う。
雪乃「とりあえず、依頼は何なのかしら?由比ヶ浜結衣さん?」
結衣「あ、あたしの事知ってるんだ」
由比ヶ浜結衣という彼女は、名前を知られていて表情が明るくなった。
雪ノ下は学校では有名人らしいから、ある種のステータスになるのだろう。
雪乃「知っている人だけよ。それで、貴女の依頼は何なのかしら?」
結衣「えっと・・・その・・・・」
由比ヶ浜は、こちらをちらちらと見て口ごもっている。
どうやら、俺が居ると話せないようだ。
八幡「ちょっと飲み物買ってくるわ」
そう告げて奉仕部を後にする。
10分くらい暇をつぶせば、話も終わるだろう。
とりあえずマッカンでも買ってこよう。・・・あいつらにはカフェオレでも買っとくか。
10分ほど時間をつぶし、部室へ向かうと雪ノ下と由比ヶ浜が丁度出てきた。
八幡「話、終わったのか?」
雪乃「ええ。とりあえず家庭科室へ行くわ。そこで説明するわ」
由比ヶ浜の依頼は、クッキーを作ってお礼をしたいとの事らしい。
この程度の事なら、友達同士でやればいいだろう。
そんなことを思い、由比ヶ浜に聞いてみるが、
「なんか、こうゆうの恥ずかしいし、皆に知られたら馬鹿にされそうだし・・・」
「それに、こうゆうマジっぽい事、みんなと合わないし・・・・」
との事だ。
やはり彼女、由比ヶ浜は空気を読むだけ読んで、荒波を立てないタイプみたいだ。
よく言って空気が読めて八方美人。
悪く言って自分の意見が言えない、人に合わせる事しか出来ないつまらないやつ。
考えている内に、雪ノ下は準備を済ませていた。
まずは由比ヶ浜の今のレベルを知るためにクッキーを作らせて見たものの、ひどい惨状になっていた。
由比ヶ浜は自信満々にオーブンから焼きあがった物を取り出した。
出てきたものは、お世辞にもクッキーとは呼べる代物ではなかった。
試食するまでもなく、雪ノ下が手取り足取り教え始めるが、状況は芳しくない。
由比ヶ浜はおそらくワザとではないだろうが、ミスを続けている。
ほんの少し目を離せば、隠し味だなんだと追加を始める。
出来上がる物はすべて真っ黒な何か。
雪ノ下「なぜ・・・こうもミス出来るのかしら・・・・・」
由比ヶ浜「うぅん・・・なんでこうなるのかなぁ?」
それはそうだろう。クッキーなんて物、レシピ通りに作れば誰でも作れるはずだ。
にも拘わらず、彼女はレシピにない事をやっているのだから。
由比ヶ浜「やっぱり、才能無いのかなあたし・・・・・。みんなも最近は交友のやらないって言うし・・・・」
雪ノ下「由比ヶ浜さん。そうゆう周囲に合わせようとするのはやめてくれないかしら?とっても不愉快なのだけれど」
由比ヶ浜「でも・・・」
雪ノ下「でもも何もないわ。回りにばかり合わせて、自分を失うなんておかしい事よ」
雪ノ下が言うのも最もだ。だがおそらく、由比ヶ浜だって好きで合わせてるわけじゃないのだろう。
周囲に合わせるって行為は、自分を出さず、周囲にとって都合のいい自分になる事だ。
過去に何があったかは分からないが、友人関係で何かあったのだろう。大体はそうゆう奴ばかりだ。
八幡「お前の過去何があったのかは知らないが、取り繕う相手はしっかりと選んだほうがいいぞ」
八幡「お前の世界は、お前が経験してきたよりも、広いんだからよ」
八幡「自分だけの小せぇ世界に、閉じこもってんじゃねえよ」
言いたいことを言って、由比ヶ浜の方を見てみると今にも泣きだしそうな目をしていた。
少しずけずけと言いすぎただろうか。そんな事を思っていると
結衣「・・・か、かっこいい・・・・」
由比ヶ浜の口から発せられた言葉に、驚きが隠せなかった。
雪ノ下も、少し同様しているみたいだ。
結衣「建前とかそうゆうの言わないのって、そうゆうのかっこいい・・・・・」
きっと、雪ノ下の本音が彼女にはしっかりと伝わったのだろう。
しっかりと自分の思いを伝えるってのは、なかなかに難しい事だ。
当然、雪ノ下の言葉はキツい物があったであろう。それでも、彼女には伝わったのだ。
俺の言葉も、しっかり伝わってるといいんだがな。
しばらくして、クッキー作りが再開された。
由比ヶ浜は、先ほどよりも真剣に見えた。雪ノ下の事をよく見て、しっかりと言うことを聞いている。
きっと、次は成功するだろう。
そうやって完成されたクッキーは、焦げもなくいい感じに見える。
ただ、味を見るとやはり初めての物。お店の製品などと比べると劣ってしまう。
それでも、由比ヶ浜の真剣な思いが伝わってくる。
結衣「なんか違う・・・・」
由比ヶ浜が肩を落とす。思ったほどおいしくなかったからであろうか?
雪乃「どうすれば伝わるのかしら・・・・」
この時点で、雪ノ下は目的を間違えているのだと分った。
雪ノ下は、うまいクッキーを作ろうとしている。
由比ヶ浜も自然とそうなってしまっているようだ。
結衣「ちゃんと言われた通りにやってるのになぁ・・・・」
それはそうだ。素人がそう簡単にうまいものを作れるはずがない。
八幡「なんで、お前らはおいしいクッキーを作ろうとしてるんだ?」
雪乃「なぜって、由比ヶ浜さんはお礼の為にクッキーを作りたいからと・・・」
八幡「雪ノ下。そこにお前の間違いがある。そこでなぜおいしいクッキーを作る必要がある」
結衣「だって。お礼なのに・・・おいしくない物をあげたって・・・・・」
八幡「それだったら、店で買ったものを渡せばいいだろうよ」
八幡「おいしいものを渡すなら、手作りにこだわる必要なんかねぇだろ」
八幡「さっきのクッキー。お世辞にもおいしいとは言えなかいが、お前の真剣な思いがちゃんと伝わってきたぞ?」
八幡「手作りクッキーなんだ。あれで十分だろ。ちゃんと感謝の気持ちがこもってるんだったら、あれで十分だ」
二人が唖然としてこちらを見ている。
こいつらはやはり勘違いしていたらしい。
お礼の為、手作りで頑張りたい。由比ヶ浜の本来の依頼はこのはずだ。
雪乃「私は、目的と手段を取り違えていたのね」
結衣「そっか、それでもいいんだ・・・・」
由比ヶ浜は、自分なりに納得したようだ。
後は自分なりに頑張ってみると、家庭科室を後にした。
雪乃「これでよかったのかしら・・・。成長できるのならば、もっと努力しても・・・」
八幡「それは、今後の由比ヶ浜しだいだろ。そりゃ努力して自分を高めるのはいい事だろう」
八幡「でも、それはこれからの由比ヶ浜が決める事だ。今のアイツは、あれでいいだろよ」
由比ヶ浜だって、自分で納得したんだんだから。
人に強制されてやる必要はないのだから。自分で成長したいなら、自らが努力していくほうがいい。
平塚先生が、雪ノ下に対して変わってほしいと思っていた理由が今日理解できた。
彼女・・・雪ノ下もまた、自分だけの小さな世界にとらわれているのだ。
しかも彼女は、それ以外の世界を認めようとしていない。彼女のプライドがそうさせているのだろう。
きっと彼女は、このままでは成長なんてしないだろう。そしておそらく、俺とは決してそりが合わないはずだ。
彼女が、自分以外の世界を認めない限り・・・・・。
次の日の放課後、由比ヶ浜がやってきて、お礼にと俺たちにクッキーを作ってきた。
昨日の最後に作り上げたクッキーの影も形も見当たらない。
八幡「・・・・苦いな・・・・・・・・・」
それでも、彼女の真剣な思いが確かに伝わってきた・・・・。
原作メインストーリーより、オリジナルストーリーを中心にしたいので、所々省略していきます。
材木座は犠牲になるのだ・・・・・。