ストライクウィッチーズ Assault Warfare   作:t5m5k2

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更新が遅くなりました。すみません。

戦闘シーン以外は相変わらず苦手で…。
今回はとても苦労しました。
今後の展開にも影響する回なのでよく考えながら書いているとこうなってしまいました。


では、とうぞ。


6 , 交流

 

……501基地、ブリタニア連邦……

……1944/4/16 1032 Zulu……

 

始めて歩く施設は、ふつう一度は道を間違える。この501部隊の基地でも同じだった。地図は苦手ではないが、やはり軍事施設であるだけあって通路が多く、一つ曲がるところを間違えば全く別のところへ行きついてしまう。人に聞こうとしても、建物内は驚くほど静かだった。気付けば食堂にいたり、なぜか屋上に出ていたりと、自己紹介したミーティングルームから出てから40分も経ってしまった。腕時計で確認したところ、時刻は10時33分。施設内をうろうろしていたアレンは、ようやっと目的の場所にたどり着いた。ハンガーだ。地図では、司令塔のあたりから北東の位置、地上階にあたるフロアだった。この時気づいたことだが、ハンガーは基地の建物と一体化しており、そこから付け根が膨らんだ短い滑走路が突き出ている形だった。

 

「ここまで時間を食うとは…。しくじったな。」

 

こう自分へ言い聞かせたアレンは、茶色い鉄製の少し重い扉を押し開けてハンガーへと入った。廊下に漂っていた芳香剤らしき上品な香りから一転し、すぐそばにひろがる海からくる潮のにおいがアレンの嗅覚に反応した。60m四方はあろう格納庫は、天井も15mほどあるだろうか。ハンガーと滑走路をつなぐ扉も開け放たている。とにかく大きく感じる。一番最近格納庫を使用したのはワシントン防空戦の前で、フロリダにあるホームステッド空軍予備役基地だ。あの時使った格納庫もこれくらいあったのか。よくは覚えていない。なぜなら、そこまで観察する暇がなかったからだ。タスクフォース108に編成されてから、各地の基地を転々とするわけであり、毎回違う基地の特徴をわざわざつかむ必要がなかった。しかも、作戦から帰投すればすぐに報告や環境に合わせた整備が必要で、それが終わればすぐに休息をとっていたのだ。もともとそういったことを気にしないアレンの性格もあるが…。

 

「大変だったな…。というか、俺の任務は終わったのか?」

 

こちらに来てしまったであろう、意識不明だったあの時間。あの直前の記憶は、推進装置を破壊されたトリニティをマルコフが特攻で投下した時のことだ。ホワイトハウス目がけて落ちていくトリニティにむかって機関砲の雨を降らせたところまで覚えている。あのあと、弾頭はどうなったのか。破壊されて空中爆発したのか。ポトマック川の水中へ没したのか。それとも、ホワイトハウスに直撃したのか。

 

「まさか神様、俺がワシントンを守れなかったからってこの世界に送り付けたのか?」

 

冗談のつもりで呟く。だとしたらなんて短気な神様なんだろうな、とアレンは一人思った。今ここでいろいろ考えても仕方ないと感じたアレンは、出入り口の階段を下りて自分の機体のところへ向かう。出入り口からは、天井を支える柱と事務所の影になっていて、F-15SEⅡの機首にあるグレーのレドームしか見えない。少女らの声が聞こえるが、おそらく彼女らのストライカーユニットとかいう機体の整備をしているのだろう。とりあえず足を進めて自分の機体へ近づく。事務所の角を出ると、居るとは思っていなかった客が先入りしていた。2人。自分が基地内をうろうろ迷子になりかけていた間に来ていたのだろうか。さっきの自己紹介の時、部隊名について質問してきた白い服と長い髪の小学生のような少女と、その隣に座っていた赤い服で茶髪の少女だった。こちらが数秒立ち止まっていた間に、赤毛の方がアレンに気付いた。

 

「よう、あんたがこの機体のパイロットか?」

「あぁ、そうだ。アレン・ロイド・レスリー。少佐だ。よろしく。」

 

咄嗟に自己紹介する。

 

「私はシャーロット・E・イェーガー大尉。シャーリーって呼んでくれ。よろしくな。」

 

そういって、赤毛の大尉が右手を差し出した。アレンもそれに答えて握手する。敬語抜きだが、気にしない。アメリカ人は明るく元気があればいいのだと片付ける。アレンはそう決めている。

 

「えへ、フランチェスカ・ルッキーニ少尉だよ。よろしく~。」

 

この身長と幼さで少尉か、とアレンは驚きながら、彼女とも握手を交わした。改めて、この世界では幼い少女らが戦わなければならないことに胸が絞められる。すこしの間、不自然に間が空く。しかしすぐに気持ちを切り替え、どうかしたのか、と問う。

 

「この機体、音速を簡単に行くんだってな。昨日の飛行テストでデータ見せてもらったよ。」

 

少しだけシャーリーの表情がにやりとする。何を考えているのだろうか。

 

「別に簡単ではないけど…。君たちの機体はどうなんだい?レシプロっぽいからよく分からないんだが…。」

「私が出したことあるのは、だいたい800だ。マッハは目指してるんだけどな。」

 

800というと、単発プロペラ機で最高速度を記録したフォッケウルフTa152の765㎞を上回っている。そう考えれば、十分速い方だ。というより、そもそもプロペラでマッハを超えることは難しく、向かってくる気流にプロペラの回転数が負けてしまう。圧迫されたプロペラは、逆に回転数を落とすことになる。それ以上の速度を出すには、ジェットエンジンが必要になるだろう。

 

「俺の知っているプロペラ機と比べれば、速いと思うな…。」

 

率直な感想を言ってみる。無理じゃないのかとは言わない。単純に聞けばほめ言葉だろうが、シャーリーはなぜか納得していないような顔をする。

 

「もっと早くなりたいんだよ。マッハをどうしても越えてみたい。」

 

腕を組みながらそう言ったシャーリーは、そこで、とつないだ。何を言い出すのか考えてみたが、すぐにシャーリーの口から話された。

 

「少佐の機体に乗っていいか?」

 

先ほどの浮かない顔が一変し、目が輝いていた。経験したことのない領域に入り込むのは、人間の欲の一つだ。800㎞までしか出したことのない彼女が、マッハを超えたがるのは当たり前である。

 

「やっぱりそれ考えてたんだね、シャーリー。」

 

ルッキーニが両手を上下させながらはしゃぐ。もちろんさ、とシャーリーも上機嫌。対するアレンは思考をめぐらすことに必死だった。アレンのF-15SEⅡは、前型のF-15SEが複座だったのに対し、スーパーコンピュータの小型版を組み込むことによってレーダー士官、つまりは後席を作る必要を省いている。ほぼ人工知能に近い技術を用い、自機に迫る脅威の段階別判断、対地攻撃時の適正ルート表示、目標に対して有効な兵装の選択、残弾による兵装使用プランなど、以前は後席に座っている搭乗員が担っていた作業を行っている。パイロットは機体を操縦し、兵装の発射ボタンを押すだけ。機械がなんでもしてくれる世界に移り変わっていく、一つの風景だった。要は、パイロット以外の人間をコックピットに入れる必要がない、ということ。

 

「悪いが大尉、この機体には一人しか乗れない。乗せてやりたいのは山々だが、あきらめてくれ。」

 

この答えに対し、シャーリーはアレンの予想通りの反応を示した。がっくりと肩を下ろし、泣きそうな顔になる。だが、ここでおとなしくなる少女ではないだろう。

 

「なんとかならないのか?コックピットにまだスペースがあるじゃないか。」

 

ガラスで覆われたキャノピーを指さし、シャーリーが最後の望みでもかけるかのような勢いになる。

 

「あそこには座席がない。ただでさえ安定していないのに、マッハを超えれば怪我どころでは済まんぞ。」

 

後席だったところは機械系が詰め込まれている。人一人は入れるが、体を固定するシートベルトさえなければ、機体がロールした際にコックピット内でマラカスの中にある球と一緒になってしまう。こう言ってもなんとか乗りたそうにするシャーリーだが、さらにアレンは言葉をかけた。

 

「マッハの領域に飛び込みたいなら、自分で挑戦するべきだ。それまで、音速は楽しみにとっておけ。ここで音速を経験すれば、楽しみも半分だろ?」

 

自分の力で努力することが、なによりも自分を成長させてくれる。シャーリーにとって、音速を突破することは一つのゴールだ。ゴールに向かう過程にも、彼女を成長させる何かがあるはずだ。彼女はまだ20歳にも満たない子供である。彼女らが戦う戦争を、アレンはよく知らない。ただ機械的に敵を倒すだけなのかもしれない。なら、アレンは、人にあるべきものを教える先生のようになる。もうすでに30歳を超えてしまったアレンができる授業を、この501部隊に所属する隊員たちにすることは、どこかとても大切である気がする。シャーリーはあきらめたようにため息をついた。仕方ないか、と言いたげな顔をして、F-15SEⅡを見上げる。それにつれて、アレンも機体を眺めた。全長約20m、全幅約14m、全高6m。パウダーブルーとライトシアンの2色からなる制空戦闘用迷彩を施している。外側へ10度ほど開いた垂直尾翼には、グレーの投下型爆弾を足で掴み、口先には白いミサイルを咥えて翼を広げる鷲のエンブレム。部隊名『アクイラ』を示すマークだ。タスクフォース108が結成されてからずっとこの名で呼ばれてきたアレンは、再び元居た世界のことをぽつぽつ思い出しながらいた。スラリとしたレドームから徐々に太く伸びる機首には、複座のころの名残で少しだけ余った後部があるコックピットが乗っかり、さらにキャノピーの後方下部には、前から斜め後ろに大きくスライスしたエアインテークが両側に1つずつ。機体中央に設けられた垂直機動用のエンジンがあるため、前型のF-15SEより二回りほど大きい取り込み口になっている。エアインテークは前方から見れば平行四辺形に近く、F-22のようにステルス性能を高めている。この構造は、前型のF-15SEから引き継がれている。インテークから後方の排気口へ伸びる構造物の周りは、内臓式のハードポイント―――今は一発もミサイルを搭載していないウェポンベイが設置されている。胴体下部には9つ、コンフォーマルフュエールタンク横には左右3つずつのステーションがあり、単純に計算すればAIM-9Xを最大15発携行することができる。異常なほどの搭載量だが、マルチロール機への要求として、大型のウェポンベイを設計した結果がこれなのだ。その代償として、機体の大型化を招いた。それでも、地上攻撃任務のための爆弾類、対空戦闘などに対応するミサイル、刻一刻変わる戦況下で確実な戦果を挙げるためには、必要なことなのかもしれないとアレンは思う。そしてアレンが特に気に入っている排気ノズル。後部のエンジン排気口には、上下方向に30度まで稼動する推力偏向ノズルが取り付けられている。排気を操ることによって、エルロンやエレベーターなどで行っていた姿勢変更を可能とし、さらに空中戦闘機動―――クルビットやコブラといったマニューバの実行も容易になった。背後に迫る敵機を躱したりするのに重宝する。

 

「エンジンの排気口なのかこれは…。どうして四角くなっているんだ?」

 

シャーリーが機体の後部に回っていた。アレンもそちらに移動し、排気口を覗く。

 

「もともとは円形なんだが、上下1枚ずつパドルを付けているからな。これで排気を上下させて、機動力を上げているんだ。」

「動翼だけじゃ不満なのか?」

「まぁそういうこと。…ここの基地で整備班の人はいるか?会って自己紹介しておきたいんだが。」

「整備員ならそこの詰所にいる。」

 

そういって、ハンガーの出入り口から見えていた白い詰所を指さす。二人を置いたまま、アレンは詰所の扉を開けて中に入った。汗臭いにおいが漂う。工具棚を横切って部屋を見渡すと、グレーの作業着を着た男が10人ほどいた。休憩中らしく、飲み物を飲んだり、ソファでくつろいでいたりする。アレンが恐る恐る声をかけると、一番手前で椅子に座りながら新聞を読んでいた男が振り返った。

 

「あ、もしかして昨日くらいにあの飛行機で来た人か?」

「あぁ、タスクフォース249所属のアレン・ロイド・レスリー少佐だ。」

 

少佐という階級を聞いてか、こちらに向いていた整備士がこけそうになりながら慌てて立ち上がる。

 

「すみません、ため口を聞いてしまいました!この基地で整備班の副長をしております、ゲイブリエル・ベイリー曹長であります!」

 

驚くほどきれいな敬礼を決める。アレンも少しびっくりする。その大声に、部屋にいた残りの整備士もこちらに振り向く。

 

「あ、いや、そこまでしなくても。気にしないでくれ。」

 

それでもしばらく直立不動の姿勢を取っていた曹長は、アレンがもう一度言葉をかけて敬礼を解いた。やっと本題に入る。

 

「俺の機体の整備を頼みたいんだが、お願いできるか?」

「しかし、あの機体はまだ見たことないものでして、流石に我々だけでは無理なのですが…。」

 

曹長が困った顔をする。それは確かだろう。機体には触らないように指示されていたものの、周りを見ることはできる。そこから、あの機体が『見たこともない』機体だと判断したのだ。もちろんその予測は間違っていない。

 

「構わない。こっちも一緒に整備するから。」

 

親指を立てた右手で自分の胸を指す。それを見た曹長は、了解しましたと返事をして、濃茶色の作業時の上を着こみ、数人の整備士を連れて向かってきた。アレンも詰所の出入り口から外へ出る。再び機体の傍へ向かうと、新たな客がいた。

 

「お、少佐、早速整備か?」

 

詰所の影から出たところで、まずレドームに右手で触れていた坂本と目が合う。あぁ、とだけ答えて足を進める。柱を通り過ぎると、グレーのすその長いコートを着た少女、バルクホルンが腕を組みながら立っていた。

 

「これこそ軍人だ。奴も見習ってほしい。」

 

奴ってだれだろうかとアレンは少し考えた。だが、それほど501部隊の隊員を知らないアレンには、考えても答えの出しようがない問だった。その思考を頭の片隅に追いやる。

 

「みなさん見学ですか?今から点検で少し危険なこともするから、気を付けてください。」

 

危険という言葉を発してから数人がこちらを向くが、あえて気にしない。何を想像したかはわからないが…。後ろから工具類を担いだ整備士4人が出てきたのを確認し、アレンはキャノピーの付け根に格納されていた梯子を下ろして、コックピットに乗り込む。キャノピーをゆっくりと開き、スペースに体を滑り込ませる。とりあえず、エンジンの整備を考えて、機体を滑走路に出さなければならない。

 

「尾翼から後ろに回らないように!丸焼きになるぞ!」

 

あわててコックピットから身を乗り出して叫ぶ。特に、先ほどエンジンを見ていたシャーリーらに向けての注意だ。周りを見渡し、全員が離れていることを確認し、エンジン系統の起動スイッチをONにする。続いて電子機器の電源をいれて、すべての機能を作動させる。エンジンのタービンの回転音が次第に大きくなり、コックピットに振動が伝わり始める。座席に座りこんだアレンは、まず機体全体のメンテナンスチェックを走らせるため、コンソールの左下に緑色の下地に黒い字で『system check』と書かれたボタンを押しこむ。すると、一度すべてのディスプレイが表示を消し、10秒ほどたって再びそれぞれの表示を点らせた。警告の音も響かず、機体の備わるすべての機能の状態が正常であることをアレンに伝えた。

 

「これからどうするんだ?」

 

下でこちらを見上げていた整備班のベイリー曹長が、F-15SEⅡのエンジン音に負けじと声を上げる。ルッキーニがシャーリーにしがみついているのは、大きすぎるエンジン音に対して驚いたからだろう。

 

「とりあえず滑走路に基地を動かす。それから始めたい。」

 

顔だけコックピットからだして答えたアレンは、機体の前後から離れるようにジェスチャーをした。離れたのを再度確認し、スロットルを動かす。少しだけエンジン音が高くなり、機体が前方へ動き出す。HUDの速度表示とエンジンのパワーを見極め、時速6キロに固定した。サイクリックも操作し、右にあるハンガーの出入り口を目指して移動する。ゆっくりと人が歩く速さで移動したF-15SEⅡは、ハンガーの影から日向に出て、広がった滑走路に描かれた円の外に停止した。タイヤのロックをかけ、エンジンをアイドリングまで落す。そこまで終えたアレンは、コックピットから乗り出して、灰色の滑走路へ飛び降りた。

 

「改めてみると、大きいですね。」

 

ついてきたベイリーが、機体を眩しそうに見ながら問う。全長20メートルは、この時代にあったレシプロ機と比べると倍くらいはある。大きいと感じるのも無理はない。そうだな、と答えて、アレンは本題に入る。

 

「いろんなことがあるんだが、まず燃料に関してだ。ここの基地にジェット燃料ってあるのか?」

「軍用のJP-1が燃料庫に貯蔵してあります。」

 

ベイリーの右後ろにいる帽子をかぶった整備士が答える。飛行機が飛ぶのに必要なもの1つめ、エンジンを動かす燃料。これがなければ、飛行機もただの鉄のオブジェクトだ。飛ぶことのできない飛行機は、その名前で呼ばれることはできない。F-15SEⅡで使われているジェット燃料の規格は軍用の『JP-8』。1990年から使用されている陸・空軍統合ジェット燃料である。それ以前に1951年から使用されていた『JP-4』より安定性が増え、有毒物質の含有量も抑えられている。一方今存在するのは、最初の軍用規格のジェット燃料である『JP-1』。2016年にはすでに使われていなかった遺産だ。話には聞いていた過去の燃料が、いま最も最新の航空機燃料なのか。アレンはそう思い、果たしてこのF-15SEⅡで使用できるのか考え始めた。国連の軍用規格として開発、精製されている燃料だということを考えれば、JP-1を使用できないわけではない。1944年のエンジンと2016年のエンジンの構造が大きく変わったわけではない。しかし、精製度から考えると、F-15SEⅡのプラット・アンド・ホイットニー F100が100パーセントの能力を発揮できるかはわからない。しかも一度に消費する量も、このころのレシプロに比べて数倍も多く、下手して飛び続ければ、他の航空機が飛べなくなるのも考えなければならない。249部隊には、F-15SEⅡに加えてAUH-72も所属している。両機の運用を考慮すると、飛行回数は抑えるしかない。アレンは約1分かけてじっくり考え、結論を出した。

 

「元居た世界では進化版を使っていたが、まぁ無いもの強請りはできない。使っていいか?」

 

口に当てていた手を腰に移し、ベイリーに振り返る。

 

「自分だけでは判断しかねますが…、どのくらいの量を一度に使います?」

「多分だが、内臓するだけでもこの基地にある機体の4、5倍は消費すると思う。」

 

その瞬間、その場にいたアレンを除く7人が絶句した。さらにアレンは続ける。

 

「そんでもって、正規燃料だと飛べる距離は2000キロちょっと…。JP-1だと1500くらいしか無理かもしれない。」

 

完全に凍りついたベイリーらは、30秒そのままだった。いつまで待っても動かなかったので、アレンが大丈夫か?と問いかける。

 

「いやいや、大丈夫なわけないだろ、驚くよ。」

 

坂本が、なおも驚いたままの表情で答える。実際のところ消費量や使用可能かはアレンもよく分からないが、これ以上良い条件下での運用はあまり期待できない。向こうにいるとき、整備員に任せっきりにしないでもう少し勉強しておけばよかったな、とアレンは唇をかんだ。

 

「こっちもやたらに出撃することはやめる。燃料のことは中佐にも話さないといけないな。司令部にも相談してみないと…。」

 

そういって、アレンは燃料の話を終えた。このまま燃料の話だけでは終わらない。戦闘機一機を飛ばすには、まだほかにも必要な点検項目がある。次は機体の大部分を覆っている装甲の類。

 

「じゃ次良いか?装甲類の話をしたい。」

「お、お願いします。」

 

話題を変えるアレンにベイリーが答えた時、ハンガーの方向から男性の声が響いた。その場にいた全員がハンガーに振り向く。機体の影で何かわからなかったアレンは、数歩右に移動してハンガーを注視した。そこには駆け足でこちらに来るローチの姿があった。作業着に着替えているらしく、グリーンのシャツとカーゴパンツをはいている。

 

「レスリー少佐、補給物資が来たそうです。確認しますか?」

「もう来たのか?早いな。」

 

アレンは本気で驚いた。一昨日この基地に来て辞令が下りたのはつい2時間ほど前だ。普通ならこちらから要望を出すのが先である。なのにそれをせず、しかもこの短時間に向けてくる司令部って…。

 

「どこにあるって?」

「もうハンガーまで来ています。」

「早すぎるだろ!」

 

想像を超えるとは、まさにこのことかとアレンは思う。ローチが手招きするので、アレンも駆け出す。ブリタニアの司令部がどういった仕組みになっているのかまるで分からない。いくらなんでも大将が直接見に来たからと言って信頼するのか。大将一人が物資調達を決めても、それを幹部にどうやって説明したのか。立った1日で説得させるということは、それほど権力を持っている大将なのか?この時代ならあり得るのかと気付き、アレンはその思考にピリオドを打った。結局のところ、自分たちは異世界の住人とされる。珍しくもあり、得体のしれないものでもある。戦力が必ずしも十分ではない軍部がすることは予想ができる。使えそうな兵器や兵士はとりあえず取り込む。取り込んだものはすぐに戦力として戦地へ投下し、疑問を払拭させる。いわば兵士はチェスの駒。こうして素早く補給物資を送りつけて戦争へ加えさせようとしているのかとアレンは考え、結局人間はみんな同じなのかと思った。物を考えるとつい足が止まる癖を抑えるために、走る力を強くする。自分を照らす日差しが、妙に新鮮で強く感じられた。

 

 




お読みくださってありがとうございます。

風景描写をがんばってみたのですが、どうでしょうか?
登場するウィッチなどは、作者の独断で選んでいます。

またご感想、ご批評お待ちしておりますので、よろしくお願いします。


≪なんとなく次回予告≫
未来から過去へと転移してしまった6人。魔女らと交流する中で、自分たちが何をすべきかを考える。そして、鷲は大空へと飛び上がる。
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