ストライクウィッチーズ Assault Warfare 作:t5m5k2
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資料室に、紙をめくる音と何かを書きつける音が響く。黒いインクで記された文字を延々と読み取っては、白いメモ用紙に要点を書きこむ。少し薄暗い明りのもとでは、徐々に目が重くなっていく。
動かしていたペンを置き、アレンは目頭を指でつまんだ。決して眠くなっているわけではない。疲れてくるのだ。
夕食を終えてから、かれこれ2時間半は資料室に籠って調査をしている。左腕につけた腕時計を見下ろし、午後11時に差し掛かろうとしている短針を眺める。時計は何も知らずに針を動かし続けている。そして夜と朝のサイクルも変わらずにめぐっている。購入した時から一度も調整をしていない腕時計であることに気付き、アレンはすごく不思議な感覚になった。世界を飛ばされても、1分、1時間の長さに変わりが無い。偶然なのか、それとも当たり前なのか。
「向こうはどうなったんだろうな…。」
夜も遅くなり、そろそろ寝ようと片付けを始めた時、不意にそんな言葉が漏れた。半世紀以上差がある元居た世界を思い出す。
僚機は、タスクフォースは、戦争は。さまざまなことが知りたくなる。途中で途切れた時間がどうなるのか。突然消えた戦闘機を、マジックや軍はどう処理しているのだろうか。
爆発によって蒸発したと判断し、KIAになったのだろうか。それとも、残骸の一つも見当たらないとしてMIAか。それとも、UFOやブラックホールだとか得体のしれないものに巻き込まれたとして報道されているのか。親父が昔からUFOの話を面白がっていたし、それかもしれないとアレンはひとり苦笑いする。
物思いにふけっている間、片付けの手が止まっていたことに気付いたアレンは、急いで本を棚に戻した。資料の要約文を書き留めたノートと筆記用具を掴み、資料室を出る。部屋の扉を閉めて廊下の窓に振り返る。
月は昇っておらず、きれいな星空が広がっている。21世紀の汚れた大気とは違い、まだまだ澄み切った空には、たくさんの星が輝いている。すごいもんだと思いつつ眺めていると、その視界にパッと何かが映った。黒い空に、オレンジ色のとても小さい花が咲く。花火にしては、一色だけというのは不自然だ。間隔をあけてひとつ、ふたつと花が咲く。何だろうと考えながら、アレンは自室へ向かった。
これをウィッチとネウロイの戦闘だとアレンが気付くのは、この10分後のことだった。
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夜間哨戒中だったサーニャは、数分前に出現したネウロイを追跡していた。その姿は、魔導針はもちろん、サーニャ自身の視界にもあった。
「目標1体、中速で移動中。これより交戦します。」
『分かったわ。気を付けて。応援を送ったわ。』
『サーニャ、待ってろヨ!』
ぶら下げていたフリーガ―ハマーを肩に持ち上げ、畳んでいたサイトを起こして覗く。ネウロイのサイズは小型。直撃まさせることは難しいが、ネウロイの体が小さい分、衝撃だけで撃破することもできる。
狙いをネウロイの進行方向のさらに先に定め、一発目を打ち込む。飛び出したロケットが煙の尾を引いてネウロイへ突進する。
ロケットに気付いたネウロイが回避したため、一発目はネウロイから少し離れた空間で起爆した。
外れたことに焦らず、2発目を発射する。大丈夫、訓練通りにすればいい、と静かに言い聞かせる。その2発もネウロイの傍で爆発する。
2発目を回避したところで、ネウロイがサーニャへ向いた。レーザーが来ると予想し、開いている左手を前に出して構える。だが、ネウロイはサーニャの頭上を飛び越えていくだけで、攻撃はしなかった。
変だなと思いつつ、再びフリーガ―ハマーを構えなおして発射する。エイラが来れば、一網打尽にできる。それまで、サーニャはネウロイとの距離を保ちながら警戒し続けた。
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(あれは敵か)
巣を出る前に仲間から伝えられた方向に向かって直進していたネウロイは、向かっている方向から現れた飛行物体に気付いた。その正体は夜間懲戒中のサーニャだが、生まれたてで何の知識もないネウロイには、それが人であることさえも分からなかった。
ぶつかってしまうと判断したネウロイは、向きを逸らして衝突を避けようと試みた。その時、向かってきていた何かから、小型の物体が切り離された。さらに高速で突っ込んでくる物体に驚いたネウロイは、慌てて上へと上昇した。
すぐ下を飛んで過ぎていった物体が、突然破裂する。初めて経験した爆発だった。そこから生まれる衝撃が、自分の身体を揺さぶる。小さな胴体が悲鳴をあげた。
さらに2発、3発と数が増える。ネウロイは速度を上げて、なんとか逃げようとした。しかし数が増えるに連れて、その物体が爆発する距離が近づく。
(こいつはなんだ?)
ミシミシとなる胴体全体に、疑問が浮かぶ。しかし、生まれたてで知る事柄などないネウロイにとって、答えが出るはずがない。空っぽの知識の中にあるものは、その疑問と、目的だけ。胴体の中に収めてある冷たい物体を、破裂させなければならない。同時に、タイミングは知らない。巣を出る前、誰かから『任せる』と言われている。いつでもいいというのか。
再び、ドスンと衝撃が生まれる。もうすぐそこだった。そろそろ悲鳴が最高潮に達してしまう。身体が持たないと判断したネウロイは、物体を破裂させる準備に入った。
(先端にある出っ張りを押し込めば…)
これも、仲間から伝えられた通りの手順を思い出す。すると、そこからネウロイ自身の意思を介さず、破裂が始まった。
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「?」
全速力で回避行動をとっていたネウロイが、急に足をゆるめて直進を始める。魔導針の反応と目でネウロイの姿を捉えていたサーニャは、不意に背中がゾクリとした。寒いのではない。疲れたわけでもない。ならばこれは―――。
何が起こるのかは予想せず、サーニャはシールドを張った。厚く、大きく。それと同じタイミングで、ネウロイが爆発した。
突然太陽を直視したような光が生まれ、サーニャは思わず目をつむった。一泊遅れて、音とは呼べないほどの轟音と、経験したことのない爆風が襲い掛かってくる。シールを支える腕に、ズシリと見えない力が圧し掛かった。
もしシールド張っていなかったら、爆風で吹き飛ばされていただろう。もっとひどければ、からだを引き裂かれていたかもしれない。衝撃が収まるとどうじに目を開く。そこに広がった光景に、サーニャは絶句した。目の前に巨大な火の玉が浮かんでいたのだ。気付けば周囲がだんだんと暖かくなり、それを超えて熱ささえ感じ始めている。一瞬だけかいた冷や汗も、すぐに乾いていく。
「これは…!」
「サーニャ!サーニャ!!」
声がする方向をむく。しかし、声の主は見えなかった。さっきまで見えていた夜空は、周りをぐるりと囲んでいる雲によって遮られていた。火球に照らされ、白い綿のように輝いている。爆発によって生まれた雲だろう、とサーニャは判断した。
「大丈夫よ、エイラ。」
「あぁ…よかった。間に合わなかったと思ったんダゾ。怪我はないカ?」
「うん。」
雲の中に、エイラが姿を現す。ほっとした表情を浮かべるのもつかの間、すぐに火球へ視線を移す。
「これは…?」
「ネウロイが爆発したの。」
「火の玉が残ってるなんて…。すごい爆発だナ。」
「急いで中佐へ連絡しましょう。早く帰らないと。」
「あぁ、そうダナ。」
雲から脱出した二人は、高度を上げてその全体を見下ろした。雲一つなかった海上に、爆発でできた雲は不自然だった。その形はキノコとよく似ている。
『サーニャさん、エイラさん、大丈夫!?』
「あぁ大丈夫ダヨ、中佐。サーニャも。」
『すごい爆発だったようね。ここまで爆発の衝撃が来たわ。早く離脱して、帰還して。』
「了解です。」
「さ、帰ろう。」
ミーナへそう答えた二人は、基地へ針路をとった。見えなくなるまで、サーニャは何度も雲を振り返った。過ぎたことであるはずなのに、なぜか不安ばかりが残っていた。
予定を削って持ってきました。いきなりでスミマセン。
さて、爆発を起こしたネウロイは一体何だったのか?
新たなる脅威となるのか、それとも…?
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