ストライクウィッチーズ Assault Warfare   作:t5m5k2

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モダン組しか出ない回です。


ベスト何秒だったっけ…?




12 , ザ・ピット

*****

 

 

穏やかな晴れ空の下、この日も501基地の基地兵訓練場で訓練が行われていた。

 

501基地の北側に位置する訓練場の一角に、演習の風景があった。ピットと呼ばれる、四方を土の壁で囲まれた銃撃訓練を行う場所である

コース内に設置された的を撃ち抜きながら走り抜け、スタートからゴールまで何秒で走りきったかを競うものだ。

 

「何秒で走ったんだ、ビル?」

「俺はStg44で44秒だったぞ。お前はどうだ、スティーブ?」

 

戦闘用の装備一式を身に着けた一人の兵士が、同じ服装の仲間に問う。ビルと呼ばれた兵士が問い返す。

 

「勝ったな。俺は40秒丁度だ。」

「あぁ、クソ。ジョンソン、お前は?」

 

悔しそうな表情を浮かべ、隣にいた別の兵士に問う。

 

「俺は37秒だ。」

「本当か!?早いな!」

 

スティーブの40秒という記録は、501基地にいる兵士の中では早い方である。それを3秒も上回るジョンソンの記録に、ビルとスティーブは驚いた。

 

「ま、カバメントだけどな。」

「何だ、それでか。」

 

しかしその後に付け加えられた言葉に、二人は思わずズッコケていた。

 

「じゃ今回もまた、スティーブが勝ちのようだな。流石だぜ。」

「俺の方が早かったぞ?」

「当たり前だろ。だが拳銃とアサルトライフルじゃ違いがありすぎる。」

 

拳銃で出した記録について議論が始まる。だがその議論はすぐに中断された。3人の視線が、再びピットに向けられる。

 

「ポスウェル中尉が来たぞ。」

「あれ?後ろの連中は誰だ?」

「確か、未来から来たって言う奴らじゃなかったか?」

 

ビルたち3人以外の兵士も、異色の兵士が現れたことに気付き、自然と噂話が巻き起こる。

 

「見ろよ真ん中の奴。骸骨の仮面にサングラスだ。」

「何のつもりだよ。」

「未来から来たなんて…ネウロイの間違いだろ?」

「基地司令、なんで許可したんだ。」

 

 

 

*****

 

 

 

廊下を歩いていてすれ違う基地の兵士たちは、ローチたちを見ると珍しそうな視線―――疑いと言った方が良いかもしれない―――を向けてくる。馴染むことができるかと思っていたローチは、無理だろうとあきらめかけていた。それでも、今自分たちと対話している兵士は、ローチの不安を取り除くきっかけになりそうな人物だった。

アイザック・ポスウェル中尉。ブリタニア陸軍の尉官で、基地兵たちの副指揮官を務めている。その彼から、今日はある要望があった。

 

「私の部下たちは、どうにも上達が進まない。コツを教えてやってくれないか?」

 

呼び出されてついていった場所は、演習場の一角にあるピットだった。監視塔に上がってピット全体を見渡す。丁度、一人の兵士がスタートしたところだった。時間短縮を狙っているのか、合図の直後から全力で走っている。

 

「評価基準は?」

 

同じく演習風景を見ているマクタビッシュが尋ねる。

 

「合図からゴールまでの時間、撃ち漏らしの数の2つを見ている。」

 

ネウロイを敵としているためか、民間人の的が無い。

以前訓練していたSASのキリング・ハウスや、アフガニスタンでの任務で立ち寄ったフェニックス砲兵基地では、両方とも民間人の的があり、それを撃つと減点される形だったのだ。

 

『撃ち漏らしだ!周りをよく見ろ!』

 

土の壁に付けられたスピーカーから、警告のアナウンスが流れる。

 

「なるほど。じゃ中尉、具体的にどうしたらいい?」

「とりあえずこのピットが主要な訓練でもあるし…。一度走って見せてくれないか?」

 

論より証拠か、とローチは心の中で呟く。

 

「分かった。よし…ローチ、いけるか?」

「的に当ててゴールまで走るだけですね?」

「そうだ。頼んだぞ。」

「了解。」

 

もう一度、監視塔の上からコース全体を見下ろし、大まかな的の位置を把握する。それが終わると、木製の梯子を下りてスタートの位置まで進んだ。

 

「変なところ見せるなよローチ。」

「い、言わないでください!プレッシャーになる!」

 

上からゴーストに声をかけられ、思わずびっくりしてしまう。

深呼吸をして、すぐに準備に取り掛かる。担いでいたACR両手で持ち、各部を点検する。

 

ふと、このACRを何か月使っているのかと考える。マカロフの隠れ家を襲撃して以来、まともな支給の無い中では弾薬類しか手に入れられなかった。レッドドットやホログラフィックとは違い、ACOGを使っているため電力を使用することのないカスタマイズではあるが、レシーバーやバレルの交換は定期的に行うのが基本である。その点からすれば、銃器に対する心配がないわけではない。

 

そして今いる世界は、時間を大きく巻き戻されている。ゆえにスペアパーツはなく、満足に整備することができない時間が伸びることになっているのだ。

 

「ローチ、準備できたら言ってくれ。」

 

一人で考え込んでいると、監視塔の上からマクタビッシュに掛けられた。

途中で手が止まっていたかもしれない。だがこれ以上時間をかけるのも、無駄な心配をかけられてしまうと思ったローチは、行けます、と答えてスタートラインに立った。

 

「始めるぞ。よーい…スタート!」

 

ポスウェル中尉の合図で走り出す。監視塔の上から見た全体図を思い出し、最初の何もない10メートルを直進する。背丈より高く積もられた土の壁を曲がると、最初の的が視界に入った。通常の野外戦闘を想定しているらしく、ドラム缶や薄めの壁などの複数の障害物と、その後ろに設けられた的が5つ。赤と白の2色で塗られた的が、よく目立った。

 

『最初のエリアを確保しろ!』

 

ポスウェル中尉の声がスピーカーから流れる。

ACRを持ち上げ、すばやくACOGの中心に的を定める。一番近い的に狙いを定めたローチは、トリガーを素早く引き込んで2発発射する。発砲と同時に跳ね上がるACRを、アンダーバレルに装着したM203ごとガッチリ掴んで支える。

撃たれた的が弾着で割れるのを確認する前に、狙いを変えて次の的を撃つ。あっというまにすべての的を壊し終えたローチは、ACOGから目を離して次の目標を見つけた。

 

『次のエリアだ!』

 

野外戦闘コースを抜けると、その向こうにコンクリート造りの建物が見えた。1階部分に2つ、2階部分にも2つ。ここも外すことなく突破する。

 

『次へ進め!坂を上るんだ!』

 

コンクリートの壁の根元から右へ入り、小さめの坂を駆け上がる。そこでは再び、最初のコースと似た配置があった。4つの的を撃ち抜いてクリアし、最後のコースへと入る。

 

『最後のコースだ!走り抜け!』

 

急かすようにポスウェル中尉の声が響く。高くなった土の台から飛び降りる。飛び降りながら発砲した数を思い出す。そろそろマガジン1つ分を消費するころだ。そう判断したローチは、着地と同時にACRを背中に回し、USP.45に切り替えた。

アイアンサイトゆえに狙いを定めづらいが、細い銃の幅と軽さのおかげで、的を壊すには十分だった。両手でしっかりとUSPを構え、足を止めずに残りの的を撃つ。最後の的を撃ち抜き、ゴールラインへと走り込む。

 

ローチの記録は…

 

「さ…34秒…。」

 

ポスウェル中尉の表情は、驚き一色だった。腕時計に釘付けになった視線は、そのまましばらく離れなかった。

 

「ここの兵士たちの平均タイムは?」

「40秒前後だ…。いや…早いな。驚いた。」

 

走り終えたローチに視線を移したポスウェルは、ローチの顔を直視する。

 

「実際、感触はどうだ?」

 

普段から見慣れているマクタビッシュは、当然なにも驚くことなくローチに聞いた。

 

「全部が標的だから走りやすかったですね…。撃ってはいけない的や、移動する的があれば、もうすこしかかったかもしれない。」

 

なるほどな、とゴーストが納得しながら頷く。そのゴーストに、それはどういう意味かと尋ねるポスウェル。

 

「俺たちは、戦闘地域で民間人が逃げ遅れることを想定している。つまり、コース内に民間人の的を設置して、それを撃ったら評価を下げる仕組みをとっている、ということだ。」

「民間人が…?どうしてそんなことが?」

 

ゴーストがポスウェルに説明する。しかしポスウェルは、民間人という想定を作る理由が分からず、さらに聞く。

 

「ネウロイみたいに、正面突っ切って飛び込んでくる奴らだけが敵じゃないからだ。テロリストくらい、いるだろ?」

「あぁ。でも、わざわざ想定するのか?」

「宣戦布告して開戦することなんて、両手で数えられるほどまで減った。テロ行為の方が圧倒的に多い。前触れなく起こるから逃げ遅れる人だっている。そう考えてるんだ。」

 

ゴーストに代わってマクタビッシュが続きの説明をする。ようやくポスウェルが納得した。

 

「やっぱり…、ネウロイがいなかったのは本当か。」

 

とポスウェル。

 

「あぁ。人間同士、救われない戦争ばかりだ。」

 

ローチが小さく答える。

 

集まった4人に、静寂が舞い降りる。

それぞれ、なぜかシリアスになってしまった空気を払いのけようと考えをめぐらす。

再び口を開いたのは、マクタビッシュだった。

 

「…よし、訓練にするか。ポスウェル中尉の部下と一緒にだ。」

「あぁ、よろしく頼む。」

 

それにポスウェルが答える。

この後、ピットでの訓練はまる1日を使って行われた。

 

…その夜、何度も走らされたローチが筋肉痛を残したのは、本人以外知らなかった。

 

 

 

 




(余談)
スペシャル・オプスの星3つはもちろんとってます。
トロフィー(20秒クリア)はどうだったかな…。


12話でした。ありがとうございました。
次話もご期待ください。

『次回予告?聞いたことがありません』

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