ストライクウィッチーズ Assault Warfare 作:t5m5k2
※前回に引き続き短いです。
―――2016年8月―――
―――ニューヨーク証券取引所付近―――
*****
「…!…フロスト!」
自分の名前を呼ばれ、フロストは目を覚ました。横倒しになったハンヴィーの中で、張り巡らされた配線の何本かがショートを起こし、火花をちらつかせる風景が浮かび上がる。
「目を覚ませ!脱出する、いまだ!」
自分に向かって叫ぶのは、メタル隊隊長のサンドマンだった。脱出の単語に反応し、自分を今なお座席に固定するシートベルトをナイフで切り裂く。自由になった体を動かし、転がったM4小銃を掴んでハンヴィーから出る。上を向いたドアを開いた瞬間、そびえ立つビルに光線が突き刺さり、爆発の衝撃でがれきが降ってくるのを見たフロストは、思わずドアを閉めた。直後にハンヴィーを揺らす衝撃が起こり、再び外を伺うと、目の前数メートルの場所に鉄筋が転がっていた。
「フロスト、早くしろ!行くぞ!」
先に出ていたサンドマンが手で招く。ハンヴィーから飛び降りてM4の弾倉を確認してチャージングレバーを引く。準備が終わると、サンドマンが話しかけてきた。
「ジャマーは証券取引所の上にある。ここからは徒歩で進む。前進!」
サンドマンのゴーサインで走り出し、敵に応戦しているストライカーの影に身を隠して様子をうかがう。交差点のあたりに黒い物体が浮遊しているのが見え、フロストは舌打ちした。
「奴が目標か!」
「あぁ、そうだ!」
ストライカーのエンジンとM2重機関銃の音に負けないように大声を上げる。花壇の影でM4の弾倉を交換しているトラックが、同じく大声で答える。
俺達より先にレーザー兵器の実用化ができたのか、と皮肉を返そうとしたフロストは、その瞬間、影にしていたストライカーから何かが蒸発するような音が鳴り、エンジン音とM2機関銃の音がピタリと止んだ。普通なら、自分や周りの兵士の奏でる射撃音の音で気付かないだろうが、この時ばかりははっきりと異変に気づいていた。
地面を思いっきり蹴り、体重を前方に総動員させて立っている場所から飛び退き、窪んだコンクリートの穴に転がり込む。一瞬遅れてストライカーが爆発を起こした。パネルやタイヤなどの残骸が高速で吹き飛ばされ、周辺にまき散らされる。
「クソ!ストライカーがやられた!」
「やつもレーザーを持ってる!身を隠せ!」
いきなり爆発したストライカーを確認し、もう一度交差点の方を見やる。
もう少し逃げるのが遅れていれば、或いは異変に気付かずにいたら、今頃フロストは丸焦げになっていたかもしれない。そう思うと、フロストは全身から冷や汗をながした。
時々頭上を流れていていくレーザーを睨みながら待っていると、ついにグリンチが耐えられなくなったのか隊長につかみかかっていた。
「隊長!突破は無理だ!」
「仕方ない、建物に入れ!右側だ!」
サンドマンの指がさす建物―――ウォール・ストリート・エクスピリエンス。
玄関はないが、窓をたたき割って中に入り込む。黒い物体が追尾してくるかと思ったが、流石に建物の中に来る様子はなく、フロストたちはそのまま建物を突っ切って反対側の通りまでたどり着くことに成功した。
宝石店の横にポッカリとあいた穴から周囲を警戒しながら外へ出る。すると、通りを突破してきた味方の兵士と出会った。
「味方だ!撃つな!」
「撃つなって言ってんだろ、グリンチ。」
「聞こえてる。」
ブロードウェイを通ってきた部隊と合流し、フロストたちは証券取引所への道を急いだ。
「ミッドタウンの状況はどうだ?」
「敵のジャミングが残っていて航空支援が受けられない。ジャマーをなんとかしないと!」
「なら急ぐぞ!」
お互いを障害物越しに掩護しながら前進していく。すると、通りを塞ぐように装甲車が立ち往生しているのを発見した。ロシア軍のBTRだと誰かが呟き、全員の緊張が再び跳ね上がる。ゆっくりと進んでいくと、やがてBTRが破壊されて捨てられている物だと分かった。壊れたBTRの向こうには目的の証券取引所がそびえ立ち、フロストらは進む足を速めた。
ロシア兵が残っていると想定していたものの、フェデラルホールの前には、ロシア軍の車両が火を噴いたまま頓挫していた。周りにもロシア兵の死体が転がっている。
「おい、これは一体…。」
「何故だ?別の連中がジャマーの破壊に向かっているのか?」
誰かが切れ悪くつぶやき、その場にいた全員の疑問をグリンチが呟く。
「分からん。だがジャマーの破壊を確認するまで帰ることはできない。屋上を目指すぞ。」
サンドマンの指示で米兵らは取引所の玄関口から中へと入った。
「俺たちはここで警戒しておく。ジャマーを頼む。」
「了解だアンヴィル。メタル隊、始めるぞ!」
*****
ディスプレイやコンピュータの並ぶ取引所を通り抜け、屋上につながる梯子を上る。上りきると、上部にアンテナを生やした鉄塔が目に移った。
「あれだな。」
空を飛び回るヘリなどに見つからないように身をかがめて進む。しかし、後数メートルのところで発見されてしまった。
「追ってきたのか!?」
「見てないで隠れろ!」
下からヌッと現れた物体に一瞬呆然となり、慌てて身を隠す。直後、下の通りで遭遇した時のレーザーではなく、機関砲の音と無数の弾丸が頭上を通り抜けた。
複合型の兵器か、とフロストは下で見たレーザーを思い出す。
「支援は?」
「ジャマーの直近だぞ!使えるわけないだろ!」
グリンチの的外れな問いに、フロストは半ば呆れて返す。
「隊長、どうする!?」
選択肢は少ない。ジャマーを破壊するか、攻撃してくる物体を破壊するか。
尋ねられたサンドマンは、しばらく黙り込んだ後、フロストに向き直った。
「…フロスト、俺たちが援護するからその隙にテルミットを張り付けてこい!」
「…相変わらず危ない命令だな、隊長。」
どちらにせよ危険ではあるけど、とフロストが小さく付け加える。隣で聞こえていたグリンチが苦笑するのを聞き流す。
「さっさと行け!グリンチ、トラック!」
「大丈夫だ!」
「3、2、1、撃てぇ!!」
M4やM14の発砲音が鳴り響くと同時に、フロストは身をかがめて走り出した。エアコンの室外機の影から飛び出し、そびえ立つ電波塔に向かって直進する。ちらりと左側を見ると、黒い物体がサンドマン達の射撃から逃げるように高度を下げていくのが見えた。物体が見えない間に鉄塔の根元にたどり着き、腰に下げていたテルミット爆薬―――TH3焼夷弾の束と起爆装置をテープで縛り合せた即席爆弾―――を据え付ける。
「設置した!」
鉄塔の足元に爆弾を張り付けたフロストは、急いで退避しようと方向転換する。その先を阻むように赤いレーザーが駆け抜けるのを見たフロストは、しかしその足を止めることはせずに障害物の影へと転がり込んだ。
「起爆しろ、フロスト!」
サンドマンが叫ぶのと同時にスイッチのレバーを握る。
バンッと弾ける音が響き、テルミット爆弾が起爆した。内部でテルミット反応を起こす爆薬が、簡易的に建てられた鉄塔の細い足を焼き焦がす。一気に4000度まで加熱された脚部のステンレスは、やがてドロリと溶けだし、ブツッと切断された。4本のうち1本の支えを失った鉄塔は、上部に乗っている発信機の重みに耐えられなくなり、倒れ始めた。支えのワイヤーもはじけ飛び、大きくバランスを崩す。そのまま折れていく鉄塔の下には、サンドマンらを攻撃する物体も居り、避ける前に派手な音をあげて衝突した。中心で真っ二つに折れて落下していく物体を見下ろし、4人は歓声を上げた。
「よし、やったぞ!」
「オーバーロード、こちらメタル0-1。ジャマーを破壊した。聞こえるか?」
サンドマンが無線で司令部に呼びかける。それと同時に、様々な回線で呼びかけをする他部隊の通信も聞こえ始めた。
『至近距離に……――を降らせろ!』
『…解だ、ジュリエット6。攻撃を…』
『通信が回復。誰か応答してくれ!』
どの回線にも、通信の復旧で活気づく声が聞こえていた。まだテルミット爆薬の火が残る鉄塔跡に振り返り、フロストは安堵のため息が出た。
『了解だ、サンドマン。戦域内の通信が回復。航空支援が可能になった。敵部隊への反撃に出られる。全員よくやってくれた、素晴らしい戦果だ。』
「楽勝だったよオーバーロード。サンドマン、アウト。」
*****
証券取引所のジャマーを破壊したことによって通信が回復したアメリカ軍は、接近が可能になった航空部隊の支援も加わり、マンハッタン全体に出現したロシア軍、及び新兵器と思われる物体の排除に成功した。
『こちらODA-F!ロシア軍が後退中!しっぽを巻いて逃げてくぞ!』
多大な損害を出しつつも、ロシアの侵略から本土防衛に成功したのであった。
なお、突如現れた新兵器については、オーバーロードを中心に、全部隊から寄せられた情報から割り出しが行われている。
今回はなぜか急いで書き上げたので、雑になってしまいました。
でも投稿したいのでそのままで。
本編の捕捉で、なおかつ書きたかった回でもあります。
作者の欲が出てしまっただけかも。
アドバイス・コメント・評価、よろしくお願いします。