ストライクウィッチーズ Assault Warfare 作:t5m5k2
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警告のアラームが鳴るF-15SEⅡのコックピットで、アレンはコンソールに埋め込まれたディスプレイをタップするのに追われていた。
次々と表示されるウィンドウに触れては消し、再び現れるものも消していく。そんな作業が続いていた。
そして、何度システムチェックを走らせても、同じ答えだけが示された。機体のCG図の一部だけが、赤く点滅している。
またダメかと唇をかんだアレンは、最後にディスプレイをタップして警報音を止めた。
故障したのは着陸脚。それも、左後輪。3本しかない着陸脚の1本でも失えば、胴体着陸でもしない限り降りることはできない。
『主脚が故障したの?』
管制塔のミーナが問いかけてくる。
「そのようだ。そちらから、機体が見えるか?できるなら確認してほしい。」
時刻は午後5時をまわったころ。すこし薄暗くなりつつある。その中で、501基地の誘導灯などの明かりがはっきりと見えていた。
基地との距離がもうないことを意味していた。
『…見えたわ。…ん~、左の後輪かしら?2本しか出ていないわ。』
ディスプレイの情報に間違いがないことに少し安心しつつも、やはり今起きている機体の異常に、アレンは唇をかんだ。
原因は何にせよ、早く地上に降りたい。燃料の残りは半分をきり、なによりアレン自身も疲労がないわけではない。
『少佐、今第2滑走路を解放したわ。胴体着陸するしかないと思うのだけれど。』
「了解…。」
『消火班と救護班への出動要請も出したところ。いけそう?』
基地では、自分の着陸に備えた準備が始まっているらしい。もう滑走路は見え始めている。タイミングを逃すのは良いと言えない。アレンはしばらく考えこんだ。
手段を絞られた中で取られる胴体着陸。航空機と乗員が地上に降りるときに最終的にとられるこの方法は、航空機の歴史でも多く起きてきた。
普通の航空機とパイロットなら、今の状況であればそうしただろう。
ただし―――
「中佐、頼みたいことが。」
―――『普通』の航空機ならば。
『…。なにかしら?』
「航空機用のジャッキを滑走路に用意してもらいたい。」
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着陸時の衝撃に耐える航空機の車輪は、その性質上、部品に少しでも不備があれば大事故につながりかねない。そのため、定期的に取り外して徹底的な検査と整備を行う。
その間、足を取った航空機を地べたに放置するわけにはいかなかったため、車と同じようにジャッキが開発されたのだ。
サスペンションや展開・格納のための機械が詰められている航空機の主脚は、車とはちがってある程度の高さがある。その代わりをするだけあって、ジャッキの重量も大きさも相当なものとなる。
これまでジャッキをウィッチのストライカーユニット用として使うことが多かった501基地では、ウィッチたちが利用する第1格納庫に保管されていた。一方の第2格納庫は、航空機の整備が行われていないため置いていない。
それを、今日は500メートル離れた第2滑走路まで運ぶことになった。
「早くしろ!第2滑走路まで運ぶんだ!」
ハンガー内に、整備班班長ベイリー軍曹の野太い声が響く。
さぁストライカーユニットと戦闘機の整備に入るかとのんびり準備をしていた整備班の面々は、つい先ほど掛かってきたミーナの電話を機に、慌ただしく走り回っていた。
「用意できました!」
別の整備兵がベイリーに呼びかける。そこには、台車に乗せられた一つのジャッキがあった。
「よし、急いで持っていくぞ!あのジェット機が使うんだ!」
「なんで急に第2(滑走路)なんですか?」
「知らねぇ!俺に聞くな!」
問うてきた一等兵に無駄口叩くなら足動かせと付けたし、台車を力いっぱい引っ張る。同時に、一等兵の言うとおり、なぜ第2なのかと考える。
なぜ少佐はジャッキを要請したのだろうか。前回の出撃同様、第1格納庫前にある第1滑走路に着陸すればいいはずだ。
…中佐に、これからは第2を使うように頼まれたのだろうか?だとすれば、ジャッキなんて要らない。
「まさか…。」
「?何か言いました?曹長。」
「いや、なんでもない。」
無意識のうちにつぶやいたベイリーに気付き、一等兵が尋ねる。それを誤魔化し、考え続ける。
まさか―――故障を起こしたのか?それとも被弾した?
格納庫から外の道へ出る。その時、頭上を例の戦闘機がパスしていった。
ベイリーは、その巨大な機体を不安でいっぱいなまま見送った。
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ウィッチ用の第1滑走路とは建物を挟んで反対側にある第2滑走路。第1よりはるかに長く、横幅もかなりある。なぜなら、ウィッチではなく輸送機などが利用するからだ。普通の民間空港並みの規模はあるだろう。
艦船による物資補給もあるが、軽量であったり急を要するものも届けられる。司令部の連中もたびたびこの基地を訪れてくる。
ミーナにとっては、司令部への報告のために利用することがある滑走路だ。
その滑走路上に人だかりができ、真ん中には、アレンの要請を受けて準備された航空機用ジャッキの姿もあった。
『整備班のベイリーです。航空機用ジャッキ、配置完了です。』
覗き込んでいた双眼鏡を机に置いたミーナは、ベイリー曹長からの電話を取った。
「分かりました。待機してください。」
一度受話器を戻してから、アレンへの無線に切り替える。
「少佐、ジャッキの用意ができたわ。」
『了解。着陸する。スタッフは退避を。』
早口で、ほぼ単語のみでの答えが返ってくる。無線の向こうが、無線に応答するのも困難なほど忙しくなっているのだろうかと想像する。
とにかく、彼には無事に着陸してほしい。ジャッキを要請したりする理由は分からないけれど、きっと考えがあるのだろう。そう信じるしかない。
無意識のうちに両手がキュッと握りしめられていることに、ミーナは気付かなかった。
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1972年の初飛行から40年が経ち、もうすぐ半世紀の歴史を飾ろうとするF-15シリーズ。多くの兄弟を持つ戦闘機でもあり、その数は1200機に上る。
基本型だけでも、初期量産機のA型、複座のB型、生産数最多のC型、C型の複座タイプとなるD型、日本輸出版のJ型などがある。
10数年後には派生型も登場した。戦闘爆撃機であるE型のことだ。実験機S/MTD型も開発されたことがある。
派生型はE型で止まらず、進化したSE型が開発された。F-15E譲りの多様性を生かしつつ、敵からの発見を避けて作戦を遂行するための改造が行われたのだ。『Silent Eagle』の名が示す通り、F-15へステルス性能の追加が施されたSE型は、2013年に実戦投入され、すでにいくつかの戦果を挙げている。アレン自身、NRFとの作戦中に見かけたこともある。
そして最新型が、今アレンの乗るSEⅡである。これ以上発展させる余地があるのかという疑問の声が、議会や国防省の一部、さらにはメーカーであるボーイングの内部でも聞かれたという話は、アメリカの内外問わず有名となってしまっている。
それでも空軍の要望は折れ曲がることなく、SE型の開発中から、SEⅡの構想は出来ていたと言われる。
タスクフォース108のカルース空軍基地がトリニティ弾頭によって壊滅したことを受け、滑走路の無い場合でも運用ができるS/VTOL性能の付加が施されている。
そして、人員削減とパイロットの負担軽減という、どこか矛盾していそうな理由から、本来火器管制士官の乗る後席には、高度な計算と処理を行うコンピュータが設置されたのだ。
それらの技術が、今この時、フル活用されようとしていた。
「着陸チェック…よし。」
垂直着陸の準備を終えたアレンは、滑走路の軸線上へと進入した。いつもよりゆっくりと流れる風景をしり目に、滑走路上に小さく見えるジャッキを注視した。
(降りるまでおとなしくしてくれよ…)
着陸した状態でジャッキに『履き替える』のが普通である。その手順を飛び越え、そのままジャッキに『着陸』するなど、今までにした人物がいただろうか。胴体着陸せずに、かつ無傷で着陸する。その考えから思いついたのがこの一つだけだったことに、今更、他にはなかったのかと後悔する。
未知の領域に足を突っ込んだ今、手が震えだすのを必死に堪えた。
しかも、片足の無い状態で飛ぶF-15SEⅡは、機体下面に生まれる気流が普段とは違うせいで、いつもより不安定だった。サイクリックを握る手を震わさず、かつ細かく操作する。機体が少しでも揺れると、失速したのかと全身一度カッと暑くなり、いやな悪寒が走った。
自分の技量だけでは心細い。運を天に任せる気持ちは、こんなものなのかと、サイクリックレバーを操作することに精神を尖らせながら思った。
HUDの速度表示は、時速300キロまで低下していた。そして、機体は海上に設置されている誘導灯の上を飛行している。ここだと決め、スロットルレバーを奥に押し出し、VTOLへの移行を開始する。
一瞬、エンジンの回転音が抑えられたが、代わりと言わんばかりにコックピットの背後にある特設の排気口が唸りを挙げる。
速度が一気に低下し、200を切る。それでも、高度表示だけは変わらなかった。VTOLモードが正常であることを確認したアレンは、思わずふぅとため息をついた。
「誰かジャッキと機体の位置を知らせてくれ。」
コックピットからは主翼の影になって見えないジャッキを、下で待機している兵士に聞く。
『よ、横は大丈夫です!』
『正面ですが、もう少し左へ!』
言われた通りに機体をスライドさせる。
『大丈夫です!真下にあります!』
サイクリックレバーをしっかりと固定し、スロットルレバーを握る手に力を入れる。少しずつエンジンの出力を絞り、ゆっくりと機体が降りる。
数秒後、機体全体の揺れがピタリと止まり、正面の兵士が両手を上に突きあげた。
それを見たアレンは、大きなため息をついて脱力した。
「着陸完了…。ふぅ…。」
座席に沈み込んでハーネスを一本ずつ丁寧に外す。ヘルメットを取った時、自分の額に汗がこびり付いていることに気付いたアレンは、心の底から疲れたと感じた。
降りるためにキャノピーを開くと、少しひんやりとした外気が流れ込んできた。
すでに日は傾き、着陸前はまだ明るかったのにもう暗くなったのかと、驚いた。
こんなに集中していたのは何時振りだろうかと、空を見上げながらアレンは思った。
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アレンがコックピット内で物思いにふけっているとき、その姿を見つめる者がいた。
「さすがは未来の戦闘機…。」
滑走路から少し離れた林にすっかり紛れた格好をした人物は、手にした物体を覗き込みながらつぶやいた。
十字線の中心にパイロットの顔面をとらえ、その表情を凝視する。普通の欧州人の顔立ちだが、この人物には、とても憎らしいものに映った。
消してしまいたい。そして、はやく仕事を終わらせたい。
そう思いながら、影に隠れて見えなくなるまで、パイロットをクロスヘアの中心にとらえ続けた。
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いやひどい。
アレン「元の世界に返せ。」
作者「もう少し!もう少しだけ待って!」
ア 「次々話までこの調子だったらトリニティでぶっ飛ばす。」
作 「善処します…。」