ストライクウィッチーズ Assault Warfare   作:t5m5k2

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前回から間が開いてしまいました。
そしてとても短いです。すみません。


 ※機密情報を未入手の場合は、【目次】で確認


15 , 動き出す影

*****

 

 

「くそっ!なんだったんだ、あれは!?」

 

501基地のとある一室で机をたたいたのは、ブリタニア司令部から派遣された調査班の班長、ミック・クロウリーだった。叩いた衝撃で、カップに淹れられた紅茶が波を立てる。

 

「落ち着いてください中尉。ばれますよ。」

 

それを彼の部下であるキム・ボルトンが宥める。

 

最後の方は部屋の外に聞こえないようにつぶやいた。

 

「落ち着いてなどいられるか。やっと次に進めるところだったんだぞ。」

 

「わざわざ見せてくれと頼まずにイイものが見られたのです。」

 

ノートに何かを書き込みながら、凄い戦闘機だ、と感心しているボルトンを睨み、クロウリーはため息をついた。

 

「感心してる場合じゃないぞ、少尉。」

 

「分かってます。だから私たちがこうしているのでしょう?」

 

ボールペンを挟んでノートを閉じたボルトンが、複雑な笑みを浮かべてクロウリーを見返す。

 

「まぁ…そのとおりだ。」

 

今回この基地へ自分たちが派遣された理由―――表向きには新型ネウロイの調査とされているが、本当の目的は別にあった。このことを知っているのは、派遣された5人と、この5人に命令を下した司令部の人間、あと何人かの技術者だけなのだ。

 

本当の目的は、『501基地に飛来したジェット戦闘機の情報を抜き出すこと』という、表向きの物とは大きく異なるものだった。

 

『未来からやってきた』戦闘機のうわさは、軍の内外、基地周辺の市民まで広がりつつある。ネウロイに対する決定的な手法を持たない連合軍やブリタニア軍が、この機会を逃すはずがないのだ。

 

「とにかく、失敗したことは仕方ない。次の手を考えないと…。」

 

起きてしまったことを今から変えることはできない。ならば、次なる手段で目標を達成するまで。

 

「パイロットの私物を漁ってみるのは?取説の代わりみたいなものもあるかもしれません。」

 

「そうだな。…よし、ハーディング上級曹長。」

 

数秒、考える素振りを見せたクロウリーは、同じ部屋にいた別の部下の名を呼んだ。

 

「は、はい。」

 

緊張しているのか、ソファなのに背を伸ばしたまま座っている若い兵士が答える。

 

その様子を見たクロウリーは、一言落ち着けと声をかけてから指示を出した。

 

「ジェット機のパイロットの部屋を漁って、機体に関する情報を探して来い。気付かれるんじゃないぞ。」

 

「…分かりました。」

 

クロウリーの班に配属されて間もないハーディング上級曹長は、少し間を開けて答えた後、調査班の部屋から出て行った。

 

「何故一番若い彼を?緊張して失敗しそうです。」

 

扉が閉まるのと同時に、ボルトンが問いかける。

よっこらせと椅子に座ったクロウリーは、当然だというような顔で答えた。

 

「大丈夫だ。元の部署でも仕事はできていたらしいからな。それに…。」

 

耳を寄せろとボルトンに合図して続ける。

 

―――こういった仕事は、下っ端がこなすことだ―――

 

その言葉に、ボルトンはやれやれと言うような笑みを浮かべた。

 

 

*****

 

 

「それにしても、差し迫った作戦もないっていうのは久しぶりですね。」

 

「こうしてのんびりしてるなんて、とても考えられなかったからな。」

 

夕食を終えたローチとゴーストは、男性兵士宿舎の廊下を並んで歩いていた。

外はすっかり暗くなり、まだ電灯がついていない廊下の窓からは、きれいな半月が見えていた。

 

ピット突破を披露して以来、元タスクフォース141のメンバーは、基地の兵士達への指導役を受け持つようになった。指導に加えて実施の記録などを付ける仕事も発生したが、こちらに来る前と比べれば、ずいぶんと時間に余裕ができた。

 

「狂った大将やロシア野郎のおかげで毎日振り回されていたころが懐かしい。」

 

「と言っても、こっちに来てからまだ2週間経ってませんけどね。」

 

その2週間前、ローチたちは第3次世界大戦とも呼べる戦争の真っ只中のアメリカにいた。

 

ロシアの空港での虐殺事件から、世界各地に飛び火した戦火を潜り抜け、最後はアメリカ本土へ上陸したロシア軍と戦ったのだった。

 

途中、連合軍の指揮を執っていたシェパード大将からも命を狙われたこともあり、おちついて食事もとれなかったことも少なくなかった。

 

そんな状況を生き残ったローチやゴーストは、その経験があるからこそ、この瞬間の生活に若干の戸惑いさえ感じていた。

 

「まぁ、ここが汚れきった人間の世界じゃないということは言えそうだ。」

 

ゴーストが呟く。

 

ローチもそうだなと思った。

 

同じ人間同士なのに、なぜ傷つけ合い、殺し合うのか。

口で話せるというのに、なぜそれを使わず力を示しあうのか。

 

それには、人の中に潜む様々な欲や意志が混ざり合った何かが関わっている。2人は、なんとなくそう考えていた。

 

色々と話しているうちに自室までたどり着いたローチは、ゴーストが先に部屋に入った後に続いた。

しかし、片足を踏み入れたところでピタリと動きを止めた。

 

「どうした?」

 

「シッ!」

 

固まったローチに気付いたゴーストが声をかける。それに対して、ローチは人差し指を口の前に当てた。

 

ゴーストが立ち止まるのと同時に、ローチは脇の机に置いてあったUSPを取って部屋から出た。

音を立てずに向かったのは、すぐ隣にある部屋―――アレンの部屋だった。

 

ローチが気付いたのは、その部屋から、明かりもついていないのに人の気配がしたからだ。ごそごそと、何かがこすれたりひっくり返されたりする音が響く。

 

少佐が寝ているのかと考えたが、それにしては物音が断続的に続いている。

しかも、少佐は今日の機体トラブルで夕食にも顔を出していない。ハンガーに行っているとマクタビッシュが言っていたのを思い出した。

 

ならば、別の誰かが部屋にいるとしか考えられない。そして、その人間の所属によっては、面倒なことになる可能性がある。

 

しばらく物音を聞いて様子をうかがっていたローチは、意を決してアレンの部屋へ突入した。

USPのフラッシュライトを点灯させ、片手で構える。後ろにいるゴーストに合図を出してから、ドアノブに手をかけたローチは、足の筋力を総動員してドアを開いた。

 

ギッと蝶番がこすれる音が一瞬響いた直後、照明の灯っていない部屋をライトの輪が隅から隅まで舐めるように動く。同時に一際大きな物音が響き、続いて何かが倒れる音と人のうめき声が聞こえた。

 

床をライトで照らすと、一人の兵士が転がっていた。明るいライトが兵士の顔を照らし出す。

 

その姿を認めたローチは、兵士を取り押さえようと飛びかかった。仰向けのまま後ずさりする兵士の上から馬乗りの形でのしかかり、逃れようとする両腕を足と左手腕で拘束する。

 

兵士はそれでも、抵抗する。フラッシュライトだけの暗闇なら顔がばれないと思って、何としても振り払おうと暴れだす。拘束の手を強くしようとローチが力を込めた丁度その時、部屋の電灯が明かりを放った。ゴーストがスイッチを入れていたのだ。

 

部屋全体が明るくなると、抵抗した兵士も諦めたようにおとなしくなった。

 

「誰だ、お前?」

 

一息ついたローチの問いかける声が、静かになった部屋に響いた。

 

 

*****

 




次話で頑張ります。 多分…。

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