ストライクウィッチーズ Assault Warfare 作:t5m5k2
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この世界には、古くから魔力が存在する。ヨーロッパでは古代ローマ、扶桑では安土桃山時代に記録が残されている。その魔力を自在に操り、普通の人間にはできない能力を発揮して人々を助けてきた存在が居る。それがウィッチ―――魔女―――である。
そして20世紀に入った近代、突如として現れた異形の敵『ネウロイ』に立ち向かうべく、世界中のウィッチが活躍している。
人類は、ウィッチが持つ魔力を増大させる魔道エンジンを搭載した飛行装置『ストライカーユニット』というものを発明した。これにより、ウィッチは航空機のように空を飛び、重量のある銃火器を持ち、敵の攻撃を防ぐシールドを張ることができるようになる。
その姿は、救われる人々からすれば、まさに『魔法使い』そのものだった。
今日も、毎日のように出現し襲い来るネウロイから愛する地球や人々を守るために、ウィッチは出撃している。
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「古代ローマと言われてもなぁ…。」
午後8時を回った501基地の一室で、ベッドに座った姿勢のアレンは項垂れながらつぶやいた。
(自慢じゃないが、俺は歴史の授業が嫌いだった。古代史なんてもっての外だ)
ミドル・スクールのテストでクラス最低点を取った過去が思い出され、寝起きで酸欠による頭痛が残る頭を、さらに追い打つように頭が痛む。
うぅ、本当に痛い。頭痛薬がほしい。そう思いながら、思い頭を抱えた。
「大丈夫?」
ベッドの脇にいたミーナが尋ねる。
「大丈夫じゃないな。はぁ…。で、“アクイラ”と言ったか?俺の理解は正しいか?」
アレンは空間に向かって尋ねた。しかし、その相手はミーナではない第三者。
頭を押さえながら、部屋の隅に視線を向ける。ミーナも同じ方向を見た。
「大方、正解だ。」
灰色の羽毛に身を包んだ鷲が答える。
ここで鳥が人間の言語を理解して話している。十分奇妙な光景だ。
目を覚ました直後に、開け放たれた窓から飛来した鷲が、唐突に『具合はどうだ』と聞いてきた。もちろん、アレンは驚いた。その拍子に全身の筋肉が硬直したせいで傷口が痛みを発し、数分間悶絶していた。
こいつは何者だとミーナに説明を求めれば、それが使い魔であるという。
先ほどの話で出てくるウィッチという少女たちには、魔力を発動するサポートとして使い魔が宿るという。まさにその使い魔が、この鷲であるというのだ。正確には、この鷲が自らをそう呼んでいる。そう、『自称:使い魔』なのだ。
「で、お前は何か用があって現れたのか?」
アクイラと名乗ったその鷲に問う。
「此処まで説明してきて、まだ察せないのか?―――思考も撃ち抜かれたか。」
表情こそ分からない―――鳥の表情を理解できたら、それこそ目を撃ち抜かれている―――が、後半は明らかに挑発のこもったものだ。
確かに起きたばかりで頭はボーっとしている。だが、人間の思考であれば正常である自信はある。
「俺にしてみればこの状況自体がどうかしてる。俺の常識では鳥が口をきくなんて有り得ないからな。」
「まだ夢だとでも言うか?一体何日ここに居る。いい加減に素直になれ。」
「何だと?」
今の言葉を聞いて『あぁ、そのとおりだ。』とは答えられない。
今いるところが特殊であることを頭ではわかっていても、反射的に口答えしていた。
「両方とも落ち着いて。」
ミーナが間に入る。代わりに説明すると、と繋ぎながらミーナが続ける。
「まずアクイラが使い魔であることは、私のクラヴァッテで確認したわ。」
「クラヴァッテ…中佐の使い魔か。」
「そう。宿り主が少佐であるということも本当よ。」
ミーナが諭すように、静かに説明する。
黙って聞いていたアレンは、どこか納得がいかないけれども、他に説明できるものがなかった。
最近は魔法やウィッチ、ネウロイといったものへの疑問は薄れつつある。アクイラがさっき言ったように、ここはもう夢の世界ではない。どこかでそう思っている自分は、相変わらず周りを受け入れようとしていない証拠なのかもしれない。
「さっきは口が悪かった。だが事実は事実だ、アレン。」
しばらくの沈黙の後、ゆっくりとアクイラが話し出した。
「論理的、科学的、物理的にも、お前たちからは考えられないことだと思う。だが、今いるここも…一つの世界だ。」
世界、という単語が明瞭に聞こえた気がする。
無意識のうちに、視線を布団の上に落とす。
「同時にアレン、お前は兵士であり、この世界でも活躍できる人間だ。人のために飛ぶことができる。俺が言うのも無責任かもしれないが、あとはお前の意思次第だ。」
「それはつまり…俺がまた飛ぶか、それとも地に戻るか、ということか。」
今度は黙ったまま、アクイラが頷く。隣にいるミーナが、一瞬息を飲んだのが分かった。
ウィッチの仲間入りをし、ネウロイの侵略から二つ目の世界を守るか。
それとも、空に舞い戻ることを諦め、世界を拒んで飢え死にするか。
アレンには、この二つが残されている。しかし、どちらを選べばよいのか。今決められるものではない。
「アレン。繰り返しになるが、これはお前の意思で決められる。答えは待つ。」
そういうと、アクイラは窓のふちに飛び移り、外へと飛び出していった。
残されたアレンとミーナは、それぞれ黙りこんだ。別種の重い空気が、部屋を満たしていた。
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アレンと使い魔のアクイラが話し合っていたのと同じ時間、別の部屋での出来事。
「ふんん…。」
部屋に備え付けられた2段ベッドの上段で寝っころがっていたローチは、ふと聞こえた深いため息に、手すりを乗り越えて下段を覗きこんだ。
そこには、新聞紙を手にしたゴーストが座っていた。
「何かありました?」
「読んだか、この記事―――『ネウロイの利用』ってとこ。」
「ばっちり読みました。あのデカブツを、民間人が弄り回してるって話でしょ?」
「そうだ。危険なんじゃないのか?」
「あのジャパニーズ・レディによれば、彼女らでも最近知ったとか。」
坂本少佐のことか、とゴーストが確認する。そもそも、ここでジャパンという言い方があっているのかは分からない。『フソウ』と呼ぶのか、『ジャパン』でいいのか。
「ウィッチだけだから近づけるわけだろ。本当なのか?」
「どの程度の『民間人』なのかが微妙な気がする。もし―――」
突然、壁にかけていた固定電話がベルを鳴らす。
そういえば、まだこの基地の電話はベルを物理的に鳴らしているんだな、とローチはぼんやり思った。世界大戦を主題とした映像作品などで見られるタイプだ。
下段にいたゴーストがベッドから這い出て受話器を取る。『はい、サイモンだ。』と応答し、それからは電話をかけてきた人物の伝言に耳を傾ける。
その光景を見ていたローチは、調子よく頷いていたゴーストの首が次第に静止していくことに気付いた。
何かよろしくないことが起きている。ローチがそう思った直後、ゴーストは受話器を戻した。そして、
「ローチ、緊急だ。すぐに出るぞ。」
と告げた。口早にそう言ったゴーストは、衣装棚の扉を勢いよく開けてベストを引き出し、すぐそばに置いてあったM9を手に取る。ベッドから飛び降りたローチも、手すりに引っ掛けていた上着を着込んで机に並べて置いたUSPとマガジンを仕舞い込んだ。
ゴーストが電話を切ってから30秒もたたないうちに、二人はハンガーへ向かうべく部屋を飛び出した。
そしてハンガーへ着くなり、マクタビッシュが手招きする姿があった。
「急ぐぞ!早く乗り込め!」
すでにハンガーの巨大な扉から外に移動して、ローターを勢いよく回しているMH-60を目指す。
エンジンの爆音と襲いくるダウンウォッシュをこらえながら、身をかがめてキャビンに飛び乗る。座席のベルトを締めるや否や、すぐに機体が持ち上がり、離陸した。
「それで、内容は?救助任務だとか。」
座席の下に保管していたACRを手に取り各部点検をしながら尋ねる。
「あぁ、海上でクルーズ船が航行不能になったらしい。乗船している民間人を救出する。」
同じようにACRを手にしていたマクタビッシュが、コッキングレバーを引きながら答える。
「さらに不運なことに、ネウロイまでお出でになってるそうよ。必要あれば、ネウロイを叩き落として。」
更に補足の説明が、耳に装着したヘッドセットから、パイロットのエンデンから伝えられる。
「なるほど…了解。」
とは言ったものの、正直ローチは不安で仕方がなかった。
民間人の救助は問題ないだろうが、後者のネウロイとの交戦する可能性については置いておけなかった。
見たこともないネウロイが襲い来る風景を想像しただけで、掴んでいるACRを落としてしまいそうになる。それだけ緊張するのだ。
『ノーマッド…63だっけ?エイラだ。今晩は、ヨロシクナ。』
『サーニャです。よろしくお願いします。』
ヘッドフォンが、無線に入った二人のウィッチの声を拾った。
一人で冷や汗を流しているローチの左の空間に、その二人の姿が現れる。一人は、暗くてもわかるほどの水色の服を着た銀髪のエイラ。もう一人は黒を基調とした装備のサーニャだ。
「お、あの時のお姫様達か。」
妙に落ち着いた―――いや、いつも通りか―――ゴーストが話しかける。
『そうダ。…サーニャの邪魔はするんじゃないゾ。』
「二言目がそれか。それなら、お前も邪魔するなよ?近づきすぎるとミンチになるからな。」
『!?そんなに危険なもの飛ばすナ!』
「冗談よ。」
機体を操るエンデンが答える。
『エイラ、驚きすぎ…。』
エイラにヘリから庇われるような格好になったサーニャがつぶやく。
「おい、いいか?ちょっとは気を引き締めろ。ローチ、ドアガンは任せたぞ。」
「ラジャー。」
手練れのウィッチ二人が居ることに若干の勇気をもらいつつ、ローチはゆっくりと機内を移動した。
ローチがカーゴドアの前に設けられたガンナー用の席に着いてからは、光を漏らす基地を背に、ただひたすら真っ暗な、三日月の照らす海上を3機で飛翔した。
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前半と後半という、読みにくい形になりました。
それぞれそのまま、後に続きます。
誤字脱字の報告、批評お待ちしています。