ストライクウィッチーズ Assault Warfare 作:t5m5k2
○○かぜ<おっそーい!
なーんつってね。
ではどうぞ。
*****
視界に映像が浮かぶ。そこは、F-15SEⅡのコックピットだった。
キャノピーの外を流れていく雲と風景をしばらく眺めていたアレンは、何か妙だなと思った。
無理もない。その映像は、アレンの記憶であり、今起こっている現実ではないからだ。
( これは・・・夢か・・・? )
異変をそう判断したアレンは、しかし目を覚まそうとはせず、映像を見続けた。
しばらくすると、頭にかぶったヘルメットと酸素マスクの触感や、グローブ越しのスロットルとサイクリックレバーの感触、シートから伝わる機体の振動までもが、アレンの感覚に再現された。
そして、体の各部位が、戦闘において各々に課せられた任務を果たそうと動き出す。
夢の中のアレンがサイクリックを少しだけ左へと倒すと、機体がわずかにロールした。慣性に従った機体は、横に滑り出し、徐々に進路を変え始める。コンソールに埋め込まれたレーダーのディスプレイ上で、方位磁針を模した矢印が上を向く。北を向いたのだ。
( 北・・・まさかこの夢は・・・ )
記憶を頼りに、夢が現実に起きたことだと気付く。眠るアレンの思考がその答えを出す前に、夢の中で答えが出された。
『マジックよりウォーウルフ。マイアミ・ビーチに接近中の機影あり。―――』
夢の中で頭にかぶっているヘッドフォンから、音声が流れた。
( やっぱり・・・ )
『―――交戦を許可する。撃破せよ。』
この夢は、数日前にあった戦闘だった。まだ、記憶に新しい。
『ウォーウルフ1、了解した。』
さらに、証拠を突きつけるように、聞き覚えのある声が鮮明に再現された。
『アクイラ隊、こちらマジック。ウォーウルフの支援に入れ。同じく、交戦を許可する。』
自分が何を言ったのかはわからなかった。夢の中にいる自分が何を言っているのか、それはわからないことのほうが多い。
しかし体だけは動いている。左手でつかむスロットルを押し上げ、見え始めたマイアミの市街地に向けて加速する。
HUDの表示をHMDへと切り替え、兵装の簡単な確認を済ませる。するとすぐに、アレンは戦闘に突入した。
『隊長、正面にバンディッツ。フランカー、2機。』
正面に現れた機影がマークされる。これまで何度も見てきた、ロシアの大型制空戦闘機だ。
「了解だ、アクイラ2。追撃するぞ。」
『ラジャ。』
「3と4はペアで迎撃に当たれ。」
『了解です。』
『4、コピー!』
機体を加速させ、内陸にあるスタジアムを目指すSu-27を追う。恐らく、避難が完了していないスタジアムの市民を狙うのだろう。ミサイル一発でも撃ち込まれれば、どれほど大きな被害が出るか分からない。
「2、急ぐぞ。スタジアムから追い払うんだ。」
『分かりました。』
しかし、すぐに手を出すことができない。なぜなら、未だに機関砲の射程に入っていないからだ。短射程ミサイルAIM-9Xのロックオンはできるが、発射したとしても命中する確率が低い。もし前のフランカーがフレアを放出すれば、発射したAIM-9Xがどこへ飛ぶか分からない。市街地へ直撃したり、そうでなくとも内蔵する燃料を尽かせて落下することもある。
(脅すしかない)
そう判断したアレンの右親指が、サイクリックに備えられたボタンを二度押し込む。発射待機のマーカーが変わるのを確認して、人差し指に力を込めた。AIM-120のシーカーを作動させたのだ。
ロックオンを示す高い電子音が、スピーカーを通って耳に響く。複数ロックオンが可能なAIM-120のシーカーマーカーが、HMD上の四角で表されたSu-27に重なる。恐らく、ロックオンされた2機のSu-27の機内では、パイロットが慌てていることだろう。
すぐに2機の敵機が回避行動に入る。
「俺が右を墜とす。」
『左を遣ります!』
その間にも距離を詰めたアレンとアクイラ2も分散した。上昇と共に加速を開始するSu-27をロックオンマーカーの中心に捕えたまま追尾する。
AIM-120のシーカーをミサイルの発射ボタンに乗せた親指を押し込まずに保持しながら、フランカーが海上に出るのを待った。上昇と下降、旋回を繰り返しながら、目の前を逃げるフランカーのパイロットは、味方が来るのを待っているのかもしれない。
その彼にどんな命令が出されているかの真相は分からないが、離陸前にはマイアミ市街地へ被害を出すことを支持されているだろう。ただ、今の状況でそれを遂行でき得るのか。
ロックオンされた警告音が響き、運が悪ければ被弾した機体の爆発に身を焼かれる。運よく脱出したとしても、着地してからは、彼にとってどんな地獄を味わうか分からない。そんなことを、必死に逃げながら考えているはずだ。
しばらく追撃を続けていると、遂にフランカーがビスケーン湾上に出た。その瞬間を逃さなかったアレンは、AIM-120からAIM-9Xに切り替え、『FOX2』の掛け声とともに親指をボタンに押し込んだ。
シュッとAIM-9Xの噴煙が飛び出していく。そして、ターゲットのフランカーがアフターバーナーの炎を見せた直後、ズンと衝撃が機体を揺らした。
「敵機、撃墜。」
『アクイラ隊、ウォーウルフ隊がマイアミ・ビーチの東海上にて敵部隊と接触する。支援に回れ。』
「了解だ、マジック。すぐ向かうと伝えてくれ。」
他のアクイラ隊機が合流するのを待ちながら、レーダーを確認する。AWACSから送られる情報は、通信もレーダーも同じだった。
『ウォーウルフ、敵機の交戦距離まであと1分。アクイラ隊が到着するまで持ちこたえろ。』
『レスリー少佐、2から4、合流です。』
「よし、アクイラ隊各機、東へ移動してウォーウルフ隊を支援する。」
『了解。』
サイクリックを倒して進路を東に向ける。指示された方角を向くと、HMDに数個のマーカーが灯った。
(ウォーウルフが4機…敵が7、8機か。)
ウォーウルフに対して敵が多い。数的不利だ。
『ウォーウルフ1、交戦する。』
『ウルフ2、FOX2発射!』
アクイラがたどりつく前に、遂に爆煙が上がった。敵機の反応が一つ消える。
「アクイラ3、牽制しろ!」
『了解、FOX1!』
隊員に指示しながら、アレンも加速して敵機に迫る。
「ビショップ中佐、支援に来ました!」
『アレンか、心強い。頼むぞ。』
短い支援到着の報告を入れ、すぐさまマークされていない敵機を探し出す。眺めていると、織り交ざっていた集まりから、3つのマークが飛び出て行った。
『3機逃げた!』
ウルフ2、ガッツの野太い声が響く。
『アクイラ、頼めるか?』
続いて、ビショップの問いかけが響く。それに対し、アレンははっきりと返した。
「任せてください、ウィル。」
先ほど通り過ぎたばかりのマイアミ・ビーチに沿って、北へ向かって飛ぶフランカー。それを追って降下し、AIM-120のシーカーを作動させ、HMDの円内にとらえてロックオンする。
「FOX3!」
3本のミサイルが一斉に打ち出され、次々と起爆し、フランカーを叩き落としていく。
これで最後だ。殺虫剤を撒かれて落ちていくハエの如く落下していくフランカー。それらがまき散らす煙を突き抜けた途端に、コックピット内に警報のアラームが鳴り響いた。
そこでアレンはハッと気づいた。
( ―――違う―――! )
自分が経験したことのフラッシュバックだと思っていた夢が、そうでないということに。
前方に制空迷彩を施したSu-37が現れる。そこから何かが切り離され、まっすぐとこちらに直進してくる。だんだんと大きくなるミサイルが当たると思った直後、視界から映像が消失した―――――
*****
「―――うぁ!!」
上半身が異常な速さで持ち上がった。寝ていたベッドが揺れを吸収し、ギシギシと軋む音が響く。蹴り上げられた布団が宙を舞い、半分ほどベッドからズレ落ちた。
腰から上が直角を移動すると同時に、全ての感覚が覚醒した。
直後、急激な筋肉の伸縮を行った身体が痛んだ。まだ完治していない撃たれた傷も含めて体中からあがる悲鳴を、悶絶と共に受け止め、おさめるまでには数分かかった。
やがて落ち着いたアレンは、まだバクバクとなっている心臓を、いつの間にか着替えているパジャマのような服の上から手で押さえた。
「くそ…ひどいな…。」
そうつぶやいたアレンを、少しだけ開いた窓から吹き込んだ風が包む。悪夢のせいで汗びっしょりとなっているアレンは、思わず身震いした。額に手をやると、マラソン直後のような量が滲んでいた。汗に触れた手を見つめたアレンは、服の襟をつかんで汗を拭った。
「違う世界なら…記憶も変えてくれればよかった…。」
そうつぶやきながら、アレンは起こしていた上半身を再び横たえた。
―――いや、正確に言えば変わっていた。最後、目を覚ます直前のシーンは、アレンの記憶にないのだ。マイアミでの防空戦で、アレンは確かに生き残った。そして、ワシントンへと急行し、マルコフと一騎打ちを繰り広げたのだ。
しかしそうだとしても、マイアミでどう戦ったのか、本当の記憶が残っていない。思い出せないのだ。
( ・・・全く違う気もしない・・・ )
さっきの夢に、見覚えがある気がする。
天井の一点を見つめてそう思ったアレンは、ふと壁にかけている時計に目をやった。
午前3時。日が変わってから少し経っている。
それから再び視線を天井に向け直したアレンは、夢ではない本当の記憶を思い出すために目を閉じた。
終わり方の上手いアイデアが浮かばない(前も言った気がする。勉強不足か)
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