ストライクウィッチーズ Assault Warfare   作:t5m5k2

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登場するF-15SEⅡですが、これは実在する機体を自分が勝手に進化させたものです。一応、6人は2016年から来た設定なので。

 それではどうぞ。


4 , 初対面が重要

滑走路の奥にあるハンガーには入らず手前で停止したアレンは、機体の簡易チェックをしてスタンバイモードにした。エンジンを落とし、機器も最低限のものだけにする。もしもの時、すぐに発進できるようにと考えてのことだったが、どうも出番はなさそうだ。ヘルメットを脱いでコックピットの外を見ると、いつの間にか銃を担いだ兵士が出てきていた。銃口はもちろん、自分とF-15SEⅡと向いている。物騒な…というか、ずいぶん古そうだ。風景から考えて、ここは南米の何処かだろうか?いろいろ考えながらアレンは機体から飛び降りた。

 

「手を挙げて、ゆっくり前に歩け!」

 

左のほうにいた兵士の1人が叫ぶ。警備兵のリーダーのようだ。変な所へ連れていかれたり面倒なことになったりするのは嫌だったので、アレンは素直に従った。ゆっくりと両手を上にあげる。銃を構えながら近寄ってきた2人の兵士に身体チェックをされる。案の定、太もものホルスターにあった護身用のグロック17を没収された。どうするのか気になったが、答えてくれそうもないので黙った。

 

「なんだこれ…。拳銃のようだが、見たことないな…。」

「ほうっておけ、どうせこいつはネウロイの人型だ。」

 

ぶつぶつと二人の兵士が黙りながら離れていく。何かと勘違いされているのか。ネウロイって何だろうかと考え始めた。しかし次の瞬間、目の前に立ち並ぶ人間の注意が一瞬にして別の方向に向かった。みんなが向く方向を見ると―――

 

「(ロ)うぅぅぁ、つっかれた~~・・・(欠伸)」

「(ゴ)何時間もヘリで揺られるのは、抱っこ好きな赤ちゃんでもいやだろうな。」

「(ディ)それでここはどこかしら?」

「(コ)懐かしい…気がする。」

「(ソ)腹減った…。」

 

お前ら…。自分たちに向いている銃口を全く気にしていないかのようだ。観光に来たツアー客よろしく目の前に立つ建物を見上げている。特にディアナを除く4人は警戒の的になった。ごつごつしたベストに、黒く光るライフルを持っているからだ。しかもコザックとゴーストに関しては、顔をヘルメットやサングラスやバラクラバで覆っていて見えないときた。基地の兵士が騒然とする。あとから着陸したミーナらも同じだった。硬直―――。

 

「じ、銃を下ろせ!!」

 

悲鳴に近い怒号が響く。ようやく気付いた4人は、一瞬固まったのち、気まずそうな顔をしてゆっくりとライフルを置いた。ディアナもヘルメットを機内に放り込む。そして静かに手を挙げる。自分たちが異色の人間共だということを確認したようだ。恐る恐る兵士らが近寄り、身体チェックを行う。141の3人とコザックはボディーアーマーなどの装備を全て外すよう命令された。装備を全て外してMH-60の機内に置いた5人とアレンは、多くの目と銃口を向けられながら基地内へと連れて行かれた。

 

 

*****

 

 

知らない基地内を歩きながら、アレンは一つのことが気になっていた。前を歩く中佐―――ヴィルケ中佐だったか―――の格好だ。

 

(なんで下履いてないんだよ…。)

 

上には濃い緑色の軍服のようなものを着ているが、ズボンらしきものが見当たらない。こんなことをすれば一発で刑務所行きだろうに、平然としている。当然のように。周りにいる兵士たちも大して驚いた表情は見せない。当たり前ではないはずだ。意識が飛びかけていた間に何か起こったと思ったが、女性がズボンを履かなくなったということも変化の1つだろうか。

 

「あの…レスリー少佐。」

 

後ろからソープが小声で話しかけてきた。

 

「どうした?」

「変だと思いません?それとも異変だと思っているのは自分だけでしょうか?」

 

ソープも同じことを考えていたらしい。

 

「だよな大尉…。俺もそう思う。明らかに変だ。」

 

意識喪失の間に何が起こったのか…。もしかすると、自分の想像を絶する事態になっているのかもしれない。

 

「どうなっているか分からないな…。覚悟しておかないと。」

 

そうつぶやいて、アレンは無意識のうちに拳を握っていた。そうこうするうちに、6人は取調室と呼ばれる部屋についた。控室に入った6人は、まずアレンから別の部屋での事情聴取が始まった。

 

 

*****

 

 

取調控室。タスクフォース141のゴーストとローチの会話。

 

「ゴースト、いくら好きだと言ってもここでは取りましょうよ、それ。」

「やだよ、絶対取らねぇ。」

「なんでですか?」

 

しばらくゴーストが黙り込んだ。あ、まずいこと聞いたかなとローチは思った。だが、その気遣いは全くのムダだった。

 

「特に理由ないけど、これが落ち着く。」

 

気にするなといった感じでゴーストは答えた。

 

「だ~か~ら、印象悪いですって。顔も見せないで取り調べするなんて聞いたことないですよ?」

「お前に素顔見せたことないぞ?」

 

そうだった。ローチが141部隊に召集された時から、この人物には謎がたくさんあったのだ。

 

「このままいろんな作戦に行ったじゃないか。しかも、ここに長居すると決まったわけじゃない。だったら素顔を見せる必要もないさ。」

 

納得できない部分もあるが、ローチは正解な気がした。う~んと唸り、そのまま黙り込んだ。

 

 

*****

 

 

事情聴取はいっこうに終わらない。話がかみ合わなくて、一時中断していたのだ。アレンは再び取調室に呼ばれた。部屋にはさっきと同じ人物がいた。まず、さっき上空でアレンらを基地へと誘導してくれた人だ。赤毛で濃い緑色の服を着た女性、ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ中佐。18歳と聞いたときは驚いた。自分より年下なのに中佐まで上り詰めたという実力者なのか。その隣には、黒い髪の毛で白い軍服を着た、これまた女性の坂本美緒少佐が座っている。彼女も19歳だとか。しかし2人の格好というものは…と、アレンはさっきも思った疑問を頭に浮かべていた。さらに警備の兵士が4人いる。さっきと変わらずピンと張りつめた雰囲気が漂っている。アレンは心の中でため息をついた。ここまでアウェーな状況は誰でも疲れるだろう。2人と机を隔てて置かれた椅子に座る。机の上には地図らしきものが置いてあった。

 

「ではもう一度聞きます。あなたの所属と名前、出身地は?」

 

赤毛の中佐が切り出す。

 

「NATO連合軍タスクフォース108所属、アクイラ隊1番機、アレン・ロイド・レスリー。階級は少佐。アメリカ合衆国出身だ。」

 

剣を提げている少佐にぶった切られるかもしれないのに、なぜか敬語が抜けている。正直、レスリーも相当疲れたのだ。

 

「それは本当なのね…。でも知らないわ…。」

 

やっぱり、という顔する中佐。半ば諦めたかのように腕を組む。

 

「では、その『あめりか』という国はどこにある?この地図で。」

 

ミーナに代わって坂本が地図を指さしながら聞く。少しだけ身を乗り出しながら地図を見たアレンは、その地図がなんとなく地球を表しているようだと思った。しかしアメリカ大陸がない。あるべき場所には、妙にゆがんだ星が描かれている。他にはヨーロッパとアフリカ、南米が分かる。ユーラシアは、中国とインドの部分が隕石でもあたったかのように丸く海になっている。

 

「これは何の地図だ?」

 

アレンは問うた。指せと言われても指したい場所がない。

 

「何を言っている?これが世界地図だぞ。」

 

さて、困ったことになった。世界観が両者で食い違っている。アレンの記憶する世界地図と彼女らが記憶する世界地図が違う。これだと、取り調べが長引くのも仕方がない。アレンはむぅぅと唸った。

 

「どうした?まさか貴様、世界地図を知らないのか?」

 

馬鹿にするな、これでも戦闘機乗りだぞ、と大声をあげそうになったが

 

「俺はこの地図を使ったことがない。俺が知る地図では、だいたいこのへんだった。」

 

と星形の大陸の周りをぐるぐる囲むように指さした。小さく「リベリオン」と書かれている。

 

「あめりか、というのか?おかしな話だ。そこはリベリオンだぞ。」

 

坂本が鼻を鳴らす。こいつ…。階級が下だと捻り殺していただろう。落ち着いて深呼吸する。

 

「じゃ、この基地がある国はなんというんだ?どこにある?」

 

逆にアレンが聞いた。それにはミーナが答える。

 

「ここはブリタニア連邦よ。地図ではこの位置。」

 

細い指が、イギリスの位置を指し示す。ブリタニアと聞いて、イギリスの正式名称『グレートブリテン及び北アイルランド連合王国』を思い出した。ブリテン、か?

 

「俺の記憶にはないな…。似たような国はあるが。」

 

とここで、アレンは気になっていたことを思い出す。ついさっき交戦した時のことだ。彼女らは足にレシプロのエンジンを履き、敵は真っ黒な胴体を空に浮かべてレーザーを乱射してきた。あんな光景が、現実に起こるのか?起こったのか?一見、人が生身で空を飛ぶのは未来的な感じがする。レーザー兵器も艦載型が開発段階にあるはずだ。ならば自分は未来へとタイムスリップしたか?そして、何らかの理由で地形や国家の名称が変わったか?だが部屋にいる4人の兵士が持っている銃は、アレンが見たことのあるアサルトライフルより古いように見える。坂本という名前から彼女は日本人と推測できるが、彼女が来ている軍服は古い写真でしか見たことがない。日本国自衛隊の制服には、いくつかの記章類がついている。少佐という階級なら尚更だ。なら過去か?一通り考えたアレンは、ふと思いついたように質問した。

 

「今は何年何月だ?」

 

前に座る2人が一瞬固まる。こいつ何聞いているのだといったような顔だ。ミーナが答える。

 

「1944年4月よ。」

 

アレンは開いた口が閉じなかった。1944年?歴史の授業で習った第2次世界大戦中なのか?しかし、第2次世界大戦中の世界地図は、アレンが知っている地図であって、今目の前に広げている地図とは違う。ある国から侵略を受けた国はポッカリと海になり、また連合軍を勝利に導いた国は変形している。さらに目の前には敵国同士のはずである2人が座っている。しかも戦う敵があの黒い物体ときた。ただのタイムスリップではない。だとしたらどういうことか。自分の知る地球とは違うのか?

 

 

*****

 

 

タイムスリップ、しかもたどり着いた場所が異世界かもしれない、という結論をアレンは頭の中で立てた。1944年に人が生身で飛行したこと、黒い浮遊物がレーザーを乱射したことなどという事柄は、アレンが授業で習った歴史の中にはなかった。

 

「あなた方はどうやって空を飛んでいるんだ?」

「ストライカーユニットを使うわ。魔力で発生した飛行魔法を使って飛ぶ道具よ。中には魔道エンジンなどが入っているわ。」

「推進装置はレシプロなのか?」

「そう見えるだけ。あれは飛行魔法のエネルギーが、大気中のエーテルと高速で反応して可視化したものだ。」

 

何も知らない小学生に教える感じで頼む、といっておいたおかげか、わかりやすい説明だった。どうやらこの世界には『魔力』を扱うことができる人間がいるようだ。さまざまな魔力があり、それを持つ人間もいろいろな国にいるという。

 

「じゃぁ、俺が間違って撃った黒い物体は何なんだ?」

「ネウロイ、というわ。異形の軍、とも。1939年に突然現れた正体不明の存在よ。」

「奴が発するレーザーは強力だ。建物や戦艦を一撃で破壊できる。生身の人間では太刀打ちできない。」

「そんな破壊力を持つのか?」

 

戦艦を一撃…。黒海でロシアの大統領救出作戦に参加したアレンは、その作戦の最後に巡洋艦との攻防を経験した。何度も飽和攻撃を仕掛けたが、あの巡洋艦は30分生き残った。対艦ミサイルや誘導爆弾を何発喰らったのか知れない。要するに、アレンの元居た世界では鉄の塊である戦艦を一撃で撃沈することは夢のようでもあったということだ。

 

まだほとんど解明されていないネウロイ。レーザー攻撃に加えて、生物に有害な物質をまき散らすという。それによって生物はその場に住めなくなり、これが原因ですでにいくつかの国家が滅んだそうだ。毎回様々なネウロイが出現し、数や大きさ、速度など多種多様な形態が確認されている。

 

「私たち人類はそのネウロイに対抗すべく、さっき言ったストライカーユニットを開発したの。あれを装備することによって飛行し、魔力で強化した小火器でネウロイを攻撃するわ。」

「見た感じずいぶん近距離だったな。ネウロイの有毒ガスとかは大丈夫なのか?レーザー喰らったら死んじまうだろ?」

「魔力をシールドとして使っているからな。奴らの攻撃はシールドによって防ぐことができる。」

「魔力で攻撃も防御もするのか。そりゃすごいな。」

 

驚きだった。元居た世界では魔力などという力はない。あったのかもしれないが、有名ではない。そもそもそんな能力があるのなら、自分が乗っている航空機などはいらない。鉄の塊を飛ばしあって命を奪い合うことはない。いずれにせよ人同士が殺しあうことは同じなのだろうが…。

 

「そういえば、レスリー少佐が乗っていた飛行機はいったい何だ。」

 

そうだった。元はといえば、迷い込んできた人間であるアレンらの事情聴取だった。こちらがいろいろと質問している。

 

「あれは魔力を使わないただの戦闘機だ。乗る人間は操縦桿を握って機体をコントロールするのみ。」

「エンジンは?」

「プラット・アンド・ホイットニー F100の進化版―――ターボファンエンジンだ。」

「速度はどのくらい?」

「巡航速度が950㎞、最高が…出したことあるのは2000㎞手前。」

 

その瞬間、前に座る二人が驚きの顔を示した。無理もない。レスリーが知る歴史の中でジェット機ができるのは1940年ごろ。まだ開発段階で、実戦への投入は限定的である。

 

「まだ未開発よ。カールスラントでもジェット戦闘機は試験段階と聞いたわ。」

「あぁ…。しかしなぜそんな機体を持っている?」

 

タイムスリップです、などとは言えない。その証拠もないし、言えばどんな目に合うか分からない。少し言葉を探して文章を作る。

 

「俺はもともとあの機体を毎日使っていた。あなた方が敵としているネウロイなんていなかった。人間の敵は人間、という言葉が示す通り、人同士が戦争をしていた。」

 

そう言ったきり、部屋の中が静まった。確信はできないが、おそらくそうなのだ。1944年の世界、人類の敵は異形の軍、その敵に立ち向かう魔力を使う少女―――。すでにもといた2016年の世界ではない。しばらくの沈黙の後、アレンが口を開いた。

 

「どうやら、俺―――いや俺たちは、異世界から来てしまった人間なのかもな。」

 

 

*****

 

 

疑いが残るが、とりあえずアレンの取り調べは終わった。この基地の指令であろうミーナは、2016年からやってきてしまった6人の所属と名前を記録してどこかへ消えた。坂本も去ったらしい。再び6人は取り調べの控室にいた。取り調べで起こったことを一通り説明したアレンは、大きなため息をついた。そうとうな疲労がたまっている。

 

「(レ)ったく、おまえらが変なことするから…。」

「(ロ&ゴ)どうしたんですか?」

「(レ)到着早々変なパフォーマンスするからだよ!」

 

場を弁えろってことだ、と言った。すると、ソープが口を開く。

 

「(ソ)それにしても困ったことになったな。これからどうすればいいんだ?」

「(レ)あぁ、どうみても2016年の世界じゃない。ここの指令だって、1944年だと言うからな。」

「(コ)警備兵が持っているライフル…、あれはドイツのStG44ですよ」

「(ディ)人類の敵が異形の軍ね…。歴史で習った私たちの地球ではないわ。」

 

再び6人は黙り込む。本気で今後を考えなければならない。自分たちがどういう立場で生き続けるのか。そもそも生き続けられるのか。

 

 

*****

 

 

「これは飛行機…?なんか変な形…。」

「さっき突然現れた6人のものか?」

「大っき~~い!」

「ジェットはまだ開発されていないと聞いたんだけどなぁ。」

 

滑走路のハンガーの目の前には、1944年には存在しない航空機2機が止められていた。その2機を、バルクホルン、ハルトマン、シャーリー、ルッキーニが見上げる。1つは大きな翼を広げた飛行機のようなオブジェクト。先端にはガラスに覆われた空間、翼の付け根には黒い空洞、後ろには2枚の垂直尾翼の付け根に丸くてこれまた黒い空洞があった。その機体の隣には、よくわからない乗り物。頭上には4本の薄くて長い板があり、1か所で固定されている。胴体は何とも言えない形で、全体的にずんぐりとしている。側面には何枚かガラスが張り付いており、中が見える。見てみるが…、何が何やら。その後ろには胴体よりは細い構造物が伸びている。垂直尾翼に見えないこともない。

 

「謎ばかりだな…。」

「入れないかな、特にこの…丸っこいの。」

「扉みたいなのあるよ。」

「やめておけ。触っただけでも説教を食らうぞ。」

 

4人は周りを歩きながら見物した。所有者であろう6人は…今も取り調べらしい。この物体はいったい何なのか。早く知りたいという気持ちが、4人に芽生えていた。その4人に後ろから声がかかった。

 

 

*****

 

 

30分後、再びアレンは取調室に呼ばれた。ミーナは特に何も持っていない。ただ先ほど一緒にいた坂本がいないことを疑問に思った。

 

「あなたの機体の性能を確かめたいの。飛べるかしら?」

 

立ったままのミーナはそう言った。

 

「大丈夫だと思います。いつですか?」

「今、お願いできる?」

「えっと・・・、今すぐ、ですか?」

「そう。ぜひ見たいという人がいるの。」

 

誰だろう。ただの見物客かと適当にあたりを付けたレスリーは、

 

「わかりました。」

 

と答えた。残りの5人もということで、6人は警備兵に囲まれながら移動した。

 

 

*****

 

 

F-15SEⅡとMH-60を見ていた4人は、坂本少佐に呼ばれていた。飛行テストをすると説明を受けた。501部隊からハルトマンとバルクホルンが指名され、二人は上空でテストの評価をするよう言われた2人は、準備に取り掛かった。ユニットを履いた2人は離陸し、2機の航空機が離陸してくるのを待った。

 

「しかしここに来たのは6人だろ。たった2機だけなのに、多いんじゃないか?」

「私も思った~。」

 

などと話しながら、二人は基地を見下ろす。数分後、滑走路に数人の人影あらわれ、まず飛行機の方が飛び立ち、テストが始まった。このあと、2人を含めて501基地の全員が、どこからか来た航空機の性能に驚くことになることは、誰も想像しなかった。

 

 

*****

 

 

飛行テストには2機とも出ることになった。1機ずつ交代でテストを行う。パイロットを除く4人はテストの様子を見ることになった。変なことするなよ、と釘を刺したアレンは、滑走路に止めていた自分のF-15SEⅡに乗り込んでシステムを起動した。整備をしていなかったので少し焦ったが、起動のテンポは順調だった。エンジンが回転を始め、次いで姿勢制御、レーダー、火器管制などの機能が作動する。座席の後ろに置いてあったヘルメットを被ったアレンは、ふと頭を挙げた。いつのまにか少女と作業服の人が集まっている。兵士は少ない。銃も下にぶら下げている。警戒はなくなったのかと思っていると、ミーナの声が無線に響いた。

 

『レスリー少佐、聞こえる?』

「はい、感度良好です。」

『離陸したら上空のウィッチと合流して、随時性能テストを始めて頂戴。』

「了解。」

 

アレンはサイクリックを動かして方向転換を始めた。ハンガーを向いたままでは離陸できない。垂直離陸でもできるが、燃料の消費が激しくなる。それに、垂直離陸は緊急用の手段だ。普段から使うのは良くない。スロットルとサイクリックを細かく操作したアレンは離陸直前のチェックに入る。燃料もテスト飛行くらいなら問題ない…。

 

「あれ?なんでだ?」

 

なぜか2時間分が残っている。さっきここに着陸したのは、残燃料が少ないとアラームが鳴ったからだ。システムの不具合か?しかし何度チェックをしても異常なしと出る。

 

「ヴィルケ中佐、燃料の補給をしたのですか?」

『え?何もしていないわ。整備班にも触らないように言ったもの。』

 

なんでだ…?あれだけワシントン上空で飛び回ったのに…と少し疑問を抱きながらチェックを終えた。

 

「アクイラ1、離陸準備完了。発進許可を求む。」

『離陸を許可します。』

「了解。」

 

機体制御コンソールにある『サポート』を『Take Off』にセットする。滑走路がいつもより短いと感じたアレンは、スロットルをマニュアルより高い位置に引き上げた。高くなったエンジン音が響き、機体が徐々に加速する。滑走路が残りわずかになったのを見計らい、サイクリックを手前に引く。下から押し上げるような感覚がアレンを包む。

 

『えぇ!もう離陸?』

 

ミーナの驚いた声が無線に響く。HMDに表示される高度と速度計が順調に上がるのを確認したアレンは、

 

「こちらアクイラ1、離陸成功。これよりウィッチと合流して性能テストに入る。」

『り・・・了解。』

 

と通信を入れた。やはり珍しいのだろうか。アレン自身は、この世界が少し昔であることを理解している。ミーナらにはまだ話していないが、いずれ必要な時が来るだろう。その時になったらだな、と勝手に結論付けたアレンは、前方に意識を向けた。進行方向やや右手。二人の少女が飛行していた。やっぱり生身だよな…。足にはあいかわらず何か履いている。

 

「こちらNATO連合軍タスクフォース108のアレン・レスリー、階級は少佐だ。コールサインはアクイラ1。よろしくお願いします。」

 

先にアレンは口を開いた。

 

『ゲルトルート・バルクホルン大尉だ。機体の性能、見せてくれ。』

『エーリカ・ハルトマン中尉だよ。よろしくねレスリー。』

 

二人が交互に自己紹介をする。見た感じはまだ幼い。少女、という呼び方がまだ似合う年なのか。

 

『ハルトマン、相手は少佐だぞ。少しは礼儀正しくしろ。』

『えぇ~?』

 

そんな会話が聞こえてきた。大尉と中尉だったか。

 

「そんなことは気にしなくていい。こっちは相当年取ってからの少佐だからな。」

『だって~トゥルーデ。』

『と、年上なら尚更だろう?!』

「まあまあ、それはおいといて。早速テストに入りたい。どうすればいい?」

 

話を切り替える。あまり交流していては時間の無駄になってしまう。

 

『とりあえず最高高度からにしよう。適当なところで上昇を開始してほしい。』

「了解した。」

『遠慮しないで飛ばしてね~。』

 

二人に合わせていた速度を巡航速度まで戻す。

 

「じゃ、上昇を開始する。」

『了解。』

 

<Take Off>に入れていたサポートを<Normal>に切り替える。スロットルとサイクリックに集中し、上昇を開始した。スロットルを7割に。サイクリックをHMDの迎角表示が90になるまで引き、固定する。垂直に加速し始めた機体の高度があがっていく。普段このような飛行は、訓練でも実践でも行わない。最高高度は、機体を売り込むときのセールスポイントの一つにすぎないのだ。アレンが参加する作戦も、比較的低空での戦闘が多い。F-15SEⅡの最高高度は16300m。マルチロール機を目指して開発された機体であるため、上昇能力より対地上攻撃時の安定性を重視している。最高高度を目指して飛ぶ訓練といえば、入隊時にGに耐えるカリキュラムであったくらいだ。それ以来、16300mを飛ぼうと思ったことも飛べと言われたこともない。そういう意味では、未経験の領域だった。

 

「10000……12000……14000…………15000……そろそろ限界か。16000m。」

『おぉ…高いなぁ。』

『すっごい!すっごいね~!』

「大尉、次は?」

『次は最高速度だ。ちなみに、どれくらい出せるんだ?』

「出したことあるのは、2000㎞手前。本来ならもうすこし飛ばせる。」

『!?音速を超えるのか!』

「エンジンがエンジンだからな。では次段階へ移行する。」

 

高度を6000まで落とし、念のため燃料の残量を確認する。アフターバーナーを付けても大丈夫なようだ。スロットルを全開位置まで動かす。スロットルの移動を感知したF-15SEⅡのセンサーが、ドスンという衝撃と共にアフターバーナーを点火させた。900㎞/hだった速度表示が瞬く間に上昇する。体全体に重い何かが乗っかる感覚になる。

 

「1800……1900……。2000………2100……。」

『えぇ?2000までじゃないの?』

 

ハルトマンがそんな声を発していた。あくまでその数値は経験である。訂正しようと思ったが、目に見えない力に意識を持って行かれそうになるのでやめた。

 

「2300………2400…………、ここまでだな。2450が限界だ…。」

 

我慢ができないということもあったが、もうすでに初めて見る速度だった。スロットルを巡航位置まで下げる。体にかかっていた圧力が弱まり、アレンはふぅと息をついた。

 

『うわぁすごい…2450って…。』

『マッハ2か…!』

 

はるか後方に置き去った二人の声が無線越しに伝わる。すでに基地からは60㎞近く離れている。下には海が広がっていた。

 

「次はあるのかい?」

『いや、今日のところはここまでだ。基地に戻っていいぞ?』

 

驚いたままのバルクホルンが応答する。

 

「了解。帰投する。…ん?大尉、異様に黒い雲が見えるがあれはなんだ?」

『…!それはネウロイの巣だ。近づくと危ないぞ!!』

「おっとそれはマズイな。急いで帰還する。」

 

サイクリックを倒してロールからヨーに入る。ネウロイの巣―――黒い雲を後方に基地へと向かった。あれが人類の敵、ネウロイの本拠地か…。あれと戦うのが、ここへきて見た少女たちなのかと、アレンは少し不安になった。

 

 

*****

 

 

いままでより短い滑走路に、自慢でもあるV/STOL機能を作動させて着陸する。初めて来たときと同じように停止させると、階級が高そうな軍服の男がいた。ここの基地の司令官だろうか?ヘルメットを座席に置いたアレンは、コックピットから飛び降りた。ミーナが小さく手招きする。そういえば見物客がいるだとか言っていた。この人だろうか。

 

「貴様が、その機体のパイロットか?」

 

随分口が悪そうだというのが、アレンの第1印象だった。言わなくても分かるだろうと言い返しそうになったが、別のことを言った。

 

「あなたは?」

 

少し語調を強めて聞く。勢いで相手を脅すようにも見えたからだ。

 

「私はブリタニア空軍大将、トレヴァー・マロニーだ。貴様の名前はなんという?」

「はぁっくしょん!!」

 

思わず吹き出しそうになったのを堪え、くしゃみで誤魔化した。どっかの国で何かの食品の名称だった。どうでもいいことだったが、なぜか笑ってしまった。マロニーの顔が少し歪み、少し離れたところにいる少女らが驚いた顔をする。口元を隠して笑いを消したアレンは姿勢を正す。

 

「NATO連合軍タスクフォース108所属、アクイラ隊隊長のアレン・ロイド・レスリー少佐です。」

「今のクシャミはなんだ?上官を前にその態度はどういうことだ。」

 

おっといきなり怒らせたようだ。さっきより口調が激しくなっている。

 

「申し訳ございません。少し花粉症体質なので。つい我慢できませんでした。」

 

嘘です。花粉症なんてこれっぽっちもありません。

 

「ふんっ!まぁいい。ところで貴様はどこの世界の人間だ?その格好、後ろの戦闘機といい…この世界の者ではないな。」

 

流石大将だ。鋭い。武装をほとんど隠したままのF-15SEⅡを『戦闘用』の航空機だと見破った。

 

「私の世界には、ウィッチやネウロイといったものは存在しません。私の想像ですが、私たちは異世界の住人です。」

「そうか。やはり別の世界の人間共だな。それがこちらに侵入してきた、と。」

 

妙に『侵入』と強調する。こいつ、何か企んでいるなとアレンは直感した。

 

「貴様はこれからどうする?ここで生きていくのか?」

「このままただ死を迎えるつもりはありません。私は軍人なので、軍人らしい生き方をするつもりです。」

「なら、我々ブリタニア軍に入らないか?」

 

おぅっとビックリ、いきなり引き込むのか、こいつは。滑走路に集まった2人を除く全ての人が硬直した。141の4人もだ。

 

「大将!?それは流石に…!」

「君は口を出さなくていい。」

 

ミーナが焦ったように割って入るが、マロニーが片手で制する。

 

「いいのですか?私が本当の軍人であることを確かめなくても?」

「貴様に戦う気があるなら、我々は受け入れる。」

 

どこから来たかも定かでない戦闘機とそのパイロットをやすやすと受け入れる国家があるのか、とアレンは少し呆れて驚いた。この場でここまで決めるということは、ただ戦力として認めただけではない。何かを裏でつかもうとしているに違いない。ならば…。

 

「わかりました。お願いできますか?」

「簡単なことだ。…ようこそ、ブリタニア空軍へ。」

 

マロニーが手を差し出す。手袋を脱いだアレンも握手する。

 

「早速貴様に仕事をやろう。」

「なんでしょうか?」

「その機体の調査をしたい。」

 

そうくるか。この世界にない兵器、場合によっては今現在存在する兵器の中でトップクラスかもしれない。ネウロイとの戦いを少女らだけに任せるのは荷が重いと考えているのだろうか。もちろん、戦争の早期終結を望むのなら、アレンも協力したい。だが、アレンはその先を考えていた。

 

「それはご遠慮いただきたい。」

 

その答えにマロニーが怪訝な顔をする。

 

「なぜだ?軍人として生きるのだろう?」

「私はこの戦闘機のパイロットです。いつ来るかわからない敵を知っておいて、機体を分解することはできません。」

 

この答えでマロニーが引き下がるのを期待したが、無謀だった。

 

「だが兵器の技術を公表して、全世界で開発を行って量産することも大切だ。今が戦力不足であることを分かっているのか?」

「では、この機体のデータをコピーして作った機体を各国が持つとしましょう。ネウロイを殲滅したのち、残った戦闘機はいかがなさいます?」

「新たなネウロイが生まれるかも知れまい。それに向けて配備するのだ。」

 

当然だと言わんばかりにドヤ顔をする。アレンには、マロニーが何を考えているのか分かった。

 

「嘘だな…。」

「なんだと!?」

「戦争が終結すれば、戦闘機は一時的に不要になるでしょう。しかし、それらを使って何かを始めようとする人が出てくるはずです。」

 

マロニーが黙り込む。隣にいるミーナもわからないといった顔をする。

 

「ネウロイがいなくなったら、次は他国の人間を攻撃するかもしれません。領土か資源か、原因はいろいろですが…。余った戦闘機をもって敵地へ侵攻し、人を傷つけることも可能です。…私がいた世界でもそういったことがありました。私がいた国が他国と戦争を起こしました。相手国の被害者は、当然私たちを恨みます。それがエスカレートしてゆけば…どうなるかお分かりでしょう。」

 

アメリカがボスニアへ侵攻。そこにはある女性、クリスタ・ヨスラフ―――アンドレイ・マルコフの妻がいた。しかし彼女は米軍の爆撃により死亡。以来、マルコフはその恨みを原動力として殺し合いに手を染めた。機体には独特のシャークマウスを施し、連合軍からは『アクーラ(サメ)』と呼ばれて恐れられた。戦争中の彼は凶暴なホオジロザメだったかもしれない。だがもとはおとなしいジンベイザメだったはずだ。自分たちが戦争などを始めなければ、醜い殺し合いも起きなかった、とアレンは思う。

 

「…ふん。仕方がない。なら、この基地で任務に当たればいい。後ろの連中も含めて、貴様らに辞令を出す。ブリタニアの兵として働け。」

「はっ」

 

反射的に敬礼をする。マロニーも敬礼で返す。マロニーは護衛の兵と共に立ち去った。いくぶん機嫌を損ねたようだ。印象悪く映ったか?

 

「ずいぶん格好良かったわね。」

「どうも…。」

 

ふぅと息をついた。ここにきてどっと疲労感を感じた。普段したことのない連続だったこともある。

 

「あなたも認めてもらえてよかったじゃない。」

「そうだな…。改めて、よろしくお願いします。」

「えぇ、こちらこそ。」

 

二人は握手を交わした。丁度ディアナのAUH-72もテストを終え、着陸する。

別世界から来た6人が、正式に501部隊と共同任務にあたることになった。

 

 




お読みくださってありがとうございます。

ずらずら書いていたら、こんな字数に…。すみません。
はなしの展開があっているか不安です。


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