16話 芽生える想い
「…というわけであいつらに正体を教えたってわけだ」
「そっか…そういうわけで…」
悠斗の報告にツナは少し納得いかないような反応をした。
いくら《超えし者》として超化されている彼らとはいえ裏社会の物事に巻き込んでしまったことを悔いているようだった。
「…分かってるよツナ。けどあいつらの覚悟を見ちまったからさ。ハルや京子のときミテーにな」
以前未来での戦いの際、御堂春と笹川京子がマフィアの真実に勘付いて自分たちに説明を求めた時もそのことでかなり揉めたことがあった。その際悠斗は「半端に隠すよりは安全だ」とツナたちに真実を話すべきだと言ったことがある。今回もこれからのことを考えて、今だからこそ言うべきだと判断したのである。
「うん、分かっているよ。悠斗くんがそれが一番良いって思ったんならオレも信じるよ。何かあったらすぐ言って」
「サンキューなボス」
そう言うと悠斗は携帯をしまい、ベットに横たわった。
「…必ずあいつらは守る。それが俺の責任だ」
深夜、シャワールーム
少女_____穂高みやびは異性が苦手だった。
子供の頃から消えないトラウマがある……というわけではなく、単にもともとが人見知りであり、恥ずかしがりな性分であっただけだ。その上、姉と同じく女子のみが通う中学へ進学したことも牽引した理由の一つだ。しかしながら、苦手と言っても恋愛に興味を持たないわけではない。
故に、自分もいつかは誰かと___などと想像くらいはしていた。そんな中、彼という存在に出会った。
最初の出会いは衝撃的だった。自分の対戦相手を彼自身が戦っていた相手もろとも吹き飛ばして腰を抜かしていた自分に手を差し伸べてきたといったものだった。
その後隣の席になったばかりか同じ部屋になり、最終的には自身の絆双刃になっていた。
それでいて彼は強かった。明らかに格上であった月見先生を打ち破り、今や同期の中ではトップの実力を持っていた。実際彼は試合で素人の自分でもわかるほどの強さで同時に心を奪われていた。
何より彼は優しかった。何の取り柄もない自分を絆双刃に選んでくれて、それどころか私のトレーニングをサポートまでしてくれた。そして彼のおかげで最初は走りきれなかったマラソンも今では完走出来るようになっていた。
そして彼の笑顔に惹かれていた。彼の笑顔はとても優しく、見ているだけで心を奪われていた。
彼が巨大マフィアの幹部と知った時もそんな優しい彼を知っていたから恐れることはなかった。
彼のことは初めは面倒見の良い優しいお兄さんのように感じていたが、それは変わり始めていた。
シャワールームから出てくると悠斗はもうすでに眠っていた。ふと彼の顔を見ると、
「zzz…」
そこには世界に名を轟かす巨大マフィアの幹部としての彼も、学年最強と名高い彼のどちらでもなくただ1日の疲れから眠っている少年がそこにいた。
「フフッ悠斗くん…寝顔可愛いな…」
みやびはそっと彼の顔を見て微笑んだ。
そして、少しずつ彼の口へと近づいていき____
「…みやび?」
ふとみやびが目を開くとそこには目をかすかに開いた悠斗がいた。
「ゆ、ゆゆゆ悠斗くん!?ご、ゴメンもしかして起こしちゃった!?」
「ん?ああいや、大丈夫。どうやら寝落ちしていたみたいだな」
悠斗はふとベットから起き上がると緑茶を2つの湯のみに入れて
「ホイ、みやびも」
そう言ってみやびに湯のみを渡した。
みやびがそれを飲むと緑茶の香りと温かさが自分の体を包み込んだ。
「…美味しい」
「そっか、そりゃ良かった。本当はエスプレッソの方が淹れるのが得意なんだけどもう消灯時間だから眠れなくなるとマズイと思ってね」
そう言うと悠斗はニカッと優しい笑顔をみやびに向けた。
「…………!!」
みやびはその笑顔を見た途端、再び胸の鼓動が激しくなった。
「そんじゃあもう遅いしおやすみ」
「う、うん…おやすみ」
ベットの中に入ってもみやびは胸の鼓動は治らなかった。
『あと、天峰悠斗と上手くやんなさいよ』
『ふふ、悪いけどバレバレよ』
突然、リーリスの言葉がみやびの脳裏をよぎった。
その言葉を振り返ってみやびはようやく自身の気持ちに気づいた。
「そっかぁ…
私、悠斗くんのことが好きなんだ…」
気づいてしまった気持ちにみやびは顔がどんどん熱くなり、彼という存在をどんどん意識してしまった。
「どうしよう…」
こうして___穂高みやびは、己の初恋を自覚する。
同時刻、校舎裏
「では、決行の日時は変わらずということで、それで、《装鋼》の方は?」
『うむ、ついさっき調整を終えたところじゃ。あとは『素材』さえ揃えば完璧じゃわい。お前さんの送ってくれた《素材》のデータも見てみたがなかなか良い《素材》になりそうじゃないか』
「ありがとうございます。…では次の任務の内容は《魔女》と《素材》の確保ということで?」
『うむ、もっとも最悪《素材》だけでも問題ないんじゃがな』
「…わかりました。全ては貴方様の悲願のために」
『うむ、頼むぞ。』
「それと博士、1つ聞きたいのですが」
『何じゃ?』
「《シェード》の事です。奴は信用出来るのですか?」
『あぁそのことか、心配いらん。奴はボンゴレにしか興味がないようだからな』
「…わかりました。貴方様がそう言うなら間違いないのでしょう。」
「おいお前!!そんなところで何をしている!?」
「…!!すいません。また後ほど連絡します」
『うむ、気をつけてな』
見回りの教師に見つかりそうになり、影は慌てて電話を切りすぐさまそこを去っていった。
見回りの教師もおそらく夜更かししていた生徒と思い、特に気を止めなかった。
数日後、船上
「う…ぷっ……マジで酔った」
少々重めの扉を開いて外へ出ると、日差しに目が眩んで細まる。それと同時に、強い潮の香りを持つ風が鼻腔をくすぐった。外の景色へ目を向けると___青。
天地ともに、一面青だった。どこまでも続く大海原が、視界の先に広がっていた。悠斗たち昊陵学園の一年生は、今日から一週間の臨海学校を行うため、船に乗って南の島へ向かっているのだ。
しかし、悠斗は船酔いにやられ、酔いを和らげようとデッキに出たのであった。
「潮の香りがすごいなぁ…それに、空も海も真っ青だ」
デッキへ足を踏み出すと、より一層潮の香りが濃くなったように感じた。そこに腰を下ろし、風を感じながら、しばらくじっとしていると、
ガチャリ、と音を立てて船室とデッキを隔てる扉が開く。姿を見せたのは悠斗の絆双刃、穂高みやびだった。
「みやび?どうしたんだ?」
「え、ええと…悠斗くんがなかなか帰ってこないから心配になって…さっきもちょっと様子が変だったから」
「あー悪い、実は俺船酔いが酷いんだよ…昔からバイクとか車での公道は平気なんだけど船と山道のクネクネしたとことかは一向に慣れなくて…」
「フフッ、悠斗くんにも苦手なものってあるんだね」
「な、何だよ。俺だって苦手なもんくらいあるって。敢えて言わないけど」
「そうなの?」
「むしろ苦手なもんがない奴のほうが少ないって」
悠斗とみやびははそんな会話をデッキの上で続けていた。
「…ねぇ悠斗くん、1つ聞いてもいい?」
「なんだ?」
「…悠斗くんって好きな人とかいる?」
「好きな人?それって『LOVE』の方?」
「う、うん…」
みやびの突然の質問に悠斗は少し考えて
「…考えたことないな。悪い、大した答え出せなくて」
「う、ううん。こっちこそごめんね、急に変なこと聞いちゃって」
みやびは顔を赤くして悠斗に謝るが、悠斗はみやびの頭を撫でると
「気にすんなって。それに、俺たちは絆双刃なんだからさ、余計な壁を作るのは無しだ。他にも聞きたいことがあった時はいくらでも聞いてくれよな」
悠斗の言葉にみやびは少し微笑み、小さく頷いた。
その後は2人で軽く日向ぼっこをしていたのだがふと悠斗が気付くとみやびは悠斗の肩の上で眠ってしまった。
「…………」
温かい。触れている部分から、みやびの体温が伝わってくる。
「……可愛いな。」
そして、思っていた以上に気を許してくれていることが悠斗は嬉しかった。異性が苦手ということを感じさせないくらい、友人として仲良くなれたことが嬉しかった。
書いちゃいました!!!
甘く出来たでしょうか…?
感想よろしく