アブソリュート・デュオ〜銀狼伝〜   作:クロバット一世

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悠斗は自分の気持ちを振り返ります


殺破遊戯編
20話 自分の気持ちを


 

翌朝___分校組との別れがやってきた。波止場に立ち、船を見送る分校組。彼らの判別がつかなくなって来ると、船尾デッキから十人近くいたクラスメイトが一人、また一人の次々に船内へ入っていく。最後まで残ったのは悠斗だけであった。透流たちは少し離れたところからその様子を見ていた。

 

「みやび…」

 

悠斗は自分が不甲斐なくて仕方がなかった。絆双刃のみやびを傷つけてしまったばかりかその行方もわからず、悔しさ以上に情けなかった。

 

「何がボンゴレの守護者だよ…ちくしょぉ…」

 

「悠斗さん…そろそろ…」

 

すると、背後から梓が声をかけてきた。

 

「みやびさんは分校の皆さんが全力で探してくださるそうです…大丈夫ですよ。必ずみやびさんにはすぐ会えるはずです」

 

島の方は伊万里たち分校組が捜索するそうだ。学園の方でも捜索するらしい。

 

「……分かった。悪いな」

 

「気にしないでください。私もみやびさんが心配ですから」

 

悠斗は梓と共に船に乗り、そして船が出港した。

 

 

 

 

臨海学校から戻ってきて最初の土曜日を迎えた。時期的に世間はすっかり夏休みムードだが、昊陵学園において関係の無い話だ。最低限の一般教養の授業に加え、昊陵ならではの技能教習___戦闘技術の訓練時間を考慮して、夏休みはお盆を中心とした一週間にも満たない連休があるだけだ。そういったわけで七月下旬の今日も、学校へ向かった。

 

教室へ入ると、始業間近だというのにクラスメイトは退学者を除いても七割程度しか登校していなかった。進退を悩んでいる奴らが、不登校気味となっているためだ。

俺は室内にいるクラスメイトを見回し、その中に自身の絆双刃の___みやびの姿が当然のように見当たらないことで、ため息を漏らす。

それもそうだ、みやびは未だに見つかっていなかったのだから。

 

 

『好き、大好きなの』

 

まっすぐに俺へと向けられたみやびの告白、しかし俺はそれに答えられなかった。

俺はボンゴレの守護者になる前は裏社会で傭兵まがいなことをしており、裏社会の連中から怖れられていた。そんな俺のことを理解した上でみやびは俺に『好き』と言った。

俺はそのことに戸惑い、結果、彼女を傷つけてしまった。

 

「みやび…何処にいるんだよ…」

 

 

 

今日は臨海学校以来となる格闘訓練が行われることとなった。臨海学校で負傷した生徒が二桁を越えたため、先週は座学中心となっていたので体を動かす訓練は久しぶりになる。訓練は打撃や投げという格闘術の基礎修練を主とし、《無手模擬戦(フィストプラクティス)》が終わり、本日の最後の訓練は、一対一の《焔牙模擬戦(ブレイズプラクティス)》を行っていたが___

 

「はぁ!!」

 

「くっ…」

 

悠斗は橘と戦っていたのだが、橘の動きに翻弄され、思うように戦えていなかった。

 

「どうした悠斗!?君の実力はこんなものではないだろ!?」

 

「くっ…」

 

悠斗も反撃するが動きにキレがなく、すぐに橘に翻弄されてしまった。そして、一瞬の隙を突いた橘が《鉄鎖》で悠斗の足を縛り橘の勝ちとなった。

 

 

 

 

「はぁ…」

 

悠斗が訓練所の外でスポーツドリンクを飲んでいると…

 

「隣良いか悠斗?」

 

横から橘がペットボトルのお茶を持って話しかけてきた。

 

「橘…別に良いぜ」

 

橘は悠斗の隣に座るとお茶を飲みはじめ、

 

「今日の訓練は雑念だらけだったな悠斗」

 

「…すまん」

 

橘の言葉に図星だったのか悠斗は謝った。

 

「気にしなくて良い…しかし悠斗、あまり自分を責めるな。君一人の所為では「違うんだよ!!!」っ悠斗?」

 

突然怒鳴ってきた悠斗に橘は驚きを隠せなかった。

 

「…悪い、急に怒鳴って…でも違うんだ…そうじゃないんだよ…」

 

「悠斗…?」

 

「俺…お前たちと別れた後……みやびに告白されたんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……え?えぇぇぇぇぇ!?」

 

悠斗の突然の言葉に橘は驚愕した。

 

「な…そ…その…こ、告白?それってつまり…みやびが悠斗に…」

 

「ああ、好きって言われた…」

 

「そ…そうか…それで…なんて答えたんだ?」

 

橘は取り乱しながらも悠斗に聞いてみた。

 

 

 

「…答え…られなかった…」

 

「…………!!!」

 

その返事に橘は悠斗の顔を見た。

 

「俺は…裏社会で傭兵まがいなことをしてきて…裏社会でも怖れられてきた…そんな俺のことを…みやびは好きって言ったんだ…俺は…それに取り乱しちまったんだ」

 

「………………」

 

「俺は…その結果みやびを「…の…」…え?」

 

「この大馬鹿ものがぁぁぁ(バッチーン)「ってぇ!?」」

 

突然橘が悠斗の顔を思いっきり殴った。

 

「な…なにを…?」

 

「お前は…それがどれだけみやびを傷つけたのかわかっているのか!?」

 

橘は悠斗へ怒りを露わにした。

 

「橘…?」

 

「悠斗…私はな…幼い時から恋愛というものをした事がない…しかしな…それでも告白というものをするのがどれだけ勇気が必要かはわかる…みやびはその時…とても勇気を振り絞ったんだと思う…だから!!悠斗がその告白に答えを出さなかった事が許せない!!」

 

橘は許せなかったのだ…女だからこそ好きな人に気持ちを伝える事がどれだけ勇気がいる事が分かった…だからこそ、それに答えを出さなかった悠斗が許せなかったのだ。

 

「…分かってる…勝元にも言われたよ…『答えを出さねえ』ってのが一番相手を傷つけるって…だけど…なんて答えりゃ良いんだ…」

 

「決まっているだろ」

 

「…え?」

 

「君の本心を伝えるんだ」

 

「俺の…本心…」

 

悠斗は橘の言葉を繰り返し、自分の気持ちを振り返ってみた。

 

恥ずかしがり屋だけど、優しく可愛らしいみやび。そんなみやびと絆双刃になり、いつの間にかそんな彼女に心を許していた。そして気づけば彼女のことになると胸が苦しくなるようになった。

そうか…

 

「俺の気持ち…ハハッ…考えるまでもなかったな…」

 

悠斗は自分の気持ちに気づいた。穂高みやびへの気持ちに

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺は…みやびの事が好きなんだ」

 

そう、考えるまでもなかった。自分はみやびが好きだったのだ。気づいた途端、自分の中の何かが吹っ切れた

 

「ありがとう橘…おかげで吹っ切れた」

 

悠斗はそう言うと立ち上がり歩き出した。

 

「悠斗、何処に…」

 

「ちょっと用事ができた」

 

そう言うと、悠斗は目的の場所へと向かった。

 

 

 

 

 

〜理事長室〜

 

「…まさか貴方の方から来るとは思いませんでしたわ」

 

理事長室には九十九朔夜の他に悠斗がいた。

 

「あんたに聞きたい事がある」

 

「《焔牙》の真の力のことですね?」

 

悠斗の問いを聞くまでもなく朔夜は聞き返した。

 

「…お見通しってことか。なら話が早い…教えてくれ…俺はどうすれば真の力を解放する事ができる?」

 

悠斗の問いに朔夜は笑みを浮かべた。

 

「貴方は《醒なる者》。《黎明の星紋》を投与された《超えし者》とは違いますからね。…ですが心配いりませんわ。貴方が強く力を求めた時、それは目覚めます」

 

「…そうかよ、そんじゃとりあえず信じてみるよ。必ず手にしてみせる」

 

そう言って悠斗は部屋から出て行こうとすると、

 

「天峰悠斗、貴方には期待していますのよ…貴方が《絶対双刃》へ至る日を」

 

朔夜の言葉を聞き教部屋を去っていった。

 

 

 

幻騎士はもともと歴史あるマフィア、ジッリョネロファミリーのメンバーの一人であった。しかし、ある地震のあと、突然周りから裏切り者と蔑まれるようになった。その後、徐々にその理由が分かった。自分は旅先で未知の病に罹り、その地獄から救ってくれた白蘭にねがえったことに。

その後、俺はファミリー内での居場所を失った。その後は俺は世界を放浪した。しかし、自分も裏社会では名の知れた存在ゆえ、何度も命を狙われた。たいていの敵は倒すのは容易かったがそれでも徐々に精神は疲弊していった。

なぜ自分がこんな目にあうんだ。未来の俺だって命の恩人であった《彼》に忠誠を誓っただけじゃないか。なぜ…………そうか、ボンゴレの所為だ。奴らが余計なことをした所為だ。だから自分がこんな目にあったんだ。憎い…にくい…ニクイ…ボンゴレガユルセナイ…

 

『ちょっと良いだろうか?』

 

ある日、自分に白衣の老人が訪ねてきた。

 

『儂は《装鋼の技師》じゃ。幻騎士よ…儂と手を組まんか?』

 

《装鋼の技師》…裏社会でもヴェルデ、ケーニッヒ、イノチェンティ同様名の知れた技術者であった。幻騎士はその男の突然の申し出に興味を持った。

 

『…何が目的だ?』

 

『いやなに、儂の発明した《装鋼》をお前さんに纏って欲しいんじゃよ。無論ただとは言わん。お前さんの要望には出来るだけ答えよう』

 

《装鋼の技師》の言葉に幻騎士は興味を持った。もしその装備が強力ならボンゴレに復讐する良いチャンスだ。うまいこと利用出来る。

 

『…なら俺の復讐に協力しろ』

 

その言葉に《装鋼の技師》はニヤリと笑い

 

『良いだろう、交渉成立だ』

 

 

幻騎士がふと目を覚ますとそこはアジトの研究室の部屋の隅であった。

 

「…夢か」

 

幻騎士は最近見ていなかった夢に溜息をつくと

 

「さて…《装鋼の技師》は何処に…」

 

ドコオォォン

 

「…?」

 

突然近くから大きな音が聞こえ、その場に向かうと…多数の《装鋼》を纏った《神滅部隊》が最新の《装鋼》を纏った少女に倒されていた。

 

「なんだこれは?」

 

「ついに我らの研究が完成したんですよ《シェード》…いや、その顔の時は幻騎士と呼ぶべきですかね?」

 

すると、背後から金髪の青年《K》が現れた。

 

「…名前などどうでも良い。それより《装鋼の技師》は何処だ?奴に用がある」

 

「儂ならここじゃ」

 

幻騎士の問いに《装鋼の技師》エドワード・ウォーカーが現れた。

 

「どうじゃ幻騎士?《彼女》こそ儂の研究の成果じゃ…なかなか見事じゃろ?ただの少女でさえこれだけの力を発揮する…儂の部隊にこの力を加えればもはや恐れるものはない」

 

「…確かに面白くはある…実際に使っているしな…貴様には感謝している。おかげでボンゴレを倒せそうだ」

 

「それは何よりじゃ」

「だからこそ確実に倒したい…《アレ》の使用を認めてほしい」

 

「構わんよ」

 

「ボンゴレは俺の手で…っ!?」

 

ガキィィィン

 

突然少女が幻騎士に攻撃を仕掛けてきた。幻騎士は咄嗟に剣を抜き防ぐが、強力な一撃に後ろに下がった。

 

「貴様…何の真似だ?」

 

「駄目だよ…悠斗くんを傷つけるなんて…許さないよ…」

 

少女の目は虚ろであった。おそらく洗脳の類で操られているのだろう

 

「フォッフォッフォッすまんな幻騎士…どうやら彼女は天峰悠斗にご執心のようじゃわい…天峰悠斗は彼女に譲ってくれんかの…他のボンゴレなら構わんから」

 

「貴様…ふんっまあ良いだろう…その時はボンゴレはその程度であったということだからな」

 

幻騎士とエドワードの会話の中、少女は虚ろな目で

 

「待ってね悠斗くん…私…こんなに強くなったんだよ…」

 

愛しい彼の名を呼んだ。

 





ハイ今日はここまで!!ついに悠斗が気づきました!!
悠斗…少しメンタル弱かったでしょうか…でも後悔はしていない!!
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