「ん……ここは…?」
悠斗が目を覚ますとそこは医務室のベットの上であった。
どうやらあの後悠斗は倒れたまま眠ってしまっていたらしい。しかし、あれだけの戦闘のダメージで《眠っていた》だけで済んだのは悠斗の頑丈さもあるのだろう。
「あ…………。」
ふと声がしたので隣を見ると、そこには目を真っ赤にしてこちらを見つめる自身の絆双刃、穂高みやびがいた。
「悠斗くんっ!!」
「んなっ!?み、みやび……く、苦しい…離れ…っ!」
突然みやびに抱きつかれた悠斗はどうすればいいのか戸惑っていたが、ふと、みやびが泣いていることに気づいた。
「良かった……本当に良かった……悠斗くんが死んじゃったらって思ったら……わたし……」
その時、悠斗は彼女にさらに心配をかけてしまったことに後悔し、そのままみやびの頭を優しく撫でた。
「悪かった……少し心配かけ過ぎちゃったな……でも大丈夫だよみやび、言ったろ?絶対に帰ってくるって。」
「うん……でも……悠斗くんが目覚めなかったらって思ったら怖くなっちゃって……」
ガラッ
「悠斗!!目が覚めたか!!」
声を聞きつけたのか巴たちが病室へと入ってきた。透流も手に包帯を巻いているが無事のようだ。
「みんな、悪いな迷惑かけて」
「まったくだ……貴様は本当に筋金入りのバカだな。ここまでくると勇敢を通り越してバカだぞ。」
「そう言うなよトラ、悠斗のおかげで俺たちも無事で済んだんだから。」
トラは呆れたように悠斗を叱り、それを透流がなだめていた。
「悠斗、みやびに感謝するんだぞ。君のそばで一晩中看病していたんだからな」
「そうなのか?ありがとなみやび。」
「う、ううん。わたしにはこれくらいしか出来ないから…」
「あ、あの……悠斗さん……。」
するとみんなの後ろから梓が現れ、ビクビクと怯えながら悠斗の前に出てきた。
「梓………」
すると、梓は決心した顔を見せ、
「すみませんでした!!!わたしのせいで皆さんを危険に晒しただけでなく…みやびさんまで……許してもらえるとは思っていません!!でも……この罪を償わせてください!!でないと私……」
「……そうか…それじゃあお前に罰を与えるとするか……」
「なっ…悠斗!?」
突然悠斗の口調が重くなり、透流は慌てた。
「まっ…待ってくれ悠斗!!梓も心から反省している!!私も謝る!!だからどうか…」
「そ、そうだよ悠斗くんっ!!わたしももう大丈夫だから…」
巴とみやびは悠斗を止めようとするが、悠斗は梓を無言のまましっかりと見つめ、そして
「せいやぁぁぁぁぁあ!!」
スパァァァァン!!
悠斗はどこから出したのかハリセン片手に梓に綺麗な一撃を繰り出した。
「え………?悠斗さん……なにを……?」
「許す!!!」
きょとんとする梓に悠斗は大きな声で一言言った。
「橘やみやびが許しているんだ…それに他のみんなも許してるみたいだがからな…だけどそれでもお前がみんなを騙していたことの示しはつけなきゃなんねぇ…だから、ハリセン一発、これでお前を許すって決めた。」
悠斗は梓に笑顔でそう言った。その言葉に梓はポロポロと涙を溢れさせた。
「悠斗さん……あり…がとう……ございます…わ…わた…し…う…ウワァァァァァア!!!」
我慢の限界だったのか梓は泣きだしてしまった。
「梓…良かったな…」
「梓ちゃん…」
「巴さぁん…みやびさぁん……ごべんなさぁぁい」
梓は巴とみやびに思いっきり抱きついた。
ムニュン
その時、みやびと巴の胸が梓の慎ましい胸を圧迫した。
「巴さぁん…みやびさぁん…うううう…ゔゔゔゔゔ…ごれでがぁったと思うなよぉぉぉぉお…」
「急に怒りだしたぞ!?」
「しかもマジ泣き!?」
梓の突然の変貌に透流とトラは驚愕した。
その時、
ガラッ
「天峰くん!!大丈夫?見舞いに来たよ!!」
「けっ、騒がしいと思ったら…」
「ははっ、元気そうだな。」
「極限に見舞いに来たぞ!!!」
「ランボさんが来てやったんだもんね!!」
「……大丈夫?」
突然扉が開きツナたち10代目ボンゴレファミリーが入ってきた。
「な、なんだ貴様らは!?」
「あ〜落ち着けってトラ、紹介するよツナ、こいつらが俺のこの学校でのクラスメイトだ。みんなにも紹介するよ。こいつはツナ、俺が所属しているボンゴレファミリーの10代目ボスだよ。」
『え……えぇぇぇぇぇぇえ!?』
悠斗の言葉に透流たちが驚愕した。
「ボ、ボンゴレのボスって俺たちと同い年だぞ!?俺…てっきりスーツ姿でダンディな髭のおじさんかと…」
「典型的なボスのイメージだな透流。」
「わ、私は龍の刺青で和服姿で腰に匕首を刺した人かと…」
「いやそれマフィアじゃなくてヤクザだから橘。」
ツナが少年という事にみんなは驚愕した。
「ところで沢田さん、確か他にも雲雀とかいう男がいたと思うのだが…」
「え、えーと…雲雀さんは呼んだんだけどどこか行っちゃって…」
「そうか…あの男には少し因縁があったのだが…」
巴は以前の《あらもーど》での騒動を思い出しながらため息をついた。
「そーだったおいツナ!!雲雀の奴こっちの方まで俺を咬み殺しに来たんだぞ!!お前ボスだろ、なんとかしろ!!」
「えぇぇぇぇっ!?オレのせいなの!?」
「おい天峰ぇ!!オメェ10代目の所為にしてんじゃねぇ!!」
悠斗の言葉に獄寺は怒りながら悠斗を睨みつけた。
「うるせぇタコ頭!!」
「なんだとアホ狼!!」
『ウギギギギ…』
「ちょ、ちょっと2人とも」
ガン飛ばしあいしだした2人ツナは慌てて止めようとしていた。
「なんか…マフィアって言うよりクラスメイトって感じだな」
そんな彼らを見て透流は笑みを浮かべた。
ツナたちは後始末をするために一旦学園を離れた。
悠斗は体のダメージも了平が《晴》の炎で治癒したこともあって大分回復していたので手伝いに行こうとしたがツナが『悠斗くんは休んでいて』という言葉に従いくつろいでいた。その時、
ガラッ
「ゆ、悠斗くん…体は大丈夫?」
みやびが心配そうに入ってきた。
「あぁ、問題ねぇよ。ある程度はもう治ってるから出かけても大丈夫だよ。」
「そ、それじゃあ、夜六時に、校門前に来てくれるかな」
「校門前?別にいいぜ」
「じゃ、じゃあよろしくね。」
みやびはそう言うと病室を去って行った。
そして、午後6時前、悠斗は校門前に来ていた。
「少し早かったか、な……」
藍色へと変わりつつある空の下を歩いていく。外灯は敷地内の至る処に設置されているが、日が沈んだ後が薄暗いことには変わりない。
(話、か……)
《装鋼(ユニット)》の件、告白の件、そして今後の事について、話すことになるだろう。
ならばちょうどいい、俺も彼女に話さなければならないことがある。
やがて守衛所前を通り___正門を抜けると___そこに、彼女は居た。
「よっ、みやび。早いな」
「こ、こんばんは、悠斗くん」
「こんばんは___って、みやび、その格好どうしたんだ?」
みやびは浴衣姿だった。
「あ、こ、これ?えっと___お、思い出作りと言うか、その……昼間、巴ちゃんと梓ちゃんに付き合って貰って買ってきたんだけど___もしかして似合ってない、かな……?」
「いや、すごい似合ってるよ。よく似合ってて可愛いぜ。」
「か、かわっ……⁉︎そ、そんな、お世辞なんか言わなくても……」
「ん?いや、お世辞じゃなくて、思ったことをそのまま言っただけなんだが」
「あ……。そ、そうなんだ……。えっと、あ、ありがと、悠斗くん……」
少しうつむき加減で、みやびが礼を言う。
「しかしどうして浴衣を___あ、それより、話をするんだっけ?」
「う、うん……。でも話をする前に、少し時間を取らせて貰ってもいい?」
「ん、ああ、それは構わないけど何かあるのか?」
「……じ、実はね。今日、近くで開催される花火大会に行こうかなって。それで、悠斗くんさえよかったら……い、一緒に行ければって思って、その、つまり___ 」
「花火大会?」
不思議そうに聞き返すと、みやびは、こくりと頷いた。
「ゆ、悠斗くんと……デート、したいなって……」
「え……?」
重めの話をすると思って気を高ていたが、まさか、デートをしたいと言われるとは。
「ダメ、かな?」
「___い、いや、いいよ!えっと、オッケーだ」
「あはっ、よかったぁ」
途端、みやびに笑顔という花が咲く。
(やべぇ…すげー可愛い…思わずドキッとしちまった。)
「……だけど、俺、こんな格好だし、それに外出届も出さないとダメだよな……」
上はTシャツ、下はジーパンという格好。それに外出届出さないと駅の改札を通ることが出来ない。
「そ、それだったら、ちょっと待ってて……」
そう言い残し、カランカランと下駄の音を立てながら、みやびが正門をくぐって守衛所へと駆けていき、警備隊の人と何事かを話したみやびが、戻ってくる。
「外出届出してきたよ。」
聞けば守衛所でも外出届は出せるらしい。
「まじか…全然知らなかった。」
「クスクス。生徒手帳に書いてあるよ。悠斗くん。」
当然のごとく悠斗は読んでない。
「そ、それじゃあ悠斗くん…デ、デート、行こうか」
「あ、ああ。そうだな。」
意識している女の子と今から一緒に花火大会へ行く。
デートをする。
そして、悠斗たちは駅へと向かった。
「「 ………… 」」
モノレールに乗り込むが、この時間帯から出かける生徒はほとんど居らず、車内には悠斗たち以外に一組しか乗っていない。向こうもデートのようではあるが、こちらと違って会話が弾んでいるのが分かる。とりあえず、この無言状態をなんとかしようと、話題を振ってみる。
「もうすぐ出発だな」
「う、うん、そうだね……」
「「 ………… 」」
会話終了。苦悩していると、今度はみやびが頷いたままに話し掛けてきた。
「私ね、男の子とデートするのって初めてで…前に悠斗くんと出かけた時は、デートって言うより買い物って感じだったし…何を話したらいいかわからなくて…」
「確かに俺も…デートは初めてだな。」
「え……?悠斗くんも……初めてなの?」
意外そうな顔で訊いてくる。
「ああ、うん、まあ、な……」
「わたしが、悠斗くんの初めて……」
噛みしめるように呟いた後、みやびは嬉しそうに笑った。
それからすぐに、駅へと到着する。電車が止まると立ち上がり___みやびへ、手を差し出した。
「あ……。ありがとう、悠斗くん」
おずおずと手を乗せ、みやびも立ち上がる。が、話はそこで終わらなかった。
「……あ、あのね、悠斗くん。このままでも、いい?」
「このまま?」
「手、このまま繋いでいたいなって……」
「ん、ああ、いいよ。デートだからな」
うんっ」
はにかみつつも、きゅっと繋いだ手を少しばかり強く握ってくる。
電車を乗り継ぎ、目的の駅に近付いてくるにつれ、花火大会へ向かう人の姿が増えてきた。やがて駅に到着して外へ出て、悠斗たちは会場へ向かう人たちの流れに乗って進み始める。
「出店が結構出てるな」
「先に何か買って食べちゃう?」
「それがいいかもな。会場に着いたら、出店で買い物もする余裕があるかどうか怪しいしな」
いつもなら夕食時ということで、先に食べておくことに決めた。手はここで離し、悠斗はりんご飴と焼きとうもろこし、みやびはツナサラダクレープ、そして二人揃って大判焼きを一つずつ購入して、会場へと向かいながら食べ始める。
「あ、悠斗くん。」
「ん?」
「えっと……」
悠斗の顔を見て、みやびが何か言いたげな様子を見せて逡巡し___
「とうもろこし、ついちゃってるよ」
と言うなり、俺の頬に手を伸ばしてきて取ってくれる。___しかも、そのままぱくりと食べた。
「あ……」
「え、えっと……は、恥ずかしいね、これ……」
「そ、そうだな」
と、そのとき___ドーン、と大きな音が聞こえて空気が震えたかと思うと、夜空に大輪の花が咲いた。
「わぁ、綺麗……。それにすごく大きいね……」
打ち上げ場所が近いからこそ迫力のあるサイズに、みやびと俺は見入る。
「すげーデカイな。こんなに近くで花火を見るのは初めてだ。」
「ふふっ、わたしもだよ。すごい迫力だよね」
「ああ。だけど上を見て歩くのも危ないから、しっかりと見るのは会場まで我慢しよう。」
「うん、そうだね」
道端にあるゴミ箱へゴミを捨てて、再び会場目指して歩き始めると___みやびがそっと、遠慮がちに手を重ねてくる。
「人も多いし、離れないようにしとかないとな」
そう言って、みやびの手を握ると___
「うん。ありがとう、悠斗くん」
みやびは笑みを浮かべ、握り返してきた。そして会場に到着したのはいいのだが、次第に会場は混雑を増していく。あまりの人の多さで自然とスペースは狭くなり、だんだんみやびとの距離が近づいてきたところまでは、まだセーフ。
しかし、その先___みやびのボリュームがあり過ぎる胸が悠斗の腕に当たった辺りから、何かがおかしい方向に。場所を変えたくとも次から次へと人が詰めてきて、もはや移動するどころの騒ぎじゃ無い。次第にみやびの胸が俺の腕に押し付けられ、形を変えていき___何とかしようと体を動かした結果、事態はより深みに嵌まった。
___というか、腕が胸の間にすっぽりと嵌まった。いや、腕周り三百六十度が完全にマシュマロの如き柔らかさに包まれた。
「……み、みやび。あの、もろ挟まってるというか……」
それに対して、みやびは恥じらいに加え、暑さと息苦しさで頰を真っ赤にして荒い呼吸をし、悠斗を見上げてくる。
「ん、はぁっ……ふは、ぁ……ご、ごめん、ね、悠斗くん。わたし……んっ、んんっ!」
「い、いや、謝るのは寧ろこっちの方だって。事故というか、この状況じゃ仕方ないというか……」
結局、花火大会も終盤になるまで続いた。終わりが近づき、周囲で帰路に就き始めた人たちが動いたおかげでようやく体が離れると、悠斗たちは土手を下りて街中へ向かうルートに入ったところで、ようやく一息をついた。
「………か、帰るか」
「う、うん、そうだね……」
帰りの電車では、ほとんど会話は無かった。やがて学園前にモノレールが到着しても最低限の会話しかしていない。外灯に浮かび上がる巨大な門をくぐり、寮への道を無言で歩くその途中___
「悠斗くん…ちょっと寄り道良いかな?」
分かれ道で、みやびがそんなことを言い出した。異論は出ず、寮へ向かわずに別の道を歩き始めた。しばらくしてライトアップされた噴水の近くでみやびが足を止め、数歩先に進んだところで悠斗も止まって振り返る。
「ここで、少しお話ししてもいいかな……?」
「……ああ」
悠斗の返事を聞くと、みやびが無言で頷き___しばしの間を置いて静かに語り始めた。
「今日は___ううん、入学してから今日まで、本当にありがとう。悠斗くんはわたしが大変なときにいつも助けに来てくれて、それがすごく嬉しくて……すごく申し訳なくて……」
「気にするなって、俺はみやびの役に立ってるなら、それで嬉しいんだよ」
すると、みやびが、ぽつりぽつりと口を開く。
「わたしね、悠斗くんが私の絆双刃になって…少しでも悠斗くんに近づきたくて…でも、足を引っ張ってばっかりだった。…でも、それでもわたしは悠斗くんに近づきたい。悠斗くんみたいに強くなりたい…だから…
わたし、退学(や)めないよ」
小さく、けれど力強く、みやびは答えを口にした。
「ああ、みやびが辞めないでくれて、俺は___嬉しいよ」
「あ……ふふっ、そう言って貰えるとわたしも嬉しいな」
みやびは悠斗に小さく微笑んだ。そして、悠斗は自身の頬が熱くなり、心臓の鼓動がさらに速くなった。そして、目を閉じ、何かに、決心すると再び目を開き
「みやび、俺からも一つ良いか?」
「……えっ?」
みやびは少し驚きながら悠斗の方を向いた。
「悪いな、これはどうしても俺から言いたいんだ。」
そう言うとみやびの前に立ち、そして_____
「みやび、お前が好きだ。」
次の瞬間、みやびの中で止まっていた時間が動きだした。
「…………え?」
悠斗の言葉が、ゆっくりとみやびの中へと浸透して来る。
悠斗くんが、好き? わたしのことを?
「え…ゆ、悠斗くん?それって…」
「みやびが好きなんだ。」
みやびは信じられなかった。本当なら、ここで自分から告白するつもりだったのだ。それがどのような結果になろうと、しかし、まさか悠斗の方から告白してくるとは思ってもいなかった。そして、目から涙が溢れてきた。
「わ、わたしも…」
意を決するように、みやびは今まで胸の内に秘めて来た全てを言葉に乗せて差し出した。
「わたしも、悠斗くんのことが好きです。わたしに絆双刃になって欲しいって言ってくれたあの日から、大好きです!!」
それは、2人の思いが通じあった瞬間でもあった。
「ありがとう…それじゃあ、俺の…恋人になってくれないか?」
「はい、わたしを…悠斗くんの恋人にしてください」
そして、2人はそのまま互いを抱きしめ、上気した顔で見つめ合い、そして、唇を重ねあった。
空は満天の星空であり、それはまるで、2人を祝福しているようであった。
いよっしゃぁぁぁぁ!!!
ついにこのシーンを書いたぞオラァァォ!!!
祝!!カップル成立!!!