アブソリュート・デュオ〜銀狼伝〜   作:クロバット一世

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ついに仙伐戦スタートです


32話 仙伐戦開幕+迫り来る脅威

天才発明家イノチェンティをめぐった騒動から数日後、昊陵学園ではほとんどの生徒が格技場に集まっていた。その理由は本日から開かれる《Ⅲ(レベル3)》以上の生徒たちによって開催される《仙伐戦(せんばつせん)》がはじまるからである。悠斗たちのクラスからは悠斗、トラ、リーリス、橘、梓、ユリエ、透流たちが出場することになっていた。

 

「やっぱり上級生たちになると《焔牙》の扱いが1年に比べて上手いよな」

 

「あぁ、だがやるからには全力で勝たなければな。貴様も勝手に負けたりするなよな。貴様とは早く戦いたいしな」

 

「そうだな、考えてみたらあんまりトラとは戦ってないっけな。今からスゲー楽しみだ」

 

トラの言葉に悠斗は笑いながらそう返した。

 

「それに、今回は2年だけじゃなくて3年もいるからな。3年は全員が《Ⅲ(レベル3)》だからな。戦闘経験も多いし強敵になるだろうな」

 

今回は以前の《咬竜戦》で戦えなかった2年だけでなく3年までもが出場する。おそらく簡単には倒せないであろう。

いくら悠斗が《Ⅳ》クラスの実力があると言っても《位階》だけで実力が決まるわけではない、その《焔牙》をいかに使いこなせるか、それらが勝利の鍵となる。

 

「そっちは準備万端って感じみたいだな悠斗」

 

するとそこへ、透流とユリエが近づいてきた。

 

「透流か、そう言うお前の調子はどうだ?」

 

「まあ問題なしだな。今から楽しみでしょうがないぜ」

 

「まあな、お前と戦うのはやっぱり決勝あたりかな?」

 

「今日とは限らないと思うわよ」

 

すると、背後から声が聞こえ、そちらを振り向くと黒髪のショートヘアに縁のないメガネのいかにも優等生らしい少女が立っていた。おそらく3年生と思われる。

 

「えっと……どちら様?」

 

「ごめんごめん、自己紹介がまだだったね。私、本校3年の正堂院律(せいどういん りつ)っていうの。貴方たちが1年で《Ⅳ(レベル4)》になったと言う九重透流と天峰悠斗で間違いないの?」

 

「あ…あぁ、天峰悠斗は俺です。こっちにいるのも九重透流で間違いありません」

 

「ど…どうも」

 

2人が答えると、正堂院は笑みを浮かべ、

 

「そうかしこまらなくてもいいわ。私もただ貴方たちに挨拶したかっただけだから」

 

「そうなんですか?」

 

「ええ、同じ《Ⅳ(レベル4)》として戦うだろう相手を警戒するのは当然だわ」

 

正堂院は凛とした態度で笑いながらそう答えた。

 

「…驚いたな、俺たちの他に《Ⅳ(レベル4)》がいるなんて」

 

「3年生の中にはやっぱり実力の高い人の中には《高位階(ハイレベル)》の《超えし者(イクシード)》がいるわよ。もっとも、私たちの学年だと私の他には2人しかいないけど」

 

「つまり合計で3人か、そりゃ楽しみが増えたな」

 

悠斗は喜びの笑みを浮かべると正堂院はふと微笑んだ。

 

「そういやさっき今日とは限らないとか言ってたけどどういうことですか?」

 

悠斗は先ほど彼女が言っていたことを思い出し彼女に聞いてみた。

 

「トーナメントは予選トーナメントと決勝トーナメントの2つをやることになってるの。今日やるのは予選トーナメント、その一週間後に決勝トーナメントをするのよ」

 

「そうなんですか、ありがとうございます。できれば早く当たりたいですね。先輩と戦うのがすごく楽しみですよ」

 

「ふふっ、私も貴方たちと戦うのがすごく楽しみだわ。ぶつかった時はお互い全力で戦いましょうね」

 

悠斗がお礼を言うと彼女はそう言って手を差し伸べてきた。

 

「勿論ですよ、お互い悔いのない試合にしましょう」

 

「よろしくお願いします」

 

そう言うと、悠斗と透流は正堂院の手を握り返した。

 

「それじゃあ私はこれで、また会いましょ」

 

そう言うと彼女はそのまま去って行った。

 

「強敵がいるみたいだな透流」

 

「そうだな、ますます燃えてきたぜ」

 

突如現れた強敵に2人は笑みを浮かべあった。

 

「貴様ら…僕を忘れてないだろうな」

 

すると、無視されたことに怒ったのかトラが睨みながら2人に話しかけた。

 

「忘れてない忘れてない」

 

「お前も全力で来いよ」

 

「ふん、無論だ」

 

2人の返答に少し不機嫌ながらもトラは怒りを鎮めた。

 

「あぁここにいたのか、3人とも探したぞ」

 

「何を話していたんですか?」

 

「緊張でもしてたのかしら?」

 

「緊張ですか2人とも?」

 

「ふん!!」(ビシィッ!!)

 

「大丈夫?」

 

すると、そこへ同じく《仙伐戦》に出場する橘、梓、リーリス、ユリエ。そして、応援のタツとみやびが来ていた。

2人はさっき出会った3年生の正堂院律のことを話した。

 

「ふむ……その正堂院という先輩…相当の実力なのだろうな」

 

「はい、《焰牙(ブレイズ)》の真の力を扱うことができる使い手はそれだけでも並の《護綾衛士(エトナルク)》よりも実力が高いですからね」

 

「しかも正堂院先輩の他にもあと2人いるみたいだからな…面白くなってきたぜ」

 

橘と梓の言葉に対し、悠斗は強者との戦いが楽しみらしく、興奮を隠せずにいるとそこへ

 

「準備は良いですか天峰悠斗?」

 

護衛の三國先生を連れて九十九朔夜が来た。

 

「朔夜か、俺は文句無しで準備万端だぜ。透流たちといい3上級生たちといい強敵が沢山いて今からワクワクしてしょうがないぜ」

 

「……そうですか、それと天峰悠斗、分かっているとは思ってますけど《死ぬ気の炎》の使用は禁止なのでそのつもりでお願いしますね。まあ貴方なら炎を使わなくても決勝トーナメントまでは確実に行けるでしょうね」

 

「分かってるってぜってー優勝してやるぜ」

 

「ふふっ…貴方ならそう言うと思っていましたわ……貴方の力、存分に見せてもらいますわ」

 

悠斗の言葉に朔夜は微笑みながらまっすぐと悠斗を見つめていた。その時、

 

 

 

 

 

 

Prrrrrrrr________

 

 

 

 

突如三國の携帯が鳴った。三國がそれに出ると、

 

「もしもし、どうしましたか?………なに?」

 

どうやら警備の《護綾衛士(エトナルク)》らしかった。しかし、なにやら緊急の知らせらしく三國の声が少し重くなった。

 

「どうしましたか?」

 

朔夜が三國に問いただすと

 

「参加予定のない部隊がこちらに向かっているらしく…しかもその部隊が…あのエルザ・バードウェイの部隊らしいんです」

 

その言葉に朔夜はピクリと眉を震わせた。

 

「そうですか…《鮮血の戦姫(ブラッド・ヴァルキュリア)》が動き出しましたか…良いですわ、迎えに行きましょう。天峰悠斗、九重透流ちょうど良いので貴方たちも来なさい」

 

「っ!!」

 

朔夜の言葉に突如梓が身体を強張らせ身体を震わせた。

 

「分かった…行くよ」

 

悠斗たちが朔夜に連れられて格技場の入り口に着くと、そこには複数の《護綾衛士(エトナルク)》がおり、朔夜はその先頭にいる腰まで伸ばした黒髪の赤い瞳の美しい女性へと声をかけた。

 

「お久しぶりですわエルザ・バードウェイ。貴方の部隊は今回の護衛には呼んでいないはずでしたけど…どういった御用ですの?」

 

「…久しぶりね小さな魔女さん、残念だけど今日は貴方には用がないの、貴方の学園にいる《彼》を連れてきてくれないかしら?」

 

しかし、エルザ・バードウェイと呼ばれた女性は朔夜へと軽く返答するとそのまま周囲を探ろうとした。

 

(……なんだあの女?どこかで見たことがあるような……)

 

悠斗がそう思いながら彼女を見ていると、ふと目が合った。その瞬間_____彼女の頬が赤く染まり、歓喜の笑みへと変わった。そして、すぐさま悠斗の元へと駆けつけると、突然

 

 

 

 

ギュッ

 

 

 

 

悠斗を抱きしめた

 

「んなっ!!?」

 

「_____________________っ!?」

 

悠斗は突然のことに動揺し、みやびも一瞬身体が固まった。

 

 

「あぁ…あぁ、あぁ、あぁ!!久しぶりだわぁ…私の…私だけの《銀狼》…」

 

「っ!?」

 

愛おしそうに悠斗の頬を撫でながらエルザ・バードウェイは悠斗を見つめていた。しかし、悠斗は彼女が自身を《銀狼》と呼んだ彼女を前に一気に戦闘態勢に入った。

 

「……あんた誰だ…なぜ俺の2つ名を知っている?」

 

「おい貴様!!エルザ隊長にその態度はなんだ!?」

 

悠斗の態度に対し、部下の1人が怒りを覚え、悠斗へと掴みかかろうとしたその時、

 

 

 

 

 

 

ドコォォォォォン!!!!!

 

「黙れ、そして彼に触るな」

 

 

 

 

 

 

エルザ・バードウェイの裏拳が部下の男に直撃し、男は百メートルほど先の壁に激突した。

 

「ねぇ…」

 

「はっ…はい!!」

 

そして彼女は他の部下の1人に声をかけ、

 

「あとでさっきの馬鹿に伝えておいてくれる?彼は貴方程度が触って良いような《戦士》ではないって…彼こそが私が3年間追い続けていた愛しい人なんだから…」

 

「わ…分かりました!!しっかりと伝えておきます!!」

 

氷のような視線で見つめてくる彼女に命じられた部下は声を震わせながら返答し、吹き飛ばされた男を運んでいった。

 

「ごめんなさい《銀狼》、私の部下が礼儀知らずで…今躾けておいたから」

 

そして、再び悠斗を見つめると、先程とは打って変わって顔を赤く染め微笑みかけた。

 

「……さっきの質問の答えは?」

 

「あぁ、そうそういけない、すっかり忘れてたわ。ごめんなさいね…私がなぜ貴方を知っているかって質問だったわね?それはね、私と貴方は6年前会っているのよ?イタリアの貧民街でね♪」

 

彼女の言葉に悠斗は顔を強張らせた。

 

 

「あっ、あの…悠斗くんが困っています…だから…」

 

悠斗の様子を見て、みやびが彼女に声をかけた。その瞬間、

 

 

 

 

 

「貴方程度の雑魚が誰の許しで彼を名前で呼んでるの?」

 

エルザ・バードウェイの表情が怒りに染まった。

 

「死にたいみたいね」

 

そう言いながらみやびに近づこうとし________

 

 

 

 

 

 

 

「みやびに近づくな」

 

 

 

 

 

 

悠斗が彼女の肩を掴み睨みつけた。エルザ・バードウェイは少し悲しそうな顔をすると、

 

「そう……こいつが貴方を縛り付けているのね……」

 

そう言うと先程まで放っていた殺意が消え、

 

「また出直すわ…その時は…貴方を再び《至高の戦士》に戻してあげる」

 

そう言って部下を連れて去って行った。

 

 

 

 

 

 

 

「なんだったのだあの人は…悠斗の知り合いか?」

 

「そうみたいだが…あいつのことは覚えてないな…」

 

エルザ・バードウェイが去った後、橘が悠斗へとそう聞いたが悠斗は彼女に覚えがなかった。

 

「彼女はエルザ・バードウェイ、護綾衛士(エトナルク)の部隊長の1人である女ですわ…少し性格に問題がある人ですが…彼女の位階は《Ⅵ》、現在の最高位の位階は《Ⅶ》、護綾衛士の中でもトップクラスの実力は本物ですわ」

 

そんな彼らに朔夜が説明した。それに梓が続けて説明した。

 

「……以前、《装鋼の技師》が彼女を仲間に引き抜こうとしたことがありました…しかし…」

 

 

 

 

 

 

 

1年前、とある個室に3人の人影があった。1人は《装鋼の技師》エドワード・ウォーカー、もう1人は不知火梓、2人は目の前にいる3人目の影の正体、エルザ・バードウェイと交渉に来ていた。彼女の手にあるパソコンには《装鋼の技師》が作り出した《装鋼(ユニット)》のデータがあった。

 

「如何かな?エルザ・バードウェイ殿?これはまだ開発段階のものだが…改良を加え、さらに外部兵装が完成すれば《完全なる兵隊》が…」

 

「くだらないわね」

 

「なっ……!?」

 

そう言うと彼女はつまらなそうにパソコンを放り投げた。

 

「く…くだらないじゃと!?儂の発明のどこがくだらないんじゃ!?」

 

彼女の答えにエドワードは怒りながら問いただした。

 

「だって…貴方が目指しているのって《個》の力じゃなくて《群》の力でしょ?」

 

「当然じゃ!《個》より《群》が勝るなど当然のことじゃないか!!歴史がそれを…」

 

「ぷっ…くくく…おめでたい頭ね、そんなことを本気で思っているなんて…」

 

エドワードの言葉にエルザは蔑むように笑った。

 

「良い?真の《戦士》の前には《群》なんて意味をなさないの。全ての敵を薙ぎ倒す絶対的な力、それこそが私が追い求めるもの。《彼》をそこへと至らせるのが私の悲願。貴方とは違うのよ」

 

そう言うとエルザは席を立ちドアへと向かい

 

「悔しかったら《彼》に勝ってみなさい。もっとも…貴方には無理だと思うけど」

 

そう言って天峰悠斗のことが書かれた資料を床に撒いて立ち去っていった。

 

 

 

 

 

 

「…あの人は悠斗さんを《至高の戦士》とやらにいたらせようとしています。それが何かはわかりませんが…」

 

梓は怯えながらそう告げた。

 

「そっか…悪いな梓、教えてくれて」

 

悠斗はそう言うと少し顔を強張らせた。

 

「悠斗くん…」

 

ふと声の方を見ると、みやびが心配そうに悠斗を見つめていた、

 

「大丈夫だよ、わたし…怖くないから」

 

みやびの目はまっすぐと悠斗を見つめていた。悠斗はそんなみやびをしばらく見つめると、

 

 

「やっぱり……俺はみやびのことが好きなんだな」

 

 

「………っ///////!!ゆ、悠斗くん…」

 

突然の悠斗の一言にみやびは再顔を真っ赤にした。

 

「悪い、声に出てた」

 

その時の悠斗の顔は先程とは全く異なる優しい笑顔であった。

 

「全く…本当に熱々だな…」

それを見ながらトラは呆れていた。




オリキャラ登場!!

これからの展開に期待してください
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