アブソリュート・デュオ〜銀狼伝〜   作:クロバット一世

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ほとんどエルザの話です。


33話 銀狼の狂信者

 

ーーーーー彼は私の運命を変えてくれた。

 

私の生まれ育った場所は貧民街の中でも特に治安の悪い場所として知られていた。

両親は絵に描いたような外道であった。

父親は朝から酒を飲み『酒が無い』と言っては私や弟を殴り蹴る。『ギャンブルに負けた』と言っては殴り蹴る。『なんかイライラする』と言っては殴り蹴る。そんなクソみたいな男であった。

母親はほとんど家には帰ってこず、外で他の男と遊んだりして、たまに帰ってきても何かと因縁をつけては自分たちを殴り蹴り、時にはタバコの火を体に押しつけてきた。

自分たちが寝る間を惜しんで稼いだ金もすぐに《奴ら》の酒代や男への貢物として無くなった。

どれだけ自分たちが頑張っても《奴ら》のくだらない娯楽のために失い、その日の食べるものもろくなものが無かった。

ある日、弟が風邪を拗らせ寝込んでしまった。私は《奴ら》にせめて薬だけでも買って欲しいと頼み込んだ。すると、彼らは少し話し合ったと思ったら弟を抱えだと思いきや

 

『病院に連れて行く。だからお前は安心して仕事をしていろ』

 

と言った。私は嬉しかった。こんな両親でもまだ人の心があったのかと思い、弟を両親に託し、仕事に励んだ。

その日はいつも以上に頑張った。そしてその日の給料を手に急いで家に戻った。薬を飲んで元気になった弟が

 

『おかえり、お姉ちゃん』

 

そう言って私を迎えてくれると信じて……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、私を迎えてくれたのは弟ではなく、ただの《絶望》だった。

 

そこには弟の代わりに自分の給料とは比べ物にならないほどの札束が重ねられていた。

 

『あの子はどこにいるの?』

 

と私が父親に聞くと、

 

『ん?あぁあいつ?もうダメっぽかったから売ってきたよ。餌代が減る上に金が入って一石二鳥だよな』

 

何食わぬ顔でそうかえした父親の言葉に私は硬直した。

 

弟は確かに《病院》に連れて行かれた。しかし、それは『治す』ためでは無い。『中身』を『売られる』為だったのだ。自分たちの子供の命を事もあろうに金に変えたのだ。

私は泣いた。声をあげて泣くと両親に『うるさい』と殴られるので声をあげずに泣きじゃくった。泣きながら謝った。

 

『ごめんなさい、貴方についていればよかった。ごめんなさい、私が貴方を連れて行けばよかった。ごめんなさい、あんな奴らを信じなければよかった。ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……』

 

泣きじゃくりながら私はそれからも稼いだ。そうしなければ次は自分かもしれないからだ。生きなければならない。自分が殺してしまった弟の為に…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数年後、私は14歳になった。仕事も以前より出来る仕事が増え、給料も増えて、自分の取り分も少しだけだが手に入るようになった。服もある程度のものは買ってもらった。以前よりも出来ることが増え、両親も自分に暴力を振るわなくなってきた。それどころか風邪をひいたときは何も言わずに風邪薬を差し出してくれるようになった。信用はしなかったがそれでも感謝した。

ある日、私は両親に連れられて街に来ていた。どういうわけか私に今まで自分が買えなかったような綺麗な服を着せられて連れて行かれた。

 

『この部屋で待っていろ』

 

ある個室に連れて行かれると、私は1人で待たされた。

しばらくすると、ガラの悪そうな男が入ってきた。

 

『ほぉ〜こいつかぁ…思っていた以上にいい女じゃねぇか…』

 

下卑た笑みを浮かべながら私を見つめる男の言葉に私は何が何だか最初はわからなかった。しかし、するに察した。

 

私は売られたのだ。今度は弟のように『中身』を『売られる』のでは無い、私は『躰』そのものを『売られた』のであった。成長してから殴られなくなったのは傷を作らないようにする為であった。綺麗な服を着せたのは見てくれをより良くする為であったのだ。

 

男は私を『品定め』と称して押し倒してきた。私は抵抗した。悲鳴をあげ、泣きじゃくりながら抵抗した。しかし、14歳の少女の力で大の男を振りほどく事などできなかった。服を引きちぎられそうになりながら私は思った。

 

この世はなんて理不尽なんだろう

 

こんなものが世界の理なのか

 

なんで私が…弟がこんな目に遭わなければならなければいけないのか…

 

 

 

 

 

 

その時、銀色の影がドアを突き破って現れた。

そこを見ると、10歳程の銀髪の金眼の少年が純白の長槍を手に立っていた。その少年に男は瞬間、恐怖に顔を強張らせた。

 

『んなっ…お、お前は《銀狼》…っ!!待ってくれ!!約束を反故にしたことは悪かった!!契約金も倍にして払う!!だからどうか…』

 

『黙れ、お前は俺を騙してうえに契約を破った。契約を破ったことの落とし前はつけてもらう……死ね』

 

瞬間、少年は男を目にも留まらぬ速さで通り抜け、男の躰を袈裟斬りにした。男は身体から鮮血を飛び散らせそのまま地面に倒れそのまま息を引き取った。

私を凌辱しようとした《抗えない力》をそれ以上の《力》でねじ伏せてしまったのだ。私はその少年から目が離せなかった。すると、少年は私の視線に気づき、こちらに近づくと、

 

『あんたもこいつらの仲間?』

 

少年は長槍をこちらに向け私に聞いてきた。

 

『………違います』

 

『………あっそ』

 

そう言って少年は興味を無くしたように立ち去っていった。

 

『……………綺麗……』

 

私はその銀色の少年に見惚れてしまった。ときめいてしまった。この世の不条理をそれ以上の力でねじ伏せてしまったその少年の生き様に、その銀色の少年の美しさに、恋い焦がれてしまった。

 

まるで神を喰らった狼の様に現れて、圧倒的な《力》で私を救ってくれた………

そう、彼は私の焦がれた《至高の戦士》……………私だけの《銀狼》…………私だけの《銀狼》…………

 

嗚呼…なんて美しいのだろう…私も彼のようになりたい…彼に近づきたい…彼に愛されたい…彼に…壊されたい…

 

私は彼のように力が欲しい、力を持って彼に近づきたい…彼の力をもっと見てみたい…彼に壊されたい。

 

その後、私は両親を殺した。父親は酒に酔っていて眠っていたので簡単だった。母親は父親の亡骸を見て錯乱し、その瞬間を逃さずに殺した。風の噂でドーン機関の存在を知った。家の残った金を奪って出て行った。その後、港に向かい貨物船に乗って亡命した。その後、私は裏のブローカーを使って戸籍を買ってドーン機関の《黎明の星紋(ルキフル)》適性検査をうけた。結果は文句なしの合格であった。その後、15歳になった自分は昊陵学園に入学し、卒業時には《Ⅳ(レベル4)》に到達した。護綾衛士(エトナルク)になってからも力を求め、敵を斬り、殺し、ねじ伏せた。そして_______気づいた頃には《Ⅵ(レベル6)》に至った。

しかし、彼女はまだ足りなかった。彼はまだ成長段階のはず…ならば彼はもっと強くなっているはず。だからもっと力が必要だ…

 

 

ある日、偶然目に入った資料に目が離せなかった。

 

ボンゴレファミリー。イタリアが誇る最強のマフィア。

そこには《銀狼》がいると書かれていた。

私は歓喜した。間違いない。《彼》だ、私を絶望から救ってくれた《彼》に違いない。

私はすぐに日本の並森に向かった。彼を迎えに、彼に壊されるために…

 

 

 

 

 

 

 

 

並森に着いた私が見たのは絶望だった。

そこには同年代の少年たちと笑いながら登校している《彼》であった。

 

これは夢なのか……?ならばこれは悪夢だ。もう嫌だ。見たくない…違う…そうじゃない。あなたがいるべきは…私が焦がれた私はそうじゃない。隔てるもの全てを蹂躙する絶対的な力…それがあなたのはずだ。

 

許さない…彼を堕落させたもの全てが…だから私が元に戻そう…いつか彼を私の手で…そのためには準備が必要だ…彼を目覚めさせる準備が…

 

 

 

 

2年後、彼が昊陵学園に入学が決まった。ついにこの時が来た…待ってて私の《銀狼》…私が元に戻してあげる…私が焦がれた《至高の戦士》に…

 

 

 

 

「……………夢……だとしたら嫌な夢ね…」

 

エルザ・バードウェイが寝室から起き上がった。彼女は今躰に纏うものを一切纏っておらず美しい躰と豊満な胸がはっきりとわかった。

 

「エルザ隊長、《狂化戦士(ベルセルク)》部隊準備が整いました。」

 

部下が寝室に入ってきた。

 

「そう…わかったわ。すぐ向かう。」

 

エルザはベットから起き上がると《彼》の写真を愛おしそうに眺めながら呟いた

 

「待っていて…私の《銀狼》…貴方を必ず解放してみせる」

 





今日はほとんど過去編でした…エルザと悠斗の出会いはこんな感じです。

次回もお楽しみください。









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