「……………。」
控え室では悠斗がただ黙って椅子に腰掛けていた。
理由は先ほどのエルザ・バードウェイの一言である。
『私と貴方は6年前会っているのよ?イタリアの貧民街でね♪』
『貴方を再び《至高の戦士》に戻してあげる』
間違いない。奴は俺がまだ裏社会に染まりきっていた時に会っていたんだ。そして奴は俺をあの頃の俺に戻そうとしている。あの頃の、血で染まりきっていた頃の俺に……
「…………冗談じゃない」
俺はツナ達に会って仲間を得た。そして今度はこの学校でさらなる仲間と、そしてかけがえのない恋人を手に入れることが出来た。嫌だ、失いたくない、もう二度と、あの頃の俺に戻りたくない……
コンコンッ
「悠斗、そろそろお前の試合だぞ」
ガチャリ
ノックと共に扉が開き、クラスメイトの透流が入ってきた。
「透流……スマン、今行く」
悠斗は呼吸を整え席を立ち扉へと向かっていった。
「気にしているのか?あのエルザとかって人の言葉」
透流も悠斗の反応から察したのだろう悠斗の肩を掴んでそう聞いてきた。
「……まぁな」
「悠斗……」
「笑っちまうよな……みやびのことをどんな奴が来ても守るって腹決めた直後に俺の過去の因縁ミテーな奴が俺の前に現れて、挙げ句の果てに俺を昔の俺に戻すとかって言ってきやがった……俺の過去が俺の大切な奴らに牙を剥いてきた……怖いんだよ……俺の過去が、お前達を傷つけるって思うと……」
そう、怖いんだ…自分が傷つくこと以上に大切な仲間が傷つくことが、おそらく奴はそれを知っている……
「悠斗、1人で抱え込むなよ」
突然、透流が悠斗にそう言った。
「透流……?」
「お前の苦しみががどれだけお前を苦しめているのか、俺にはわからない…だけど…それでもさ、俺たちは仲間だろ?だから…俺たちにも一緒に戦わせてくれよ」
その目はまっすぐと悠斗の目を見ていた。
悠斗はそのまっすぐと自分を見つめる目に思わず笑ってしまった。
「……ハハッ、ありがとな透流、やっぱりお前ってツナとおんなじだよ。仲間のピンチや問題とかに黙ってられないところがさ…おかげでスッキリしたよ」
そう言うと悠斗はまっすぐと扉へと向かっていった。
「必ず勝ってくる」
悠斗のその目に迷いはなかった。
格技場
『ただいまから、1年《Ⅳ》天峰悠斗対2年《Ⅲ》石田光実の試合を開始します。両者は舞台中央へ来てください』
三國のアナウンスを聞き、悠斗と対戦相手の石田光実という茶色い短髪の少年が格技場中央に来た。
『なお、《Ⅳ》の天峰悠斗は《煉業》の使用は禁止ですのでご了承ください』
今回のルールは
・一対一
・どちらかが倒れるか降参するかで勝敗を決める
・片方が《高位階》の場合、その選手は《煉業》の使用を禁止する。
・両者が《高位階》の場合は《煉業》の使用は許可
・戦闘区間は格技場内のみ
といった具合である。
「天峰悠斗くんだっけ?悪いけどこっちも勝ちを譲る気は無いよ。こっちはあのリーリスって1年に当たるまでは負けられないからね」
突然、光実がこちらへ話しかけて来た。
「リーリスですか?」
「そうさ、こっちはあの女のせいで《咬竜戦》をメチャクチャにされた借りを返さなくちゃいけないんだ。いつか彼女にリベンジするために訓練を重ねて遂に《Ⅲ》になったのさ!!レベルアップした俺の強さを思い知らせてやる!!」
光実は怒りを含んだ声でそう叫んだ。
「なるほど、確かに俺も《咬竜戦》は楽しみだったので気持ちはわかりますよ。でも、すいませんが俺も負ける気は無いんで勝たせてもらいます」
「おもしれぇ!!《Ⅳ》だか知らないが上級生の実力を見せてやる!!」
どうやら向こうも楽には勝たせてはくれないようだ。
『それでは両者《焔牙》を出してください』
三國の言葉で両者は《力ある言葉》を口にした。
「「《焔牙》!!」」
2人か掛け声とともに焔が形を作り《長槍》と《鞭》の形になった。
『両者、試合開始!!』
三國の合図と共に悠斗は猛スピードで光実へと攻撃を仕掛けた。
しかし、光実の鞭が悠斗へと迫り、悠斗は瞬時に身を躱した。
「あっぶね〜思ってたより早いですね」
「やっぱり当たってくれねーか、今ので倒れてくれたら助かったんだけどな」
鋭い目でこちらを見つめながら光実は己の《鞭》を振るった。
「知ってるか1年!!達人の振るう鞭の先端の速度は音速だと言う、それを《超えし者》の俺がやればその一撃は音速を超える!!」
光実はそう言いながら《鞭》を更に振るい悠斗へと攻撃を繰り出した。悠斗も接近しようとするも、《鞭》の連撃によって迂闊に近づけなかった。
「どうしたどうした1年!!逃げてばっかじゃ俺には勝てねえぞぉ!!オメェを倒したらあのリーリスって女もぶちのめして俺たちの受けた屈辱を叩き込んでやる!!」
「強いなあの先輩……」
「うむ、それに鞭という武器も悠斗の槍と相性が悪いな。悠斗の戦闘スタイルは槍のリーチと自身の素早さを合わせた攻撃だ。だが鞭はリーチと速度、どちらでも悠斗のそれを上回っている……何よりあの変幻自在の攻撃は回避し辛いしな…」
「でもあんな先輩いたかしら?私覚えてないのよね」
「キミは自分の倒した相手の名前くらい覚えておいたらどうだ…」
透流とトラは悠斗の試合を観ながらそう呟き、リーリスは光実のことを思い出そうとしていて橘はそれに呆れていた。
「でも悠斗さん、確かに厳しいですよ。さっきから自分のリーチに全然近づけていません…」
「……悠斗…」
その横では梓とユリエが悠斗のことを心配していた。
「大丈夫だよみんな」
しかし、みやびは心配していなかった。悠斗がここで負けるとは思っていなかった。
「悠斗くんはまだ諦めていない」
「どうしたもう終わりか?まぁそうだろうな。これはいわば鞭の結界、防御こそ最大の攻撃ってなこの動き回る鞭の中に突っ込めばお前はたちまちおしまいだからな!!」
悠斗は現在鞭の連撃の外から静かに光実を見つめていた。
しかし、その目は一切の迷いがなく、確実に光実を倒すために静かに闘志を燃やしていた。
(あと少しだ…もう少しで…『慣れる』)
「そんじゃ、そろそろ終わりにされてもらうぜ…お前にはもう逃げ道はねぇからなぁ…」
ふと悠斗が周囲を見るとそこは格技場の隅で光実の鞭の結界と挟まれ逃げ場が無かったからだ。
「終わりだ1年!!」
そう言うと光実は鞭を振り回しながら悠斗へと突っ込んできた。
「上、下、右上、左下、右、左、上…いまだ!!」
すると、悠斗も光実へと突っ込んできた。
「馬鹿め!!自ら死地に向かうなんてな!!終わりダァ!!」
光実は確信した。自分の勝利を。しかし、彼は知らなかった。悠斗が、天峰悠斗が光実をはるかに超える実力の鞭使いを知っていることに…
「狼王一閃!!」
「グハァッ!!」
悠斗の一撃は光実の鞭を容易くすり抜け光実の懐に強烈な一撃を叩き込んでいた。
「ば……馬鹿……な……いったい……どうやって……あれだけの鞭を…」
「あんたの鞭の攻撃パターンを読んだのさ。あんたの攻撃にはパターンがあったからその中で1番あんたの守りが薄くなるタイミングで攻撃したってわけだ」
「な……なんだよ……それ……む……無茶苦茶だ……ちくしょぉ……」
光実は悔しそうな声をあげてそのまま倒れた。
『それまで!!勝者天峰悠斗!!』
ワァァァァァ
三國の言葉で試合は終結し歓声が響いた
「ま、中々強かったぜ。でも悪いな。俺も簡単に負けたらあの殺し屋教師に殺されちまうんだよ」
「やったな悠斗、まずは一勝だな」
悠斗の初戦が終わり、透流たちが悠斗の周りに集まっていた。
「まぁな、お前らも頑張れよ」
悠斗がそう言ってると
「なにカッコつけてんだテメー」
ドカッ
「いでっ!?」
突然黒い塊が悠斗にぶつかったと思ったらそれは小さな赤ん坊だった。
「ちょっと来てみればあんぐれーの相手にあんな時間かけやがって…訓練が足りねーな」
「っ!?あ…あんたは…」
「だ…誰だ貴様は!?」
突然の赤ん坊にトラは驚き、その赤ん坊に質問すると、赤ん坊はニヤリと笑い
「チャオっす。俺の名はリボーン」
世界一の殺し屋が現れた。
久々に投稿しました。
これからもよろしくお願いします!!