アブソリュート・デュオ〜銀狼伝〜   作:クロバット一世

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リーリス戦開幕です


36話 銀狼対黄金の麗人

「ふんっ!!はっ!!せいやっ!!」

 

《仙伐戦》の昼の休憩時間、誰もいない一室で悠斗は《長槍》を振るっていた。

その目は鋭く真っ直ぐであり集中しきっていた。当然である。なにせ次の対戦相手はリーリス・ブリストルなのだから。彼女の《焔牙》である《銃》は遠距離近距離どちらも優れている、さらにリーチも悠斗の《長槍》を遥かに凌駕するためいくら《位階》が悠斗の方が上でも油断ならない。

 

「……《生存闘争》の時は俺はあいつの《銃》を攻略できなかった…あの時は透流たちとの連携で勝てたけど…今度は一騎打ち…全力で行かないとな…」

 

悠斗は再び《長槍》を振るい始めた。それはまるで銀色の狼の舞の様でありとても美しかった。

 

コンコンッ

 

すると、ドアがノックされた。

 

「……?どうぞー。」

 

ガチャリ

 

「悠斗くん、調子はどう?」

 

「みやび…」

 

入って来たのはみやびであった。

 

「お茶持って来たよ。悠斗くんそろそろ休んだら?」

 

「…そうか、もうこんなに時間が経ってたのか…そうだな、休憩するか」

 

悠斗はそう言うとベンチに座った。みやびは悠斗の隣に座ると水筒のお茶とおにぎりの入った包みを開いた。

 

「ありがとなみやび、いただくよ。」

 

そう言うと悠斗は包みを開きおにぎりを食べた。おにぎりの中には一つには梅干し、もう一つにはおかかが入っていた。

 

「うん、美味い。」

 

「えへへ、良かった。」

 

悠斗の感想にみやびは嬉しそうに頬を赤く染めた。

 

「悠斗くん、調子はどう?」

 

「まぁボチボチってところだな…リーリスはかなりの実力者だからな、全力でいくつもいだぜ。」

 

「ふふっ、悠斗くんすごい嬉しそうだね。」

 

「まぁな、前回の《生存闘争》では遅れをとっちまったから今日リベンジ出来るのが楽しみで仕方ねぇ。」

 

悠斗の口には笑みが浮かべられていた。悠斗の戦士としての本能が震えていたのである。

悠斗はお茶を飲むとふうっと息を吐いて落ち着いた。

 

「よしっ、少し休んだらまた練習するか。」

 

「食べてからすぐの運動は体に悪いからちゃんと休まないとダメだよ?」

 

「わかってるよ。ここだけの話、対リーリスにはちょっと《秘策》を考えているんだ。多分うまくいくと思うんだけどな…」

 

悠斗の言う《秘策》…それがうまくいけば間違いなくリーチの差を埋められると悠斗は確信していた。

 

「頑張ってね悠斗くん。わたし、応援してるから」

 

みやびの真っ直ぐな言葉に悠斗は笑みを浮かべだ。

 

「ありがとなみやび、絶対に勝つから。」

 

そう言うと悠斗は優しくみやびの頭を撫で、立ち上がった。

 

「あっ…」

 

「ん?どうしたみやび?」

 

「う…ううん、なんでもないよ…」

 

頭から手を離した時、みやびが少し名残惜しそうであった。

 

 

 

 

 

『ただいまから、1年《Ⅳ》天峰悠斗対1年《Ⅲ》リーリス・ブリストルの試合を開始します。両者は舞台中央へ来てください』

 

昼の休憩時間が終わり、練習を終えた悠斗は三國のアナウンスを聞き、リーリスとともに格技場中央に来た。

 

『なお、《Ⅳ》の天峰悠斗は今回も《煉業》の使用は禁止ですのでご了承ください』

 

先ほど闘った石田光実もけっして弱い相手ではなかった。しかし、それでもリーリスは《Ⅲ》の中では屈指の実力者である。いくらレベルが上でも必ず勝てるとは思ってはいけない。

 

「そういえば…貴方と一対一で闘うのってこれが初めてだったわね。でもまさか二回戦でいきなり闘えるなんて楽しみだわ。お互い、全力を出し合いましょ♪」

 

「そうだな、俺もお前との闘いはずっと楽しみだったから期待してるぜ…最初から全力で行ってやる。」

 

というよりリーリス相手では最初から全力で行かなければ一気にやられてしまう。悠斗は息を整え持ち場に着いた。

 

『それでは両者《焔牙》を出してください』

 

三國の言葉で両者は《力ある言葉》を口にした。

 

「「《焔牙》!!」」

 

2人の掛け声とともに焔が形を作り、悠斗は《長槍》を、リーリスは《銃》を手に構えた。

 

『両者、試合開始!!』

 

三國の試合開始の合図の瞬間、リーリスが悠斗へと《銃》

を発砲した。

 

「おっと危ない」

 

しかし悠斗はそれを難なく躱し一気に間合いを詰めてリーリスに斬りかかった。しかし、リーリスも《銃》で《長槍》の一撃を防ぐと再び距離をとり《銃》を発砲した。

それを今度は《長槍》で防ぎ今度は強烈な突きをリーリスに放った。

 

銀色の少年と黄金の少女の闘いに観客たちは魅了されていた。

 

「すごいな2人とも…」

 

「あぁ、悠斗は《煉業》が使えないとはいえどちらが勝ってもおかしくない闘いだ…どちらも相手の間合いを作らせていない…」

 

トラの言う通りであるようにリーリスは《銃》が確実に攻めるには間合いが近すぎて悠斗は《長槍》の射程範囲より遠すぎる。この勝負はどちらが自分の間合いに持っていくかが勝敗を分けるようである。

 

(悠斗……強いとは思ってたけど…やっぱりあいつはすげぇな…俺もあいつに負けてられねぇぜ…)

 

「トール…どうしました?」

 

透流が悠斗の闘いぶりに震えていると隣に座っていたユリエが話しかけていた。

 

「ユリエ?あぁ悠斗がすげえと思ってな…俺もあいつとあたったら全力で挑まねえとってさ」

 

「ヤー、私も悠斗とぶつかったら持てる全てを発揮します。そのための準備をしてきました。」

 

ユリエの目はまっすぐと悠斗を見つめていた。

 

「そういやユリエは悠斗と一回闘ってたんだったな。」

 

「ヤー、あの時は私の完敗でした。ですので今度こそは絶対に勝ちたいです。」

 

「そうだな、まぁもしユリエが負けても俺が代わりに悠斗を倒すよ。」

 

「ナイ、勝つのは私です。抜け駆けは卑怯ですトール。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…本当にすばしっこいわね…全然あたってくれないなんて…」

 

「そっちこそ…なかなか間合いに入ってくれないじゃねえか…」

 

試合は後半になるにつれて悠斗が優勢になりつつあった。

 

リーリスも善戦しているがスタミナで悠斗が圧倒的に有利であったため、リーリスは徐々に息が切れ始めた。

 

(やっぱり悠斗相手に持久戦はマズイわね…早い所終わらせないと…それなら…)

 

リーリスは悠斗を見つめながら《銃》を構えた。

 

「…いくぜ」

 

悠斗はまっすぐとリーリスに向かっていき渾身の突きを放った。

 

(…もらった!!)

 

リーリスは悠斗の突きをギリギリで躱して悠斗の顔の目の前に銃を向けた。

 

「この距離から躱せるかしら?」

 

タァンッ

 

その音を聞いて観客の全員がリーリスの勝利を疑わなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悠斗くん…」

 

みやびを除いては

 

 

 

 

 

 

「なっ……」

 

「ふぁんとかまにあっふぁようだな(なんとか間に合ったようだな)」

 

一瞬銃弾を受けて呂律が回らないのかと思ったが違った。

リーリスは一瞬思考が停止した。なぜなら悠斗は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放たれた銃弾を歯で受け止めていたのだから。

 

「せいやぁぁぁぁぁ!!!」

 

そのまま悠斗は咥えていた銃弾を離し《長槍》で下から上に振り上げリーリスの《銃》に叩きつけた。

 

(このまましゃ弾かれる_______!!)

 

《銃》を失えば自分に勝ち目はない、そう判断しリーリスは振り上げられる《長槍》の勢いを利用して空中へと逃げた。

 

「チェックメイトよ悠斗!!」

 

そう言ってリーリスは悠斗へと銃口を向けた途端、悠斗が笑ってるのに気づいた。

 

「それを待っていた。」

 

そう言うと悠斗は《長槍》をリーリスに向けて思いっきり投げつけた。

 

(投擲…でもそれくらいなら!!)

 

リーリスは体をくねらせ向かってくる《長槍》をなんとか躱した。そして悠斗へと再び銃口を向けたがすでにそこに悠斗はいなかった。

 

(_______!!悠斗はどこに…?)

 

「ここだよ」

 

突然真上から悠斗の声が聞こえて振り返るとそこには悠斗がいた。悠斗は槍を放った後、持ち前のスピードと身体能力で格技場の壁を走りリーリスの真上に飛び向かってくる《長槍》を掴んだのだ。

 

「狼王顎(ろうおう あぎと)!!」

 

そして、渾身の一撃がリーリスへと振り下ろされた。

 

 

 

 

 

 

「勝負ありだな」

 

砂埃が晴れ、そこには仰向けに倒れるリーリスとリーリスに《長槍》を向ける悠斗がいた。

 

「悔しいけど…完敗ね…あの時のヘッドショット…心臓にしとけばよかったかしら…」

 

「あれはほとんど一か八かだった。心臓だったら絶対に無理だったと思うぞ」

 

「そうね、確かにあなたの心臓(ハート)を射抜いていいのはあの子だけだったわね」

 

「そう言うことだ」

 

そういうと、悠斗は《長槍》をリーリスから離した。

 

『それまで!!勝者天峰悠斗!!』

 

ワァァァァァァァァァァァァァ!!!

 

三國の言葉で試合は終結し先ほど以上の歓声が響いた。

 

 




悠斗三回戦進出!!




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