アブソリュート・デュオ〜銀狼伝〜   作:クロバット一世

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銀狼伝更新です!!


42話 獅子の本気

 

獅子戸王貴が彼女を見かけたのは新入生の入学式が終わって間もない頃であった。

その日彼は、いつもみたいに鍛錬を行なっており最後にランニングをしようとグラウンドへと向かっていた。

 

「……夕飯までまだ時間があるな……これならグラウンド20周くらいならいけるか…?」

 

そう考えながら歩いているとグラウンドを走っている影が見えた。どうやら先客がいるようだ。見かけない女子生徒であるのでおそらく新入生だろうと思われる。

 

「入学そうそう居残りで練習するとは…感心だな」

 

そう思った王貴は邪魔しては不味いと考えてその場を後にすることにした。

 

次の日、この日の鍛錬を終えた王貴は寮への帰り道、再びグラウンドに目をやると昨日の少女が走っていた。

 

 

次の日も、そのまた次の日も、毎日欠かさず走り続けるその少女をいつしか王貴は目で追うようになっていた。

 

 

フラフラになりながらも諦めず走り続けるその姿はとてもまっすぐでそして、とても美しかった。

 

 

 

こうして、獅子戸王貴は生まれて初めて恋をした。

 

 

 

 

 

 

「……思えば……僕は昔から修行ばかりで恋なんてしたことなかったな」

 

控え室では王貴が静かに過去を振り返っていた。

一歩でも前に進もうと努力するあの姿、そのまっすぐな彼女の姿に王貴はいつしか恋していた。今思えばもっと早くに接していればよかったと激しく後悔していた。

 

「……でも諦めない」

 

そう、それでも王貴は諦めない。たとえ可能性が限りなく0に近くても

 

コンコン

 

「王貴、そろそろ時間だぞ。さっさと準備しろ」

 

すると、自身の絆双刃である兵藤仁哉がノックしてきた。

 

「仁哉か……うん、今いくよ」

 

そう言うと王貴は立ち上がり控え室を後にした。

 

「……仁哉、必ず優勝するよ」

 

「……はいよ、まぁ精々頑張んな」

 

仁哉はため息を吐きながら笑みを浮かべ王貴にそう言った。もはや何を言ったところでこいつは諦めないのだろう、考えてみればこいつは元々そういう奴だった……ならば応援してやろう。それが長年共に闘ってきた相棒にしてやれることだ。

 

 

 

格技場

 

『ただいまから、1年《Ⅲ》ユリエ・シグトゥーナ対3年《Ⅴ》獅子戸王貴の試合を開始します。両者は舞台中央へ来てください』

 

三國のアナウンスと共にユリエと王貴が格技場へと姿を現した。

 

(良い目をした娘だ……こんな目をした娘には僕も全力で相手をしなくては失礼だな)

 

王貴はそう思うとふと笑みを浮かべ

 

「ユリエくん……って言ったよね?悪いけど……そんな良い目をされると……こっちも手加減出来ないからそのつもりでいてね?」

 

そう言うと自身の《焔牙》である《長剣(ロングソード)》を手に持って構えた。

 

「ヤー、もとよりそのつもりです。私は必ず貴方に勝ちます。」

 

ユリエはまっすぐと王貴を見つめ、自身の《焔牙》である《双剣(ダブル)》を構えた。

 

「……そうか」

 

王貴は笑みを浮かべた。もはや問答などいらない。あとは剣で語るのみ。

 

『両者、試合開始!!』

 

三國の掛け声と共に両者はとてつもない速さで衝突した。

 

最初の衝突を制したのは王貴であった。王貴の位階は学園最強の《Ⅴ》、ユリエよりも力では遥かに上である為当然であろう。

 

しかし、ユリエはすぐさま後ろに下がり回避することで斬撃を躱した。

 

「やるねぇ……じゃあこれはどうかな!?」

 

そう言うと王貴は続けざまに斬撃を繰り出し、ユリエはそれを躱していった。

 

(……良い動きだ、僕の攻撃をよく見ている。それに、僕の剣技の弱点を理解している)

 

まともにぶつかればユリエに勝機は無いだろう。だからユリエは王貴の弱点を読んでそこを突く作戦に出た。王貴の《焔牙》である《長剣》は射程(リーチ)や攻撃力が高い反面、手数に限度がある。その為、ユリエは間合いと攻撃を見切ることに集中して王貴の斬撃を回避しているのである。

 

(この人は私よりずっと強い……だけど……負けるつもりはありません……!!)

 

 

 

ユリエは王貴の剣戟を躱しながら反撃の瞬間を狙い続けた。長期戦になれば総合力で勝る王貴が遥かに有利になる。だからこそ、その瞬間に一気に畳み掛ける。

 

ズルッ

 

「……っ!!」

 

その瞬間、王貴の足元の砂が少し崩れ王貴はバランスを崩した。

 

「チェックメイトです!!」

 

ユリエはその隙を逃さず一気に間合いを詰めた。そして、そのまま斬りかかった。

《長剣》の最大の利点は《射程距離》、しかし、同時に間合いを詰められると一気に不利になってしまうという欠点がある。

ユリエの攻撃が王貴へと当たる。試合を観ていた誰もがそう考えた。

 

 

 

 

 

 

「……そんなんじゃそいつは倒せねぇぞ」

 

王貴の絆双刃である仁哉を除いては、

 

 

 

「………え?」

 

ユリエは目の前の状況に戸惑いを隠せなかった。

そこには

 

 

 

 

 

 

 

 

片手でユリエの剣を掴んでいる王貴がいた。

 

「良い判断だと思うよ、僕の《焔牙》は間合いを詰められると攻撃しづらいからね…だけど、自分の苦手に僕がなんの対策もしないと思うかい?」

 

そう、獅子戸王貴は伊達に学園最強を名乗っているのでは無い、自分の弱点もすでに理解して対策済みであったのだ。

 

「悪いけど…反撃開始とさせてもらうよ」

 

瞬間、危機を感じたユリエは蹴りを王貴の顔面に繰り出し王貴が躱した瞬間に体をよじって王貴から離れた。

 

しかし、先ほども言ったようにこのまま時間が経てばユリエに勝ち目が無い、 ユリエはさらに斬りかかった。

しかし、王貴はその全ての斬撃を防ぎきっていた。

 

「…まじか」

 

悠斗は王貴の剣技に驚きを隠せなかった。

あれだけの剣技の使い手は数えるほどしかいない、《神滅部隊》の襲撃の際に再び出会ったミルフィオーネの霧の六弔花の幻騎士、ボンゴレ暗殺部隊ヴァリアー随一の剣士スクアーロ、そして悠斗と同じボンゴレファミリーの守護者の山本武、獅子戸王貴の剣技は彼らに限りなく近いと言っても過言ではなかった。

 

「……あの人、まさかここまで強いとは…」

 

正直に言って悠斗は獅子戸王貴の力量を侮っていた。けして弱いと思っていたわけでは無い、しかし、王貴の強さは先ほど梓と闘った正堂院律よりも上であると感じた。おそらく《焔牙》での戦闘ならば悠斗よりも上であるであろう。

 

「まずいな…おそらくユリエはあの人には勝てない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……はぁ……」

 

短期決戦を狙った戦闘を全て防がれてユリエのスタミナは限界であった。

 

「なかなか良い試合だったよ、だけど……もう終わりだ」

 

王貴は《長剣》を上段に構えると再び斬りかかろうとした。

 

その時、

 

「諦め……ません……私は……」

 

キィィィィ……

 

「……なんだ?」

 

すると、王貴の耳にかすかだがユリエから高い音が聞こえた。

 

「ワタ……しは……絶対ニ……アキらメませン!!」

 

 

瞬間、ユリエの姿は王貴の視界から消えて王貴の目の前に現れ斬りかかってきた。

 

「なっ……いつの間にっ!?」

 

突然の一撃を慌てて躱すも斬撃は王貴の脇腹に直撃していた。

 

「あああアアアアあアあああっ!!」

 

ユリエは再び王貴に突進し追撃をしようとした。

 

「良いだろう!!ならこっちも加減はしない!!」

 

王貴は目を鋭くしユリエを迎え撃った。

 

瞬間、ユリエと王貴が衝突し……

 

 

 

ドサッ

 

「……獅子の鉤爪」

 

王貴の《長剣》による三連撃がユリエを捉えていた。

王貴の剣戟を喰らったユリエはそのまま静かに倒れた。

 

『それまで!!勝者獅子戸王貴!!』

 

ワァァァァァァァァァァァァァ!!!

 

三國の言葉で試合は終結し会場に歓声が響いた。

 

 

 

 

 

 

「……ふぅ」

 

試合が終わり控え室に戻った王貴はベンチに座って息を整えた。

 

(……彼女はいったい何者だ?周りは気づいていなかった様だが確かに聞こえたあの《音》……そしてあの急激な戦闘力の増加……あの動きは少なくとも《Ⅴ》相当の動きだった……彼女は……本当に普通の《超えし者》なのか?)

 

最後に見せたあの力……王貴の直感は彼女の中に見た《それ》を思い出していた。

 

 

 

「お疲れさん、最後少しひやっとしたがいつも通りの動きだったな」

 

すると、仁哉がドリンクを持って入ってきた。

 

「あぁ、ありがとう仁哉」

 

王貴はドリンクを受け取ると一気に飲み干した。

 

「次の試合はいよいよ律とお前さんの恋敵の試合だぜ、お互い《能力持ち》の闘いだ、見ねーと損するぜ」

 

「……そうだね、久しぶりに律くんの煉業を観れるのか……」

 

2人は笑みを浮かべて控え室を後にした。

 

 

 

 




久しぶりです!!こっからはまた更新していく予定です!!
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