ラブライブ! 委員長はアイドル研究部のマネージャー 作:タトバリンクス
それではお楽しみください。
1
静かな部室、私は何時も巡回してるアイドルサイトを見ていた。だけど、見ているサイトの内容は全然頭に入らなくて、ただぼうっと眺めてるだけ。
「……止めた」
今サイトを見てもあんまり意味がないと思って、私はパソコンの電源を落としてから椅子にもたれる。
「……」
サイトを見るのを止めたけど、別に何かやることがある訳じゃない。そもそもそれ以前に、やる気が全く湧いてこない。
何故やる気が湧かないのか、理由は分かっている。
μ'sが活動休止したから。
穂乃果がμ'sを辞めるって言って屋上から去ったあと、みんなで話し合い、そうなってしまった。
今のまま活動を続けても良いことはないから、一度、今後を見つめ直した方がいいんじゃないか。
穂乃果がいなければ、μ'sは解散したようなものじゃない。
私は活動休止するのに反対したけど、そう言った意見があったから、活動休止の空気になって、μ'sは活動休止になってしまったわ。
そういうことがあって、部室には私以外の部員がいない。μ'sの活動休止をした以上、部室に来る理由はないのは当然。
何時もはメンバーの話し声で騒がしい部室も寂しいくらい静か。
「これじゃあ昔に戻ったみたいね」
私は自分以外の部員がいない部室を見て、そんな感想が溢れた。
静かな部室でパソコンを使って、一人、アイドルの情報を集めている、まさに今の状態は本当に昔に戻ったみたいだったわ。
何時もだったら、穂乃果が海未に怒られてるなか、ことりが間に入って仲裁している声。
花陽が部室にあるお宝グッズを見つけて、凛や真姫ちゃんに熱く語っている声。
希が誰かの胸をわしわしして、楽しんでいる声と被害者の叫び声。
絵里がたまにずれたことを言って、よく分からない話題を話している声。
そして沙紀が私に告白紛いのことを言ったり、他のメンバーにセクハラして、制裁受けたり、喜んだりして、楽しそうな声。
そんな色んな馬鹿騒ぎした楽しい声が、今の部室には全く聞こえない。
そんな部室を見て、私は少し寂しいと思ってしまった。
二年前までは、それが当たり前の光景だったのに、不思議くらいに、今はそれが寂しいと思ってしまう。
「ホント、何でよ……」
そんなことを口にしたけど、とっくに理由なんてとっくに分かっている。
穂乃果が居て。
海未が居て。
ことりが居て。
花陽が居て。
凛が居て。
真姫ちゃんが居て。
希が居て。
絵里が居て。
そして沙紀が居る部室が今の私にとっての日常になっているから。ただ、それだけのなんだわ。
だけど、それが分かったところで、何か変わる訳じゃない。
ことりは留学するのは決まってるし、穂乃果は戻ってくるのかも分からない。それに他のメンバーだって、スクールアイドルを続けるのかなんて分からない。
そもそも私だって……。
そんなことを考えていると、後ろから部室の扉が開く音が聞こえた。私は扉の方へ視線を移すと、そこには──
「やっぱり、ここにいたのね、にこ先輩」
今日一日、何時もの違う雰囲気の沙紀が、部室の中に入ってきた。
2
突然、部室にやって来た沙紀は、何事も無かったように、平然と、何時ものように部室に入ってきて、椅子に座った。
沙紀は椅子に座ると、持っていた鞄から二本の飲み物を取り出した。
「にこ先輩、はい、どうぞ」
そう言って沙紀は取り出した飲み物(イチゴオーレ)を私に手渡してきた。
「ありがとう……って何よ、急に」
「何って、別にわたしはにこ先輩と話がしたいだけよ」
「それにわたしが喉乾いたから、ついでににこ先輩の分を買ってきただけ」
「そういうことね」
沙紀は私が納得するのを見ると、自分の分の飲み物(多分、見た目からコーヒーだと思う)を開けて、飲み始めた。
「今度は飲み物を買うとき、私が奢るわよ」
「別に気にしなくてもいいわ」
「私が気にするのよ、後輩に奢られたままなのが、私のプライドが許せないのよ」
「そう、ならまた何処かで、にこ先輩の奢りで、奢ってもらうわ」
何か無駄に、私の奢りでって、強調されたような気がするけど、それで沙紀は納得したから、私は渡された飲み物を開けて、飲み始める。
「それで話って何よ」
「そんな改まる必要はないわよ、ただ単純に、わたしはにこ先輩と話したいだけよ」
「はあ? 何よ、それ」
「いいじゃない、それより、何か話題はないの?」
いきなり沙紀は私に話題を振るけど、私は何も思い付かない。
そもそも急に部室に来て、話題が無いかって言われても思い付かないわよ。
「何もないの? つまらないわ」
「うるさいわよ、そもそも何時までそのキャラ続けるつもりよ」
「別に何時までもいいでしょ、わたしの勝手なのだから、それともにこ先輩はキャラが違うと、何か問題でもあるのかしら」
「うぅ……そうよ、悪い!!」
今日一日、ずっと沙紀が何時もと違いキャラのせいで、調子が狂うのよ。それに今の見た目がまんまアイドル──星野如月だから、もっと余計に。
「そうね、今のわたしはにこ先輩が憧れてたアイドル──星野如月に見えるから余計よね」
「うぅ……何で私が思ってること分かるのよ」
「何でって……にこ先輩、結構分かりやすいのよ、それに今の反応で大体分かったわよ」
「うぅ……」
確かに私は星野如月に憧れてたけど、何時もの見た目とキャラの沙紀なら、こいつが星野如月だってことを意識はなかったわよ。
そもそもあいつは、自分が星野如月だってバレないように、眼鏡と三つ編みのお下げで隠していたから。人前でそのスタイル以外にするさえ、かなり嫌っていた。
まるで自分が星野如月だと思われないように。
これは自分のアイデンティティだからと。
だけど、今の目の前にいる沙紀は、そんなこと少しも思ってないみたいに、振る舞ってる。
別に自分が星野如月だってことが、バレようが、バレないか何て、お構い無しに。
それに見た目とキャラが違うだけなはずなのに、いま目の前にいる沙紀から、何時もの沙紀の雰囲気が感じない。
無駄に騒がしくて、楽しそうにしていて、真面目で頑張り屋な部分があって、それでいてとても脆いところがある。そんな雰囲気が全く感じない。
むしろ、今の沙紀からは、何時もは感じないはずの、昔、テレビやライブで見た星野如月の雰囲気を感じる。
「でもそれは仕方ないわ、だってわたしは顔も良い、スタイルも良い、美人なのだから、わたしって、罪な女ね……」
「……」
「正論過ぎて、言葉もでないみたね、でも正常な反応よ、さあ、好きなだけ見蕩れなさい、許可するわ」
「違うわよ、呆れて言葉が出なかっただけよ」
まあ、でもちょっとは見蕩れてたかもしれないけど……。
だけど、何時もの沙紀だったら……。
(あれ~にこ先輩、もしかして私に見蕩れてたんですか、良いですよ、良いですよ、じゃんじゃん見てください、私もにこ先輩に見られると、興奮しますから、と言うよりも我慢できない……今すぐ私とゴールインしてください!!)
大体こんなことを言って、何時ものオチになる流れがお約束なんだけど。今の沙紀の雰囲気だと、そんなお約束になるわけもなく……。
「まあいいわ、わたしが美人だって言う事実は変わらないわ」
本気でそう言ってるのか判断しづらい冷淡な声で、そう言って、話を止めた。
何と言うか今の沙紀とはやりづらい。口調が冷淡な事もあって、本気で言ってるのか、冗談を言ってるのか分かりづらい。そもそも、何時も沙紀も、本気なのか、冗談なのか、分からないときもあるけど。
それでも今の沙紀よりかかなり分かりやすい。何時もあいつなら、割りと顔に出やすいところがあるから。
「ねぇ……」
だからこそ……私は目の前のこいつに……。
「何? にこ先輩」
「何であんた……穂乃果にあんなことを言ったのよ」
今日の屋上での出来事をついて聞いた。
3
「さすがに楽しいお喋りは終わりね……」
私が屋上のこと聞くと、沙紀は何処か名残惜しそうな感じで、そう口にした。
さっきのは楽しいお喋りだったのね……。全然そんな風には見えなかった。
「別にわたしは事実を口にしただけよ」
「確かにそうね、だけど、もうちょっと言い方ってものがあったんじゃないの」
「あの言い方じゃあ、穂乃果が辞めるなんて言っても、仕方がないわよ」
「そう? 私の記憶にある穂乃果だったら、ああ言っても、てっきり辞めるなんて言わないと思ってたけど……言い方の問題だったのね……」
「あんた、もしかして……説得しようとしてたの?」
「もしかしても何もその通りよ」
「……」
嘘でしょ。誰がどう聞いても、説得してるようには聞こえなかったのに、こいつはつまり……あれで説得してるつもりだったの。言葉が足りないどころか、口下手にも程があるわよ。
「まあ、起こってしまったことを嘆いても仕方ないわ、穂乃果が本気で辞めるつもりなら、本人の意思を尊重するだけのことよ」
「わたしたちはわたしたちで、これからどうするかを考える方が有意義よ」
「そうよね……」
沙紀の言っていることは正しい。絵里も同じことを言っていたから。
私たちが──μ'sが、これからどうするべきかは考えることはとても大切なことだから。そこはいい。
何か私が思ってた沙紀の反応とは、大分違う。
私の予想だと、穂乃果に対して、あんなことを言わせてしまった責任を感じているんじゃないかと思ってた。
だけど、今のこいつから全くそんな風に感じない。完全に過去のことは過去のことって割り切ってる。これは単純に、喋り方が冷たいから、そんな風に感じるだけ?
「もう一つあんたに聞いていい?」
こいつにこの質問をするのは、かなり気が憚れるけど、それでも確認しないといけない。
「えぇ、いいわよ」
「あんた、μ'sが活動休止すると聞いて、どう思った」
「別にそうなるのは妥当だと思ったわ、リーダーが辞めて、目的も目標も無い状態で続ける何て、時間の無駄」
「……そうよね……そうね」
「あら、何か聞きたかったこととは違うみたいな反応ね……あぁ、なるほどね」
沙紀は私の反応を見て、私が何を聞きたかったのか、気づいたみたいなことを口にした。
「私がμ'sの活動休止と聞いて、自分の──星野如月の活動休止のこと、と重ならないのか心配してたのね」
「別にそんなつもりで聞いた訳じゃないわよ、ただ……」
あんたが今回の件を自分のせいだと、思い込んで一人で背負い込んで欲しくなかったのよ、と言おうしたけど、恥ずかしくて言えなかった。
「ありがとう、私の心配をしてくれて」
また私の反応で気づいたのか、沙紀はお礼を口にした。その声は冷淡な言い方だけど、何処か優しく嬉しそうな感じがした。
「まだ何も言ってないわよ!!」
「そう、わたしが勝手にそう思っておくわ」
私が何か言う前に、沙紀は納得してしまった。
「わたしは自分のことと、今回の件については、別の件だと、完全に割り切ってるわ、それに、あのときの星野如月の活動休止は、仕方がないことだったのよ」
「何よ、それ……」
「にこ先輩が気にすることではないわ、今は星野如月のことよりも、今はこれからをどうするかを考えるのが重要よ」
沙紀は有無を言わさないように星野如月の話を辞めて、本来の話題に戻した。
「今回の件で、にこ先輩がわたしに質問したから、わたしもにこ先輩に質問するわ」
「何よ、別にいいけど」
今の沙紀に今回の件で何か質問してくると、言われると、何か難しそうなことを言うんじゃないかと、少し身構える。
「あなたはこれからどうするつもり?」
「──私はスクールアイドルを続けるわ」
私は沙紀の質問に対して何を言ったか理解した瞬間、迷わず、そう答えた。
「清清しいくらいに即答ね、正直、もう少し考えるかと思ってたわ」
「そうね、私もすぐに答えられるなんて思ってもみなかったわよ」
頭で考えるよりも早く、口が先に動いていたってことなんだと思う。
「でもμ'sの活動休止中よ、どうやってスクールアイドルを続けるつもり?」
「別にμ'sが活動休止ってだけで、私が勝手に動いて続けるぶんには自由でしょ」
「その通りね、ならこれから何をするつもり?」
「そうね……とりあえず、穂乃果とことり以外には声を掛けるつもりよ、一緒にスクールアイドルを続けないって」
本当にスクールアイドルを続けるつもりなら、例えμ'sじゃなくても続けると言ってくれるはずよ。
「声を掛けて、もし、誰もスクールアイドルを続けないって言ったら──」
「それでも私は一人でもアイドルを続けるわよ」
沙紀が何かを言う前に私は力強くそう断言した。
「……前に同じように一人でスクールアイドルを続けて、失敗したのに、また同じことを繰り返すの」
「確かにあのときの私は一人でスクールアイドルを失敗したわ」
忘れるわけないじゃない。二年前のあのときの失敗を──あの悔しさを──あの挫折を。
「けどね、私はみんなとμ'sでスクールアイドルを続けて気づいたのよ」
「私はアイドルが大好きだから、この気持ちを忘れなければ、例え、この先、何があっても私は迷わずに続けることができるわ」
こいつと一緒に練習を続けて、μ'sとしてライブで歌ったり踊ったりして、私の中でのアイドルが好きだって、この気持ちがどんどん大きくなっていった。
それに私のライブを見て、喜んでくれたファンがいたから。
あと、私がスクールアイドルを続けることで他のみんなが戻ってくるかもしれないから。
「そう、それがあなたの答えなら、わたしから言うことはないわ」
私の決意を聞いて沙紀は納得したのか、これ以上はなにも言わなかった。
「じゃあ、さっそくだけど、あんたはどうするつもりよ」
「決まってるじゃない、わたしはにこ先輩に付いていくわ、今回の件の結末を見届けるためにね」
「あんたも即答じゃない」
私はツッコミを入れるけど、迷いのない判断の速さが私にとっては心強いわ。
「それじゃあ、まずは花陽と凛辺りに声を掛けに行きましょう、あの子たちなら続けるって言いそうよね」
「そうね、まずはその二人からね」
こうして私たちは自分たちのこれからの答えを出して、行動を始めるのだった。
如何だったでしょうか。
何かにこが主人公みたい……。何か書いててもうにこが、この作品の主人公で良いんじゃないかって思ってきた、今日この頃。
そんなわけで感想などありましたら、気軽にどうぞ。
誤字、脱字がありましたらご報告して頂けると有り難いです。