ラブライブ! 委員長はアイドル研究部のマネージャー   作:タトバリンクス

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それではお楽しみください。



四十八話 にこ推理ショー

 1

 

「あんた……一体誰なの?」

 

「面白いことを言うわね、どうしてそう思ったのかしら」

 

 私の質問に対して、沙紀は理由を求めてきた。

 

「否定はしないのね」

 

「にこ先輩の質問への回答をする前に、まずはどうしてそんな風に思ったのか、気になったのよ、理由もなくそんなことは言わないでしょ」

 

 どうやら沙紀は、私がどうして目の前の沙紀が沙紀じゃないと思った理由を聞きたいみたい。まずはそれを答えないと、私の質問にも答えないようね。

 

「分かったわよ……」

 

 私は沙紀の言う通りに理由を説明することにした。

 

 私は軽く深呼吸をして、私が感じた違和感を頭の中で整理する。

 

 私の知っている沙紀と目の前の沙紀との違いを思い出す。

 

 いくつかあった違和感の整理をできると、目の前の沙紀は何事も無かったように、普通にコーヒーを飲みながら、私の話を何時でも聞けるという雰囲気を出していた。

 

「まずおかしいと思ったのは、あんたの見た目」

 

 これが私が感じた最初の違和感。

 

「何時ものあいつの髪型は三つ編みのお下げで、伊達眼鏡を掛けているわ」

 

 この学校の生徒に篠原沙紀と言えばって聞くと、ほぼ全員が委員長スタイルって言われるくらいに、あいつの見た目はそれだけ有名。

 

「けど、ここ最近のあんたはストレートヘアーで伊達眼鏡を掛けてこなかったわ」

 

 実際に目の前の沙紀は私の言ったようにストレートヘアーで眼鏡を掛けていない。

 

「でも私ってたまに自分から髪型を変えたり、眼鏡を外すことがあるじゃない」

 

「確かに何回か私たちの前でそういうことをしているわね」

 

 そこまで回数は多くはないけど、私たちの前で何回かそういうことはあった。

 

「だけどね、私の知っている沙紀はやたらと周囲の目を気にしていたわ」

 

 そう。あいつは何故いつも委員長スタイルにしているのかには理由がある。

 

「理由は自分が元アイドル──星野如月だと、バレたくないから」

 

 あいつ自身が隠したい秘密を隠すために、委員長スタイルで、自分が星野如月だとバレないように変装をしていた。

 

 つい最近まで私以外のμ'sのメンバーには、正体を隠していたくらいに、あいつは自分の正体を不用意に明かそうとしなかった。

 

「今のあんたの見た目は星野如月と同じ、そんな見た目で過ごしていたら何時か周りにバレてしまうわ」

 

 当時の星野如月はメディアへの露出はかなり多く、ファンも大勢いて、ライブのチケットが即日完売なんて余裕で起こるくらい人気アイドル。

 

 それだけ人気アイドルだった星野如月が変装もなしで歩き回れば、ファンにバレる確率がとても高い。

 

 しかも、今とは顔付きに多少の違いはあるけど、目の前の沙紀と同じ髪型をしていた。

 

 そんな髪型で行動していたら、活動休止してから数年経った今でも星野如月のファンなら気付かないわけがない。

 

 それは星野如月のファンだった私や花陽が眼鏡を外した沙紀の顔を見て、気づいたことが証明している。

 

「それにあいつは自分のアイデンティティーが無くなるとか、周囲のイメージが変わってしまうとか、そんなことばっかり気にしていたわ」

 

 前に無理矢理、沙紀の髪型を変えようとしたときも、かなりの拒絶をしていた。

 

 絵里がμ'sに入るときも三つ編みを解いたときもアイデンティティーがって、うるさかった。

 

 それにあいつには基本的にμ'sのメンバー以外は、清楚で淑やかな『白百合の委員長』としてのイメージで通している。

 

「そんなことを気にしているあいつが数日間、委員長スタイルをしないのは違和感があるわ」

 

「なるほどね、確かに今までの私なら有り得ないわね」

 

 一つ目の違和感を聞いて、沙紀は納得したような口振りだった。だけど、何処かまだ余裕があるそんな雰囲気を感じる。

 

「次におかしいと思ったのは、あんたがあることに対しての反応」

 

 これが私が感じた二つ目の違和感。

 

「この前、私があんたに聞きたかったことを覚えてる?」

 

「ええ、私がμ'sの活動休止と聞いて、自分の──星野如月の活動休止のこと、と重ならないのかってことだったわね、覚えているわ」

 

 私が沙紀に覚えているのか確認すると、沙紀は覚えていると答えた。

 

 あのとき、沙紀の前でμ'sが活動休止になる瞬間を見てしまったから、私は念のため沙紀にこのことを聞こうとした。

 

 まあ、実際は素直に聞き出せなくて、結局目の前のこいつに見破られて聞いたんだけど。

 

「そのとき、あんた、あのとき星野如月の活動休止は、仕方がないことって答えたわよね」

 

「そうね、確かに答えたわ」

 

「その反応が私の知っているあいつとは違うのよ」

 

 私は目の前の沙紀の反応を指摘する。

 

「少なくても私の知っているあいつは、星野如月が活動休止になって、仕方ないなんて割り切れないのよ」

 

 それこそが私が感じた違和感の正体。

 

「理由は分からないけど、あいつは……今でも星野如月が活動休止なってしまったことを悔やんでいるのよ……」

 

 あいつがどうしてそこまで悔やんでいるのか、詳しくまでは私も知らない。ただ、初めてあいつと出会ったときのやさぐれた姿や怯えた反応が、今でも鮮明に覚えている。

 

 その状態のあいつから少しだけだけど、事情を聞けて、私はあいつをアイドル研究部に入れた。

 

 それからあまり笑わなかったあいつは少しずつ笑えるようになって、今だとウザいぐらいに私にベタベタと付きまとってくるくらいに。

 

 そんな今でも星野如月関係の話になると、あいつの顔が暗くなって、遠慮してほしい雰囲気を感じる。

 

 最近だと、文化祭の放課後や廃校阻止のお祝いのあと、あいつの様子がおかしかった。

 

 それもあって、μ'sの活動休止の件のときに心配になって聞きに来たわけだったんだけど、逆に目の前のこいつに対しての違和感が増えたことになった。

 

「なるほどね……」

 

 目の前の沙紀はそう一言呟くだけだった。目の前の沙紀は二つ目の違和感を聞いて、何を思ったのか、全く読めない表情をしている。

 

「まだあるのかしら、わたしがあなたの知っている篠原沙紀とは言えない理由」

 

「えぇ……まだあるわ……」

 

 そう聞いてくる目の前の沙紀はやっぱりまだ何処か余裕が雰囲気。

 

「その次におかしいと思ったのは、あんたの好みよ」

 

 これが私が感じた三つ目の違和感。

 

「ここ最近のあんたって、お昼は必ずと言っていいほど、ところてんばっかり食べているじゃない」

 

 お昼どころか暇さえあれば、練習中だろうが、何処でも食べようとするくらい、ところてんを食べまくっている。

 

「えぇ、当たり前でしょ、ところてんは万能食、お昼どころか朝昼晩三食ところてんよ、わたし=ところてんって言っても過言じゃないわ」

 

 ところてんの話になった途端、目の前の沙紀は饒舌になって、冷淡な口調だけど、上機嫌に話しているように見える。

 

「その反応もそうだけど、さっきあんたの口から出た三食もところてんで、この違和感に確信が持てたわ」

 

「あらっ──つい、ところてんの話になったから調子に乗っていらないことを口走ってしまったわね、失敗したわ」

 

 やっぱりあれでもテンション上げてたのね。どんだけこいつところてんが好きなのよ。

 

「そもそも私の知っているあいつはあんたみたいに偏食じゃなくて、ある程度栄養が偏らないように、お弁当を作って持ってきたわ」

 

 あいつとは結構な回数、一緒にお昼を食べているけど、毎日欠かさずお弁当を作っていたわ。それどころかまたに私の分まで、わざわざ作ってくるときもあった。

 

 何回かお弁当を作って貰ったときに中を見たときに、見た目はふざけているけど、味はかなり良くて栄養のバランスも考えいるように見えた。

 

「こういうところが無駄にまめなあいつが急にシンプル・イズ・ベストとか言って、ところてん単品で食べるわけないわ、むしろ、そうあってほしくないわ」

 

「若干、願望入っているわね……」

 

 この違和感に関しては、ちょっと熱くなったせいで目の前の沙紀に突っ込まれてしまった。

 

 しょうがないでしょ。突然、ところてん最高とか言い出して、目の前で十パック以上食べている姿を見せられるのは、誰だって驚くわ。

 

「それに好みに関してはもう一つあるわ」

 

 私とって違和感を感じさせた原因とも言えるもの。

 

「あんたが今飲んでいるそれよ」

 

 そう言って私は目の前の沙紀が持っているブラックコーヒーを指差した。

 

「私が知っているあいつは絶対にブラックコーヒーなんて飲めないわ」

 

「絶対って言い切るわね」

 

 自信満々に口にした私に目の前の沙紀は茶々を入れる。

 

「だって、私の知っているあいつはブラックコーヒーを飲んだら吐くのよ、そんなあいつが飲めるわけないじゃない」

 

 あいつの歓迎会のときに、あいつがブラックコーヒーを飲んで、吐きそうになってトイレに駆け込んだのを見たことある。

 

 その歓迎会のあと、少しの間はこっそりと部室でブラックコーヒーを飲めるようにしようとするところも何度か見ているし、そして、結局トイレに駆け込む姿を見ている。

 

「この前、あんたが私と話したときもブラックコーヒーを飲んでいたわよね」

 

 そのときは全く気にしていなかったけど、よく思い出せばおかしかったわ。

 

 あいつが飲めないはずのブラックコーヒーを普通に飲んでいる。これには違和感を感じたわ。

 

「もしかしたら私の記憶違いかもしれないって、もう一度確認させてもらったわ」

 

「さっき、わざわざわたしに飲み物を選ばせたのはそういうことだったのね、わたしがブラックコーヒーを選ぶことを確認するためだったのね」

 

 そう。目の前の沙紀の言う通り、さっき私が飲み物を渡したのはそう言った理由があったわ。それに目の前の沙紀はまんまと乗せられた。

 

「しかもこの前のお礼と言えば、不信にも思わない……考えたわね」

 

「それにあんたが選ばなかったほうは……何だか分かる?」

 

「確か……ミルクティーだったわね」

 

「そうよ」

 

 目の前の沙紀の言う通り、ミルクティーとこいつが今持っているブラックコーヒーを選ばせた。その結果、こいつはブラックコーヒーを選んだ。

 

「だからこそ意味があるのよ、だってミルクティーは私の知っているあいつの好きな飲み物よ」

 

 あいつが何時も飲み物を買うときは殆んどミルクティーを買ってくるわ。

 

「好きなミルクティーと嫌いなブラックコーヒーを選べって言ったら、普通ミルクティーを悩まず選ぶはずよ、だけど、あんたの反応は逆だったわ」

 

 私がこいつに飲み物を選ばせたときに迷わず、ブラックコーヒーを選んだ。

 

「でもそれって、好きなものに対する反応よね」

 

 大体飲むものが何時も同じなら考えず選ぶけど、何時もとは違うものを飲むとなるんだったら、一回は必ず迷うはず。

 

 ましては本来なら嫌いなはずのブラックコーヒーを選ぶなんてなると、相等悩むのが普通。だけど、こいつは悩まなかった。

 

 それが当たり前みたいな自然な感じで選んだ。

 

「どう、これがあんたが私の知っているあいつとは違うと思った理由よ」

 

 私は目の前の沙紀に感じた違和感を説明し終わった。

 

 目の前の沙紀はそれを聞いて黙ったままだった。

 

 正直、私の言っていることに目の前の沙紀が難癖つけたり、揚げ足を取られたら、反論できる気がしない。

 

 結局、ただ単純に私が感じた違和感だけでそれ以上の根拠はないわ。

 

「まさか、ここまで見ていたのね……驚いたわ……」

 

 目の前の沙紀は私が思った以上に、沙紀のことを見ていたことに対して、感心しているみたいだった。

 

「そうね……正直、反論はできるけど……決めた、あなたの質問に答えてあげる」

 

 目の前の沙紀は少し考えると、そう口にした。

 

「それって……」

 

 まさか、反論もなく、素直に答えるとは思ってなくて、驚く私を気にせず、沙紀はこう口にした。

 

「あなたの予想通り、わたしはあなたが知っている篠原沙紀じゃないわ」

 

 




如何だったでしょうか。

にこの質問に答えた彼女の正体は?

そんな彼女は何を語るのか?

それは次回をお楽しみに。

そんなわけで感想などありましたら、気軽にどうぞ。

誤字、脱字がありましたらご報告して頂けると有り難いです。
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