ラブライブ! 委員長はアイドル研究部のマネージャー 作:タトバリンクス
それではお楽しみください。
1
「やっぱり人が多いわね」
UTXまでやって来た私──矢澤にこは目の前の光景に思わずそんなことを口にした。
UTXのモニター前はA-RISEの新発表があるって情報のせいで人溜まりで溢れかえっているわ。流石はA-RISEね。発表一つでこんなにも人を集められるなんて。
まあ、私も新発表の情報を聞き付けてやって来た一人なんだけど。
その新発表を今か今かと待ちわびていると携帯から着信音が鳴った。
『秋葉駅に着きました、今どこにいますか?』
携帯を確認すると、そう沙紀からメッセージが届いていた。
『いまUTXのモニター前よ』
そう沙紀にメッセージを送り私たちの場所を教えると、すぐに『了解』と書かれたスタンプが返ってきた。
「相変わらず返信が早い……」
だいたい沙紀とメッセージでやり取りするときは(あいつが忙しくない限り)遅くても三分は掛からないくらいで返信が返ってくる。正直何時も張り込んでいるんじゃないかってくらいに。
そんなことを考えながらモニターのほうを見ていると、突然画面が切り替わってA-RISEの三人が映し出される。
モニターの変化に気付いた周囲の人たちは少しずつざわつき始める。
やっと新発表がお披露目ってわけね。私もA-RISEの三人が映し出されるとテンションが上がってくる。というか上がらないわけがないわ。
『UTX高校にようこそ』
A-RISEの三人がそうアナウンスすると、集まっていた人たち(私も含めて)みんなが彼女たちが映るモニターに釘付けになっていた。
『ついに新曲ができました』
『今度の曲は今までで一番盛り上がる曲だと思います』
『是非聴いてくださいね』
A-RISEがそれだけ伝えると、モニターはアナウンス前までと同じ画面に戻る。だけど、周りの盛り上がりはそれまでとは全然違っていた。
A-RISEの新曲が出る。たったそれだけの事でこんなにも周りを盛り上がらせることができる。それだけ彼女たちの曲を楽しみにしているファンが多いってことがよく分かる。いや、そもそもここに来ている時点で身に見えて実感はできるけど。
私だってA-RISEが新曲を出すって聞いただけで、心の中はドキドキしているし、早く聴きたくて待ち遠しい気持ちになっている。
しかもこのタイミングで新曲発表ってことは、多分、いや絶対ラブライブ予選で、A-RISEが使用する曲ってことなんて誰でも簡単に想像できる。
それどころか同時に自分たちがラブライブ予選の出場の権利を周りに獲得したことを伝えているし、自分たちのライブの宣伝をしているようなもん。
こんな無駄のないPRで確実にラブライブ予選での注目度は一気に上がっている。
これが全スクールアイドルの頂点。
私たちはこんなすごいグループに勝たなきゃラブライブ本選に出られないの。
「全く嫌になるわね……」
頭の中では理解していたけど、この盛り上がりを目の前で見てしまったら自信が失くなってしまう。
それにどっかの誰かさんのせいでPRの意図に意識が向いちゃうところとか。
「……はぁ~」
こんな気持ちになっても沙紀のことが頭に浮かんでくる自分に思わず溜め息が出てしまう。
どうせあいつのことだから、予選でA-RISEより順位が下でも、予選さえ突破すれば良いなんて考えているだろうし。むしろ本予選で勝てば問題ないって考えていそうね。あいつはそういう奴。
それに沙紀は私たちに絶対に勝てないなんて言ってない。
あいつが私たちにそう口にしない限り、まだチャンスがあるってことだから。その点に関してだけは誰よりも信用できる。
「はぁ~」
あいつのことを考えていたら、何か色々と考えるのがバカらしくなってきた。それにいつの間にか自分の中の不安が消えていたことに気付いて、また溜め息が出てきたわ。
「そろそろあいつも来てるかもしれないし、合流しないと」
私はそろそろ来てると思う沙紀を探し始める。最も私が探すよりも、あいつが先に私を見つけるのが早そうな気がするけど。
そんなことを考えながら周囲を見てみる。すると、沙紀ではなく穂乃果たちが見つかったけど、その目の前にいる人物に目が行ってしまう。
何故なら穂乃果たちの目の前に居たのは、さっきまでモニターに映っていたA-RISEのメンバーの一人──綺羅ツバサだったから。
その光景があまりにも突然過ぎて頭の中が真っ白になっていると、ツバサは穂乃果の手を引いて走り出していた。
「……はっ!!」
どうしてツバサが穂乃果たちの前にとか、どうして穂乃果を連れ出したのとかなんて考える前に私も走り出して二人の後を追う。
二人の後を追いかけていると、同じように二人を追いかけている花陽に気付き声を掛ける。
「今のは絶対」
「ツバサよね」
お互いに確認し合って、目の前のツバサが夢や幻じゃないのが理解できると、私たちは全力で二人の後を追う。
「ふぇ~二人とも学校の中に入っちゃったよ」
「構わないわ、私たちも入るわよ」
明らかに無断侵入だけど、そんなことは気にせず、私たちもUTX高校の中に入っていく。
奥に進んでいくと、穂乃果の立ち止まる姿が見えて、やっと追い付くことが出来たみたい。だけど、穂乃果の目の前にはツバサだけじゃなく、統堂英玲奈と優木あんじゅが揃っていた。
「A-RISE!!」
「あ、あ、あの……よ、よろしければ……サ、サインください」
「あっ!! ちょっとズルいわよ!!」
「フフ、いいわよ」
私たちが会って早々に図々しくもサインを貰おうとしてたのにも関わらず、ツバサは笑顔でサインを引き受けてくれた。
「えぇ!!」
「いいんですか!!」
「ありがとうございます」
まさかA-RISEの直筆サインが手に入るなんて……感激だわ。なかなかA-RISEのサインなんて手に入るものじゃないから余計に。
「でも、どうして?」
「それは前から知っているからよ、μ'sの皆さん」
穂乃果の疑問に意味深に答えるツバサ。
「それって──」
「やっと追い付きました」
「凛だって急にかよちんが走り出すからビックリしたにゃ~」
穂乃果が何か言おうとすると、後ろからそんな声が聞こえてきた。
振り返ってみると海未にことり、凛、真姫が私たちの後を追って続々と学校の中に入ってくる。
「話の続きは皆さんが揃ってからにしましょう、あと来てないのは絢瀬絵理さんと東條希さんよね」
どうやら私たちのことを本当に知っているらしく、ここにまだ来てないのが、絵理と希だと理解して待ってくれるみたい。
「あの……実はもう一人居るんですけど良いですか」
ちょっと申し訳なさそうに、私はあいつも来るまで待ってもらえるように、ツバサに頼んでみる。
「ええ良いわよ、その人ってお友達?」
「いえ、お友達じゃなくて、一応うちのマネージャーなんですけど」
「へぇ~、μ'sにはマネージャーが居るのね……ごめんなさい、それは知らなかったわ」
どうやら本当にマネージャーのことは知らないみたいな反応。でも仕方ないわよね。あいつは正体が正体だし、表立って人の前には出ようとしないから。
「あっ!! いたいた」
「もう急にみんな居なくなるんだものビックリするじゃない」
そんなことを話していると希と絵理が私たちと合流する。その二人の後ろに隠れるように沙紀がいるように見える。
「ホント、委員長ちゃん見つかってラッキーやったよ、そうじゃなきゃ完全にウチたちはぐれてたところやん」
「そうね、助かったわ沙紀」
絵理が沙紀のほうを向くと、あいつの顔が少しだけ見えた瞬間、私の横で誰かが走って行くのを感じた。
そして真っ直ぐ沙紀のほうへ向かいそのまま彼女に抱き付いた。
「会いたかった……」
そう沙紀に抱き付いたまま震える声で口にするツバサ。
突然過ぎるツバサの行動に誰もが戸惑うなかただ一人──沙紀だけは、一瞬だけとても辛そうな顔をしてこう口にした。
「久し振り……ツバサ先輩……」
2
私たちはA-RISEの三人に立ち話もなんだからとこの学校のカフェスペースに案内された。
「遠慮しないでゆっくり寛いで」
「あっ、はぁ……」
ツバサにそう言われて穂乃果が返事をするけど、いまいち今の状況を飲み込めてない感じの返事だった。実際に穂乃果は状況を飲み込めていないんだと思うのだけど。
そもそも今ここにいる誰もが状況を飲み込めていないか、戸惑っているかのどちらかだと思う。
「あの……さっきはうるさくてすみません」
「いいのよ、気にしないで」
謝る花陽に対して、あんじゅは本当に気にしてないと言うかこういうことに慣れている風。多分さっきみたいなことは結構多いんだと思う。
そんなあんじゅの反応を見て花陽は安心すると、チラッとツバサのほうを見る。
「素敵な学校ですね」
元生徒会長だからかそういうところに目が行く絵理だけど、花陽と同じようにツバサのほうを気にしていた。いや、花陽や絵理だけじゃないここにいる誰もが彼女のほうを気にせずにはいられない状況だった。
「ありがとう」
そんなことを知ってか知らずか何でもないようにお礼を言うツバサ。
「あの……一つ聞いてもいい……」
みんながツバサを気にしている状況のなか、今まで大人しくしていた沙紀が口を開いた。
「何かしら」
「どうして私の腕をガッチリと組んでいるの」
沙紀の言うように、沙紀の腕にツバサの腕がまるで逃げられないように組まれている。
「だって久し振りにあなたに会えたのよ、あなたと触れ合いたいって思ったのよ、それとも嫌だった?」
「それは……嫌……じゃないけど……」
一瞬だけ沙紀は私のほうを見たような気がする。
「二人ってどういう関係なんですか?」
穂乃果がそんな二人の会話を見て、誰もが気になっていたことを質問をした。
「どういう関係って……そうね──」
ツバサは突然沙紀の頬にキスをした。
「こういうことが気軽にできる関係かしら」
キスしたことを何でもないようにするツバサに対して、沙紀は完全に不意打ち食らってきょとんとした顔。
しかし、次第に沙紀は自分がキスされたことを理解してくると、どんどん顔が紅くなっていく。なんか顔から湯気が出てくるんじゃないかってくらいに。
「うぅ……みんなの前で急にそんなことしないでよ……」
「ごめんなさい!! 流石に急すぎたわよね」
「もう知らない……」
「本当にごめんなさい!! 久々に再会できたから私も舞い上がって──お願いだから許して!!」
恥ずかしさのあまり顔を俯く沙紀にあたふたするツバサ。沙紀がこういうの奥手なのは知っていた。ただあの綺羅ツバサが動揺する姿に新鮮味を感じる。
「ツバサ、一人で再会を喜ぶのは良いがμ'sの皆が反応に困っている」
「あっ……あはは……」
ツバサはばつが悪そうに苦笑いした。
「ツバサがごめんなさいね、この子たまにちょっとあれなときがあるから……」
「そうそう、私ちょっとあれだから──ってあんじゅそれはどういう意味!?」
「そういうところだ、事実彼女も困っているだろう」
「私は……大丈夫ですから……」
「本当!? なら──」
「そういうところだ、少しは自重しろ」
「昔から一応知っていたけど……ホント、あの子の言う通り彼女が絡むと酷いわね」
英玲奈に怒られてツバサが膨れていると、あんじゅは呆れていた。そんな三人の近くにいる沙紀はすごく居心地の悪そうな顔している。
なんか古道さんと初めて会ったときも同じ反応だったわね。確かあのときも同じような流れだった気がするわ。
「それでえ~と何だっけ、そうだ私とこの子の関係だっけ?」
「私とこの子は……中学の頃の先輩後輩? アイドルとファン? 師匠と弟子? そういうの色々と引っ括めて親友ってところね」
『!?』
ツバサの発言に私は絵理と希のほうに目線を合わせた。他にも何人か思うところがある反応しているのが見えた。
「今沙紀との関係をアイドルとファンとも言いましたが、もしかして沙紀が──」
「もちろん、彼女が星野如月だって知っているわ」
親友って言うくらいなら知っていて当然よね。
「まあ私とこの子の関係の話はここまでにして、本題に入りましょう、実は一度挨拶をしたいと思っていたの高坂穂乃果さん」
ツバサは穂乃果のほうに目線を合わせる。穂乃果は目線が合うと、ちょっと緊張しているみたいな感じがする。
「下で見かけたときすぐあなただと分かったわ、映像で見るより本物のほうがはるかに魅力的ね」
「人を引き付ける魅力、カリスマ性とでも言えばいいのだろうか、九人いてもなお輝いている」
「は、はぁ……」
A-RISEに急に褒められて戸惑っている穂乃果。
「私たちね、あなたたちのことずっと注目していたのよ」
『えっ?? えっ!?』
「実は前のラブライブでも一番のライバルになるんじゃないかって思っていたのよ」
あのA-RISEに注目してくれていただけでも驚いたのに、一番のライバルになるなんて思われていて、更に全員の驚きが増える。
「そ、そんな……」
「あなたもよ」
「絢瀬絵里、ロシアでは常にバレエコンクールの上位だったと聞いている」
「そして西木野真姫は作曲の才能が素晴らしく、園田海未の素直な詩ととてもマッチしている」
「星空凛のバネと運動神経はスクールアイドルとしては全国レベルだし、小泉花陽の歌声は個性の強いメンバーの歌に見事な調和を与えている」
「牽引する穂乃果と対になる存在として九人を包み込む包容力を持った東條希」
「それに……秋葉のカリスマメイドさんまでいるしね」
「いや、元と言ったほうがいいかしら」
絵理を皮切りにメンバーそれぞれの特徴を彼女たちなりに評価していた。
それにしても良くそこまで調べられたわね。ことりとかは写真が出回っていたわけじゃないのに。だけどそれだけに疑問が残る。
なんで沙紀だけと言うよりもμ'sにマネージャーがいることだけ知らなかったのかって。
そもそもあいつはことり以上に自分の姿が写らないように徹底していた。自分が星野如月だとバレるリスクを抑えるために。
ただμ'sにマネージャーがいることだけなら、いくらでも知ることはできた。例えばあいつがいつの間にか作っていたμ'sの活動報告のブログとかで。
「そして矢澤にこ……」
そんなことを考えていると、ついに私の番が来て少し身構える。真剣な眼差しで見つめるツバサに私は緊張してきて少し汗が出てくる。そして彼女から──
「いつもお花ありがとう」
ニッコリと笑顔を私に向けてくれた。
「昔から応援してくれているよね、すごく嬉しい」
「あっ、いやその……」
「にこそうなの」
「知らんかったんやけど」
予想外の返しに戸惑っていると、絵理と希に呆れられた目で見られていた。
「い、いや~μ's始める前からファンだったから──って!! そんなことはどうでもよくて、私の良いところは!?」
今までの流れならここは私の良いところを言われる所なのに、何故私だけファンへの対応みたいになっているの。いや、実際にファンだけど。それにA-RISEにお花を贈っていたのを覚えてくれていたのは嬉しいけど。でもそこはA-RISEから私の良いところを聞きたいわよ。
「うふふ……グループにはなくてならない小悪魔ってところかしら」
「小悪魔、にこは小悪魔」
自分がA-RISEにそんな風に思われていると分かると、嬉しくなってしまう。
「更にトップアイドルとして実力も経験も申し分なく、人のポテンシャルを見抜く観察眼とそれを向上させる知識をも兼ね備えた星野如月をマネージャーに据えている」
そして沙紀を最後に私たちの良いところを言い終わる。
「なぜそこまで……」
「これだけのメンバーが揃っているチームはそうはいない、だから注目もしていたし、応援もしていた」
「そして何より……」
「負けたくないと思っている」
A-RISEの視線は真っ直ぐに私たちを見据えていた。それは彼女たちが冗談ではなく、本気で言っているのが伝わってくる。
「でも……あなたたちは全国一位で私たちは──」
「それは過去のこと」
あんじゅはバッサリと切り捨てた。いや、あんじゅだけじゃないツバサと英玲奈も同じ意志だと、言葉にしなくても伝わってくる。
「私たちはただ純粋に今この時一番お客さんを喜ばせる存在でありたい、ただそれだけ」
まるでプロのアイドルみたいな考え方。だからこそ何だと思う。A-RISEが全国一位で居続けることができるのは。
私もA-RISEの考え方は理解できる。
アイドルは来てくれた人を笑顔にさせる仕事。私のライブを見て、また明日から頑張ろうって、そういう気持ちにできるアイドルになろうって努力してきた。
そこはステージの上に立つアイドルとして、スクールアイドルもプロのアイドルも変わらない。
「μ'sの皆さん、お互いに頑張りましょう、そして私たちも負けません」
「あの!!」
カフェスペースから立ち去ろうとするA-RISEたちを穂乃果は呼び止める。
「A-RISEの皆さん、私たちも負けません!! 今日はありがとうございました」
「あはっ、あなたって面白いわね」
穂乃果の言葉に一瞬驚いた顔をしたツバサだけど、すぐに嬉しそうな笑顔をした。
「ねぇ、もし歌う場所が決まっていないならうちの学校でライブやらない?」
『えぇ!!』
「屋上にライブステージを作る予定なの、もしよかったら是非、一日考えてみて」
「やります!!」
ツバサの予想外の提案に私たちは驚いたが、穂乃果は迷わず答えるのだった。
3
μ'sの皆さんが帰ったあと、私たちは自分たちの自室に戻る途中。
「面白いグループだったな」
「そうね、まさかツバサの思い付きで言い出したことにあんな風に対応するなんて」
英玲奈とあんじゅはμ'sと直接会った印象を話している。二人の会話を聞く限り、前よりも彼女たちに興味を持ったみたい。
「ツバサが勝手に言い出したことだけど、私たちが誘った以上、下手なパフォーマンスはできないわね」
「そうだな、だが私たちは何時も通り私たちのライブをするだけだ」
「しかし、良かったのかツバサ」
「何の話?」
二人で話していると思っていたら、急に私に話題を振ってきた英玲奈。
「予想外とはいえ、彼女とは久し振りに再会したのだろう、もう少し話さなくても良かったのか」
彼女……あの子のことを言っているのね。
「良いのよ、これ以上あの子に迷惑は掛けられないから……」
「ほっぺにキスした人が迷惑とか言える立場かしら?」
「うぅ……」
そこを突っ込まれると何も言えなくなるわ。勢いでついやってしまったとはいえ、あれはやり過ぎたと自分でも自覚できる。
「止せあんじゅ」
「英玲奈……」
「空元気しながらも不安を必死で隠そうとしたツバサの努力をからかってやるな」
「英玲奈も何気に酷いわね、それよりも空元気に見えたってホント?」
「付き合いの長い私たちなら一目瞭然、それに彼女にはバレているだろう」
「やっぱりそう見えたのね」
英玲奈が言うのなら確かなんだと思う。あの子にも多分、バレている。いや、絶対バレているわ。
「まあそこは置いておくとして……」
「えっ置いておくの?」
「彼女のことを考えているのならμ'sにウチの屋上を貸すのは不味かったわね」
私の反応を無視してあんじゅは話を進める。
「何で面白いアイデアだと思ったんだけど」
『やっぱり』
二人して私に呆れた目を向けてきた。ただやっぱりと思いながら呆れた目を向けるのはどうかと思うけど。
「発想事態は悪くはない、μ'sのライブを直で見ることは我々にも得るものがあるだろう、ただ……」
「ウチにはあの子がいるわよ」
「あっ、不味い」
あんじゅに言われて私はとんでもない失敗をしていたことに気づいた。
「ど、どうしよう……」
「急に我々が誘った手前、μ'sに断るのは失礼だろう、それに歌う場所も決まってなかった様子なら、なおのこと」
「そうよね、それはダメよね」
ライブを中止にできない以上、他の手を考えるしかないわよね。
「こうなったら刺客を差し向けて……」
「落ち着け……何を訳の分からないことを言っている」
「だって……」
「気休めだが校内ではこの話が漏れないように最小限に留めておくのがいいだろう」
「あとは古道さんに相談でもしたら良いんじゃない?」
「なるほど刺客の相談ね」
確かにあの人なら手練れを知ってそうだし、悪くない案ね。
「そんな相談はしないわよ、当日あの子に予定を入れて貰うなりして、物理的に来れないようにとか」
「そこまでしても彼女ならハイエナみたいに嗅ぎ付けて無理矢理でもくるだろうな」
「有り得なくないわ……」
あれの性格上何を仕出かすか分かったものじゃない。本当にハイエナみたいに。というかハイエナそのものよ。
「そもそもあの子……彼女がμ'sと関わっているの知っていたんじゃない?」
「かもしれないな、私たちにμ'sの情報を提供したのは彼女だ」
英玲奈の言うように今日μ'sの皆さんに話した内容はあれから渡された情報を元にしているわ。ただ私たちもそれだけを鵜呑みにせずに、自分たちで各メンバーのことは調べていたわ。
けどあれが最初に渡した情報のせいで、μ'sにマネージャーがいる可能性を考慮出来なくなっていたのは事実。
「だったらあとはもう自分たちの運を願うしかないわね」
「ダメよ」
「どうして?」
「だって私たちが良くても、あの子……本当に運がないもの」
『……』
私のその発言に二人は黙ることしかできなかったわ。
「本当に古道さんに相談するしかないな」
「そうよね……」
あれの動きが読めない以上、私たちにやれることは少ない。
ただ本当に私たちがやっていることがあの子の為になっているのか私には自信が持てなかった。
如何だったでしょうか。
なかなか更新出来ずにいて、お待たせしているところもありますが、読んでくださってありがとうございます。
気軽に感想など頂けるとモチベにも繋がって嬉しいです。
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