ラブライブ! 委員長はアイドル研究部のマネージャー   作:タトバリンクス

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お待たせしました。

色々と話の整理や今回の展開で悩んでいたら結構時間が経ってしまいました。(正直、公式が虹ヶ咲やスーパースターで好きなキャラや設定を出したので満足してたのもありますが……特にせつ菜)。

それではお楽しみください。


六十四話 篠原雪音

 1

 

「知っているも何も篠原雪音はその篠原さんのお母さんの名前よ」

 

「えっ……」

 

「どうゆうこと?」

 

 理事長から告げられた思わぬ事実に私たちは困惑した。

 

 篠原雪音はあいつの母親の名前。それだけだったらここまで困惑することはなかった。

 

 しかし、沙紀の母親には困惑せざるを得ない理由がある。

 

 何故ならあいつの母親は既に亡くなっている。これはあいつの口から聞いたことだから、事実かどうかはわからない。もし、仮にそれが事実なら……。

 

 私の前に現れた篠原雪音と名乗った人物は一体何者なの。それに名前が違うとなれば、数少ないあいつの過去を知っている人物に接触する機会を失う。

 

 そうなれば古道さんからの連絡を待つしか出来なくなり、ほぼ手詰まり状態になる。ただでさえあいつの身に何が起こっているのか分からないのに、待つことしか出来なくなるのは、嫌。

 

「ホント……懐かしい名前ね……」

 

 困惑した頭で思考していると、理事長がもう会えない友人を思い出すような、どこか哀愁を漂うように呟いた。

 

 その雰囲気から何となく察せれた。既にあいつの母親──篠原雪音は既に亡くなっていることを。

 

 それは明確な事実なんだと思う。

 

 よくよく考えればあいつと違って、理事長が私たちに嘘をつく理由なんて一切ない。なら、ネガティブに考えるんじゃなく、ポジティブに考えるべき。

 

 そうなればここでするべきことは一つしかない。

 

「その篠原雪音さんについて、色々と教えていただけませんか」

 

 できる限りあいつの関係者の情報を手に入れて、母親の名を名乗った彼女の手掛かりやヒントを得るのが、得策だと思う。

 

「と言われても……私に聞くより篠原さんに聞いたほうが早いんじゃない」

 

 ポジティブに考えて質問した矢先に理事長に正論を言われてしまった。何というか幸先悪いと言うか出鼻をくじかれた気分。

 

「そういえば、今日は篠原さんは欠席だったわね、それに……篠原さんに雪音のこと聞くのは酷よね……」

 

「というのはどうしてですか?」

 

「そうね……正直、一人の生徒の個人情報の話にもなってくるから、私の立場からおいそれと教えるわけにはいかないのよね」

 

 確かに……その通りだわ。ことりの母親で、あいつの母親の知り合いであるのと同時にこの人、この学校の理事長だったわ。

 

 そんな人が生徒の個人情報を簡単に喋るわけにはいかない。色々と先走り過ぎて完全に忘れてたわ。

 

「そこをなんとかできないのお母さん」

 

「って言われてもね……篠原さんが話しにくいことを他人である私が話すわけにはいかないわ」

 

 娘であることりが頼み込むけど、それでも理事長は首を縦に振ることはなかった。

 

「そもそもどうしてそんなにも雪音と言うよりも篠原さんの事情について知りたいのかしら、それがただの興味本位で聞いているのなら篠原さんに対して不誠実だと思わない」

 

 理事長が言っていることは正しい。全くその通りだわ。あいつが隠していることを喋りたくないことを無理にでも調べだそうとするのは、あいつの気持ちを無視している。

 

 これが正しいことだとはっきり言える自信なんて全くない。

 

(にこ先輩の……夢が……叶え……るチャンス……だったのに……ごめんなさい……ごめんなさい……)

 

 ふと思い出すのは、学園祭後の屋上で雨に濡れるあいつの姿。

 

 学園祭でのμ's(私たち)の失敗の結果、ラブライブ出場辞退となった原因が自分にあると背負い込み私に謝り続けるあの姿を。

 

 正直、あいつがどうしてあそこまで自分を追い詰めてたのか私には全く理解できなかった。

 

 理解できなかった結果、あいつが篠原雪音と名乗った人物と入れ替わらないといけない状態にまでになっていたなんて知りもしなかった。

 

 それどころか知らないうち解決したのかも分からないくらいあやふやな状態で事が終わっていた。

 

 今回の件もそうだ。あいつが何を思ってあんなことをしたのか、ちゃんと知らないといけない。そうしないと私はきっと後悔するから。

 

 だからこそ──

 

「沙紀のことをちゃんと知って、向き合うべきだと思ったからです」

 

 私はそう覚悟を決めたのだから、誰に何と言われようと止めるつもりはない。

 

「……」

 

 はっきりと自分の気持ちを言いきった私に理事長は私の目を真っ直ぐと見つめる。私は視線を反らすことなく真っ直ぐ見つめ返す。

 

「確か……矢澤さんが篠原さんを部活に誘ったのよね」

 

「はい……確かにそうですけど……」

 

 あれは誘ったと言うか半ば命令だったけど。それでもあいつは私の誘いに乗ってくれた。その理由も全く知らない。それもちゃんと知るべきことだと思っている。

 

「部活の件に、それにさっきの言葉も本心で口にしていたみたいね……そうならあなたは知るべきかもしれないわね……」

 

「分かりました、矢澤さんの気持ちに免じて篠原さんや雪音について私が知っている限りのことを話します、勿論、この事は他言無用よ」

 

「ありがとうございます!!」

 

 理由はよく分からないけど、話してくれる気になってくれた理事長に私は頭を下げる。

 

「さて……何から話そうかしら……まずは雪音について話すべきね」

 

「篠原さんのお母さん、篠原雪音は私も詳しくは知らないけど、旧姓の小路雪音の名義で研究者として有名な人だったわ」

 

「ウェ!! 小路雪音ってあの小路雪音!?」

 

「真姫ちゃん知ってるの?」

 

「知ってるも何も小路雪音と言えば、遺伝子工学や精神学、心理学などの研究で様々な論文や技術を産み出し、医学会に貢献してきた人よ!!」

 

 開幕早々明かされた事実にさっそく驚きはしたけど、まさか、最初に真姫ちゃんが興奮気味になるなんて思ってもみなかったわ。

 

 というか……母親が研究者で、その娘が伝説クラスのアイドルってどんな家庭よ。色々と頭おかしいわよ。

 

「そんな雪音と私とは高校時代からの悪友」

 

「悪友ですか……」

 

 普通に友人とか親友とか言うのかと思ったら、思わぬ言い回しで戸惑う。

 

「そうよ、急に朝早くからショピング感覚で、名産品が食べたいから産地まで食べに行こうなんて言い出したり、マイナーなスポーツを一緒にやらされたり、変なものの実験台にさせられたりと、他人のことお構い成しにするからよく散々な目にあったわ」

 

「滅茶苦茶ですね」

 

「そう、滅茶苦茶なのよ、なまじお金持ちの友人がいたから余計にフットワーク軽かったのよ」

 

 あいつの母親の行いを思い出して、怒っているように見えてもどことなく楽しそうに話す理事長。だからなのか心の底から嫌っているような感じは一切感じない。

 

 ただ少し話を聞いているだけでもかなりヤバイ人だとは察することはできる。

 

「そんな彼女だからよく遊ぶというよりも──よく振り回されることが多かったわ」

 

「彼女は、一言で言うと、思い立ったが吉日を体現したような人」

 

「どんな些細なことでも興味を持ったら、すぐに触れてたり、実践をするなんて日常茶飯事、それどころか周囲を巻き込むなんて当たり前」

 

「そんな好奇心と行動力が服を着たような人だったから、当時からかなりの問題児だったのよ」

 

「ただ色々と規格外だったから先生方もお手上げで、当時一緒のクラスで、クラス委員だった私をお目付け役に押し付けられて、それからは彼女とは卒業するまで一緒に行動するようになったわ」

 

「高校の三年間、主に雪音に振り回されてばかりだったけど、終わってみれば悪くない時間だったわ、だから私は少なくても雪音のことは悪友だと思っているの」

 

 向こうはどう思っているかは分からないけど、と付け加える理事長。

 

「卒業してからは大学も別になってあまり会う機会もなくなったわね、あの人基本的にこっちから連絡しないと、気まぐれ起こさない限り連絡しないから」

 

 一旦一区切り付ける理事長。話を聞いてみて子が子なら親も親みたいな話だった。正直に思ったことはまだあいつのほうが大人しかったように思えた。あいつも行動力はあるほうだけど、母親ほどではない。

 

 それが良かったと思うべきか悩ましいところだけど。

 

「それから私が家庭を持ってしばらくして、偶然、雪音と会う機会があったわ」

 

 私が余計なことを考えているうちに理事長は話を進める。

 

「そのときに初めて小学生くらいの篠原さんにも会って本当にビックリしたわね、まさか、雪音が知らないうちに結婚してて、子どもがいるなんて思ってもみなかったから」

 

「そのときに色々と話し込んで、篠原さんのお父さんは彼女が物心つく前に亡くなってること聞いて、色々とバタバタ生活しているってのを知ったわ」

 

「それに少しだけ篠原さんとお話したけど、今とはだいぶ印象が違ったわね、母親のことを呼び捨て呼んだり、表情作るのが苦手なのか、ちょっと見た目よりも冷めた感じの子だったわね」

 

「沙紀ちゃん、今とはだいぶ印象違うね」

 

「そうですね、正反対の性格をしていますね」

 

 昔の沙紀の話を聞いて、小声で話す穂乃果と海未。私も二人と同じように今のあいつとは違うとは思った。けど、ただ今のあいつより星野如月に近い感じがした。

 

「そういった偶然で雪音と話す機会があったけど、それが……ちゃんと会って話す最後の機会だったわ……それから数年後……今から二年前に雪音は事故で亡くなったのよ」

 

「二年前と言うと……」

 

「そうね、篠原さんが中学三年の頃に彼女の母親は亡くなったわ」

 

 重苦しそうに事実を伝える理事長。友人の死を話しているのだから、あまりいい気分ではないことだけは確か。

 

「私は雪音が亡くなったって知らせを受けて、葬儀に参列したのだけど……酷い有り様だったわ……」

 

「篠原さんの両親には親戚と呼べる人もなく、雪音以外の家族も一人もいなくて、親族は篠原さんただ一人……」

 

「しかも篠原さんは雪音が亡くなったこともあって、正直まともな状態ではなかったわ」

 

「葬儀の段取りのほうは篠原さんの知り合いが色々と手筈を整えてくれてなんとか進行はできたけど……そのあとのことが問題だったの」

 

「誰が篠原さんを引き取るのかとか色々な手続きをどうするのかとか」

 

「篠原さんの引き取りに関しては私や高校時代の友人が名乗りを上げたけど、篠原さんは彼女の知り合いの方に引き取られることになったわ」

 

「それから少して篠原さんを引き取った方と会う機会があって、彼女の話を聞いたけど、色々と抱え込んでしまって、対人関係や進学先の推薦を辞退したりとあまり状況が良くなかったみたい」

 

「その話を聞いて、雪音の友人として私はこの学校を薦めたわ」

 

「幸いにも篠原さんの学力ならこの学校への入学は問題なく出来そうだったから、あとは本人次第のところはあったけど、結果、彼女はこの学校へ入学してくれたわ」

 

「入学時の頃は、場合によってはこちらでフォローを視野に入れてたけど、夏休み前に状況が変わって、その必要すらなくなったわ」

 

「そして…………そのあとはあなたたちが知っての通りかしらね、だから、私が篠原さんや雪音について知っているのはここまでよ」

 

 そうして理事長は二人の親子の話を終えた。

 

 2

 

 理事長室から戻ってきたから私たちは誰も口を開かなかった。

 

 無理もないわ。理事長から聞かされた事実を受け止めるのに、みんな必死で話す余裕なんてない。正直、もう脳で処理できる許容範囲を越えているわ。

 

「これからどうしたらいいのよ……」

 

「そうね……一先ず理事長から聞いた話とこれまで話を整理するのはどうかしら?」

 

「絵里の言う通りね、理事長から聞いた事実は私たちが知りたかったものとは違ったけど、それでもかなり重要な情報だったわ」

 

 私が思わず溢した愚痴を切っ掛けに再び情報共有の流れになり始めてる。

 

 予想外の流れだけど、それに任せることにした。一人で頭の中で堂々巡りするよりもずっとマシ。

 

「まずは……そうね……沙紀の母親について情報を擦り合わせるべきね」

 

「確かに……そこからのほうが良いかも……」

 

 絵里の提案に花陽が賛成するのを内心ありがたく思った。多分、真っ先に整理しなければならないことだと思う。

 

「理事長は色々と教えてくれたけど、一番重要なのは、篠原雪音は二年前に亡くなっている点ね、二年前と言えば……」

 

「ん? 何だったっけ?」

 

「委員長ちゃん──つまり、星野如月が活動休止し始めた時期と同じ頃ってことやろ」

 

 真姫ちゃんから投げ掛けられた質問に凛は頭を抱えるけど、希がすんなりと答えた。

 

「確かに!!」

 

「ということは……お母さんが亡くなったショックで……沙紀ちゃんはスランプになったってこと?」

 

「無くは無い話ね」

 

 希の言ったように星野如月の活動休止と母親が亡くなったのが、同じ二年前。こんな偶然があるとは思えない。少なくてもこの二つの出来事は関係していると考えられる。

 

「そう仮定して整理するなら、 沙紀はアイドルとして順風満帆に活動していましたが、ある日、母親が事故で亡くなり、そのショックでスランプに陥る」

 

「そのスランプによって、アイドル活動に支障を来たし、事務所から活動休止を勧められましたが、沙紀はそれを拒否した」

 

「何とか沙紀を説得しようと、古道さんを通じてA-RISEの綺羅ツバサさんにも協力してもらいましたが、結果は二人の仲を悪くすることに」

 

「そして、沙紀のスランプは改善されることはなく、事務所から強制的に活動休止を言い渡された、と考えれば話の辻褄は合いますね」

 

「海未ちゃんが言った通りなら、沙紀ちゃんが昔みたいに歌えなくなったのかスゴく納得できる」

 

 他のみんなも穂乃果と同じように納得しているような反応している。

 

 しかし、納得できるけど、どうも引っ掛かる。身内の不幸で精神的ショックを受けて、スランプになってしまった。

 

 状況が状況なだけにあいつに非があるとは思えないし、活動休止の理由も説明すれば、キッチリとしたファンであれば納得できる。少なくても理由を説明せず、活動休止した理由にはならない。

 

 それどころか本当にこれだけならあいつがユーリちゃんに強行手段で口封じした理由が分からない。おそらくまだ何かあるはず。

 

 いや、何かじゃない。明確によく分からない問題が残っている。

 

「けど、それだけじゃあ篠原雪音と名乗った人物が何者か分からないわ」

 

 そう。一時期あいつと入れ替わっていたあいつそっくりな人物。見た目は全く一緒なのに、どこか違うと感じさせられる謎の人物。

 

「お母さんや姉妹じゃないなら、それこそ親戚じゃないかにゃ~?」

 

「でもお母さんの話だと沙紀ちゃんには親戚と呼べる人はいないって……」

 

「ん? ということは……どういうこと?」

 

 穂乃果は理解できず頭を抱え出す。そうなるのが当たり前。

 

 理事長が言うことが本当ならあいつには親戚と呼べる人は存在しない。しかし、あいつにそっくりな篠原雪音と名乗った人物はいる。

 

 うん。全く意味が分からないわ。

 

「そもそもにこがクイズに正解不正解関係なく、名前は教えるって話だったけど、実際に教えられたのは、別人の名前だった」

 

「そうなるわね……」

 

「そもそも……なんで……沙紀ちゃんのお母さんの名前を言ったんだろう……?」

 

 花陽の言う通りだわ。ウソの名前を言うにしても適当な名前ではなく、あえてあいつの母親の名前を選んだのか。

 

「そうね……パッと思い付いた可能性は二つ」

 

 真姫ちゃんは指を二本立てて、仮説を話し始める。

 

「一つは篠原雪音について調べるように誘導した、もう一つは本名を名乗れない理由があるから……かしらね」

 

「確かに前者に関しては、実際に調べて沙紀の母親について知ることができましたが……後者だとすれば……理由は分かりませんね」

 

「そうね……例えば、穂乃果に偽名を名乗った古道結理は、本名を名乗ることで自分が穂乃果に接触したことを沙紀や古道さんにバレるリスクを減らすために偽名を使った」

 

 そうね、ユーリちゃんの件に関しては理由としては有り得る話。

 

 あいつは何かとユーリちゃんに会うことを避けてた。もし、何かしらの話題で穂乃果がポロッとユーリちゃんの本名を言ってしまったら、あいつが勘づく可能性は有り得る。

 

 古道さんにしてもそう。私たちは何だかんだあの人と会う機会も多く、本名を名乗っていれば、穂乃果が同じ名字の子に会ったんですよみたいな話題を振りかねない。そうなれば、結局沙紀の耳にも入る。

 

 そういったリスクを減らすために偽名を使ったってなら賢い選択だと思う。

 

「けど、古道結理さんみたいに明確なリスクとかあるとは思えないのだけど……」

 

「正直、お母さんの名前を言って誘導したような感じのほうがしっくりくる感じはあるんやけど……」

 

「でも何か……結局ヒントは与えてるよね、自分はお母さんじゃないって」

 

「それどころか……姉妹でも……親戚でもないって……」

 

 穂乃果の言う通り、言われてみればそう。篠原雪音を調べたら結果、彼女は母親でないというヒントを手に入れた。それどころか、理事長の話通りならあいつには血縁と呼べる人もいないというヒントも一応得ている。

 

 ある意味ではクイズの残念賞として必要なキーワードを与えてくれたとも言える。

 

「少なくても篠原雪音と名乗った人物と沙紀の母親は別人であることは確定ね、私、篠原雪音──小路雪音の写真を見たことがあるから」

 

 そういって真姫ちゃんはスマホを操作して、あいつの母親の画像を私たちに見せてくれた。

 

「何て言うか……このまま順調に大人に成長した沙紀ちゃんみたい……」

 

「どこがとは言わないけど、委員長ちゃんとは大きさが全然違うやん」

 

 差し出された画像を見て、各々感想を口にする。私も見てビックリした。ある一部分があいつよりもあることよりもその見た目に。

 

 落ち着いた雰囲気のなかにどこか大人の色気を感じるけど、優しそうな人。髪型こそポニーテールにして髪を結び、メガネはかけてないけど、見た目はまさにあいつがそのまま大人になった感じ。

 

 明確に親子……というよりも歳の離れた双子っていうのがしっくりくる。私も変なこと言っているのは、分かっているけど、確実に血は繋がっていると確信できる。

 

 そして、篠原雪音と名乗った人物とは別人だと言える。

 

「理事長に言われて驚いたわ……まさか、沙紀があの小路雪音の娘だったなんて……」

 

「そんなに……スゴい人なの……?」

 

 正直、何がどうスゴいのか花陽同様私には理解できていない。

 

「そうね……色んな分野、特に医療においては技術の発展に貢献しているスゴい人なんだけど……パパ曰くかなりの変人らしい」

 

「変人?」

 

「そこは深く教えてくれなかったけど、沙紀の多芸に秀でてるのは、間違いなく親の才能を受け継いでいるわ」

 

 結局何がスゴいのかよく分からないけど、ぶっちゃけ専門用語とか言われても私には理解できない。真姫ちゃんが尊敬していることはスゴい人なんだと思っておく。

 

 ただ、確かにあいつは色々と器用にできていた。歌、ダンスしかり料理や勉強など他にも得意なことが多かった。

 

「そういえば沙紀自身も自分の母親は結構変わっているなんて話を聞いたことがありますね」

 

「へぇ~、そんな話いつの間にしてたの?」

 

 穂乃果は海未の話を深堀しようとしてる。

 

 正直、必要な話とは思えないけど、全然話が進まないので、そっちのほうが一回落ち着くのにはありがたいわ。

 

「夏休みのときに私と穂乃果、ことり、そして沙紀と一緒に遊んで、その帰り道で」

 

「思い出した!! あったよねそんなこと……あれ? そういえば、あのときの沙紀ちゃん……何時もと全然違った感じだったよね?」

 

「そういえば……あのときの沙紀ちゃん学園祭のあとみたいな感じだった……ような……」

 

「思い出してみれば、あのときもいつもと違うキャラと言うか、にこが言ったような雰囲気になっていました」

 

 何か違和感を感じ始める穂乃果たち。それ以外の私たちは当事者ではないので、置いてけぼりの状況だった。

 

「ねぇ、にこちゃん……沙紀ちゃんってブラックコーヒーって飲めないんだよね」

 

「そうね、飲むと気持ち悪くなって吐くとか言ってた……というか一回吐きかけたの見たことがあるから本当よ」

 

 何かの確認なのか、前にも話したことを聞いてくることりに私はもう一度伝える。

 

「実はそのときの沙紀ちゃんもブラックコーヒー飲んでたんだよね」

 

 穂乃果の話を聞いて私は考え始める。

 

 あいつはブラックコーヒーは絶対飲めない……。それなのに穂乃果たちその日のあいつは飲めていた……。それはつまり……。

 

「篠原雪音と名乗った彼女と会ってたってこと?」

 

「正直、少し前のことですから確証はありませんが……そうなると思います」

 

 いまいち歯切れの悪い返答だったけど、海未がそういうのは分かる。

 

「そうよね、あいつと彼女、見た目まるっきりそっくりだから見分けつかないのはしかた──」

 

「……まさか!?」

 

 突然、真姫ちゃんが何かに気づいたのか声をあげると、そのまま携帯を弄り始める。

 

「真姫ちゃん……何か……分かったの?」

 

「ちょっと待って……花陽、調べたいことがあるの」

 

 そういう真姫ちゃんの調べものを邪魔しないように終わるまで待つことにする私たち。

 

 それから数分ぐらい経つと、真姫ちゃんはとても険しい顔をしていた。

 

「恐らくだけど……篠原沙紀と彼女の関係性、それに正体も予想はできたわ……」

 

「ホント!?」

 

 さっきのやり取りと調べもので何かを掴んだみたい。一体どこから発送を得たのか分からないけど。

 

 ただ、やっと答えに辿り着いたのに、そんな険しい顔をしているせいで不安が押し寄せてくる。まるでパンドラの箱でも開けようとしているみたい。

 

「まず、結論だけ言って、そのあとに順序立てて説明するわ……篠原雪音と名乗った彼女の正体は──」

 

 真姫ちゃんが答えを口にしようとした瞬間、部室内に携帯の着信音が鳴り響いた。

 

「ちょっと!! 今良いところだったのに!! 誰!?」

 

 雰囲気ぶち壊しに鳴り響く着信音。それぞれ自分の携帯を確認すると──

 

「ごめん……私……」

 

「もうにこちゃん!!」

 

「ごめん……ってか、よくよく考えたら私悪くないわよね!?」

 

「確かに!!」

 

「そんなことより早く電話に出たら? もしかしたら緊急の連絡かもしれないし」

 

「そうね……ちょっと待っててくれる?」

 

 そう言って着信相手を確認すると、表示されている名前と番号は沙紀のものだった。

 

「沙紀……」

 

『沙紀(ちゃん)!?』

 

 着信相手に思わず驚くみんなを気にせず、私は早々と電話に出る。

 

「もしもし!!」

 

 あいつの無事の声が聞きたい。理由はどうあれただ単純に無事なのが分かれば、安心できるそういった思いで大きな声を出すが、実際に電話に出たのは──

 

「もしもし、この電話、にこに~の電話で合ってるかしら?」

 

「篠原雪音……」

 

 今、正体を明らかにしようとしていた本人──篠原雪音だった。

 




如何だったでしょうか。

次回を経て、解答編へと物語は進んでいく予定です。

篠原雪音の正体とそれと同時に星野如月の真実も明かされていきます。みなさん色々と予想はされているとは思いますが、答え合わせを楽しみにしていただけると幸いです。

気軽に感想や評価など頂けるとモチベにも繋がって嬉しいです。

誤字、脱字ありましたらご報告していただけると有り難いです。

それでは次回をお楽しみに。できれば解答編まで年内に投稿できたら良いなと思っています。
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