ラブライブ! 委員長はアイドル研究部のマネージャー 作:タトバリンクス
それではお楽しみください。
1
「篠原雪音……」
『えっ!?』
私が呟いた名前にみんなは驚くが、私は気にせず彼女の話を聞く。
「よくわたしって分かったわね」
「あいつは私のこと、にこに~って呼ばないもの」
正直に言うと、マジで一瞬迷ったけど、呼び方で判断したら何とか間違わずに済んだ。
「まあ、話が早くて助かるわ」
「そんなことよりも何であんたがあいつの電話持ってるのよ!!」
「何でって……借りたからよ」
「借りたって……」
「自分の携帯を使っても良かったけど、あの子から電話だったらにこに~は無視せず絶対出るでしょ」
「まあ、そうだけど……」
実際にそうだから否定はできない。今の状況で知らない電話番号だったら絶対無視していたから。
「それよりも今は一人かしら?」
「いや、部員全員いるけど……」
「そう、手間が省けたわ、みんなに聞こえるようにスピーカーにして欲しいのだけど」
「……とりあえず分かったわ」
理由は分からないけど、彼女の指示に従い、自分の携帯をみんなが聞こえそうな位置に置く。
「どうしたの?」
「何かみんなに聞こえるようにして欲しいって」
みんなに訳を話すと、私は通話の設定をスピーカーに切り替えた。
「切り替えたわよ」
「そう、ありがとう……さて、みんなは一応初めまして、でいいのかしら、わたしの名前は──」
「偽名を名乗るくらいなら別に名乗らなくても良いわよ」
「あら、もうバレてたのね」
「それに私とは一緒にお茶した仲じゃない」
「……」
真姫ちゃんの言葉に突然、彼女は黙り出した。一体、電話の向こうでどんな顔をしているのか分からない。いや、彼女大して表情変わらない人だったわ。
「そう、そこまで分かっているのね、流石は真姫ね、もしかしてもう全員知っているのかしら」
「今から話そうとしてたら、あなたが割り込んできたのよ、それに私が気づけたのは偶々で、今の反応でやっと確信できたわ」
「なるほどね、それは良かったわ、流石はわたし……自分の運の良さが恐いわ」
「ふざけているのなら、今すぐにばらすわよ」
「ほんの真実のよ、まあ、前置きはこれまでにして、本題に入りましょう」
「それで一体、あんたは何の用で私に電話してきたのよ」
「そうね、誰か真拓に電話してきたでしょ、わたしはその折り返しの代理」
真拓……確か古道さんのことよね。そういえば私たちが話し合う前、真姫ちゃんが古道さんに連絡したって言ってたっけ。
「一応、近くに真拓は居るけど、わたしもあなたたちに用が合ったから、代理で連絡したのよ、確認だけど、あなたたちの用件って、あの子のことよね?」
「あの子って……沙紀のこと?」
「そうよ、それならまずはあの子の件だけど、真拓が保護したから心配する必要はないわ」
その報告を聞いて、私はとりあえず一安心する。他のみんなも安心した顔をしている。
「それとどうでもいいかもしれないけど、バカユリリ……いやバカユーリはこっちでお仕置きしておくから」
「別にそういうのは……」
「そうなの? というか現在進行形でわたしのイスなってるけど」
「あの……私いつまで……こうしていれば……」
電話からユーリちゃんのとてもキツそうな声が聞こえてきた。どうやら向こうもスピーカーにしているみたい。
「いつまでって……わたしの気が済むまでよ、それと喉渇いたから飲み物持ってきなさい」
「それは……」
「もちろん、このままの体勢に決まっているじゃない」
「鬼!! 悪魔!! 乳デカ女!! ケツデカ!! ドS!! ところてんバカ!!」
「……」
「うおっ!! 刺激的に体重掛けて……重っ!!」
「……」
「激刺激的に体重を!! ごめんなさいごめんなさいごめんなさい、重いって言ったのだげは謝りますから!! お慈悲を!! お慈悲をください!!」
一体、向こうでは何が起こっているのだろう……。いや、考えるの止めとく。あと、重い以外は訂正する気ないのね。
「それで話を続けるけど」
マジで何事もなく話を再開しようとする彼女。
「あの子、今回の件でみんなに合わせる顔がないって言ってるのよ、それどころか部活も止めて、転校するって」
『えっ!?』
彼女から衝撃的過ぎる発言に全員驚くしかなかった。部活を辞める? 転校する? 全く状況が理解できない。
「ど、ど、ど、どう言うことよ!!」
「どうもこうも言葉の通りよ」
「返り討ちに合ったとはいえ、他校のバカユリリに手を出そうとしたから、アイドル研究部の不祥事ならないように責任を持って辞めるそういった理由よ」
「確かに沙紀がやったことを公にされれば、μ'sのラブライブ出場が取り消しになるのは明白」
絵里の言う通り、あいつがやらかしたことは私たちにとってかなり不味い状況。もし、この事が誰かに漏れれば私たちのラブライブは終わってしまう。
しかし、そんなことあいつが理解してないとは思えない。明らかに別の思惑があるのは確実。
「それにそういった理由で辞める以上、顔も合わせづらいところもあるから転校するって」
確かにあいつの考えそうなことだけど……そうか、これがあいつの狙いかもしれない。
不祥事を起こすことで、その責任として部活を辞め、そのまま転校する。理由なんかどうでもいい。結果的に私たちの元から離れられればそれでいいんだ思う。
それが分かったところで、理由までは読めない。
「まあ、バカユリリがあの子拉致したからお相子ではあるけど」
「な、なら……こ、この……ば、罰……いらなく……ない……ですか……」
「これはバッサーの分よ、あとはあなたに久々に……会えたから……コミュニケーション取りたいのよ……」
「そ、そう……何ですか……それなら……刺激的に……嬉しい……ですけど……」
「まあ、後者はウソなんだけど」
「クソがぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
おおよそアイドルの発言とは思えない罵声が携帯から聞こえてくるけど気にしない。
そんな向こうの空気とは裏腹にこちらの空気は重い。理由はどうあれあいつがいなくなる可能性が現れた以上、素直に喜べる状況じゃない。
「それでだけど、あなた達はあの子と話したい?」
「話したいに決まってるわよ!! 何急に辞めるって言ってるのか、ちゃんと理由をあいつから聞かないと納得できないわよ!!」
彼女の問いかけに私は直ぐ様迷わずに答える。
「そう……でも残念なことに、多分、いや確実にあの子、あなたたちに会うつもりはないわ」
「それってどう言うことよ!!」
「まあ、落ち着きなさい、結果はどうあれ、事が進んだ以上、あの子は転校の手続きが終わるまで、なにがなんでもあなたたちを避ける行動を取るわ」
「そうね……あいつならそうするわね」
今回の件が計画的な行動であれば、あいつは目的達成のために冷静に対処する。そんなあいつが全力で私たちを避ける行動を取ってきたら、正攻法にやっても会うことすらできない。
「理解が早くて良いわ、あの子が避けると決めた以上、普通にやるなら無理、だけど、穴がないわけじゃないわ、その辺はあの子、間が悪いと言うか、運がないのよ」
「さて、ここからがわたしの用件よ、わたしの出す条件をクリアしたら、わたしがあの子を話し合いの場まで連れていかせるわ」
「それはホントなの」
「ええ、それは約束するわ」
この後のことはあなた達次第だけど、と付け足す彼女。この口振りから察すると、彼女はあいつの味方ではないみたい。そうなると次に確認することは決まってる。
「それでその条件って?」
「それは前回と同じクイズににこに~が正解を答えること」
クイズ──あいつと彼女の関係を当てるってやつね。
「ただし、ヒントを貰うのはありだけど、他人から答えを教えてもらうのはなし、にこに~が自分で答えを出すのが絶対の条件、これを無視したらこの話しはなし」
特に真姫と名指ししてくる彼女。現状この中では唯一彼女とあいつの関係に気づいているから名指しするのは、当然。けど、この電話さえ切ってから真姫ちゃんに聞けば、バレは──
「一応釘を刺しとくわ、にこに~の周りにはあの子が仕掛けた盗聴機と部室のパソコン、にこに~の携帯はハッキングできるからすぐに不正はバレるわよ」
私の考えを読んだかのように彼女はさらっととんでもないことを口にした。
『はあぁぁぁぁ!?』
あまりにもとんでもない爆弾発言に部員全員騒然。
盗聴機? ハッキング? あいつ何やってるのよ!! ヤバいやつだとは思ってたけど、そこまでヤバイやつだったの!?
いやいや、落ち着きなさいにこ。普通に考えて盗聴機とか、ハッキングとかあり得ない。これは私に不正をさせないためのハッタリよ。
……ハッタリよね? ハッタリだと思いたい。お願いだからウソだと言って欲しい。
「信じるか信じないかはあなた次第よ」
彼女の冷めた口調からは冗談かどうかは確信できない。
嘘か分からない以上、下手に私は答えを教えてもらうためにはいかなくなった。
仮に教えてもらって、もし、信じたくないけど、真実だった場合、私たちはあいつに会う手段を失うことになる。それだけは避けないといけない。
「そうね、あと真姫以外のメンバーも知らない方が良いわね、この前みたいに名探偵にこに~の推理ショーみたいなので他のメンバーも納得させるだけの根拠と証拠を突き付けてほしいから」
「あんた……あれ気に入ってたの?」
「そうね、実際にわたしの凡ミスを見抜いていく様はカッコ良かったもの」
正直、あれあいつならああいう場面ノリノリでやるだろうなと思いながらやってただけなのよね。それがよく分からないけど、彼女のツボに入ったのかしら。
ただ、この提案のせいで事実上当てずっぽうによる解答も封じられた。
「さて、集合場所と時間だけど……あとであの子のメッセージから連絡するわ」
「分かった」
これで条件と集合場所の指示は確認できた。なら最後に確認することは一つ。
「もし……私がクイズを外したらどうなるの?」
正直、この質問の答えは何となく分かっている。けど、確認しておかないと、きっと、私は甘い判断をするかもしれない。
「もちろん、あの子には会わせない、ただそれだけよ」
やっぱり予想通りの答えが返ってきた。
「そう……分かったわ」
「それじゃあ、実際に会えるのを楽しみにしてるわ」
最後に挨拶をして、彼女は電話を切った。
2
学校から帰り夕食を終えて、自室に戻った私は、自分のベッドの上で横になりながら、自分の携帯を確認していた。
『放課後、指定の場所に真拓を送るから、彼の案内に従って行動よろしく』
その彼女のメッセージのあとに送られた指定場所の住所を確認すると、どうやらどこかの公園みたい。
しかも私が不正したら指定場所に古道さんが来ないからと注意が更に送られてくる。
よっぽど私自身に答えを考えさせたいみたい。どうしてそこまでして私に拘るのか理解できない。
そういえば、理事長も私が沙紀を誘ったから親子の話をしたとか言ってたっけ。それに理事長室から出るときもこんなこと言っていた。
(私もだけど、篠原さんを引き取った方は、彼女が年相応の学校生活を出来ることを望んでいたわ)
(辛いことがあったのなら、それ以上に幸福なことが起こらないと、割に合わない、けど、一人じゃあそういったチャンスも見つけられないかもしれない)
(だから、例え数は多くなくても、一人でも良いから、一緒に居て楽しいと思える人に出会えることを願っていると)
あいつの人生は星野如月として、順調な波に乗っていたのを母親の死を切っ掛けに、様々な要因や不幸が重なって、どん底へと落とされた。その絶望や苦悩は本人にしか分からない。
そんなあいつに私は何かしてあげられたのだろうか。正直、理事長や沙紀を引き取った人、彼女に思いに答えられているようなことをしたとは思えない。
私はただ私のワガママで沙紀を部活に誘った。身勝手で自分勝手な理由であいつを誘ったの。
自分の中にあった星野如月への憧れを否定されているような感覚になって、それが許せなくてつい口に出てしまった。
だから、私は二人の気持ちに答えられているような人なんかじゃない。
「……」
一旦気持ちを切り替えて、別のことを考え始める。
考えていることはもちろん、彼女のクイズの答えについて。
一応、彼女の電話のあとに、真姫ちゃんからいくつかヒントは貰ってはいる。けど、貰ったヒントを整理するだけで既に頭の中はこんがらがっている。
「ただ……何となくだけど……彼女の正体は何となく予想付くのよね……」
これまで何度か会った時に薄々感じてはいたし、さっきの電話のやり取りの中でも察していた。
真姫ちゃんから聞いたあいつの活動休止前の行動にもそれが現れている。
何故そうなってしまったのか理由は分からないけど。
私が気づかなかったのは、いや、気づこうとしなかったのは、ただ、単純に私は目を背けてただけ。
もうあとがないから目を背けるのを止めただけ。
彼女が私自身に答えを考えさせようとしたのも理由は分かる。
もし、それが真実なら私はあいつに酷いことをしてしまっている事実を受け止めなくてはいけない。
やっぱり私は理事長や沙紀を引き取った人の期待に答えられるような人じゃない。私はあいつに酷いことをしていたのだから。
私はあいつに押し付けていたんだ。
幻想を。
偶像を。
どんな顔をしてあいつに会えば良いのか、正直、検討も付かない。けど、逃げてはちゃいけない。もう目を背けてはいけない。
ちゃんと一言あいつに謝らないといけない。
おおよその予想を立てられたところで、私は結論付ける。
そういえば、ただ真姫ちゃんは妙なことを言っていたことを思い出す。
(多分、にこちゃんが最初に辿り着くと思う答えはほぼ正解だと思う、ただそれだけじゃあの人の異常性の説明にはならない)
沙紀の異常性と言われると、思い当たるのは、正しい性格の把握が困難になる演技力。機械のような正確な歌声とダンス。それに自己評価も異常なまでに低い。あとは見た目に関しては妙なこだわりがあるくらい。
この辺に関してはこれまでの沙紀の経歴や彼女の正体からおおよそ理由は思い付く。ただ更に真姫ちゃんはこんなことも言っていた。
(おそらく異常性に関してもこれまでの情報と正体で説明は付いてしまうわ、けど、思い出してみて、彼女のスタンス、由来、彼女を知っている人物の共通するある言い回し)
その言葉を思い出して、一つ一つ整理を始めてみる。
あいつのスタンスとしては常に自分を凡人や普通などと評価している。あいつの母親の話を聞けば、確かに自分が平凡とか普通とか思うかもしれない。
けど、実際にあいつは星野如月として、多くの人に笑顔や元気を届けてきたトップアイドル。そんなあいつが普通なんて言い出したら普通の定義が乱れる。
でもよくよく思い出してみると、星野如月の活動休止に陥ったことに関しては後悔している。けど、星野如月として活動していたこと事態には後悔はなく、むしろ誇りに思っているような節がある。
そんなあいつが自分の評価を普通だとするのはおかしな話。それに古道さんやツバサさんの話によると、マネージャーやトレーナー向きの才能と優れた観察眼がある。
実際に私たちはあいつの組んだトレーニングを行い、その都度改善点を教えてくれたりとあいつの才能の世話になっている。
何なら私たちの要望に直ぐ様答えて、取り入れてくれたりとバッサリとダメな点を口にしてくれたりと、かなり自信を持ってないと、こんなことできない。
つまり、この才能はあいつにとって自身の長所だと自覚しているはず。なら、この普通というあいつの中の定義は一体なに。
次に由来に関しては、あいつの芸名について。
星野如月という名前は古道さんが沙紀のフルネームを並び替えて、一番のアイドルになるように一を付け足したものらしい。
だから特に何かおかしいことない。篠原沙紀=星野如月であることは変わりのない事実。
最後に彼女を知っている人物の共通するある言い回しについて。
沙紀を昔から知っている人物と言えば、星野如月とユニットを組んでいたユーリちゃん。中学時代の親友ツバサさん。星野如月のマネージャーの古道さん。
この三人との今までの会話を思い出してみる。
(久し振りの再会だって言うのに、相変わらずあなたは陰気臭いと言いますか、根暗のくせに前よりもスタイルが良く……)
(あなたのスタイルは遺伝だとしてもその胸は反則です、なんですか、少しくらい私にも分けてもいいじゃないですか)
(うぅ……ごめんなさい……)
(止めなさい、嫌がってるでしょ)
(はぁ~、ツバサ……あなたにこれを庇いだってする理由ないじゃありませんか)
(それでえ~と何だっけ、そうだ私とこの子の関係だっけ?)
(私とこの子は……中学の頃の先輩後輩? アイドルとファン? 師匠と弟子? そういうの色々と引っ括めて親友ってところね)
(更にトップアイドルとして実力も経験も申し分なく、人のポテンシャルを見抜く観察眼とそれを向上させる知識をも兼ね備えた星野如月をマネージャーに据えている)
(久し振りに会うけど、君は相変わらずだね)
(まさか、あの子がスクールアイドルのマネージャーを引き受けるなんてね……)
今までのいろんな会話を覚えてる限りで、思い出してみるけど、特におかしな点は……。
「イヤ待って!! なにこれどういうことよ!?」
三人の会話の思わぬ共通点に気付いて、思わず大声を出してしまう。
「これは偶然……? それとも意図的に……?」
三人が三人ともあいつに対して、あることを明確に避けて会話している。
そもそも私の時もあいつは何て言った?
私はあいつに初めてあることを聞いたときのことを思い出してみると……。
「!?」
ハッキリとは口にしていないことに気づいた。
「イヤイヤイヤ、どういうことなの、どういうことなの!?」
理解ができない。理解できないが、真姫ちゃんが提示したヒントの辻褄やあいつの行動が気持ち悪いくらいにどんどん綺麗に噛み合ってくる。
それがまるで真実のように。私の頭は理解しようとしないまま、勝手に答えに辿り着こうとする。
あいつがあそこまでして本当に隠したかったこと。あいつの歌とダンスに中身がなかった理由。
その全ての答えに辿り着いてしまった。
「じゃあ……なんであいつは……入部したのよ……」
私が一番知りたかった理由以外を残して、私は彼女の正体に気付いてしまうのだった。
如何だったでしょうか。
にこが真実に気づいたところで、次回から解答編が始まります。
彼女が気づいた真実。星野如月の身に一体何があったのか。それら経て彼女たちの結末に繋がる物語に進んでいきます。
一体にこは何に気づいたのか。この物語において予測できるようになっております(私自身のミスがなければ)。
次回の更新までその答えを楽しみに待っていただけると幸いです。
気軽に感想や評価など頂けるとモチベにも繋がって嬉しいです。
誤字、脱字ありましたらご報告していただけると有り難いです。
それでは次回をお楽しみに。できれば解答編まで年内に投稿できたら良いなと思っています。