【4月23日 日曜日 ファーストライブまであと4日】
「みんな行くぞ!よーい、スタート!」
カケルの合図で神田明神の石段の下で列を作っていた6人は一斉に走り出した。
ファーストライブまで残りわずかということで、μ’sは日曜日にも朝から練習を行うことにしたのである。
カケル・高志・ムサも付き合い、みんなで体力トレーニングの集団ジョッグを行っていた。
トレーニングを始めたばかりのころは10数分走っただけでもバテバテだった穂乃果とことりも、この10日間で体力がつきしっかりとしたフォームと足取りで最後まで走れるようになった。
集団ジョッグを終え神田明神に戻ると、今度はダンスの練習を行った。
曲が完全に出来上がってからみんなで話し合って振り付けを本決めし、実践練習に入っていた。
「1、2、3、4、5、6、7、8」
「穂乃果!少し遅れてるぞ!」
「ことりサン!もっとリズムよく行きまショウ!」
「うん!」
「はい!」
高志の掛け声に合わせて穂乃果・海未・ことりが動作の確認をし、カケル・ムサが声を掛けていた。
最初のジョッグを含め練習を始めてから3時間が経過しており、カケルが腕時計を見ると午前11時半になっていた。
「よ~し、終了!」
「皆さんお疲れさまデス」
「みんないい感じになってきたよ」
カケル・ムサ・高志が3人を労う。
練習を終えるとみんなは日陰に移動し座り込んだ。
「ふぅ~、終わった~」
「もう残り4日なんて早いものですね」
「でも、ずいぶん出来るようになったよね」
「ああ。この調子ならいい本番を迎えられそうだな」
「あとは、明日から始まる新入生歓迎期間でいい宣伝をしてお客さんを集めなきゃね」
「ん?あれは西木野サンじゃないデスか?」
みんなが話しているとムサは石段の方向を見ながら言う。
みんなが一斉に振り向くと、慌てて背を向け石段を下りていく私服姿の西木野の姿があった。
穂乃果は石段の所まで行くと彼女に声を掛ける。
「おーい!西木野さ~ん!」
「ヴエエェェ!」
西木野は驚きの声を上げると、振り返り戻ってきた。
「恥ずかしいから大声で呼ばないでよ!」
西木野は恥ずかしそうに顔を赤くしながら言う。
確かにあれは俺でも恥ずかしくなるな、とカケルは思った。
「そうだ西木野さん。この曲、3人で歌ってみたんだ。聞いてみてよ」
「な・・何のこと?」
「西木野さんが作ってくれたんでしょう?あの曲」
穂乃果が嬉しそうに言う。
「わ、私は作ってなんか・・」
西木野はなおも否定しようとする。
すると穂乃果が顔を俯けたと思ったら、いきなり唸り声をあげて西木野に飛びかかり抱き着いた。
「ガオーーーーー」
「ほ、穂乃果!?」
その様子を見てカケルは驚きの声を上げる。
「ヴエエェェ!?な、なにやってんの!?」
「ウヒヒヒヒ」
穂乃果は不気味な笑い声を上げながら驚く西木野に顔を近づける。
カケルも高志もムサも、止めるべきかどうしようか迷っていた。
「イ、イヤーーーーーー」
西木野がついに悲鳴をあげると、穂乃果は彼女の片耳にイヤホンをつけた。
「よ~し、作戦成功」
「穂乃果、あのなぁ・・」
カケルは呆れ顔で呟き、高志とムサは安心したようにため息を吐いた。
「それじゃあいくよ!ミュージックスタート」
穂乃果はそういって音楽プレーヤーの再生ボタンを押した。
しばらくして西木野はイヤホンを外した。どうやら最後まで聞いてくれたようだった。
「本当にありがとう!西木野さん!」
「しかも、わざわざ編曲までやってくれて本当に助かったよ」
穂乃果と高志が嬉しそうに言う。
「だ、だから私じゃ・・・・・ええ、確かに作ったのは私よ」
西木野はみんなの感謝のこもった目を見て観念したように言った。
「ほら~やっぱり~」
「でも、編曲は私じゃないですよ」
西木野が続ける。
「じゃあ誰?」
「わ、私の知り合いに編曲が出来る人がいたからその人に頼んだのよ」
穂乃果の問いに西木野は若干顔を反らしながら答える。
「そうだったんですか。でしたら、その人に会わせてもらえますか?一言お礼が言いたいです」
「ダ・・ダメよ!」
海未の問いかけに西木野は慌てたように言う。
「なぜですか?」
「い、いやその・・・その人、仕事の関係で顔出しが出来ない人なの。だからダメなの!」
西木野はややしどろもどろになりながら答える。
その様子をカケルは怪訝な表情で見つめる。
(明らかに西木野さんの様子が変わった。何をそんなに慌てているんだ?)
「そういうわけですので、失礼します」
西木野は一言言ってその場を後にする。
「さようなら西木野サーン」
ムサが手を振って呼びかけるも振り向くこともせず走り去っていった。
「なんか変な西木野さん」
穂乃果が彼女の後ろ姿を見ながら呟いた。
さっきのお前も十分変だろ、とカケルは心の中でツッコんだ。
「何にしても、彼女には本当に助けられたね」
「そうですね。彼女の力がなかったらここまで来れませんでしたね」
海未と高志が言う。
「よーし、ライブまであと4日!みんな、油断せずに行こう!」
「お前が一番な」
穂乃果のどこかで聞いたような宣言にカケルがツッコむ。
「ちょっと~それどういう意味!?」
穂乃果が頬を膨らませながら詰め寄り、みんなが笑いだした。
その様子を離れた所から巫女姿の東條が眺めていた。
「ふ~ん、いい雰囲気やなぁ」
【4月24日 月曜日 ファーストライブまであと3日】
次の日、土日休みが終わり再び学校が始まった。
今日から金曜日までの間が新入生歓迎期間となる。
この期間中は授業が通常より一限早く終わり、空いた時間に各部活動が空き教室などを使って部活説明会を行う。そしてその後、部活見学を行えることになっている。
また、各部活とも説明会を行える日数は2日までと限られている。
μ’sのファーストライブは27日の木曜日に行う。部活説明会には講堂を使う部もあるが、ちょうどその日程だけ空いていたため講堂を使うことが出来るようになったのだった。
カケル・高志・ムサは駅伝部の朝練を終え、教室にやってきた。
「おはよう」
高志が穂乃果たちに挨拶をする。
「みんなおはよう!」
「おはよう」
穂乃果とことりが挨拶を返すが、海未が机に顔を突っ伏してうなだれていた。
「海未ちゃん!?どうしたの!?」
「何かあったのか?」
高志が心配そうな表情で呼びかけ、カケルは穂乃果とことりに聞いた。
「じ・・実はね」
穂乃果とことりの説明によると、先程3人で学校に到着したとき3年生の女子生徒2人に声を掛けられた。
その女子生徒はファーストライブのことを知っており、どんなふうにやるのか見せてほしいと頼まれた。
しかし海未は突然震えだし、逃げるようにその場を後にしてしまったのだった。
「もしかして、恥ずかしいのデスか?」
「うぅ・・・」
ムサが訊ねても海未はただうなだれるだけで、どうやら図星のようだった。
「えー!?海未ちゃんなら出来るよ!」
穂乃果が言う。
「確かに、歌もダンスもあれだけ練習してきました。しかし、人前で歌うとなると・・・緊張してしまうんです」
海未が弱々しく答える。
(う~ん、海未が恥ずかしがり屋なのは前からなんとなく知ってたけど、何とか克服できる方法はないだろうか?)
カケルは頭を悩ませ、高志とムサも必死に考え込んでいる様子だった。
「そうだ!そういうときはお客さんを野菜だと思えってお母さんが言ってたよ」
穂乃果が言った。
「や、野菜?・・・私に一人で歌えと・・・」
「そこ?・・・」
海未の言葉に高志がツッコむ。
「人前じゃなければ歌えるんです。人前じゃなければ」
(まいったな・・・これは思ったより深刻だぞ。一体どうすれば・・)
海未の様子を見てカケルは頭を抱える。
「こういうのは考えるより慣れちゃった方が早いよ」
穂乃果が言う。
「何かいい方法でも思いついたのか?」
カケルが訊ねる。
「まぁ任せといて!」
◎秋葉原◎
放課後、穂乃果・海未・ことりは人が多く行き来している秋葉原の中心街へとやってきた。
「ひ・・人がたくさん」
「当たり前でしょ。そういう場所を選んだんだから。ここでチラシを配ればライブの宣伝にもなるし、大きな声を出せばそのうち慣れるよ」
怯えたような様子の海未に穂乃果が言う。
「海未ちゃん、大丈夫?」
ことりが心配そうに声をかける。
「それじゃあみんな、手分けして配るよー」
穂乃果の合図で3人はバラバラになり、穂乃果とことりは早速チラシを配り始めた。
一方海未は、目を閉じ心の中で念じ始めた。
(お客さんは野菜・・お客さんは野菜・・お客さんは・・・・・・・あぁ・・)
「あれぇ?海未ちゃんは?」
チラシを配り始めてしばらくしてことりが辺りを見回す。
「お~い、海未ちゃ~ん」
穂乃果とことりが探すと、海未がとある店のガシャポンをやりだしているのを見つけた。
「あ、レアなのがでました・・・」
すっかり意気消沈してしまったようで、作戦は失敗に終わった。
【4月25日 火曜日 ファーストライブまであと2日】
穂乃果・海未・ことりは街中でのチラシ配りに失敗したため、今度は学校内で配ることにした。
現在校内では、新入生歓迎期間中のため色んな部が部員募集等のチラシを配っていた。
「テニス部です!お願いしまーす!」
「バトミントン部、このあと説明会やりまーす」
「ここなら大丈夫でしょ?」
「え、ええまぁ」
「それじゃあ早速始めるよ」
穂乃果の掛け声で3人はチラシを配り始めた。
「スクールアイドルμ’sでーす!」
「明後日ファーストライブやりまーす!」
穂乃果とことりは元気のいいハキハキとした声で順調に配っていた。
「お・・お願い・・します」
しかし海未は恥ずかしさのあまり大きな声を出せず、なかなかチラシを受け取ってもらえずにいた。
見かねた穂乃果が海未に声を掛ける。
「海未ちゃん。そんな小さい声じゃ受け取ってもらえないよ。恥ずかしがらずに元気な声を出そう。ほら、駅伝部の3人だって頑張ってるよ」
穂乃果が指さした方向には、穂乃果たちと同じくチラシ配りをしているカケル・高志・ムサの3人がいた。
「男子駅伝部です!よろしくお願いシマス!」
「このあと、◯階の◯◯教室で説明会やります!」
「マネージャーも募集しています!お願いします!」
カケルたち3人はなかなか受け取ってもらえないながらも、しっかり大きな声でチラシを配っていた。
「・・・やりましょう!」
海未は3人の姿を見て決心し、再びチラシを配り始めた。
「μ’sです!よろしくお願いします!」
今度はしっかりと大きな声を出せるようになっていた。
「あ、あの・・・」
すると穂乃果たちのもとに以前教室に西木野を訪ねた時に会った、眼鏡をかけた1年生の女子生徒がやってきた。
「あなたはあの時の」
穂乃果が声を掛ける。
「こんにちは。あの・・・ライブ・・見に行きます」
女子生徒が答える。
「来てくれるの!?」
「ありがとう~!待ってるからね!」
ことりと穂乃果はそう言ってチラシを1枚差し出し、彼女は嬉しそうな表情で受け取った。
その様子を高志が離れた所から眺めていた。
(みんな頑張ってるみたいだな)
「おーい高志!そろそろ俺たちも駅伝部の説明会の方に行こうぜ」
カケルが声を掛ける。
「あ、そうだね。行こうか」
カケル・高志・ムサは揃って説明会場へ向かった。
駅伝部は今週の火曜日と金曜日に説明会を行うことになっていた。
そのためのチラシ配りを3人は任されていたのだった。
やがて会場の教室の前に来ると、3人は入り口のドアの窓から中を除いた。
しかし中はがらんとしており、駅伝部員たちが暗い表情で立っているだけだった。
どうやら誰も来てくれなかったようだった。
3人はゆっくりとドアを開け中に入る。
「すみませ~ん。俺たちクラスの連中に片っ端から声掛けたんですけど・・」
「みんな興味ないの一点張りでした・・・」
双子が落ち込みながら答える。
「こっちも、あんまり受け取ってもらえませんでした」
高志が言う。
「まぁ、うちの学校男子そんなにいねえし無理もないだろう」
今度はユキだ。
「世の中そんなに甘くないか。でもまだ金曜日もあるし、チラシを受け取ってくれた人がもしかしたら考えが変わってくれるかもしれないし、望みは捨てちゃいけないな。さあ、俺たちはそろそろ練習に行くか」
先程まで元気がなかったハイジが、気持ちを切り替えみんなに声を掛ける。
その掛け声でみんなは準備にかかる。
すると突然高志が口を開く。
「みなさんすいません!実はちょっとお願いがあるんです!」
みんなが振り向くと、高志・カケル・ムサは部員たちにμ’sのファーストライブのチラシを配る。
「何だこれは?」
「これ何て読むの?」
チラシを不思議そうに眺める部員たちに3人は説明する。
「へぇ~、アイドルなんていたんだな」
「やっぱりやってくれるんですね!待ってました!」
「スクールアイドルだって」
「なんか面白そうじゃない?」
平凡な反応の平田と、目を輝かせる王子、興味津々な双子と反応は様々だった。
「その日だったら練習も休みですし、どうか全員で見に来てほしいんです」
「どうか皆さんお願いします!」
「お願いシマス!」
カケル・高志・ムサが頭を下げて懇願する。
「わかった。チームメイトの頼みなら喜んで見に行くよ。それにちょっと興味出てきたからな」
「僕、絶対行きます!!」
「俺も行きます!」
「俺も~」
「まぁ見るだけ見てみるか」
ハイジ・王子・ジョータ・ジョージ・平田がそれぞれ答える。
「「「ありがとうございます!」」」
3人は嬉しそうにお礼を言う。
「よし!じゃあ練習行くぞ!」
「「「はい!」」」
ハイジの号令で部員たちは次々と教室を出ていった。
ただ一人、ユキは先程からずっとチラシを見つめたままだった。
「・・・」
「お~いユキ!早く行くぞ!」
「お、おう」
ハイジに声を掛けられユキは返事を返しチラシをカバンにしまい込むがその瞬間、若干の笑みを浮かべていた。
【4月26日 水曜日 ファーストライブまであと1日】
ついにファーストライブ前日となった。
カケル・高志・ムサは駅伝部の練習が終わった後、発表前の最後の練習を終えた穂乃果・海未と合流した。
今日はこの後、みんなでカケルの家で最終ミーティングを行うことになっている。何でも、明日のライブ用の衣装が完成したようなのでそのお披露目も兼ねている。
ことりは現在、衣装店へその衣装を受け取りに行っているので後で合流することになっている。
ことり以外の一同はカケルの住んでいるアパートに到着した。
穂乃果以外は初めての訪問となる。
「まぁ狭いところだが、あがってくれ」
カケルはドアを開けながらみんなを招き入れる。
「「「おじゃましまーす」」」
みんなが入ると、カケルは座卓を奥の部屋の中央に移動させ全員分のクッションを用意した。
「へぇ~、これがカケルの部屋か」
「結構いい所デスネ」
「なんだか落ち着きますね」
高志・ムサ・海未が部屋を見回しながら言う。
「でしょ~」
「何でお前が得意げになってるんだよ?」
得意げな顔をする穂乃果にカケルがツッコむ。
「とりあえずみんな座ってくれ」
カケルは用意した座卓と周りのクッションを指し、みんなを座らせる。
みんなはことりが来るまでの間、穂乃果のパソコンでスクールアイドルのサイトからA-RISEの動画を見ることにした。
本番前に一度、スクールアイドルトップの動きを参考にすることにした。
ちなみにμ’sもすでにこのサイトに登録済みである。
「うわ~、すごいキレのいいダンスだね」
「これがスクールアイドルのトップの実力なんデスネ」
高志とムサはA―RISEのダンスに感嘆していた。
「あ、見てください!私たちのランクが!」
「上がってるよ!」
海未と穂乃果はμ’sのランキングが上がっていることに気付いた。
「きっと、チラシを受け取った人が投票してくれたんだよ」
「皆さんのファンが出来たってことデスネ」
高志とムサが嬉しそうに言う。
(よかったな。早速成果が出始めたな)
カケルも嬉しそうに心の中で呟いた。
◎王子の家◎
「え~っとどれだ~?ミューズミューズ・・・あ、あった!・・・・よし!投票完了!あ~明日が楽しみだなぁ~」
◎再びカケルの家◎
ピンポーーーーン
チャイムの音が鳴りカケルが玄関のドアを開けるとことりが来ていた。
「来たか。さあ入ってくれ」
「おじゃまします」
カケルが奥の部屋へ案内すると、みんなが出迎えた。
「おまたせ~」
「ことりサン。待ってましたよ」
「ついに衣装が出来たんだよね」
「どんな衣装なんだろう」
ムサ・高志・穂乃果がわくわくした様子で言った。
ことりは持っている袋から衣装を取り出しみんなに見せた。
「じゃーーん」
その衣装は、ピンクを基調にしており胸元にはリボンが付いている。まさに、アイドルらしい衣装に仕上がっていた。
「うわぁ~~かわいい~~」
「本物のアイドルみたいだね」
「とても素敵デス」
「うん。いい衣装だと思うよ」
「ありがとう~」
穂乃果・高志・ムサ・カケルのそれぞれの感想にことりはとても嬉しそうだった。
「ことり・・・そのスカート丈は・・・」
突然海未が口を開く。何やら不機嫌な様子だった。
「言ったはずです!スカートの丈は膝下までなければ穿かないと!」
「えっ?そうだったの?」
「あ・・・」
高志が聞くとことりは固まってしまった。
どうやらすっかり忘れていたようだった。
「だってしょうがないよ。アイドルだもん」
穂乃果が言う。
「アイドルだからと言って、スカートは短くという決まりはないはずです!」
「でもライブはもう明日だし、今さら作り変えるのは無理だろう」
今度はカケルだ。
「ならば私だけ制服で歌います!」
「「ええ~~~~」」
海未のまさかの宣言に穂乃果とことりは声をあげる。
「まぁまぁ海未サン。せっかく作ったんですカラ」
ムサがなだめにかかる。
「そもそも二人が悪いんですよ!私に黙って結託するなんて!」
海未は厳しい口調で言った。どうやら本気で怒っているようだった。
「確かに、黙っていたのは悪いことだと思うし、怒るのも無理はないと思う。でも、そうまでしてこの衣装で挑みたい穂乃果ちゃんたちの気持ちも分かってあげてよ」
「高志・・・」
高志は優しい口調で海未を諭す。
「だって、絶対成功させたいんだもん」
「穂乃果・・・」
「みんなで歌を作って、みんなで振り付けを決めて、衣装も揃えて、ここまでずっとみんなで頑張ってきたんだもん!ここまでこの6人でやってきてよかったって、頑張ってきてよかったって、そう思いたいの!」
穂乃果は強い眼差しで思いを語った。
「それは俺も同じだぜ。海未」
「カケル・・」
「この約2週間、みんな頑張ってきたじゃないか。だから俺も、みんなには成功してほしいって思ってるよ」
「私もだよ海未ちゃん」
「俺も」
「ワタシもです」
ことり・高志・ムサが言った。
みんなでここまで頑張ってきたからこそ、みんなの思いは同じだった。
「まったく・・・ずるいですよ。でも、皆さんの思いは分かりました。その衣装でやりましょう」
海未がようやく決心してくれたことで、みんなの表情が明るくなった。
「海未ちゃん!だーーいすき!」
穂乃果はそう言って海未に抱き着き、部屋の中は幸せな笑い声に包まれた。
その後、みんなで神田明神を訪れ全員横一列になってお参りをした。
願い事はもちろん全員一つだった。
どうか明日のライブが、大成功しますように!!