今回はオフの日のお話です。
【5月3日 水曜日 夕方】
「お、やるな穂乃果」
「今度こそ勝つんだから」
5月に入り今日からゴールデンウイークとなり、3日から7日まで学校は休みとなっている。
しかし駅伝部もμ’sも休み中にもしっかり練習の予定を入れている。
今日はお互い午前中に練習があり、終わったあとカケルは家に帰ってのんびり過ごしていたところに穂乃果が遊びに来たため、現在2人でゲームで対戦中である。
今回のゲームは世間で大変人気の格闘ゲームである。
「これで決まりだー!」
「あぁ!そんなぁ~…」
GAME SET!! モタモタシテルトオイテクゼー
「うぅーいけると思ったのにー」
「俺に勝つのはまだ早いってことだな。ってもうこんな時間か」
カケルが側に置かれている目覚まし時計を見ると、6時になっていた。
「そろそろ夕飯の支度しないとな」
「今日の夕飯な~に?」
穂乃果はゲームに負けた時とは打って変わって、目を輝かせ涎を垂らしながら聞いてきた。
「また食ってくのかよ。今日はカレーだ」
「やったー!カレーだカレー!」
カケルが仕方がないという表情で献立を伝えると、穂乃果は以前と同じくピョンピョン飛び跳ねながら喜ぶ。
「だから喜び過ぎだっての。作るから待っててくれ」
そう言ってカケルは準備に取り掛かった。
台所ではトントンと材料を切る音が響く。
カケルは一応エプロンを付け、慣れた手付きで華麗な包丁さばきを見せていた。
ジーーーー
その様子を穂乃果がまじまじと見つめていた。
「なあ穂乃果。そんなに見られるとやりづらいんだが…」
「いいじゃん。カケル君が料理作ってる姿見てみたかったんだもん」
「部屋で待ってりゃいいだろう?」
「や~だ~!見てたい!だって料理作ってるカケル君の姿もかっこいいんだもん」
「・・・わかったよ!好きなだけ見ていけよ!/////」
「ありがとう~」
カケルは頬を赤らめながら仕方なく許可し、再び作業に取り掛かる。
(本当にコイツは思ったことサラッと言いやがる…)
パシャッ
「ん?」
カケルが思っているとシャッター音らしき音が聞こえたので振り向くと、穂乃果がスマートフォンのカメラでカケルを撮影していたのだった。
「えへへ~、カケル君の料理姿ゲット~」
「お前、何勝手に撮ってんだよ!」
満面の笑みで言う穂乃果にカケルが吼える。
「海未ちゃんとことりちゃんにも見せてあげようっと♪」
「コラ!穂乃果あぁー!」
結局穂乃果はその画像をLINEの6人のグループトークに送ってしまった。
穂乃果:今カケル君の家にいまーす。料理作ってるカケル君でーす。
(画像)
ことり:料理できる男の人って憧れるなぁ(*´▽`*)
高志:カケルは本当にすごいよね。何でも出来るよね。
ムサ:はい。尊敬します。
海未:エプロン姿よく似合ってますね。しかし穂乃果!ちゃんとカケルに撮影の許可は取ったのですか!?
カケル:勝手に撮りやがった
海未:穂乃果。覚悟は出来ていますね( ^_^)
「ヒイィィ海未ちゃん…ヒドいよカケルくぅ~ん」
「ざまあみろ。自業自得だ」
涙目になる穂乃果をカケルはからかう。
同時に、みんなから褒められて悪い気はしないな、と思ったカケルであった。
やがてカレーが出来上がり2人揃って食べ始めた。
相変わらず穂乃果は美味しそうに食べている。
そんな中、穂乃果が口を開く。
「ねえカケル君。明日って何か予定ある?」
「いや、明日は練習も休みだし特に予定はないな」
「じゃあさ、せっかくのゴールデンウイークだからみんなでどこか出掛けない?」
穂乃果の提案にカケルは少し考えた後に返答する。
「ああ、いいぞ。でもどこにしようか?」
「私考えたんだけど、ここはどうかと思うの」
穂乃果はカケルにスマートフォンの画面を見せる。
そこには、江東区にあるとあるショッピングモールの情報が映し出されていた。
「このショッピングモール、とても大きくて色んなお店があって、さらにアミューズメントコーナーもあるから楽しそうだな~と思って」
「そうだな。江東区ならそんなに時間はかからないし、海が見えて景色も良さそうだし俺はいいと思うぞ」
「やったー。じゃあみんなに連絡するね」
カケルが答えると、穂乃果は再びLINEでメッセージを送った。
(みんなでお出かけか。そんなことも今までなかったな)
カケルがスマートフォンを扱う穂乃果を見ながら思った。
穂乃果の連絡に全員OKの返事が来たため、明日は朝の9時に秋葉原駅に集合することになった。
【5月4日 木曜日 午前9時】
◎秋葉原駅◎
「おまたせ~」
カケルと穂乃果が揃って駅に到着すると、既にみんな集まっていた。
「おはよう。穂乃果ちゃん、カケル君」
「おはようございます」
「おはよう」
「おはようゴザイマス」
ことり・海未・高志・ムサがそれぞれ挨拶をした。
全員様々な私服姿で来ていた。
そういえば、みんなの私服姿って初めて見るな、とカケルは思った。
特に穂乃果たち3人は勝負服なのか、みんなかわいらしい服装であり、カケルはすっかり見とれてしまった。
「どうしたのカケル君?そんなにジッと見つめて」
ことりに声を掛けられカケルはハッと我に返った。
「あれれ~カケル君もしかして私たちの姿に惚れちゃったの~?」
「あ、いや・・その・・あの・・」
穂乃果にニヤニヤ顔で問い詰められカケルは顔を赤くしながらしどろもどろになった。
しかし海未の方がもっと赤くなっていた。
「カケル・・・破廉恥です!!」
海未が恥ずかしそうに大声を上げる。
「ハレンチって何デスか?」
「え、えーとそれはね…」
海未の様子を見てムサが高志に訊ねる。
カケルは、そこまで言わなくても、とションボリしてしまった。
「皆さん、すごくかわいいデスよ」
「うん。とてもよく似合ってる」
「ありがとう~」
「あ、ありがとうございます」
ムサと高志に服装を褒められ、ことりと海未は嬉しそうにお礼を言う。海未はまだ顔を赤くしていた。
「どうカケル君?かわいいでしょー」
穂乃果はそう言って両手を広げてクルクル回りだした。
「ちょちょちょちょ・・・穂乃果!!/////」
その勢いでスカートがめくり上がりそうになったので、カケルが慌てて周りを見ながら穂乃果を止めた。
「・・よく似合ってると思うぞ」
「えへへ、ありがとう」
そして一同は電車に乗り、目的地へと向かった。
◎某ショッピングモール前◎
みんなは最寄り駅を出て少し歩き、目的地のショッピングモールへ到着した。
「うわぁー大きい建物だね」
「ここなら海も見えますし、いいところですね」
ことりと海未が建物や周辺の景色を見ながら言う。
「皆さん、これからどうシマスか?」
「うーん…じゃあまずお昼までお店を見て回ろうか」
ムサが訊ねると高志が提案し、みんなもそれに賛成した。
そして穂乃果がみんなに声を掛ける。
「よーし、今日はみんなで思いっきり遊ぶぞー!」
「「「おーー!!」」」
ショッピングモールに入り、案内板を見てみると洋服店・雑貨店・書店・スポーツ用品店・食品売り場・フードコート、さらにはゲームセンターにボウリング場まであり、本当に何でも揃っていた。
一同はまず、ことりが洋服を見たいと言ったのでとある洋服店に入っていった。
みんなそれぞれ洋服を見て回り、カケルも特に欲しいものはなかったが適当に見て回った。
いろいろあるなー、と思いながら見ていると、ことりとムサの声が聞こえてきた。
「ムサ君。どっちが似合うかな?」
カケルが見てみると、ことりが2つの洋服を掲げながらムサに聞いていた。
「どちらもよく似合いますケド、うーん…こっちの方がいいと思いマス」
「ありがとう~。じゃあこれにするね。今度はムサ君の洋服も選んであげるね」
「よろしくお願いシマス」
お互いに洋服を選びあっており、まるでカップルのようだな、とカケルは思った。
「カケル君ー!これとこれ、どっちがいいと思う!?」
すると穂乃果がドタドタと洋服を2つ持ってきた。
カケルは少し考えてから選んだ。
「うーん…こっちかな」
「ブッブー、穂乃果はこっちがいいと思ってたの」
「決まってるなら聞くなよ…」
カケルがツッコむ。
穂乃果・ことり・ムサが新しい洋服を買い、一同は今度は書店へと向かった。
書店に入ると、穂乃果とことりは少女漫画コーナーへ行き、ムサは日本の情報誌を読み始め、高志と海未は文学コーナーを見回っていた。
カケルは小説コーナーを見て回り、何か面白そうなのがあったら買おうと思ったが、特に見つからなかったため、外に出て待ってようと思ったとき、高志と海未の話し声が聞こえた。
様子を見ると、お互いに買いたい本について話しているようだった。
「その本は植物の本ですか?」
「うん。俺、ガーデニングが趣味で家の庭には色んな花や植物があるんだ」
「素敵な趣味ですね」
「海未ちゃんはどんな本を買うの?」
「これです」
海未は高志に本を見せた。
その本は、『襷を繋げ ~千極大学駅伝チームを造り上げた男~ 八木下明弘 』という駅伝に関する著書だった。
「もっと駅伝の素晴らしさを知りたいと思いまして。それにこの大学は、私の一推しのチームなんです」
海未がわくわくした様子で言う。
「そうなんだ。千極大学って今凄く強いよね」
「はい。八木下監督の熱血な指導によって、現在では『平成の常勝軍団』と言われていますからね」
2人は駅伝について熱く語り出していた。
っていうか海未、よく知ってるなとカケルは思いながら見ていた。
その後もみんなで雑貨店やスポーツ用品店など色んな店を見て回ってから、昼食を摂るためフードコートに集まった。
このフードコートも、洋食・和食・中華料理・ファーストフードなど様々な店が並んでいた。
しかし連休ということもあり、どの店も客席も混んでいた。
6人はようやく一緒に座れる席を見つけ、交代で昼食の注文をとった。
カケル・穂乃果・ことりは洋食、高志・海未は中華、ムサは和食で特大のうな重を頼んでいた。
ムサはとても嬉しそうな表情で、注文したうな重を持ってきた。
「ムサ君、うなぎ好きなの?」
「ハイ。日本に来て一番最初に食べた料理でして、それ以来大好きになりマシタ」
ことりが聞くとムサが答える。
「「「いただきまーす」」」
全員が集まると、揃って食べ始めた。
「おいしーい!」
「うん。このハンバーグすごく美味しいよ」
みんなとても美味しそうに食べていた。
「やっぱり日本の料理はとてもオイシイデス」
ムサも満足の表情でうな重を食べていた。
「ねぇムサ君。ちょっとことりにも分けてもらってもいい?」
「いいデスよ。ハイどうぞ」
ことりに頼まれると、ムサは器を差し出しことりはお箸で一口食べた。
「ありがとう。美味しいね。じゃあことりのハンバーグも食べさせてあげるね」
ことりはそう言うと、ハンバーグをお箸で一切れ掴むとムサの方に差し出した。
「はいムサ君。アーン」
「「ゴホッ!!ゴホッ!!」」
ことりの突然の宣言にカケルと海未は驚いて、揃ってご飯を喉に詰まらせてしまった。
ムサは素直にことりが差し出したハンバーグを食べると、笑顔でお礼を言う。
「ありがとうゴザイマス。ことりサン」
「どういたしまして」
ことりも笑顔を返す。
「あはは・・ことりちゃん大胆だね」
「ゴホッゴホッ、は…破廉恥です」
高志は苦笑いし、海未は顔を赤くし咽せながら呟く。
「ゴクゴク・・・ハァ・・ハァ・・お前らなぁ・・」
カケルは水を飲み、呆れ顔で呟く。
「カケル君。穂乃果も食べさせてあげようか?」
「やらなくていいわ!!///つうかメニュー同じだろ!!」
穂乃果の誘惑?をカケルは声を上げて断る。
昼食を食べ終わると、今度はみんなでゲームセンターへ行った。
みんなそれぞれ様々なゲームで遊び尽くしていた。
まずカケルと穂乃果は車のレースゲームで勝負していた。
「うぅ~…スピードアップ~」
「甘いぜ穂乃果!あのコーナーは貰った!」
カケルは華麗なハンドルさばきで最終コーナーを曲がり、そのままゴールした。
「よっしゃー!1着ー!」
「カケル君、速すぎだよ~」
一方ムサとことりはクレーンゲームで遊んでいた。
「頑張れムサ君~」
「よーし、ここデスね!」
ムサはボタンを押してクレーンを下ろすと、上手く人形を掴んだ。
「やりましたよ!・・・アァ!」
しかし人形はポロリとクレーンからこぼれ落ちてしまった。
「惜しかったね~」
「エヘヘ、失敗デスね」
高志と海未はクイズゲームで勝負していた。
「勝負だ!海未ちゃん!」
「必ず勝ちます!」
お互いに様々なクイズを答えていき白熱した勝負となり、いよいよ結果発表となった。
「どうなるんだー?」
「ムムムム・・・」
2人ともゲーム画面を真剣な表情で眺めた。
結果はギリギリで高志の勝利となった。
「やったー勝ったー」
「あぁー何故なのですー!」
それからもみんなはダンスゲームで勝負したり、ボーリングで勝負したりと楽しく過ごし、やがて夕方になった。
「もうこんな時間だ。そろそろ帰ろうか」
「そうですね。お互いに明日は朝から練習ですからね」
「今日はとっても楽しかったね」
「ハイ。楽しい1日デシタ」
「ああ。俺もだ。企画してくれてありがとうな穂乃果」
「えへへ、よかった」
6人は楽しく談笑しながら駅へと向かって歩き出した。
「カケル、今日はいつにも増してテンション高かったね」
「そ、そうか?」
「ハイ。一緒にゲームやってる時とかすごく楽しそうデシタ」
カケル・高志・ムサは3人で今日のことを話していた。
すると穂乃果が駅伝部3人に声を掛けた。
「あの、カケル君!高志君!ムサ君!」
「ん?どうしたんだ穂乃果?」
3人が振り返ると、穂乃果は少し顔を赤らめて俯いていた。
海未もことりも何だろうという表情だった。
「今までありがとう」
「えっ?」
「私たちµ’sの活動に協力してくれて、本当にありがとう!私たちがこうしてスクールアイドルをやれてるのも、3人の力があったおかげだよ!」
穂乃果は笑顔で3人にお礼を言い、彼らも笑顔で見つめ返していた。
「だから・・これからも・・・これからも私たち、ずっと友達でいようね!」
「穂乃果」
「穂乃果ちゃん」
「当たり前だろう穂乃果」
「うん。俺たちはずっと友達だよ」
「これからもよろしくお願いシマス」
穂乃果の言葉にカケル・高志・ムサは答えた。
「うん!ありがとう!」
穂乃果は再び満面の笑みで答えた。
その笑顔にカケルはまたドキッとしてしまった。
穂乃果の笑顔は、本当に人を幸せにする力があるな、とカケルは感じた。
「じゃあ、みんなで手を繋いで帰ろう」
「えっ?」
「み、みんなでですか?」
「ほらほら!みんな手を繋ぎ合って!」
みんなは穂乃果に促され、駅伝部とµ’sのメンバーが交互になるようにお互いに手を繋ぎ合った。
「これから何があっても、私たちはこうしてずっと繋がっていくんだよ」
穂乃果は両手の温もりを感じながら言った。
みんなはそれぞれの顔と繋がれた手を見合い、やがて笑顔になりながら夕日の空の下を歩いて行った。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
次回はまきりんぱな編となります。