【5月15日 月曜日 早朝】
◎和菓子店「穂むら」◎
「さ~て、朝練朝練っと」
穂乃果はそう言いながら練習着姿で玄関のドアを開けて外へと出た。
これからµ’sの朝練のため、神田明神へ向かうところである。
家の前の通りへ出ると、ジャージ姿のカケルが待っていた。
「カケル君!」
カケルの姿を見つけ、穂乃果は驚きの声を上げる。
「よっ!穂乃果!これから朝練に行くんだろ?早く行こうぜ!」
「えっ?来てくれるの?」
「ああ、俺は昨日試合だったから今日は完全休養日になってるんだ。だからお前らの朝練に顔を出させてもらうよ」
「本当!?ありがとう~」
カケルの返事を聞き穂乃果は笑顔でお礼を言う。
「よし、じゃあ神田明神まで競争だ」
カケルはそう言って先に神田明神に向かって走り出していった。
「あ~ん、待ってよ~」
穂乃果が慌ててカケルの後を追っていく。
◎神田明神◎
カケルは石段を駆け上がり神田明神に着くと、ことりがすでに来ており準備運動を始めていた。
「あ、おはようカケル君。来てくれたんだね」
ことりがカケルに気付き挨拶をする。
「おはようことり。早いなぁ」
カケルも挨拶を返す。
「うん。今日はなんだか早く目が覚めちゃって」
「そうか」
「あ、それとカケル君。昨日は試合お疲れさま」
「おお。ありがとう」
するとことりは突然後ろを振り返った。
そして辺りをキョロキョロと見回し始める。
「どうかしたのか?」
その様子を見てカケルが訊ねる。
「うん。実はさっきから誰かに見られてるような気がするの」
ことりが不安げな表情で答える。
「何だって?」
「ハァ・・ハァ・・カケル君速いよ~・・あ、ことりちゃんおはよう」
すると穂乃果が石段を駆け上ってきた。
「おはよう穂乃果ちゃん」
「待たせちゃったかな?」
「ううん。私もさっき来たばかりだから。海未ちゃんは今日は弓道の朝練があるんだって」
「そうなんだ」
「「!!」」
するとことりがサッと後ろを振り返った。
それと同時にカケルは見た。神社の陰に人影があったのを。
「どうしたの?」
穂乃果が2人に訊ねる。
「今、あそこに誰かいなかった?」
「ああ、確かに誰か隠れているのが見えたぞ」
「ええっ!?」
3人は目を凝らしてことりが指した地点を見つめた。
よく見ると一瞬だが足のつま先の部分が見えた。
「私、ちょっと見てくる」
穂乃果が言った。
「だ、大丈夫?穂乃果ちゃん」
ことりが心配そうな顔で言う。
「よし!なら俺は裏から回るよ」
カケルと穂乃果は二手に分かれて人影の正体を暴くことにした。
穂乃果はそっと人影があった建物の角まで来たが、誰もいなかった。
そしてさらに奥に進み、向こう側の建物の角に差し掛かった。
ガシッ!!
「うわうわああぁぁ」
すると突然何者かに足首を掴まれ、穂乃果は前のめりに転倒するが両手を地面につけて踏みとどまった。
「痛ったぁ~」
「捕まえたぞ!」
「ちょ、ちょっと!離しなさいよ!」
穂乃果が痛む両手をブンブン振っていると、カケルが1人の人物を羽交い絞めにして取り押さえていた。
その人物は黒い髪をピンクのリボンでツインテールにしており、サングラスとマスクを付け、茶色いコートを着ていた。
「穂乃果ちゃん、大丈夫!?」
「う、うん」
ことりが穂乃果のもとへ駆け寄った。
カケルの方を見ると、まだ謎の人物との取っ組み合いになっていた。
「お前、ことりを覗き見して一体何を企んでやがるんだ!」
「あんたには関係ないわ!離しなさい・・よ!!」
「痛ってぇ!!」
謎の人物はカケルの足を踏みつけ、カケルは痛さで手を放し踏まれた足を抑えながらピョンピョン跳ねていた。
そしてその人物は穂乃果とことりの方へ向き直る。
「あんたたち、とっとと解散しなさい!!」
謎の人物はそう告げると、そのまま走り去ってしまった。
「今の・・・誰?」
「さぁ・・」
「いててて・・・一体何だったんだ?」
ことり・穂乃果・カケルは謎の人物の後ろ姿を見つめながら呟いた。
その頃、神田明神の周辺でユキが朝ジョッグを行っていた。
今度の土曜日と日曜日に都大会の5000mを控えているため、気合を入れていた。
(今度の都大会、今の力で通過できる確率は半分もないだろう。だからこそ、今のうちにやれることはやっとかねぇとな)
すると神田明神の石段から先ほどの謎の人物が降りてくるのを見つけた。
「ふん!あんなんで易々とアイドルを語らないでほしいわ!」
その人物はそうぼやきながら足早に去っていった。
ユキはその人物を見つめながら呟いた。
「あいつ・・・・こんなところで何やってるんだ?」
◎2年生教室◎
「そんなことがあったんですか!?」
穂乃果・ことり・カケルは朝練を終え教室に着くと、海未・高志・ムサに先ほどの謎の人物について話し、海未は驚きの声を上げていた。
「『解散しなさい』って言ってたってことは、その人はµ’sのことを知っているようだね」
話を聞いて高志が考え込みながら言った。
「イタズラじゃないデスか?」
ムサが言う。
「実は私も、皆さんに話しておきたいことがあるんです」
「「「えっ?」」」
海未が口を開き、全員の視線が海未に集中する。
「昨日スクールアイドルのサイトを見たんですけど、µ’sの掲示板に気になる書き込みがあったんです」
海未はそう言うとスマートフォンを取り出し、スクールアイドルのサイトを開き画面をみんなに見せた。
そこには、こんな書き込みがあった。
『こんなダンスでアイドルを語るなんて10年早い!』
「これって・・・」
「中傷コメントだね」
「そんなに私たちのこと、気に入らないのかな・・・」
書き込みを見ながらことり・高志・穂乃果が言うが、ことりと穂乃果は傷ついたようにシュンとしていた。
「気にするとこはねえよ。こんなのはよくある事だ」
「「えっ?」」
2人の様子を見てカケルが言う。
「アイドルだろうがスポーツ選手だろうが人気が高まってくると、称賛する人もいれば批判する人だっている。こういう奴はどこにでもいるから、あまり気に病む必要はないぞ」
カケルは穂乃果とことりを諭す。
「でも、朝練のことだってあるから一応気を付けた方がいいよ。今度は何が起こるか分からないから」
高志が注意を呼びかける。
「そうですね。私たちもなるべく気を付けるようにします」
「また何かあったら言えよ」
「ワタシたちも力になりマスカラ」
「うん。ありがとうみんな」
「ありがとう~」
こうして話がまとまったところで、授業開始のチャイムが鳴った。
【放課後】
授業が終わり、µ’sのメンバー6人は練習着に着替え終え校舎内の一画に集まった。
穂乃果がみんなの前に立ち声を掛ける。
「それでは、メンバーを新たに加えた新生スクールアイドル『µ’s』の練習を始めたいと思います」
「それは前回も言ったじゃないですか」
「だって嬉しいんだもん」
海未がツッコむが穂乃果は目を輝かせながら返す。
「なので、いつも恒例の・・・1!」
「2!」
「3!」
「4!」
「5!」
「6!」
「7!」
「8!」
「あ・・えっと・・9!」
穂乃果に続いて各メンバーがそれぞれ番号を言っていった。
今ではこれがすっかりµ’sの恒例となっていた。
しかし3人ほど余計な声が混ざってしまっていた。
「なんであんたたちまで言ってんのよ!」
真姫がツッコミの声を上げる。
「いや~ごめんごめんつい・・」
そこにはジョータ・ジョージ・王子もいた。
3人も昨日試合のため今日は休養日となり、µ’sの練習に顔を出していたのだった。
ちなみに都大会を控えているハイジ・ムサ・ユキは通常通り練習に、カケル・高志・平田はそれぞれ自主練習に行っている。
「くぅぅ~!6人だよ6人!アイドルっぽくなってきたよね~!いつかこの6人が『ビッグ6』だとか『仏6』だとか言われるのかなぁ~!」
穂乃果が嬉しそうにワクワクした表情で言う。
「ビッグ6って・・宝くじですか・・」
「仏だと死んじゃってるみたい・・・」
王子と花陽は穂乃果が考えたネーミングにそれぞれツッコミを入れた。
さらに穂乃果は続ける。
「それにたくさんいればダンスが下手でも目立たないでしょ?あと、ダンスを失敗しても・・」
「穂乃果」
穂乃果は余計なことを言ってしまい、海未に睨まれる。
「冗談だって~」
「ダメだよ穂乃果ちゃん。ちゃんとやらないと今朝みたいに言われちゃうよ」
ことりが諫める。
「あ~そういえば変な人に『解散しろ』とか言われたんでしたっけ?」
「それに心無い書き込みだってありましたからね~」
「でも、それだけ有名になったってことだよね」
ジョータ・ジョージ・凛が答える。
「ま、まぁ・・そう捉えられなくもないですね」
凛の言葉を聞き海未が言う。
「それより練習。どんどん時間なくなるわよ」
真姫が髪をいじりながら言った。
「おおっ、真姫ちゃんやる気満々じゃん」
ジョータがワクワクした様子で言う。
「べ、別に・・私はさっさとやって早く帰りたいの!」
「またまたぁ!お昼休み見たよ!1人でこっそり練習してるの!」
「えっ?そうなの?」
「真姫ちゃんやる~」
ツンとして答える真姫に凛・王子・ジョージが茶々を入れる。
「あ、あれは、この前やったステップがカッコ悪かったから変えようとしてたのよ!あまりにもカッコ悪かったから!」
「そうですか・・・」
真姫がムキになりながら言うと、海未が不気味な負のオーラを出しながら口を開いた。
「あのステップ・・・私が考えたのですが・・・」
「ウエェェ!」
真姫は海未の暗い表情を見て思わずビックリしてしまう。
「まあまあ海未ちゃん、これも一つの意見ってことにして参考にすればいいじゃん」
ことりが上手くなだめ海未はどうにか納得したようだった。
そして一同は練習を始めようと屋上の扉を開けた。
しかし外は雨が降っていた。
「うわぁ~雨だよ~」
「結構降ってるね~」
穂乃果・ことりが残念そうに呟く。
「でも天気予報では降水確率30%のはずなのに!」
予報と違う天気にジョータが憤慨する。
「あ、でも雨少し弱くなったかも」
ことりが手をかざして雨の状態を見ながら言った。
よく見ると、確かに雨は弱まっていた。
「ホントだ!よかった~!」
「このくらいなら練習できるよ」
穂乃果と凛は外に出て、子供のようにワクワクしながら空を見上げていた。
「でも、危なくないですか?」
「そうです。下が濡れていて危険ですし、いつまた降り出すかも分かりませんし・・・」
王子と海未が注意を呼びかける。
しかし穂乃果と凛は外へ出てはしゃぐように動き回っていた。
「ほらほら~、全然大丈夫だよ~」
穂乃果がみんなに手を振りながら言う。
「うぅ~テンション上がるにゃ~!」
凛はそう言うと連続宙返りなどのアクロバット技を披露した。
「うお~!」
「凛ちゃんスゲー!」
凛の動きを見てジョータとジョージは感嘆の声を上げる。
「チャラララーン♪」
そして最後に決めポーズを取った瞬間・・・
ザザァァーーーーーーーー
再び雨が強く降りだしてきた。
「やっぱり無理みたいだね」
「そうだね」
花陽と王子が呟く。
「今日は中止にしようか」
ことりが言うが、戻ってきた穂乃果と凛は納得のいかない様子だった。
「ええ~!帰っちゃうの~!?」
「それじゃあ凛たちが馬鹿みたいじゃん!」
「馬鹿なんです」
2人の言葉に海未がストレートにツッコむ。
「海未先輩きっつ~」
「ちぇ~、せっかくきたのに・・」
ジョータとジョージもがっかりした様子だった。
他に練習できる場所もないため結局練習は中止となり、今日はこのまま解散となった。
【2日後 5月17日 水曜日 放課後】
◎グラウンド◎
駅伝部はこれから練習のために、全員ランシャツランパン姿でグラウンドに集まっていた。
しかし今日も雨が降っていた。
「あ~今日も雨かよ~」
「これで3日連続だよ。もうやんなっちゃうよ」
まるで早くも梅雨入りしたかのように連日降り続ける雨に、ジョータとジョージは呻いた。
たとえ雨が降っていても駅伝部の練習は中止にはならないのだ。
「文句言うな。どんな天候にもしっかり慣らしておかないと試合で通用しなくなるぞ。サッカーやってた時だってそうだっただろう」
双子に対してハイジが諫める。
「こういう時は、暑い中走らされるよりはマシだって思えばいいのさ」
高志が言った。
「う~ん、確かにね」
高志の言葉を聞き双子は少し納得したような表情だった。
「さあみんな!身体を冷やしてはいけないから早く練習始めるぞ!」
「「「はい!!」」
ハイジの号令で部員たちはそれぞれの設定ごとに分かれて練習を開始した。
今日の練習は12000mのペース走だった。
この練習は決められた設定ペースで走り続けるという距離型の練習である。
最上級のA設定にはハイジが引っ張る形でカケル・ムサが続いている。
それより一つ下のB設定にはユキがペースメーカーとなり、高志・ジョータ・ジョージ・平田がついている。
王子は個人で一番下のC設定の練習を行っていた。
(あ、なんか結構走りやすいかも)
(身体が動くな~)
双子は走りながら感じていた。
雨が降っていれば気温も下がり、熱射病や脱水症状の心配もないため、一定時間常に動き続ける長距離ランナーにとっては動きやすいコンディションでもある。
また、音ノ木坂学院の陸上トラックは全天候型になっており、雨の日でも走りやすい造りになっている。
今日は全員調子がいいのか、誰も設定から遅れるものはおらず順調に練習をこなしている。
A設定の3人は問題なくこなしており、B設定の5人は少しずつペースメーカーを交代していき、みんなで声を掛け合いながら走っている。
きつそうな選手には背中を押しながら激励し、ペースメーカーが設定以上で行ったら注意していき、部員同士支え合っている。
「平田先輩!もう少しですよ!」
「ハァ・・ハァ・・おう!」
「ジョージ!設定より少し速いぞ!ちょっと落ち着け!」
「ハイ!」
王子は何度も時計を見て自分のペースを確認しながら黙々と走っていた。
きつそうではあるが、それでもしっかり設定ペースは守っていた。
「ハァ・・ハァ・・」
(僕だってやりたくてやってるんだから、もっと強くなって早くみんなに追いつかないと・・)
やがてAチームは残り200mに差し掛かったところで、カケルがハイジに言った。
「ハイジさん。俺、もう少し走ります」
「ああ。でもあんまり無理するなよ」
やがて12000m地点に着くとハイジとムサは抜け、カケルはさらに走り続けた。
そしてBチームも12000m走り終えるが、その中から高志がさらにカケルに続いて距離を踏み始めた。
「ゼェ・・ゼェ・・あいつらまだ走るのかよ」
「2人ともすげえなぁ~」
走り終えた平田とジョージが感嘆の声を上げた。
「ふふっ、駅伝部の将来がさらに楽しみになってきたよ」
2人の走る姿を見てハイジは微笑みながら言った。
(もっと強くなるんだ・・藤岡さんに追いつくために)
(インターハイはダメだったけど、高校駅伝には絶対に出るんだ)
カケル・高志はそれぞれ思いを抱きながら走り続けた。
◎ハンバーガーショップ◎
一方µ’s6人は、今日も雨により練習が出来なかったために、練習場所についての会議を行うため近くのハンバーガーショップに足を運んでいた。
その中で穂乃果は不機嫌な表情でポテトを食べている。
「穂乃果。ストレスを食欲にぶつけると大変なことになりますよ」
海未が咎めると、穂乃果は不機嫌な顔のまま口を開く。
「雨、なんで止まないの?」
「仕方ありませんよ。自然の力にはどうすることもできません」
「穂乃果ちゃ~ん、天気予報見たら明日も雨だって」
ことりがスマートフォンを掲げながら言う。
「ええ~そんなぁ~」
穂乃果は悲痛な声を上げると再びポテトを食べようと手を伸ばすが、穂乃果のポテトはすべてなくなっていた。
「あれ?なくなってる!海未ちゃん食べたでしょう!」
「私じゃありませんよ。自分で食べた分も忘れたのですか?まったく・・・」
穂乃果は海未に詰め寄るが、海未は否定し自分のトレーに目を落とす。
すると海未のポテトもいつの間にかすべてなくなっていたのだ。
「あら?私の分が。穂乃果こそ私の分を食べたんじゃありませんか?」
「私じゃないよ!」
今度は海未が穂乃果に詰め寄り、穂乃果ははっきりと否定する。
「そんなことより練習場所だけど、教室とか借りられないの?」
真姫が本題を切り出した。
「うん。先生に聞いてみたけど、ちゃんとした部活じゃないと許可もらえないって」
ことりが言う。
「そうなんだよね~。部員が5人以上いればちゃんと部の申請が出来るんだけど・・・ん?」
穂乃果はそう言うとメンバー全員を見回した。
現在µ’sのメンバーは全部で6人。規定の人数は揃っていた。
そして穂乃果は突然立ち上がり、思い出したように声を上げる。
「そうだ!忘れてた!部活申請すればいいんじゃん!」
「忘れてたんかーい!!」
「「「えっ?」」」
すると仕切りの向こう側から突然ツッコミの声が聞こえたので、みんなは一斉にそちらを向いた。
「今のって・・」
ことりはそう呟きながら背伸びをして仕切りの向こう側を見るが、相手の顔は見えなかった。
「それより忘れてたってどういうこと?」
「いや~メンバー揃ったから安心しちゃってて~」
真姫が訊ねると、穂乃果は頭を掻きながら苦笑いする。
(ホントに大丈夫かしら・・・)
真姫はその様子を見て呆れ果てていた。
「明日、生徒会に部活申請に行こう!そうすれば部室だってもらえるよ!あ~安心したらお腹空いてきちゃった~!さ~て・・・!!」
穂乃果は自分のハンバーガーと取ろうとトレーに目を移すと、仕切りの下の隙間から誰かの手が伸びておりハンバーガーを取ろうとしていた。
しかしその手は穂乃果に気付かれたのを察したのか、ゆっくりとハンバーガーを戻した。
穂乃果は仕切りの向こう側を見ると、1人の奇抜な恰好をした人物がゆっくりと立ち去ろうとしているのが見えた。
その様子を見て穂乃果はあの人物こそが自分のポテトを盗み食いした犯人だと確信し、素早く駆け寄ってその人物の腕を掴む。
「ちょっと待ってよ!!」
「!!・・・解散しなさいっていったはずよ!」
その人物は派手な服装にサングラスをかけ髪型も変えているが、2日前のµ’sの朝練習の時に現れた謎の人物のようだった。
「解散!?」
花陽は謎の人物の言葉を聞いて驚きの声を上げる。
「そんな事より、食べたポテト返して!」
「そっち!?」
穂乃果の抗議に花陽がツッコむ。
しかし謎の人物は、横にあるテーブルをバンと叩きµ’sメンバー全員に対して口を開いた。
「あんたたち、歌もダンスも全然なってない!プロ意識が足りないわ!いい!?あんたたちのやってることはアイドルへの冒涜、恥よ!とっととやめることね!」
謎の人物はそう言うと、そのまま走り去ってしまった。
その人物の後ろ姿を、みんなは唖然とした様子で見ていた。
「一体なんだったのかにゃ~?」
「何を言ってるのか、全然意味わかんなかったんだけど」
凛と真姫が呟いた。
「穂乃果ちゃん。これ」
ことりは先ほどあの人物が叩いたテーブルを指さした。
よく見るとそこには500円玉が置かれていた。
「ちゃんとつまみ食いした分、払ってくれたんだね」
「うん。そうだね」
穂乃果はその500円玉を見つめながら、先程の人物について考えた。
(でもあの人、一体何だったんだろう・・・プロ意識が足りないって言ってたけど、そう言うってことはあの人もアイドルが好きなのかな?)