一同はアイドル研究部の部室から中庭へ場所を変えた。
その前に花陽・凛・真姫を呼び出し、3人へのインタビューを行うことになった。
トップバッターは花陽となり、カケルがカメラを回した。
「た・・助けて・・・」
しかし開始早々、弱々しく微笑みながら助けを求めだしていた。
(う~ん・・これは時間がかかりそうだな・・)
彼女の様子を見てカケルは思った。
「花陽ちゃん。そんなに緊張しなくても、質問に答えてくれればいいんだよ」
「それに、生徒会の方で編集もしてもらえるから時間がかかっても大丈夫だよ」
「そうやで」
見かねた高志とハイジが助言をし、東條も頷いた。
「で、でも・・」
「凛もいるから頑張ろう」
「そうだよ。頑張れ花陽ちゃん」
「俺たちがついてるよ」
「ファイトデスヨ花陽サン」
花陽が尚も渋っていると、親友である凛が隣に立ち彼女を励ました。
傍で見守っているジョータ・ジョージ・ムサも激励する。
「ほら~、真姫ちゃんも早く早く~!」
「私はいい」
ジョータは渡り廊下の所で髪をいじりながら立っている真姫に声を掛けるが、彼女は関心を示さず断った。
(おいおい・・こんなんで大丈夫かよ・・)
カケルはこの状況を見て心の中で呟いた。
「まぁ、どうしても嫌なら無理に受けることもないけど?」
東條はそう言うとカケルに目配せをした。
カケルは何となく東條の意を察し、カメラを真姫の方に向け録画ボタンを押した。
「彼女は西木野真姫。彼女だけはインタビューに応じてくれなかった。スクールアイドルから離れればただの盛んな16歳・・」
「!!・・ちょっと!なに勝手にナレーション被せてるのよ!分かった受けるわよ!」
「それでええんよ♪」
カケルが録画を始めたと同時に東條は独自にナレーションを被せたが、それに気づいた真姫は慌てて撮影を阻止しやむなく取材に応じることにした。
「東條って結構腹黒いんだな」
「気を付けた方がよさそうですね」
「うんうん」
平田・ジョータ・ジョージが先ほどの様子を見て、小声で囁き合う。
「3人とも?どうかしたん?」
「えっ?あ、いや別に・・何でもねえぞ」
「は、はい・・何でもありません!」
「何でもないっす!」
すると東條がにっこり顔で3人に声を掛け、3人は冷や汗を掻きながら返事を返す。
「それじゃあ改めて撮り直そうか」
真姫が加わったことで、ハイジの号令で再びインタビューが再開された。
カケルは、並んで立っている花陽・凛・真姫にカメラを向けた。
「それでは、彼女たちにアイドルの魅力について聞いていきましょう」
再び東條がナレーションを行う。
「まずは花陽さんから」
「え、えっと・・」
「かよちんは昔からアイドルが好きだったんだよね~」
「は、はい」
花陽は質問を受け緊張で言葉に詰まっていたが、凛が横からサポートする。
「ふむふむ・・では、アイドルを好きになったきっかけは何ですか?」
「はい。えっと・・・・ぷっ・・うふふふふ」
東條が次の質問に移るが、花陽は緊張気味に答えようとすると突然クスクスと笑い始めた。
隣にいる凛も同じく笑いだしていた。
「ん?」
「ちょっとカメラ止めてください!」
カケルが不思議がっていると、真姫が声を上げたのでカケルはカメラを止めた。
「2人ともどうしたん?」
東條が花陽と凛に訊ねると、凛は笑いながら東條やカケルの後ろを指さした。
その方向へ振り返ると、変顔をした穂乃果とひょっとこのお面を被っていることりが立っていた。
どうやら2人はこれを見て笑っていたようだった。
「何してるんだ?お前ら」
「いやぁ~、みんなの緊張を解してあげようと思って」
カケルが問い詰めると穂乃果が頭を掻きながら答えた。
「よーし!だったら俺たち、一発芸やります!」
すると突然ジョージが宣言すると、ジョータと共に並んで仰向けに寝っ転がった。
そしてジョージだけがゆっくりと身を起こし始めた。
「はい!幽体離脱~~!」
2人はどこかの双子の芸人がやっていたネタを披露し、辺りは笑いに包まれていった。
「いいぞいいぞ~」
「うふふふ、面白いやん」
平田と東條が笑いながら絶賛する。
「ユータイ・・・リダツ?」
「え~っと、それはね・・」
ムサは言葉の意味が分からなかったため、高志が説明する。
「でも、そのネタちょっと古すぎる気が」
「やっぱそうっすかね?」
「じゃあ王子、あれやってよ」
ハイジにツッコまれると、双子は今度は王子にあることを要求した。
「ええっ?あれをここでやるの?でも恥ずかしいよ・・」
「お願いお願い!みんなの緊張を解すためだよ!」
「そうだよ王子!」
突然の要求に戸惑う王子に双子は両手を合わせてさらに懇願する。
「う~ん・・分かった、やるよ。じゃあいくよ・・・ゴホンゴホン」
王子は仕方なく承諾すると少し咳ばらいをし、みんなの注目が集まる中深呼吸をして口を開いた。
「私はICPOの銭形です!今ここにルパンが来なかった!?」
王子はしわがれ声を出しながら、銭形警部の声真似をしてみせた。
それを聞いた、カケルと真姫以外のみんなは大爆笑し始めた。
「ダハハハハ・・やるな王子・・とっつぁんそっくりじゃねえか」
「ハハハハ・・これは確かに・・面白いな」
「王子君おもしろ~い」
「面白い声デシタ」
「笑い死んじゃいそうだにゃーはははは・・ねぇかよちん」
「う、うん。ウフフフフフ」
平田・ハイジ・穂乃果・ムサ・凛・花陽がそれぞれ笑いながら言葉を発した。
王子は照れたように顔を赤くしていた。
(・・・何でいきなり一発芸大会始まってんだよ?ってかインタビューどうした?)
カケルはみんなの様子を見て唖然としながら思った。
「ちょっとみんな!笑ってる場合じゃないでしょう!」
真姫がみんなに向かって大声を出した。
その言葉でみんなはハッと我に返り始めた。
「ああ・・いけないいけない」
「わ・・私としたことが・・・」
駅伝部とアイドル研究部でそれぞれ一番のしっかり者であるハイジと海未が、笑いが収まると頬を赤くしながら呟いた。
「まったく、これじゃあµ’sがどんどん誤解されるわ!」
さらに真姫が続けた。
「おお!真姫ちゃんがµ’sの心配を・・」
「べ、別に・・私はただこんな茶番を早く終わらせたいと思っているだけよ」
穂乃果の呟きに真姫は顔を赤くし顔を背けながらツンデレぶりを発揮していた。
すると穂乃果はカケルからカメラを借り、しゃべり続けている真姫にカメラを向け始めた。
「撮らないで!!」
しかしあっけなく拒否されてしまった。
【放課後】
◎屋上◎
授業が終わり、µ’sは練習のため屋上へとやってきた。
東條も練習風景の撮影のため同行し、駅伝部9人も付き添いに来ていた。
先ほどまでの様子を振り返ると、ただ遊んでるようにしか見えないというのも否定できないという声が上がり、みんなは気持ちを新たにして練習に臨み始めた。
「1、2、3、4、5、6、7、8」
「花陽ちゃんと海未ちゃん、少し遅れてるよ」
「「はい!」」
「凛ちゃん少し早い」
「はい!」
ムサの掛け声でµ’s7人は振り付けの練習をし、高志・カケルはメンバーの動きをチェックし声を掛けていた。
3人は最初の頃からµ’sに関わっていただけあり、的確にサポートを行っていた。
あとの6人は少し離れた所で練習を見守っていた。
「へぇー、結構様になってるな」
「そうだな」
「みんな気合入ってるなー」
「「すっげぇー」」
ハイジ・平田・王子・双子がそれぞれ感心していた。
「はい!休憩です!」
高志の号令で一旦休憩に入った。
「お疲れさまでーす」
「はいタオルです」
「お水どうぞ」
「「ありがとう~」」
ジョータ・ジョージ・王子は休憩に入ったメンバーに給水ボトルとタオルを配った。
「かれこれ1時間ぶっ通しでダンスの練習をしてやっと休憩。全員息は上がっているが、文句を言うものはいない」
東條はカメラをµ’sメンバーの方へ向けて固定し、ナレーションを行っていた。
ナレーションが終わった頃になって、ハイジが東條に声を掛ける。
「東條さん。君から見てみんなの様子はどう?」
「さすが練習になると迫力が違うね。やることはやってるって感じやね」
「そうだね」
「でも・・・」
すると東條は突然何か考え込むように言葉を詰まらせた。
「どうかしたの?」
「うん・・・ちょっと、気になることがあるんよ」
ハイジが訊ねると、東條は少し考えた後に答えた。
「カケル君。ちょっといい?」
「えっ?あ、はい」
東條は近くにいるカケルを呼んだ。
「どうかしましたか?」
「ちょっと聞きたいんやけど、µ’sのリーダーって穂乃果ちゃんなんよね?」
「えっ?ええ、一応そうですね」
「だったら、普通練習はリーダーが指揮するもんやと思うけど」
「あ・・・」
カケルは唐突に東條に疑問を投げかけられ言葉に詰まった。
そしてみんなの方を見ながらこれまでのことを振り返った。
今言われたように、µ’sのリーダーは穂乃果ってことになってるけど、思い返すと正式にそう決めた覚えはないよな
µ’sを結成した時からいつの間にかそうなっていたって感じだ
これについてみんなはどう思っているんだろうか
【練習後】
◎和菓子店「穂むら」◎
「そういうことは早く言ってよ!ちょっと待ってて!」
練習後、カケルと穂乃果は東條を連れて『穂むら』へとやってきた。
東條がご家族の方にも話を聞きたいということで、カメラを持って取材に訪れたのである。
穂乃果の母:瑞穂は取材と聞き、慌てて化粧のため奥へと入っていった。
奥からは瑞穂の慌ただしい独り言が聞こえてくる。
「生徒会の人だよー?家族にちょっと話聞きたいってだけだから、そんなに気合い入れなくても・・」
「そういうわけにはいかないの!」
穂乃果が呼びかけると瑞穂は奥から返事を返す。
「っていうか、化粧してもしなくても同じだよ・・」
ヒュンッ
「うわっ!」
バシンッ ゴン!
「いでっ!」
すると穂乃果は瑞穂の逆鱗に触れ、ティッシュ箱を投げつけられるが直前で手で弾き、弾かれたティッシュ箱はカケルの額にヒットしてしまった。
「なぜ俺が・・」
「あ・・ごめんカケル君」
「ふふふふ」
その後、瑞穂へのインタビューは終わったが、父:健作は仕事が忙しいために断られ、妹の雪穂は自分のおめかしに夢中でそれどころではなかったため、インタビューを終了し穂乃果と東條はカケルの部屋にお邪魔した。
◎カケルの部屋◎
穂乃果と東條はカケルが用意した座卓の周りにあるクッションに座っている。
「すみません・・あんな感じで・・」
「ええんよ。楽しそうな家族やね」
穂乃果は我が家の光景について謝るが、東條は気にしていない様子だった。
「それにしてもカケル君の部屋、映像で見た通りとってもいい所やねー」
「ですよねー」
「だからなんでお前が得意げになってるんだよ?」
東條が部屋について絶賛していると、カケルがお盆にお茶菓子を乗せてやってきた。
「おやつはなーに?」
「えっ?お前の家から貰った和菓子だが?」
「うぅ・・どれも見飽きたものばかり・・・」
穂乃果は座卓の上に置かれた和菓子を見るとガックリと肩を落とした。
そしてカケルも座卓の横の座椅子に座った。
「ありがとうねカケル君。お邪魔させてもらって」
「いいえ。気にしないでください」
東條はカケルにお礼を言う。
「そういえば、カケル君と高志君とムサ君はµ’sが結成された当初からサポートをしているんよね?それぞれどんなことをしているんかな?」
「そうですね。俺はみんなの体力をつけるためのトレーニングメニューを考案しています」
「ふむふむ・・スポーツ選手やからね。あとの2人は?」
「高志君は海未ちゃんの作詞を、ムサ君はことりちゃんの衣装と振り付けの考案を手伝ってるんです」
東條の質問にカケルと穂乃果が答える。
「高志君はもともと文章が得意で、ムサ君は生まれ育った町が音楽やダンスが盛んなところだったみたいでとてもセンスがいいんです!海未ちゃんもことりちゃんも本当に助かってるって言ってました。あ、もちろんカケル君のトレーニングメニューもいいと思ってるよ!」
「本当だろうな?穂乃果」
「他にも、普段の生活面についてハイジさんから、ステージ作りやカメラワークについて王子君から、動画編集について平田先輩から色々アドバイスをもらってるんです!」
「じゃあ・・あなたは何をしているの?」
穂乃果が駅伝部からのサポートについて熱く語っていると、東條が穂乃果に新たな質問をした。
「えっ?私?」
穂乃果は思わず聞き返した。
(そういえば、こいつが何かしてるとこ見たことなかったな。一応リーダーなのに)
カケルは穂乃果を見ながら思った。
「えーっと私は・・・ご飯食べて・・・テレビ見て・・・カケル君とゲームして・・・他のアイドルを見てすごいなーって思って・・・あ、もちろんみんなの応援もしてますよ」
・・・・・・・・・
「それだけ?」
「えっ?」
穂乃果の返答を聞いてしばし沈黙が流れるが、東條が先に沈黙を破った。
「前から気になってたんやけど・・・穂乃果ちゃん、どうしてリーダーをやっているの?」
「あ・・・」
東條の質問に、穂乃果は自分でも分からないようで何も答えることが出来なかった。
(う~ん・・・やっぱりこれは一度みんなで話し合わせた方がいいかもしれないな)
その様子を見てカケルは思った。