俺が攻略対象とかありえねぇ……   作:メガネ愛好者

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メガネ愛好者です

とうとう説明会も終わりとなります
そして、今回千歳さんがあの言葉を口にする!

……その前のくるみんの性能で、少しインパクトが弱いかも

それでは


間章後編 「そんな事知ってる訳ないだろ!?」

 

 

 「……」

 

 「……」

 

 今くるみんは、何も書かれていないホワイトボードの裏面に黒いマジックペンを黙々と走らせている

 そんな中、黙っている俺はくるみんが言った言葉に、どういう意味で言ったのか頭を悩ませるのだった

 

 

 ——ワタクシの主の……最後の願いだからですわ——

 

 

 願いだけなら別にいいんだ。寧ろそれは、俺の事を思ってくれての願いだから嬉しくない訳がない

 だけど……”最後”という言葉がどうにも引っかかる

 何が最後なのか? ……それが俺を悩ませている原因だ

 くるみんの主である精霊はとてもわがままで、様々な願いを叶え続けていた末に最後の願いとして言ったのか……

 くるみんの主の精霊はとても頑固な性格で、自らの願いを叶えてもらおうと思わないような子が、一度だけの願いとしていったのか……

 くるみんの主である精霊が……本当の意味で”最期”に願った言葉なのか……

 

 できれば最期の可能性だけはあってほしくない。くるみんは”最後”とは言ったが”最期”と言った訳じゃないんだ。だからまだそうだと決まった訳じゃない

 それでも……そう考えても俺の頭からは嫌な予感が離れてくれない

 

 「……お母様」

 

 「……どうした?」

 

 俺が考えに耽ていると不意にくるみんから声が掛かる

 くるみんの声はどこか寂しそうな声色で……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「どうでしょうか? これぞSDマスコットモードのお母様——通称「ちーちゃん」ですわ! 傑作でしてよ?」

 

 「俺のシリアスを返せ。俺は世界最強の戦乙女じゃねーよバーカ」

 

 ——そんなことは無かった

 

 顔を上げた俺の視界に入ったものは、ホワイトボードに描かれるデフォルメ化されたキャラデザ。見覚えのあるそれは……モノクロだが間違いなく俺だった

 目元を前髪で隠し改造軍服の様なものを着た俺に見えなくもない姿をした生物は、口をへの字にしながら短い腕を組んで仁王立ちしている。……なんかチヴ〇ットみたいだな。ご丁寧に「ちーちゃん」と記入されてるし

 てかそのあだ名を使ってもいいのか? 確かにあっちも最初の名前は”千”だけど明らかにキャラ違うでしょーよ。俺あんなバケモンスペックしてねーし

 ……え? 精霊スペックが何を言うって? ……その精霊スペックについてきそうな人間なんですよ? もしASTにあの人みたいな奴がいたら俺は引きこもり待った無しだよ

 

 「とりあえずくるみんが気にしてない……てか俺が気にするほど深刻な状況ではないことはわかったよ」

 

 「単にワタクシは堕天使の使命とかがどうでもよいだけですわ。ワタクシは主の願いよりもお母様の存在こそが第一なのですから!」

 

 「自分で自分自身の存在意義を捻じ曲げちゃったよこの子!? 絶対その主泣いてるぞきっと!?」

 

 「そうですわね……確かに泣いてましたわ。主にこのワタクシの姿に」

 

 「その姿に一体何があったし」

 

 くるみんの主の精霊さん、貴方はきっと貧乏くじを引いたんです。言う事を聞かない天使もとい堕天使とか精霊にとっては一番の障害なんじゃないかね? ——まさに俺の〈心蝕霊廟(イロウエル)〉みたいだな! はっはっはっはっはっ——泣ける

 

 「ですが、ワタクシの能力は時間操作ですので他の天使と比べればかなり強力ですわよ?」

 

 「言うことを聞かない上に時間を操る能力とかやりたい放題じゃないですかヤダー」

 

 なんでこの子はこうなってしまったんや……一体何に影響されたんだよ

 ナチュラルに心読んでくるし、俺好みの部屋を用意するし、俺の能力を俺以上に知ってるしで、俺の事なら知らないことは無いとも言いたげな——

 

  ヒラ……

 

 「——おっと、危ない危ない……」

 

 俺がくるみんのことを考えていると、くるみんの白いゴシックドレスのポケットから一枚の……写真が抜け落ちた

 くるみんはその写真を床に落ちる前に素早く回収するのだが……

 

  ・幸運(30)…………(23)成功!

 

  ・目星(85)…………(67)成功!

 

 「……ちょっと待てくるみん。今のは何だ?」

 

 「これですか? 先程お見せした四糸乃様の写真で——」

 

 「——いや、俺が写ってた。間違い無く俺が写ってただけど」

 

 精霊スペックなめんじゃねーぞくるみん?運が良ければ見逃すことなんてねーんだよ

 俺は確かに見た。写真を回収する瞬間に……その……俺が映っていた写真を

 

 「……はて? 何のことでしょう。ワタクシは――」

 

 「その写真を渡しなさい」

 

 「……」

 

 「渡しなさい」

 

 「べー」

 

 「よーし悪い子には仕置きって相場が決まってるよなぁ?」

 

 写真を見せる様催促する俺に向かって、あからさまに視線を逸らしながら舌を出して来るくるみん。子供かお前は

 

 「お母様の愛娘にございますわ♪」

 

 「こんな悪い子を持った覚えはありません。いいから渡しんしゃい」

 

 「……そんなに駄目ですの? この——」

 

 「あ、ま、待ってくるみん! 見せなくていい! 見せなくていいから! 渡すだけでいいからこっちに見せようとしないで——」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ——ここで一つ、思い出してもらいたい

 

 俺がこの部屋に来て……連れてこられた? まぁいいか。ともかく目覚めた時には既に左手首から〈侵蝕霊廟(イロウエル)〉が消え、代わりに手錠が繋がっていた。ここまではいいな?

 ……あ、因みにだが、この腕輪は今後からも〈心蝕霊廟(イロウエル)〉と言うようにしたわ。正直〈調和の瞳紋(アルモニス・プリュネリア)〉って名称はカッコいいけど長いから言うのがめんどくさいんだよ。変えるとしたら、【心蝕瞳(イロウシェン)】を〈終幕の瞳(ダース・プリュネル)〉にするぐらいかな? 【心蝕瞳(イロウシェン)】はASTの方で名付けた名称だし、正式名称があるんだったらそっちの方がいいだろう。くるみんもその方がいいって言ってたし

 

 ……コホン。話を戻そう

 起きた時には既に〈心蝕霊廟(イロウエル)〉は調整中だった。つまり俺が寝ている時に腕輪は消えたことになる……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ——なら、”霊装”は?

 

 ……俺は普段から疑似霊装しか身につけない。だって着替える必要も無く瞬時に服装を変えられるし、霊力漏れを防ぐことだって出来るからな。だからいっつも疑似霊装を着ていたんだ。……そう、いつも

 くるみんは言っていた。この腕輪は最早堕天使のようなものであり、だから霊装も顕現することが出来ていた。——しかし腕輪が使えなくなっていた状態で、疑似霊装が通常通りに機能していたのかと問われれば……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「——黒いレースの下着を身につけたお母様。結構似合っていますのに……」

 

 「のあああぁぁあああああぁああぁぁあああああ!!!!!」

 

 ……していなかったんだよなぁ

 

 くるみんは言葉と共に、俺の……あられもない写真をよーく見えるように向けてくる。……その女らしい下着を付けた姿の俺がベッドの上で眠りについている姿を写した写真を

 最早俺の心はズタズタである。鋭利な爪で引き裂かれるかのような痛みが胸に走り、次々と込み上げてくる羞恥に……正直”泣き”が入っていた。主に心の限界です

 女になってから自身の変化に違和感を感じつつも受け入れていた俺ではあるが、流石にそこまで女性らしさを表に出すのには抵抗があるんだよ。許容できる範囲ってやつ? 女性の体を受け入れる気にはなったが、女性らしい服を着る事には抵抗がバリバリあったりする。普段は霊装さんが気をきかせて地味な服装にしてくれるし、下着の方も……確かスポーツブラって言ったっけ? そんな感じの物にしてくれるからそこまで気にすることもなく過ごせたんだよ。——それをいきなりこんな過激なものにされちゃあ堪ったもんじゃないからね!?

 てかくるみんは仮にも俺を母と慕ってるんだよね!? そんな相手に何を堂々と着せ替えなんかやっちゃってくれてんの!?

 起きた時に違和感に気づいた俺が近くの姿身を見た時はホント絶句もんだったよ……だって無造作にしていた髪を綺麗に整えられた上に前髪はヘアピンで止められていたから素顔が露わになってたんだもん。なんかうっすらと化粧もされてるし……

 そんな素顔を見せている俺が——黒いゴシックドレスを着させられていた。一瞬「これ誰?」って素で呟いちゃったからね? 最早元男だったという事実が全否定されかけたからね!? その上であんな下着まで試着されてしまえばもう男としてのプライドが粉々ですよねぇ!?

 

 「似合わないよりはいいじゃありませんこと」

 

 「似合ってたまるかあ!! そもそも似合うかどうか以前にそう言ったデザインは好きじゃねぇんだよ!!」

 

 流石に元男だからとくるみんに言うのは気が引けたのでとりあえず否定的な言葉を述べることで反論する。……だがくるみんは納得したような雰囲気を出さない以前に、俺の反応を楽しんでいるような表情を浮かべながら煽ってくるのだった。くそぅ、娘が精神的に虐めてくりゅぅ……

 

 「9年ほど前にワタクシを弄んだ罰が当たったのだとお考えになられればと」

 

 「因果応報ゥ!? まさかこんなところで仕返しが来るとは思わなかったよコンチクショー!!」

 

 「くふふ。顔を染めてまぁ、可愛らしいですわねぇ」

 

 「俺の顔を覗き込むんじゃねえええええ!!!」

 

 

 

 

 

 ——その後、俺はくるみんが持っていた俺の写真を無理矢理奪って燃やしました。こんな物は存在してはいけないんだ……俺のあるかどうかも分からないプライドの為にも——

 

 「まぁ過去に遡ればいつでも写真を撮れるどころか、その麗しいお姿を拝見することも出来るのですけれども」

 

 ……聞かなかったことにしよう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「では休憩はここまでとして、後半戦行ってみましょう」

 

 「俺の心は休む前より疲労している……」

 

 「四糸乃様とよしのん様の笑顔ツーショット公開」

 

 「元気出た」

 

 そんな訳でくるみんが再びホワイトボードの前に立ち、説明を再開するのだった

 因みにホワイトボードの中心には未だに「ちーちゃん」が書かれているのだが……それ使うの?

 

 「えぇ。今の現状を……勢力図を書くには丁度良い配置なのですわ」

 

 「勢力図?」

 

 くるみんの言葉に俺が疑問を持っていると、くるみんは「ちーちゃん」の周りを三角形で囲うように、上、右下、左下に組織名の様なものを書くのだった

 

 

  〈ラタトスク〉

 

  〈AST〉

 

  〈DEM社〉

 

 

 「それは?」

 

 「現状で精霊に深く関わっている組織の名称にございますわ。詳しく記載致しますので暫しお待ちを……」

 

 「ちーちゃん」——もうSD千歳さんでいいや。これ以上「ちーちゃん」呼びはなんかいろいろと不味い気がするし、そんなあだ名で呼ばれるようなキャラじゃない

 そんなSD千歳さんの周りに書いた組織陣の役割やら目的などを、くるみんは記入していくのだった

 

 

  〈ラタトスク〉:対話派

  ・現状では天宮市上空の空中艦〈フラクシナス〉が行動している

  ・主に精霊との共存などを目的とした組織

  ・今のところ、唯一精霊を殺す目的を持たない

  ・精霊への対処法は、精霊の好感度を上げることによる封印と思われる

  ・その封印が出来る少年の名が、「五河 士道」

  ・現在封印している精霊は「夜刀神 十香」「四糸乃」の二体

 

  〈AST〉:殲滅派

  ・陸上自衛隊・天宮駐屯地にて組織される対精霊部隊

  ・目的は単純であり、精霊が確認され次第殲滅する事を目的とする

  ・例え精霊がどんな人物であっても容赦はせず、世界の為に奔走する

  ・その部隊の人間は魔術師(ウィザード)と呼ばれ、CR‐ユニットと呼ばれる兵装を身に纏う

  ・しかし、今のところは精霊を一体も殲滅できていない

  ・未成年問わずで、何故か女性が多い

 

 〈DEM社〉:捕獲派

  ・判明しているのは、精霊を反転させた後に顕現される魔王が目的のようだ

  ・他二つと比べ圧倒的に危険度が高い組織

  ・ASTと同じくCR‐ユニットを使っているが、性能も使い手も段違い

  ・人外がいる。それこそ「ちーちゃん」レベル。だが素の身体能力はもやし

  ・トップがキチガイ、右腕が世界最強の魔術師(ウィザード)と呼ばれるもやし

  ・一番関わりたくない組織(企業)。だが千歳(精霊達)、お前は狙われている

 

 

 「大体こんな感じでしょうか?」

 

 「どの組織もツッコミどころ満載で反応に困る」

 

 どの組織もいろいろとおかしいだろ……なんで碌な組織がねーんだ?

 

 最初の〈ラタトスク〉ってのは結構良心的みたいだけど、内容が真面目にやってるのか疑いたくなるからな?

 なんだよ好感度上げるって。もうギャルゲー感覚じゃん……真面目にやってんのか? 緊張感無さすぎて精霊に知られた時に「ふざけてるの?」って言われても否定できねーぞこれ

 てか主人公クン何やってんのさ……もしかしてそれだけを目的に十香や四糸乃、よしのんに接触した?

 ……ないな。少しの間主人公クンといたが、そういった邪な感じは一切感じなかった。寧ろ全面的な善意の塊みたいな奴だったから心を弄ぼうとかそう言った類いの奴じゃあないだろう。……褒められた行動とはとてもじゃないけど言えないけどさ

 

 次にASTだが……最初はよかった。いかにも軍人って感じでそれっぽい組織だと思ったよ。五個目の項目はドンマイとしか言えないけど

 ——だが最後の項目、テメーは駄目だ

 その項目せいで台無しだよ? なんで未成年を戦場に出してんだよバカヤロー。そして何故に女子ばっか……いやまぁあんな姿の男子とか見たくねーけどさ

 ……あれ? 筋骨隆々の男があの全身タイツみたいな姿で向かって来たら結構ダメージあんじゃねーかな? メンタル的に

 ……え? 俺だけだって? 知ってる

 

 そんで一番問題なのが……DEM社か

 なんなんだよこれ……要約すると「ちーちゃん」レベルの人外が俺を含めて精霊を狙ってるってことか? 詰みゲーじゃん。世界最強とかマジで「ちーちゃん」じゃん。無理だよ俺? そんな奴に襲われたら最早逃げることしか出来ねーから。なので俺の前にはもやしとしての君だけを見せて最強さん

 そしてトップがキチガイって……くるみん何か苦い記憶でもあるの? もやしってのも結構酷いからね? もやしレベルの人間とかの〇太かよって言いたいです。……あ、俺は別に悪意ないよ? だから襲わんといてーな

 そしてカッコで隠してるけど最後の企業ってのでASTの名目丸つぶれじゃねーかよ。軍人(未成年込み)が企業相手に戦力で劣るって……

 

 ——結論——

 

 「精霊に対してまともな組織がいない気がする」

 

 「そもそも、精霊自体がまともではありませんわ」

 

 「それを言っちゃあお終いだ」

 

 そもそも俺からしたらどれも非現実的なことですからね? 最早まともな物を探す方が難しいんじゃなかろうか?

 ……え? 俺自身、精霊じゃなくてもまともじゃないって? 知ってる

 

 

 

 

 

 「とりあえずこんなところですわね。詳しい点は後程に説明していきます」

 

 「ん、ありがとなくるみん」

 

 説明を終えたくるみんは掛けていた眼鏡をしまい、テーブルに座っている俺の対面の席の腰を下ろした

 そして予め用意してきたのであろう麦茶と煎餅をテーブルに乗せて食べ始めるのであった。ゴシックドレスに身を包んでいるって言うのに食べているのは和菓子と言うミスマッチ。だが美味いから気にしない

 それから少し情報を頭で整理していた俺は、不意に気になることが出来たのでくるみんに問いかけることにした

 

 「……あれさ、くるみんって未来から来たんだよな?」

 

 「えぇ。そうですわよ」

 

 「くるみんの持つ〈瞳〉は〈第三の瞳(ビナス・プリュネル)〉だから……俺のよく使う【(ビナス)】の本来の力って解釈でいいかな?」

 

 「えぇ、それであっていますわ。お母様の使う10個の力はそれぞれの〈瞳〉から、【心蝕瞳(イロウシェン)】はそのまま〈終幕の瞳(ダース・プリュネル)〉の力の反映にございます」

 

 「それだったら……くるみんの〈瞳〉の能力ってどんなもんなんだ? 本来の力なんだろうし弱くなる訳ではないだろうから時間移動は出来るんだろうし、あの唐突な睡魔もくるみんの——」

 

 「あ、それはワタクシの力ではございません」

 

 「……え?」

 

 これからくるみんは俺と一緒にいることになるんだったら、くるみんの能力を知っておこうと思った次第だ

 ここまでの話の流れからして、おそらくくるみんの力は時間に関係した力だろう。未来から過去に来たって言っていたし、あの謎の睡魔だって時間の経過を操ればやれないこともなさそうだ。……そう思っていた

 しかしくるみんは睡魔の方に関してノータッチ、自分がやったことではないという……それじゃあ一体誰がやったのかという話が出てくるが——

 

 「今は”協力者”とだけ言っておきますわ。勿論お母様に害を成す存在ではありませんのでご安心を」

 

 ——くるみんはその何者かのことを話すことは無かった

 別に隠す事なんかねーじゃんかよ……まぁ”協力者”がいるってことを知れたのは結果的によかったのかもしれないけどさ

 

 「その事に関してはいずれ知ることとなりますので、今はワタクシの力についての説明を優先いたしましょう」

 

 なんか説明を上手いこと誤魔化すダシに使われた気がする……もういいや

 くるみんは自身の手に引き寄せたステッキとその仄暗い黒曜石の様な瞳を見せながら、自身の能力について説明を始めた

 そしてその説明を粗方まとめると……次のようになる

 

 まず……くるみんの〈第三の瞳(ビナス・プリュネル)〉は俺のよく使う【(ビナス)】の上位版みたいなものであるのはさっき言ったとおりだから、俺にも使える力のことは省いてくるみんの事だけを説明するか

 

 ざっくり言って、くるみんの持つ〈第三の瞳(ビナス・プリュネル)〉の効果は——

 

 

 『今まで見た事のある場所になら、前後十年の間の時空間跳躍が可能』——という馬鹿げた能力だった

 

 

 正直この能力を教えてもらった時、俺の使ってる【(ビナス)】が可愛く見えたね。それ程までの性能の違いに泣きそうになったわ。泣いてはいないけど

 だってこれ、見た事がある景色なら何処にでも飛べるってことだよ?見た事があればどんな時間にも飛べるでもとか、視界内に映る場所などという制限がないとか、【(ゲブラス)】を使わなくても見たことがあればいいとか……最早性能が狂ってますね

 その分使う霊力は多いそうだ。何せ2年遡るのに全霊力を使ったとか言ってたからな

 俺はやろうと思えば(グロッキー必須だけど)10年前に一気に飛べる(筈)だから、その分でなら優ってるかも。霊力タンクは伊達じゃないのです!

 

 ……そう思っていた時期がありました

 

 くるみんは2年の時間跳躍に全霊力を使ったが、それでも時間跳躍し続けることが可能のようだ

 それは何故か? ……その理由はくるみんが持つステッキに秘密があった

 

 

 「これを例えるのであれば——”秒針”ですわね」

 

 

 くるみんはどうやら、本来の天使の力は主である精霊の元にあるようだ。願いによって天使の力は切り離されなかったらしい

 天使が使えない分、くるみんには堕天使の力と〈瞳〉の能力が使えるようであり、〈瞳〉は先程述べた力を

 そして、堕天使の能力は――

 

 

 「秒針とは絶えず時を刻むもの……決して止まることの無いその針は「永遠」を意味するのですわ。故に——」

 

 

 その言葉と共に添えられた堕天使の能力は……霊力の即時回復

 

 

 どれだけ使っても尽きることが無い永遠は、彼女の霊力が減ることを否定する

 ようは無限に霊力が使用可能。いくら霊力を使おうが、次の瞬間には最大まで回復する霊力回復能力

 この力があれば、いくらでも時間跳躍が可能なのだという……

 

 以上、くるみんの能力まとめでした

 

 「因みに、お母様が何故あの場にいることがわかったのか? どんな目的を持っていたのかなどを知れたのも、予め”未来”で知り得てきた知識なのですわ。——故に、いくらお母様を説得しようとも話を聞いてくださらなかった為に、こうして拉致する事にしましたの」

 

 「堕天使ってここまで規格外になるのか……頭が痛い」

 

 ホントさ? 絶対くるみんに持たせるべき力じゃなかったと思うんだよ……これから共に行動する殊になるんだけど、俺の未来ってもう掌握されてるのかな? ハハハ……俺に自由はなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「それはそうとして、私からも質問をしてもよろしいでしょうか?」

 

 「ドウゾ……」

 

 最早くるみんのぶっ壊れ性能に考えることをやめた俺は無気力に返事するのだった

 だって仕方ないじゃん。霊力が多いのが取り柄だった俺が霊力の減らない相手と出会ったら……もうね、取り柄を取られたようなもんなんだよ。空間跳躍も時間跳躍もくるみんの方が性能良い時点で俺の【(ビナス)】が見劣りしてしまうんよ……

 そんなやる気を無くした俺に、くるみんは自身が疑問になった問いを投げかけるのだった

 

 「先ほどご説明した〈ラタトスク〉機関について……お母様は思うところがおありになりませんの?」

 

 「えー、何がー」

 

 「〈ラタトスク〉の方針である精霊との対話……その方法を簡単に申し上げますと、精霊とデートしてデレさせる事を目的としているようですの」

 

 「そーなのかー」

 

 そんな気力を無くした返事をし続ける俺に、くるみんは……今後、俺の人生(?)を動かすであろう言葉を告げるのであった——

 

 

 

 

 

 「そこには勿論、お母様も含まれておいでなのですよ?」

 

 

 

 

 

 「……はい?」

 

 「ですから、彼方側にとってはお母様もデレさせる対象、いわば攻略キャラなのですわ」

 

 「タンマ、何故そうなる? 何で俺なんかが――」

 

 「〈ラタトスク〉機関は精霊の保護も目的としております。封印した後も社会に溶け込めるよう支援しているようですわね。戸籍の存在しない精霊もおいでですし……」

 

 「待ってくれ。頼むから待ってくれ……精霊を保護する為にデートしてデレさせる? なんだそれ? ふざけてんのか?」

 

 第一俺は(心が)男だぞ? それなのにデートってつまり――

 

 「男女がホテルに行って情熱的なダンスをすることですわね」

 

 「それは飛躍しすぎているッ!!」

 

 「ですが、あながち間違ってもいないのでは?」

 

 「否定しづれぇことを言うんじゃねーよ馬鹿たれ……」

 

 何やら顔が熱い。まぁパ二くってるからなんだろうけど、それでもくるみんの言葉に俺は焦りを隠せない

 デート? それはあの十香と主人公クンとやったデート擬きとはまた別のあれか?

 しかも流れ——って言うか、さっきも名前出てたけど主人公クンとデートすることになるってことだよな?

 

 「いや俺デートするとか無理だぞ? 正直異性には勿論、同性に対しても恋愛感情が枯れている俺にデートとか無理でしょうに……」

 

 「お母様のそれ(無性愛感情)が延々と続くという訳でもありませんでしょう? それに彼方はお母様がどうであろうと、攻略しようと接触してくることに変わりはありませんわ」

 

 「マジか…………」

 

 なんで俺がデートするかもしれない状況に陥らにゃあならんのだ? デート以前に相手にそういった感情を持てなくなってるって言うのにそれもお構いなし? 俺の心情なんかどうだっていいって言いたいんですかい?

 ありえねぇ……いやマジでありえねーよ……

 

 

 

 「俺が攻略対象とかありえねぇ……」

 

 

 

 俺は深々と頭を抱え、先の未来に訪れるかもしれない苦難(デート)に不安を抱くのであった……

 

 




千歳さんに言わせてやったった

そんな訳で自身が攻略ヒロインだと告げられる千歳さんは、これから徐々に意識させられていくことでしょう
恋愛描写ははっきり言って苦手ですが、それでも千歳さんの魅力などを出せていけたらいいなぁと思っております

まぁ、だからと言っても千歳さんはオリ主系ヒロイン、他のヒロイン達を無自覚に堕としていくかもですけどね

さて、いよいよ次回からくるみんさんの主の章となられますね
早く主さんと対面させてみたいものです
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