俺が攻略対象とかありえねぇ……   作:メガネ愛好者

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メガネ愛好者です

思ったよりも時間がかかった……うぅ、眠いよぅ

さて、今回から新章突入!
千歳さんがくるみんの未来情報を駆使してどう行動していくかが見も――え? どうしたんです千歳さん?
……え? マジで言ってるんですか? 大丈夫なんですそれ? ……知らん? いやそんな無責任な――

こんな感じの回です

それでは


第三章 『好き勝手に生きていこう』
第一話 「俺は自分勝手? 知ってる」


 

 

 受け入れがたい事実をとりあえず頭の隅に追いやった俺は、くるみんから細かな補足を受けながら情報を整理しつつ、これからどうするかを話し合っていくことにした

 

 

 

 まずは今の状況を整理していこうか

 あの時、何故くるみんが俺の行く手を阻んだかというと——俺の立場を悪化させない為だった

 もしも俺が四糸乃の元に行っていたら、ほぼ確実に四糸乃の天使が堕天使化した原因が俺ではないかと疑われるところだったようだ。そうなってしまえば俺の危険度が急上昇し、他の精霊よりも殲滅優先度が上がってしまうことだろう

 更に組織関係上DEM社にも俺の情報が知れ渡ってしまう可能性が大きいらしい。そうなってしまえば俺だけではなく周りの人達にも危害が及ぶかもしれないんだってさ。傍迷惑この上ないぜ全く……

 

 何故俺が向かうだけで疑われるかもしれないのか? ……それは俺に宿る〈調和の瞳紋(アルモニス・プリュネリア)〉が原因だったりする

 

 天使が堕天使に変化する為には〈瞳〉が必要だ。〈瞳〉を得なければ天使は堕天使に変化する事は無い。その為、堕天使には俺から切り離された〈瞳〉が必ず宿っているという事になる

 そして、その〈瞳〉の力を精霊は堕天使を介して使う事が出来るんだ。今回の場合は四糸乃から切り離されたよしのんが実際に使っていたらしい

 

 

 ——そんな〈瞳〉の能力を発動する時に宿る”仄暗い光”が問題だった

 

 

 〈瞳〉の力を使う場合、その〈瞳〉の所有者は”仄暗い光”を瞳に灯してしまうらしい。現に俺の瞳は【心蝕瞳(イロウシェン)】こと〈終幕の瞳(ダース・プリュネル)〉が発動していたことで仄暗い光を宿していた

 つまり、くるみんから〈瞳〉のアドバイスをもらった事で、〈終幕の瞳(ダース・プリュネル)〉を解除する事が出来た私の瞳からはその光も消えているんだけど、解除することが出来なかった今までの私はその瞳を晒し続けていたことになるんだよなぁ……

 

 あ、因みに〈終幕の瞳(ダース・プリュネル)〉の解除方法は案外簡単だったわ

 やった事なんて”〈終幕の瞳(ダース・プリュネル)〉を監視に回す”事だけだからな。これでもしもさっきみたいに霊装さんが使えなくなった場合でも目を合わせることが出来るという訳だ。……普通に引っ込めることが出来たって言うね

 〈終幕の瞳(ダース・プリュネル)〉を解除したことで、まだ確認はしていないんだけど……俺の〈瞳〉の力で昏睡してしまった人達が目を覚ますかもしれないってくるみんが言っていた

 〈瞳〉の力が監視に回ることで効果を維持出来なくなってしまうらしいんだとさ。……まぁ後遺症が残るかもしれないみたいなんだけど……こればかりはしょうがねーわな。言ってしまえば不可抗力だし

 

 さて、本題に戻ることにすっか

 あの場でASTはよしのんの瞳を間違い無く見ている筈だ。——そんな状況で俺が介入したらどうなると思う?

 答えは簡単、私が何らかの影響を他の精霊に及ぼしているのではないかと疑われてしまう事になるんだ

 一応あの場ではまだ俺が直接的な関係を持っていることが明らかになっていないので、天使に隠された謎の力として誤魔化しが効くとは思う。酷似しているとはいえ、俺の〈瞳〉とよしのんの〈瞳〉は異なる効果のものだから、ASTは疑いはすれどまだ断言出来ないでいるだろう

 もしもあの時、俺が四糸乃の元に向かっていたら……状況は悪化していたと思う。だからくるみんは俺の身の安全と情報の秘匿の為にあの場で介入したという訳だ

 

 

 

 こう言った俺の立場が悪くなるようなことが、これからも俺の身近で起き続けるだろうとくるみんは忠告してきた

 今回みたいにくるみんが未来の情報を持っていたことで事態の悪化を防ぐことが出来た訳だけど、くるみんにだって限界はあるのだから頼りきる訳にはいかないだろう。娘に頼りっきりの親とか情けなさすぎるし、自分でやれる事は実行していくべきだよな

 

 

 だから俺は……一旦おじちゃん達から距離を置くことにした

 

 

 まず俺が行ったのは、【(ゲブラス)】でこの部屋を空いているストックに記憶する事である。これからの拠点になる部屋なんだし、覚えておくに越したことは無い

 それと同時に……心苦しかったが、俺がおじちゃん家で貸してもらっていた部屋の光景を忘れる事にした

 何故そうしたかというと、DEM社の奴等に俺が親交を持っている人達がいる事を悟られないようにするためだ

 

 DEM社は三組織の中でもとりわけ警戒しなければいけない組織だ

 何せそいつらは精霊の事となると手段を選ばない節があるみたいなんだよ

 周りの被害を顧みない時もあれば、何の躊躇いも無く非人道的な行為をする時もある。権力を振りかざすなんてざらにあるそうだ

 そんなモラルなんてとうに投げ捨てたと言わんばかりの手段を持って、精霊の力を手に入れようとしているのがDEM社のようだ

 

 もしも何らかの拍子に俺の事が知られた場合、DEM社は俺の周囲にいる人達に危害を加えてくるかもしれないんだよ。俺と関わったからという理由で皆が危ない目に会うかもしれないって言うのは流石に理不尽な話だ

 

 そんな可能性があるからこそ、早いうちに皆とは距離を置いておくべきだと俺達は考えたんだ。——それが突然いなくなる形になったとしてもさ

 俺の私物は既におじちゃん家の部屋から回収してきたので、もうあの部屋に入ることはないだろう。下手をすればあの家に行くことももうないのかもしれない

 少し寂しくはなるけど……しょうがないんだ。俺は精霊だからな……

 

 回収時におじちゃん達と会わなかったのは運が良かっただろう。流石に今、おじちゃん達と会ったら躊躇するかもしれないし

 きっとおじちゃん達は精霊の事を省いて説明したとしても、そんな些細な事と気にもせず接して来ようとするもん。寧ろ「ここにいろ」なんて言ってくる可能性だってある。……そうなった場合、俺がそれを断れるかが怪しいんだね……

 だからこそ、ここはあえて何も言わずに去った方がお互いの為だと思うんだよ。寧ろこれでおじちゃん達が薄情な行動を取った俺の事を嫌ってくれた方がいい

 

 

 

 ……それなのに、感謝の言葉を書いた置手紙を部屋に置いて来てしまったのは逆効果すぎるよな。ホント、俺はなんでこうも中途半端なんだろうな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「それではこれからどうしていくのかを議論していきましょう」

 

 「うぃっす」

 

 さて、ここからは今後の事についての話し合いだ

 ある程度の事は俺も把握できたので、くるみんの考えを聞きつつ俺も今後の事を考えていこうと思う

 因みにくるみんの考えた方針はというと、くるみんが持つ未来知識を生かしてより良い選択を選びながら行動していこうというものだった。それが結果として俺の為にもなるし、皆の為にもなるんだから最善すぎるわな

 だから——

 

 

 「基本自由で構わんでしょ」

 

 「……はい?」

 

 「いやだから、警戒はすれど基本は自由気まま意のままに~ってやつだよ。未来知識による最善策があるからって、わざわざご丁寧にその道を辿る必要はねーんだし」

 

 

 ——俺はくるみんの最善策を早々に蹴っ飛ばすのでした。はい

 

 

 くるみんが提示したのはあくまでも”最善策”だ

 確かに未来知識があれば安全な道を歩くことが出来るだろう。立ち塞がる問題を適切に処理していくことだって出来る筈だ

 

 だから……()()()()でしかないだよ、くるみんの考えは

 

 この際だからハッキリ言うよ。あのな? くるみん……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「そんなんつまんねーだろ」

 

 「エー……」

 

 そう、先の事を知った日々なんてつまらなさすぎる

 だってさ? 最善策を取るってことは、その策に合わせた行動を強いられる訳だろ? 常に警戒しながら慎重に行動していかなければいけなくなるんだろうし……ハッキリ言って、そんなん性に合わねーから

 俺の転生時の願いは”楽して充実に堕落したい”だぞ? めんどくさい道を乗り越えてまで得る安寧なぞ興味ねーんだよ。……あれ? 堕落したいなんて言ったから堕天使化の力を得たのか? ……流石に考えすぎか

 

 とにかくだ。俺としては怠けつつも充実した生活を送りたい……ようは、退屈しない日常をダラダラと過ごしたい訳ですよ。これって理想じゃね?

 

 「だからこそ俺は自重しねーし、赴くままにハッチャけるんだよ。何かに縛られた日常なんて、そんなもん自分から自由放棄してるようなもんだからな」

 

 「で、ですが! それではお母様や四糸乃様達を含めた親しい者達に危険が及ぶかもしれませんのよ!?」

 

 「んなもん俺に向かって来たら逃げりゃーいいし、皆に危険が及んだ時は……まぁ、全力出すさ。俺がやれる限りの全力を持って——全て蹴散らす」

 

 「そ、それではお母様が……」

 

 「安心しろって。皆の無事が取れればまともに相手する必要はねーんだし、そうなれば後は逃げの一手さ。俺は逃げるのだけは得意分野だからな、そんじょそこらの人外じゃあ俺には追いつけんだろ。何せ逃走先がほとんど無限にあるようなもんだし、逆に俺の事を捕まえられるんなら捕まえてみろって言いたいもんだ。はっはっはっ」

 

 「そんな能天気な……」

 

 俺の考えに頭を押さえて呆れるくるみん。しょうがないじゃん、これが俺なんだもん

 俺はあんまり小難しいこと考えても頭が疲れるだけでいい結果になった試しがないんだよ。そんな俺がいくら未来の事を考えたってなるようにしかならねーだろ? 例えくるみんから未来知識をもらったとしてもだ

 俺の言い分は未来を知っているくるみんからすれば対処法がわかってる分不服であろう。予め予定していた方針が俺のせいで狂い始めようとしてるんだもん、不満でない訳がない

 ホントごめんな? ——まぁ謝りはすれど考えは変えないけどさ

 

 ……え? 理由? そんなもん簡単だ

 

 「くるみん……未来を知った人生なんてつまんねーぞ? 例えそれが俺や皆が救われる形になったとしても、いつか絶対——周囲が色褪せる」

 

 「色褪せる? それは人が救われること以上に危惧すべきものなのでしょうか?」

 

 「あぁ、少なくとも俺にとっては必要不可欠だよ。確かに未来を知っていれば自分の不都合な未来を回避する事だって簡単だろうな? 何せ事前に対処できんだからさ。……でもな、それだと刺激が無くなっちまうぞ?」

 

 「刺激……ですの?」

 

 「おう、刺激だ。人の心を潤わすのはいつだって刺激的な出来事だ。楽しい、嬉しい、面白い、気持ちがいい……それらには自身が興味を引くような刺激的な何かが必ずある。そう言ったものが人の人生には欠かせないんだと俺は思うんだよ。例え難を逃れたとしても、例え人を救えたとしても……それが確定的な事だったとしたら、その後に得るのは……うまく言い表せないような虚無感でしかない。少なくとも俺はそうだ」

 

 必ず危険から逃れられる方法があるのなら、誰だってその方法を試すだろう

 必ず脅威から相手を救える手段があるのなら、誰だってその手段を行使するだろう

 確かにそんな手段や方法があるのなら、誰だってそれに手を伸ばすだろう

 これらは人として普通の事だろう。人は自分から傷つきに行こうだなんて早々考えないのだから、何かしらの手段があるならそれを実行するに決まっている

 

 

 しかしまぁ……俺は少し他の人とは思考回路が違うのかね?

 俺は他者から得られる確定した未来程……喜びの感情が得られない

 だって、それには予想外な驚きが一切無いんだもん

 心躍るような高揚感が湧き上がらない。それにあるのは予想内に収まってしまう事で生まれる無感動の達成感だけだ

 

 

 俺はそれが……この世に生きてるとは思えないんだよ

 

 

 「……それでは、お母様は未来の知識を欲しはしないと……そう仰るのですわね?」

 

 「未来予知とか憧れるよなー。……俺はいらないけどさ」

 

 改めて考えても確かに便利だな。うん、超便利。だってそれがあれば思い通りの結果を望めるからね

 四糸乃達の安全も事前に対処できるんだろうし、組織陣の思惑からも逃れることが出来るだろうしね。下手すりゃ潰すことも出来んのか?

 

 

 ……だからこそ気にいらない

 

 

 「未来知識を元に動くなんて、言っちまえば攻略本使ってプレイするゲームみたいなもんだ。攻略本を使えば取り残しのアイテムを見過ごす事もないし、ボスの最善な倒し方もわかるだろうから全てが終わった時の達成感はかなり大きいと思う。……でも、その途中でこれからどんなイベントが起こるとかわかっちまうと、途端に”飽き”がくるもんだ。後の楽しみが無くなっちまってすぐにやる気が無くなっちまう。それでも進めていた場合、待っているのは予想通りの展開だ。知らなければ面白かったであろう場面でも、あらかじめ知っていたら心から面白いと思うことが出来る訳がないんだ。それに自覚し、そんな自分が滑稽に思えてくるからこそ……俺は確定した未来が気にいらない」

 

 予想通りの未来を思うがままに掴めるなんて、そんなもん独り芝居に他ならねーだろ?

 確かにやりたいようにやるための力は欲しい。しかしそれを効率良く、的確に、間違いを犯さずに進める為の”攻略本(未来情報)”なんて俺はいらないんだよ

 確かに全クリとかしたい時は攻略本を使うときもあるだろうさ。全て上手くいった時にのみ得られる達成感と言うのもあるだろう。……でもそれは攻略本を使わないで不完全にもクリアした時に生まれる達成感とは全く別なんだ

 資料を見て作業的にこなした達成感と、自身の力で考えた末の達成感とじゃ感じるものが全く違いすぎる

 

 「だからこそ俺は未来知識を積極的に知ろうとは思わないし、活用しようとも思わない。それによって起きる失敗や後悔もあるかもしれねーな? 失敗して危機に陥るかもしれねーし、周りの親しい人達が傷ついて後悔するかもしれないな。……それでも俺は、好き好んで未来を知る気は無い。確実に助かる道を、助けられる手段を知っていたら……俺が望む達成感を得る事も無ければ、もうそれを現実だと見れなくなって情熱をも失っちまう。相手の事を考えないただの”人助け”って言う作業になっちまう」

 

 「しかし、人を助けた事には変わりありませんの?」

 

 「……もしもさ、くるみんがそんな奴に——機械の様に無機質で、何も考えていないかの様に無感動な相手に助けてもらった時……気持ちのこもった感謝が出来るか?」

 

 「それは……」

 

 「俺だったら無理だ。もしも「助けられて当然、失敗する事なんてありえない」とでも言いたげな雰囲気の奴に助けられたとしたら、俺は間違い無く心無い感謝を返すと思うよ。だって……そう言った奴の出す雰囲気ってのは、どう考えても相手を”人”として見ていないような気がしてならないからね」

 

 「…………」

 

 「だから俺は未来に縛られず、自分の思うがままに動きたい。例えそれが間違った道だとしても、そっから正しい道に方向転換してやんよ」

 

 「……そう、ですか」

 

 俺の考えを知ったくるみんは諦めにも似たような表情を浮かべながら顔を俯かせてしまう。……くるみんには悪い事をしたな

 俺の為に遥々未来からやってきた上で今後の方針も考えていたであろうに……それら全てが実質無駄に終わってしまったのだ。しかもそれが目的の相手によって破たんしてしまった

 正直心苦しくはある。相手の好意を無碍にするなど、性根が腐ってるんじゃないのかと言われても反論出来やしないだろう

 

 ——しかし、これはハッキリと言わなければいけなかったと俺は思う

 どちらか一方でも望まないのだとしたら、その道を共に歩むことなんて不可能だ。いつかは絶対に破綻する

 そうなるのなら、その道を進む前にストップをかけた方がお互いの為でもあると思うんだ。つまらないいざこざなんて起こしたくなんてないんだよ。……悪いのは全部俺だけどさ

 

 「ごめんな、自分勝手な事ばかり言ってさ……でも、こればかりは譲れないんだ」

 

 「いえ……ワタクシは平気ですわ。ただ……何というか……やはり、この結果になってしまいますのね」

 

 「やはり? それって……くるみんにとってこのやり取りは初めてじゃなかったりするのか?」

 

 「えぇ。いくらやり直そうがお母様は自分の行く末を断固として変えようとしませんでしたわ。もうこの話をするのも365回目ですわよ?」

 

 「一年分のリスタート!? え!? そんなやり直して結果が変わらなかったのか!?」

 

 「だってお母様、非常に頑固なんですもの」

 

 「マ、マジか……なんかホントごめん。364人の俺も含めてすいませんでした」

 

 「いえいえ、別に気にしておりませんわ。……寧ろそれだけお母様と一緒にいられる時間を持てたという事に幸福感を感じましたわ! このまま1000人目のお母様と邂逅するのも近——」

 

 「ストップだくるみん。流石にそれはいろいろと問題があるから程々にしておきなさい」

 

 この子はどこまで俺の事を慕ってるんだよ……いやまぁ嬉しくはあるけどね? こんな自分勝手で自己中心的な俺なんかを慕ってくれること事体に感謝しかないもん

 ただもう少し自分の宿主さんにもその好意を向けてあげてもいいんじゃないかなーなんて思ったりしなくも無いわけだ。だってさ? それだけの間、くるみんの宿主さんは放置されてるってことなんでしょ? その宿主さんが今どんな状況かわからないけど、流石にいい気はしていないんじゃねーかな?

 そんな訳でくるみん、結構雑に接している感じに思えなくもない宿主さんに慈悲を——

 

 「やですの♪」

 

 「即答かい。なんでそんな嫌ってるん?(また心読まれた……)」

 

 「だってワタクシの初顕現時、姿が気にくわないからと言う理由で即座に銃を放って来ましたのよ? いくらワタクシが好意を見せようとも彼方が友好を示さないんですもの……くるみん悲しくて泣いてしまいそうですわ。グスン(ファ〇チキくださいまし)」

 

 「なんでそんなに嫌われとるんや。一体くるみんの姿の何処に不満があるのやら……(こいつ、直接脳内に……っ!?)」

 

 宿主さん、もっと貴方の天使もとい堕天使に慈悲をお与え下され。くるみん泣いてますよ? ……左手に目薬を持って

 後、俺はファ〇チキよりミニ〇トのジュー〇ーチキンの方が好きだわ。辛い方

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ————————————————————

      なう・ろーでぃんぐ

   ————————————————————

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ハァ……なんなんだろうな、この何とも言えない気分は……」

 

 とある一室。夕食も済ませ後は寝るだけとなった少年——五河士道は自身の部屋のベッドに体を預けながら、今日出会った少女の事を頭に思い浮かべていた

 

 

  ”崇宮(たかみや) 真那(まな)

 

 

 彼女は今日の学校の帰り道、何の前触れもなく士道の前に現れたのだ。……自身を”士道の実の妹”と名乗りあげてだ

 確かに士道と似た特徴がいくつもあったし、真那が大切そうに首にかけていた銀色のロケットには士道に瓜二つの幼い少年と真那を映した写真が収められていた。これで真那が()()()()()()()()()()、より確証が増しただろうに……

 

 ——そう、彼女は士道と同様に昔の記憶を失っていたのだ

 

 ここ2、3年の記憶しか持たず、それ以降の記憶を一切覚えていないという真那だったが……本人は士道と出会えた事が何よりも嬉しかったのだろう、記憶に関してあまり気にはしていないようだった

 その一方で、覚えていなかったとは言え実の妹と出会ったことに士道は少なくない動揺を見せていた。……それ以上に動揺していた義理の妹もいたが

 士道も五河家に引き取られる以前の事をよく覚えていなかった。だから自身に妹がいたという事に、時間が経った今でも頭が混乱していたのだった

 

 「実妹ねぇ……」

 

 『――あれさぁ、寝床で女の子の事を考えるのって……何かエロくない?』

 

 「ちょっ!? いきなり何を——ッ!」

 

 『しー。あんまり騒いじゃうと琴里ちゃんに怒鳴られちゃうよ~?』

 

 「ぐっ……全く、いきなり何を言い出すんだよ詠紫音」

 

 『ちょっとしたジョークさ♪』

 

 彼しかいない筈の部屋で急に声が響いてくる。……いや、厳密には響いていない。何せその声は士道にしか聞こえないのだから

 少女特有の少し甲高い声。その声の発生源は、士道の中にいる少女——詠紫音のものだった

 

 彼女は四糸乃の天使が堕天使化した拍子に生まれた人格だ。故に、基本的には封印された堕天使と共に詠紫音も士道の中に封印される事になる

 しかしそこはまだ未知の部分が多い堕天使だ。詠紫音は堕天使の力を士道の中に残す事により、肉体を持った状態で外へ出てくる事を可能にした

 〈フラクシナス〉の検査によれば100%人間と何ら変わらない生体構造であり、霊力反応も一切出さなかった

 だから今の詠紫音は人となんら変わらない……普通の少女になれたのだ。……少し例外はあるけども

 

 現在詠紫音は士道の中で休息をとっていた

 どうやら彼女の話によると、士道の中はなかなかに快適らしい。それによって詠紫音は一日おきに士道の中で眠りにつくようになったのだった

 最初は困惑していた士道も今やそれがいつもの事として受け入れている。慣れっておそろしい

 

 因みにだが、詠紫音が一日おきにしているのにも理由がある。簡単な話、四糸乃と一緒に寝るためだ

 詠紫音は士道の中で眠りにつくのも好きなのだが、彼女に取って最優先に守るべき存在である四糸乃と寄り添って寝る事も同じぐらいに好きなのだ。それこそ当初は毎日四糸乃と一緒に寝ようとしていたぐらいに

 

 

 しかしそれは……四糸乃が断ったことで実現されなかった

 

 

 これには聞いていた者全員が驚かされた

 怖がりで人見知り、詠紫音の人格のコピーであるパペットの”よしのん”が自身の手から離れると怯えて天使を呼び出してしまう程に内気だった少女が、彼女の支えである詠紫音の提案を拒んだのだ。驚かない方が難しい

 何故四糸乃は詠紫音の提案を拒んだのか? その理由は……彼女自身の成長の為だった

 

 「私、は……よしのんが、ついていてくれたか、ら……今まで、頑張れ、ました。け、けど……これから、は……一人でも、頑張れるよう、に……なりたい、んです」

 

 それは彼女が踏み出した勇気の延長線。詠紫音がいなくても一人で進んでいけるよう——自立しようと試みる彼女の決意だった

 その四糸乃の決断を詠紫音は無下にする事なんて出来ないし、寧ろ四糸乃が勇気を振り絞って頑張ろうとする姿に感激してしまうぐらいだった

 ……しかし、そんな四糸乃を見た詠紫音が少し寂しい気持ちになってしまったのはしょうがない事だろう

 

 そうして四糸乃がその第一歩として実行したことが——”少しずつ詠紫音といる時間を減らしていくこと”だった

 別に減らしたいからといって、詠紫音を避けようとする訳ではない。必要以上に詠紫音の事を頼るのはやめようというだけだ

 今のところは四糸乃の元にはまだ”よしのん”がいるのだが、その”よしのん”も左手につけているのではなく、用意されたバックに入れて持ち歩いているという現状が続いている。……たまに左手につけていたりもするが、最近は減った方だろう

 これらの努力によって、四糸乃は必要以上にべったりと詠紫音について歩くことが無くなってきている。その影響が内面にも影響しているのか、最近は口調も途切れ途切れになることが減ってきており、話す相手が士道達なら以前よりもはきはきと話せるようになってきたのだ。同じ精霊である十香と話す光景をよく見る様にもなった

 徐々にたくましくなっていく四糸乃。その事に詠紫音は嬉しさを感じつつ、内面ではどうしても寂しさを感じてしまうのだった

 

 

 だからなのだろうか? 気づけば詠紫音は自身が心を許した少年——士道と一緒にいる事が多くなってきていた

 

 

 今では四糸乃とよりも士道といる時間の方が多くなってしまっている

 彼といると楽しいし、どこか温かさを感じる。優しさを感じるし、安らぎを感じる

 その結果、士道といる事で四糸乃へ対する寂しさが和らいでいる事もあり、自然と士道の傍にいる事が多くなってしまったのだ

 別にそれが悪いことではない。ただその事で詠紫音は四糸乃を裏切っているような罪悪感を抱いてしまうときがある

 その罪悪感でさえ彼といると忘れてしまいそうになってしまう……それほどまでに士道に対して想いを寄せてしまっている詠紫音は「ボクって現金な女なのかな……」なんて考えに至り、密かに落ち込んでしまうのだった

 

 

 

 ――そんな詠紫音は気づいていない。四糸乃が断った理由には……もう一つの理由があるという事を

 

 

 

 四糸乃は——詠紫音が士道の事を好いているのに、なんとなくではあるが気付いている

 四糸乃にはまだ恋愛感情と言うモノがよくわからないのだが、それでも詠紫音の様子を見ていると……なんとなくそうなのかな? って感じることがあるのだ

 それを見た四糸乃は、いつも自分の事を支えてくれる詠紫音に”自分の事も考えてほしい”と密かに願うようになったのだ

 

 

 ——”詠紫音は……ヒーローだけど、ヒロインでもあるから”——と

 

 

 そんな四糸乃からの密かな願いによって、詠紫音は士道との関係を深めていたりするのを彼女は知らなかった

 

 

 

 

 

 そして今日は士道の中で眠りにつく日であった

 士道の中で意識を保っているおかげか、今では士道の中にいる時のみ自身の声を彼だけに聞かせることが出来るみたいだ。この時に士道が声を発してしまうと、どう見ても独り言を呟いているようにしか見えないのは余談だろう

 

 『今は下手に考えてもしょうがないと思うんだよね。だから、今は実の妹ちゃんに出会えたってことを素直に喜ぶべきなんじゃないかなー?』

 

 「……それもそうだな。今は真那と再会できたことを喜べばそれで……」

 

 『そうそう。そ・れ・にぃ? あの子も結構可愛かったから、”兄様”としては嬉しいんじゃないのかな~?』

 

 相も変わらずからかう事が好きなのか、詠紫音は士道を煽るような含みのある言い方で言葉を送る。これも詠紫音にとっては親しい人へのスキンシップであるし、士道も気分を害する様な煽りでもないのでいつもの詠紫音の冗談として返答を返すのだった

 

 

 ただ……その冗談の返しを士道はたまに間違える

 

 

 「からかうなよ。……まぁ確かに可愛いとは思うけどさ」

 

 『お? 案外素直に認めるんだね?」

 

 「まぁ……そうだな。真那も()()()も美少女だし、可愛くない訳ないだろ……」

 

 『……え? なんでそこでボクが出てくるの?』

 

 「いや詠紫音が言ったんじゃないか。あの子”も”って……だからてっきり俺は詠紫音も含まれてたのかなって思ったんだけど……」

 

 『……あははー。ホントシドー君ってそういう細かいところに気づくよね。しかもそれが当たり前のようにさ……(私じゃなくて四糸乃達の事を言ってたんだけどなぁ)』

 

 「どうした詠紫音? なんかおかしなところでもあったのか?」

 

 『ううん、何もないよ。ただ少し驚いただけ』

 

 「……まぁあれだ。別にお世辞とじゃないから、さ……」

 

 『……うん、ありがと』

 

 士道はたまにこう言った予想外の発言をする。そうして無自覚に心を揺さぶってくる為、言葉とは裏腹に内心は穏やかではない詠紫音だった

 こう言った士道の発言が周囲に気まずい雰囲気を作ってしまうのだが、最早これも日常風景であったりする

 

 

 

 

 

  ——ピローン♪——

 

 

 そんな二人の耳に一つの電子音が流れた

 

 

 『——あれ? シドー君、携帯なってるよー?』

 

 「え? あ、あぁ……こんな時間に誰だろ?」

 

 机の上に置いておいた士道の携帯からメールの着信音が鳴り響く

 士道はベッドから起き上がり、携帯を取って中身を確認する事にした。同時に士道の中にいる詠紫音も覗き込む

 携帯に届いたメールの内容、それは——

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 From:sentou-no-bandai-500@—————

 

 件名:俺の名前を言ってみろぉ!

 

 本文:……件名は気にするな。とりあえず窓の外見れ。はよ見れ

 

 

 

 「いやそもそも誰だよ!? せめて名前入れろって!!」

 

 『さっきからうるさいわよ士道!! ……独り言を趣味にするとか気持ち悪いわね』

 

 「うるさくしたのは悪かったが後半に関しては全くの勘違いだ! 呟いてるつもりでもはっきりと聞こえてっからな!?」

 

 理不尽な仕打ちを部屋の外にいるであろう義妹から受ける士道。これもまた彼の日常であった。……まぁ、彼自身の自業自得なのだが

 

 『それよりもシドー君、ちょっと気になるし窓の外を見てみないかな?』

 

 「——あ、そうだった。全く……一体何なんだよ」

 

 うっかり忘れかけそうになったメールの内容を詠紫音のおかげで思い出す士道

 差出人が誰かはわからないが、とりあえず窓の外を見てみれば誰が送ったのかは分かるだろう。士道は差出人が誰なのかを予想しつつ、閉めていたカーテンを開けるのだった

 そして、窓から外の様子を伺った士道は――

 

 

 

 

 

 「……え?」

 

 自宅の前で佇んでいる――千歳の姿を視界に収めるのだった

 

 




千歳さん、未来知識、いらない

そういう訳で、千歳さん自らが未来の情報を知ろうとくるみんに聞く事は多分ないでしょう。あってもくるみんから知らされる形になるかと
何故かって? その方が千歳さんがやりたい放題できるからです

そして後半はシドー君と詠紫音のターン
原作の出来事は今のところ順調(?)に起きています。なので、原作には無かった場面として詠紫音との会話を出しました
……なんかいい雰囲気に
何故か最近、次話を書こうとする度に詠紫音を出したくなってしまうという事態に……
妄想が過ぎて士道×詠紫音の✖✖✖な話とかを考えてしまっている私はもう末期なのでしょうか……? 最早千歳さん以上にヒロイン化しそうで怖いです……
まぁ、女子力としては詠紫音の方が高そうですがね

次回、オハナシ
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