「あれ?あれ?あれれれ⁉︎」
風呂上がりの寝間着姿に着替えた穂乃果は自室で慌てふためいていた。冷や汗を垂らしながら、必死にカバンの中身を探っている。
「あ、あれ〜?」
帰宅してからはダンスの参考にするためにアイドルのPVをチェックしたり、家族の訝しげな視線を尻目に振り付けとポーズの練習に打ち込んでいた穂乃果だが、いつの間にか廃校阻止の目的どころか夕食すらも忘れてそれらに夢中になっていた。
普段は色気より食い気を地で行く穂乃果とはいえ、やはり年頃の少女。スマホに映るアイドル達の煌びやかな舞台衣装や華麗なダンスを前に、目が釘付けになっていた。今まで知らずにいた輝かしい世界がそこにあったのだ。
そんな彼女が宿題はまだ終わっていないのを思い出したのは、業を煮やした母親がいつまでも部屋から出てこない娘に苦言を呈してきた時であった。そこで時計の針が深夜近くまで迫ったことにようやく気づいたのだ。幼い頃より一度何かに没頭すると周囲が見えなくなるタイプだと評されてきたとはいえ、アイドルの練習のために宿題までも放置して補習を受ける羽目になってしまっては流石に本末転倒である。
しかし、そこはやはり穂乃果。結局宿題を済ませるよりも風呂を優先してしまう。どうせすぐに終わるだろうという甘い算段ゆえに。そして、ようやく嫌々ながらも昼間の内にかなり片付けた宿題の残りに手を付けようとカバンを開いた。
のだが……
「無い……」
何度も何度も……既に無駄だと頭では理解していても、繰り返しカバンの中を隅から隅まで手を潜り込ませる。
「無い無い無い無い無い……うわーーーーーんっ!!!どうしよう!!肝心の教科書が無いよーーーーーー!!!」
結局お目当の物は見つからず、穂乃果は頭を抱えた。一時は海未のスパルタ教育を乗り切ったとはいえ、公式の数々は穂乃果の記憶からは既に消え去っていた。参考書の類を使わず問題を解くなど、もはや不可能に近い。
「そ、そう言えば、海未ちゃんに言われて、教科書見ないで問題解いてたんだっけ……もしかして今も机の中⁉︎」
ガラッ
「もう……お姉ちゃん、さっきからうるさーい」
気づかない内にかなりの大声になってしまっていたようだ。パジャマ姿の妹が目を擦りながら襖を開けて姿を現した。せっかくの睡眠を邪魔されて相当お冠らしく、眉間に皺を寄せている。
「さっきからどうしたの?もうとっくに11時過ぎだよ。あんまり大騒ぎしてるとお母さん達からまた怒られ……」
「それどころじゃ無いんだよ雪穂ー!」
不機嫌さ全開で不満を漏らす妹を放置して、穂乃果は慌ててスマートフォンを手に取った。
「なんなのもう……」
落ち着きの無い姉に呆れる雪穂は扉を閉める際に小言を並べていたようだが、目の前にピンチが迫る穂乃果としてはそれどころではない。すぐさま電話帳を開き、慣れしたんだ幼馴染の番号を入力する。
「神様仏様ことりちゃん〜!お願いだから電話に出て〜!」
こんな夜遅くに起きている保証は無い。プルルルと虚しく響く呼出音に精神をすり減らされながら、穂乃果は普段ろくにお参りもしていない神に祈り続ける。そして無機質な呼出音も六回程続いた時、突如終わりを告げた。
「た、た、た、大変だよ〜ことりちゃん!」
『どうしたの穂乃果ちゃん?こんな夜遅くに』
「実は……」
穂乃果はおそらく机の中に教科書を入れたままにしていたであろうことをことりに説明した。
「どうしよう〜!これじゃあ明日の朝一とか絶対間に合わない!もう無理だよ〜!スクールアイドル活動出来なくなっちゃう!」
『そんなあ……』
数瞬の間を置いた後、電話越しにことりのため息が届いてきた。
『仕方ないなあ……それじゃあ明日朝は早めに来て。ことりのノートをこっそり写させてあげるね』
「ほ、本当ぅ⁉︎」
歓喜のあまりに思わず声が裏返ってしまった。そんな穂乃果のあまりにも必死な様子がおかしかったのか、電話の向こう側からクスリと笑いが漏れ聞こえてくる。
『本当に本当だよ。勿論、海未ちゃんには内緒にしておくから』
「おおおおおお!!!」
愛くるしい容姿と包み込むような母性的優しさの持ち主ゆえに彼女を知る者達からは天使と称されていることりだが、今日の穂乃果にとってはもはや天使を超越し、女神と呼んでも差し支えなかった。
「ありがとう、ことりちゃん!ほんと助か……」
ーーーーーほらやっぱり。あなたには無理だったんですよ。私にはわかっていましたーーーーー
穂乃果の頭の中で海未の冷たい声音が響き渡る。
違う。確かに海未は自他共に厳しすぎる一面はあるが、こんな風に人を見下すような態度を取る少女ではない。これは穂乃果の中にある罪悪感が海未の姿を借りて自分自身を責め立てているに過ぎない。
これは海未ではない。だから気にする必要なんて無いはずだ。そのはずなのに。
ーーーーー何もかもが中途半端なあなたがアイドル?フフフ……心底笑わせてくれますねーーーーー
頭の中から、愉しそうに嗤う海未の姿が焼き付いて離れなかった。
「……ごめん、ことりちゃん。やっぱり手伝ってくれなくても大丈夫だから」
『え?』
「それじゃあまた明日!」
ことりが戸惑っているのも構わずに通話を無理矢理終わらせた穂乃果は、意を決した表情でベッドの上に散乱していたパーカーと靴下を手に取るのだった。
「ふあー……もう、お姉ちゃんのせいで無理矢理叩き起こされちゃったよ。せっかく良い気分で眠ってたのに。まったく、高2になっても相変わらず落ち着きが無いんだから……」
欠伸を手で抑える雪穂。気晴らしに水でも一杯飲んでおこうと台所に向かっていたのだが、その途中に玄関口に照明が灯っているのが目についた。
「あれ?お姉ちゃん今度はどうしたの?」
既に深夜だというのにバタバタと慌てた様子で靴を履いている姉を見て、雪穂は不可解そうに首を傾げた。
「ん!ちょっと近くのコンビニでお買い物!」
本当の理由を話すのは憚られるからか、適当にそれらしい言い訳を並べた。
「ええっ⁉︎こんな時間に⁉︎もうすぐ日付変わっちゃうよ⁉︎」
「うん!だからお母さん達には黙っておいてね!」
「ちょっとお姉……あーあ行っちゃった」
スニーカーを履き終えた穂乃果は雪穂の制止にも振り返らずそそくさと玄関を飛び出して行ってしまった。雪穂の中で一抹の不安がこみ上げてきた。もう高校生とはいえ、姉はまだまだうら若き少女だ。深夜近くになって一人で夜道を出歩くのは決して褒められた行為ではない。
おまけに最近はテレビで不可解な怪事件が頻繁に報じられているだけに余計不安は大きい。自分達が次の被害者になってしまう可能性はなきにしもあらずなのだ。しかし、
「ま、いっか。近くのコンビニならどうせすぐ帰ってくるでしょ」
それよりも早く寝なければ。自分はぐうたらな姉と違って部活の朝練にも参加しているのだから。雪穂は窓から覗く三日月を眺めながら、欠伸を堪えた。
巷を賑わす怪事件の被害者には、幸いにも雪穂の知り合いはいなかった。そのせいか、秋葉原周辺で騒動が起きているのにも関わらず、どうにも実感が無いのが正直なところだった。ゆえに雪穂にとって結局は関心の薄い他人事でしかなかったのだ。
雪穂は本心では疑っていなかった。あれはどこか遠い別世界の出来事であると。あんな事件は自分達の与り知らぬ話であると。明日も同じ日常が続くと。
己に襲い掛かる睡眠欲に負けた雪穂は、そうやって姉のことなど記憶の片隅に置いて思考放棄してしまうのだった。
「綺麗な満月……」
深夜の12時を過ぎた夜の世界で、静流はポツリと呟いた。
「やっぱり驚いちゃうよね」
ことりが横に並び立ち、同じように上空を見上げた。
「ああ、12時になる前、今夜の月は確かに
古来より月には人を狂わせる魔力が宿っているとされてきた。ヴァンパイア、ウェアウルフ、魔女、伝承に残る忌み嫌われし者達も月下にて本性を晒け出すという。実際それまでは正常だったはずの人間が突如満月の夜に豹変してしまったという記録も残されている。
眉唾なオカルト話ではあるが、目の前でギラギラと輝きを放つ満月を見ていればそうなっても仕方ないと思えてくる。
「気づいた時は面食らったよ。なんせこの時間ではどんな悪天候でも必ず綺麗に晴れて、そして、その日の月がどんな満ち欠けであっても常に満月になる」
「お母さんが言ってたけど、この現象も大きな謎の一つなんだって。機械が使えないんじゃ調べようがないから……」
そう言ってことりはポケットから普段から自分用のスマートフォンを取り出した。画面は真っ黒で何も映っていない。試しに画面やボタンに触れるものの、一切反応は無かった。
「まあ、悪いことばかりじゃないけどね。おかげで街の電気が全て消えてライトも使えないにも関わらず、視界が困らない程明るい。けど……」
「でも、やっぱり……すごく気持ち悪い」
何事もオブラートに包んで表現する傾向にあることりが、こうもはっきりと嫌悪感を露わにした。それ程までにあの満月には人の不安を掻き立てる何かがあるのは確かだった。とはいえ、その正体が何なのかは彼らが知る術は今の所存在しないわけだが。
「数々の怪現象の正体ね……私も気にはなるけど、考えても仕方ないわ。私達の足で辿り着くしかない」
静流とことりは声がした方へと振り向く。
「三人共、覚悟は良い?今日は軽く慣らしておくだけのつもりだけど、人智を超えた危険な存在と命の奪い合いをすることに変わりはないわ。後戻りするなら今の内よ」
絵里の忠告に対し、同級生を代表して海未が前に出る。海未は今まで二人からは離れて弓の弦の調整に没頭していた。
「はい、問題はありません」
「そう、ならいいわ」
お互いに感情を込めずに淡々と言葉を交わす二人のやりとりはあまりにも女子高生らしくない。
そんなやりとりもどこ吹く風といった様子で希は肩を伸ばして準備運動を始めていた。
「さーて、索敵索敵っと……?」
しかし、徐々にその表情が険しい物へと変化していく。
「ちょい待って!」
全員の視線が希に集まった。
「なんや……うちら以外の誰かがここに来とる……それもほんの少し前みたいやね」
皆が戸惑う中で、希はしばしの間こめかみに指を当てて考え込んでいた。
「えりち!鏡を用意してくれへん?」
「鏡?」
希の意図を理解していない二年生達は全員頭を傾げたが、絵里は無言で頷くとすぐさまバッグの中から一枚の手鏡を取り出し、希の足元に置いた。
「これやるの久しぶりなんやけど……」
しゃがみ込んだ希は鏡の表面にそっと手のひらをかざした。すると今までなんの変哲もない普通の鏡が、まるで液体のようにゆらゆらと揺れ始めた。同時に鏡の中に変異前に音ノ木坂学院の校舎が映し出される。
「わっ!鏡に映像が……」
「すごいな。副会長さんってこんなことも出来るのか……二人も知らなかったの?」
「はい、私もことりも初めて見ました。驚きです」
賞賛に近い反応にずいぶんと気を良くしたらしく、希は自慢気に胸を張った。
「ふっふーん!これでも自分の能力はかなり研究してきたつもりなんよ。まあ見てみ」
希は再び鏡へと手を伸ばした。またも鏡に雫が落ちたかのような波紋が広がり、映像が切り替わる。今度は校門よりも奥、玄関口が映し出された。いや、正確には玄関口を通り過ぎる謎の人影が映し出された。
「よく見えないけど、これって女の子かしら?もしかしてうちの生徒なの?」
顎を手に乗せながら、絵里が首を傾げる。夜の学校は月の光と小さな照明灯しか頼れる物が存在しない。そのせいか、体格と髪型から年若い少女だと辛うじて判明可能だが姿は朧げになってしまっている。少女は時折辺りを見渡して警戒しつつ、駆け足で校舎の中へと入っていく。
「……どうやらこの女の子が校門を乗り越えて校舎に忍び込んだみたいやね。もうちょいズームインしてみようか」
「……⁉︎」
視点が動いたことでより学校に近づき、鏡に映った少女の姿がより鮮明に浮かび上がる。そのハツラツとした顔立ちとサイドテールの髪型の組み合わせは2年生にとってよく知る容貌だった。
「穂乃果ちゃん⁉︎」
そして、パーカー姿の少女が、穂乃果が校舎内に入り込んで間も無く、深夜を過ぎた学院は異形の巨塔へと変貌を遂げた。
「嘘でしょう……そんな……」
海未とことりの顔がどんどん青ざめていく。今の映像を見た限り、穂乃果が学校から出た気配は無かった。それは即ち、穂乃果が未だこの塔の中に囚われている可能性を示している。
「もしかして君らの知り合いなん?」
「は、はい……我々の幼馴染で……」
「昨日の昼休みに私達といた女の子です」
「……あー、あの時の」
その場にいた希は思い出したようだ。もはや普段のふざけた調子は鳴りを潜めている。
「おそらく彼女は校舎に侵入して、そのままエリュシオンの変異に巻き込まれてしまったのね。何故深夜に学校へ忍び込んだかは知らないけど」
顔見知りではないとはいえ、生徒会長を務める絵里にとって音ノ木坂学院の生徒の安否は他人事ではない。一見冷淡なまでに状況確認を行っているように思えるが、整った顔は険しさに満ちている。
「そういえば穂乃果ちゃん、さっき電話してる時に教科書を教室に忘れてきたかもって……」
「ま、まさか、それを取りに学校へ……?」
正直言ってくだらない理由だった。命を危険に晒す理由としては、あまりにもくだらなすぎた。しかし、だからと言って何も知らずに迷い込んでしまった少女と、彼女の身を案ずる幼馴染達を誰も笑う気にはなれなかった。
「くっ……今後は夜間の学校には一切侵入できないよう、理事長に進言しておくべきね。変異に巻き込まれないために警備員や用務員は深夜前には帰してたのが仇になったわ」
眉根を寄せてますます険しい表情を作っている絵里は吐き捨てるように言いつつ、自身の右腕的存在へと振り返った。
「希、その子の居場所は⁉︎」
希は瞼を閉じて、静かに首を横に振った。
「そこまではちょっと無理やね。どうやら完全にうちの索敵範囲外みたいやから」
そう言って、手鏡にかざしていた手を引っ込める。様々な光景を映していた鏡面は元の何の変哲も無い姿へと戻っていた。
「おまけに今日はいつもに増して迷宮の構造が入り組んどるみたいやし、探索そのものも中止しといた方が良いと思うわ。敵さんも普段よりずいぶん活性化してるようやしね」
希の提言に、海未は著しく顔を強張らせる。
「そんな!だったら穂乃果は!」
「ちょっと顔が近い近い!少し落ち着いてくれへん?」
食らいつくかのように迫る海未を宥める希。
「そう無茶言わんどいてくれへんかな。そもそもウチの探知能力は強い生命反応を探り当てるものなんよ。ペルソナ使いの1割以下のプラーナ量しか持たない普通の人間だったら、今みたいなのが限界」
「星の運行を司る女神『ウラーニア』。その星占術は百発百中。だけど、肝心の星の燦々たる輝きが見えなければ、星が導く未来を知ることも出来ないわ。
ペルソナが使えない彼女は、私達に比べて星屑にも等しいか弱い生命力しか持っていない。離れれば離れる程、その輝きはか細く、酷く見えづらくなっていく」
「そういう事やね」
絵里の補足に希は苦笑いで返した。
一方、海未は予期せぬこの事態を前に、その華奢な身体をふらつかせる。
「わ、私のせいです……」
今にも倒れてしまいそうな程に震える足をなんとか支える。
「私が……穂乃果にあんなキツく当たったりしなければ……」
「海未ちゃん、それは違うよ!」
「そうだよ。君が悪いわけじゃない。ただ……色々と間が悪かったんだ」
しかし、周囲の慰めは彼女にとって何の意味も無かったようだ。握りしめた拳をわなわなと震わせていた海未は、意を決した様子で絵里へと振り向いた。
「私に行かせて下さい!私一人でも構いません!」
彼女にとっての救いは穂乃果を救い出すこと一点のみ。
「駄目よ」
そんな海未に対して、絵里は冷たく言い放った。海未の決心を握りつぶすかのように、感情を込めず。
「希が今言ったはずよ。今日の探索は中止にすべきね。ろくに戦闘経験も無いあなた達に無茶をさせるわけにはいかないの。わかってちょうだい。あなたまで行方不明になったら、今度は誰が彼女を助け出すっていうの?」
海未の顔がクシャクシャに歪んだ。
「私も生徒会長に賛成。勝ち目のある賭けならともかく、あの先輩が何処にいるか手掛かりすら一切無いのに手当たり次第探し回ったところで徒労に終わるだけだと思いますから」
壁に寄りかかったまま、今まで口を挟まずにいた真姫も絵里達に追従した。いや、真姫だけでは無かった。幼馴染と新しい級友も恐る恐る口を開く。
「僕も……先輩達の言う通りにした方が良いと思う」
「海未ちゃん……お願い……」
再び意気消沈して項垂れる海未の肩を希はポンと叩く。
「海未ちゃん、ごめんな。確かに可哀想やし、うちもえりちも本当は一刻も早く助けだしてあげたいって気持ちは一緒なんよ?でもな、それでうちらまで犠牲にでもなったら本末転倒やろ?今は堪えてくれへんかな」
絵里の言い分を海未が納得したのかはわからない。俯いたままの横顔から歯を食いしばっているのが見える。
「海未ちゃん……」
今にも泣き出しそうなことりの前で、海未はしばし俯いたまま静かに肩を震わせていた。やがて静かに顔を上げる。瞳は充血して兎のようの赤く染まり、目元からはボロボロと涙が溢れていた。
「穂乃果……ごめんなさい……ごめんなさい……私が弱いせいで……
次の日の朝、音ノ木坂学院で急遽全校集会が開かれた。その内容は学院の生徒達を、特に彼女をよく知る者達を唖然とさせた。
『二年の高坂 穂乃果が昨晩家を密かに出たっきり帰って来ていない』
『家族は既に警察へと連絡はしているが、目撃情報も未だ入ってきていない』
『彼女には非行の傾向は一切無かった以上、何かの事件に巻き込まれた可能性が高い』
教師達は頑として口にしないが、戸惑う生徒達は昨今の他校生達の身に起きた騒動と結びつけるのも時間の問題であった。とうとう母校の学友に犠牲者が現れたと混乱に陥りつつある音ノ木坂学院生達には、今後各自警戒を怠らないように呼びかけられる。
穂乃果を娘を通じて幼少期から知っている身であり、彼女の身に何が起きたかことの真相を知る理事長は始終悲痛な面持ちで壇上に立っていたのは言うまでもない。
「嘘でしょ穂乃果ぁ……」
「二人共落ち着きなって。まだ穂乃果の身に何かがあったって決まったわけじゃないでしょ」
「でも……でもぉ!」
「も、もしかしたら、あの穂乃果のことだからさ!ひょっとしたらこの後ひょっこり帰ってくるかもしれないじゃん!ねえ、そうなんでしょ?そうなんで……うわあああん!!!」
「穂乃果ちゃん戻ってきてよお……」
最悪の未来を想像して泣きじゃくるミカ達の隣でも、海未とことりは険しい表情のままだった。
3日で仕上がる予定がまさかの3週間……だらしねえなと言わざるをえない。ペルソナ5発売前には序章を終わらせたいですね(震え声)