ペルソナ×ラブライブ!   作:藤川莉桜

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第6話

「もうすぐか……」

 

 自室のベッドで横になっていた静流は手元の腕時計を確認した。後、数分で針は深夜12時を指し示し、新しい1日が始まるを告げる。少なくとも、()()()()()()そういう認識になっている。

 

『私は理事長と今夜の件で話があるから先に向かうわ』

 

 1時間前に家を出た絵里の言葉がフラッシュバックする。流石に深夜前に女子高生がたった一人制服姿で外に出るのはマズイのではないのかと思ったのだが、その辺の根回しは既に済ましているらしい。絵里がそう言うのなら間違いないのだろう。なら、自分は余計な心配はせずに待てば良い。

 

 しかしながら、どうにも落ち着かない。いても立っていられなくなった静流はベッドから身を起こしてキッチンへと向かった。冷蔵庫に冷やしていたペットボトルのコーヒーを飲むことで、少しだけ気が晴れる。

 そんな中で廊下と繋がるドアがゆっくりと開かれた。静流は一瞬焦るものの、もう一人の同居人の姿を見て胸をそっと撫で下ろした。

 

「あ、静流さんも起きてたんですね」

 

 パジャマ姿の亜里沙はおぼつかない足取りで炊事場の前に立つ。

 

「亜里沙ちゃん、もしかして眠れないの?」

 

「はい、なんだか寝つけなくて……」

 

 亜里沙は蛇口を捻り、コップの中身を飲み水で満たしていく。

 

「でも、明日も学校ですから。早く気持ちを落ち着かせて休まなきゃ」

 

 そう言って水を一気に飲み干す亜里沙。空になったコップを炊事場に置いて、フウと深く息を吐いた。

 

「僕も同じだよ。いきなり女子校に入れられて今日は緊張しっぱなしだったからね」

 

「え?静流さんもなんですか?」

 

「当たり前だよ。僕だって人並みの感情を持ってるわけだから」

 

 亜里沙は驚いた様子でパチパチと瞬きを幾度も繰り返した。幼い顔立ちに、その幼い仕草がよく似合っている。

 

「まあ、おまけに今日は色々あったし。でも、人間誰しも同じなんじゃないかな」

 

「そうですよね。亜里沙なんてまだ全然日本に慣れてないから、今でもお姉ちゃんにも迷惑を掛けっぱなしで……学校でも他の子達について行けるのか心配で……」

 

 絢瀬姉妹はロシア人の血が混じったクオーターだ。今は日本に移り住んではいるが、生まれ故郷のロシアから異郷の地で思春期を過ごすのは抵抗があったに違いない。特に移住して間も無い亜里沙の場合は余計にそれが顕著だろう。

 

「もしかしたら亜里沙は日本に来ない方が良かったのかもって、そう思う時も何度かあって……」

 

 少女は俯向く。混血の亜里沙は日本人離れした容姿を備えている。日本人の中学生に混じっていたら疎外感を抱くのも無理はない。例え、周囲の子ども達に仲間はずれにしている意図が無くとも、異分子を一切特別扱いしないというのは並大抵の人間に不可能だからだ。多感な年頃の亜里沙は、そんな彼らからの微妙な一線を感じ取ってしまっているのだろう。

 学校の中では異分子となっている点は静流と同じと言えた。

 

「あ、でも、ここに来てから楽しい事もいっぱいありました!クラスで新しい友達が出来たんです!おっちょこちょいな亜里沙の面倒を見てくれるすごく優しい子なんですけど……って、あわわ!ご、ごめんなさい!亜里沙、自分のことばかり喋ってました!」

 

「……お姉さんにそういう話はしないの?」

 

「え?」

 

 面倒見の良さそうな絵里が、血の繋がった実の妹である亜里沙が秘めるこの悩みを無視するはずがない。それに新しい友達の話をすれば、きっと喜ぶだろう。

 

「……あまりお姉ちゃんには心配は掛けたくないんです。最近忙しいみたいだし、今日だってこんな遅くになっても用事で帰って来ないんですから。お姉ちゃんのことだから、きっとまた無理してるんだと思います」

 

「なるほど。絵里さんのこと、よくわかってるんだね」

 

 静流はそれ以上深くは詮索しなかった。亜里沙は同世代の中学生達と比較しても抜けている部分はあるが、決して愚鈍な少女ではない。絵里に打ち明ける時は自分の意思で決めることが出来るはずだ。

 

「当たり前ですよ。だって、姉妹なんですから」

 

 ほんの少しだが、この内気な少女が抱えこんでいた知られざる一面が見えた。人なら誰もが他者には打ち明けられない本音を隠しているものだ。それは、もしかすると他者から見れば些細な苦悩にしか映らないかもしれない。だが、当人にとっては人生を左右する問題かもしれない。

 

「亜里沙のお話を聞いてくれてありがとうございます。おやすみなさい、静流さん」

 

 やがて時計の針が12時の到来を指し示す。

 

 そして……

 

 時は止まる。

 

「おやすみ亜里沙ちゃん。良い夢を」

 

 リビングの電灯が消えてしまった中で、静流は目の前の()()に向かって優しく微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 制服に着替えた静流は深夜の秋葉原を歩き進める。

 ここでは時が、世界の全てが停止していた。

 本来ならば眠らない街と呼ばれる東京を眩いほどのネオンサインが照らし、帰宅を目指す自動車のエンジン音やクラクションが鳴り響いているはずだ。そして、歩道を見れば、日を跨いで帰宅中のサラリーマンや買い物客、あるいは夜の裏通りを根城にする無法者達が必ず目につく。それが東京という世界有数の大都市の日常なのである。

 だが、今の静流の視界を埋め尽くしているのは、ネオンサインや街灯が消えても月の光に照らされたおかげで姿形だけは確認可能な物言わぬただの無機物。そして、無数の棺桶達。ただそれだけだった。

 

 静流は秋葉原を通り過ぎて下町通りに入り込む。やはり、街灯の光どころか、人の気配が存在しない。いや、それどころか虫の鳴き声すら耳に入ってこない。生命の灯火が一切消え去った、まるで異空間に迷い込んだかのような静けさで世界に満ちていた。

 

 やがてゴーストタウンのように静まりかえっていた下町を過ぎていくと、目的地である音ノ木坂学院の所在地へと辿り着く。しかし、そこに昼間はあれほど存在感を示していた風格のある校舎の姿は無かった。代わりに静流を迎えたのは、雲を突き抜けて天まで登る巨大な塔だ。

 白く輝くそれは闇に世界に不釣り合いな程に美しい。旧約聖書に登場する虚飾の塔バベルはまさにこのような姿ではなかったのだろうか。

 校舎そのものは消えても、未だに残っている校門に向かって、静流は一歩足を進めた。

 

「誰⁉︎」

 

 突然呼び止められ、静流は足を止める。女の声だ。それもかなり年若いように思える。下手をすれば静流と同世代の少女かもしれない。

 

「あなた、『この時間』に象徴化もせず、平然と動けるだなんて何者?人間なの?」

 

 闇に隠れていた声の主が月の光に照らされてその全貌を見せる。予想した通り、やはり少女と言うべき外見の持ち主だ。なおかつ、その身に纏うは静流と同じ音ノ木坂学院の指定制服であった。

 癖の強さを感じさせる赤毛をセミロングで整え、身長は日本人女性としては充分すぎるほど。制服の上からでもわかる細身の肢体は、バランスが取れすぎているあまりに精巧なマネキンと称しても違和感が無いかもしれない。

 贔屓目に見ても美人と呼べるであろう少女は、月の光の中で静流の姿を捉えると目を丸くしてパチパチと瞬きを繰り返した。

 

「お、音ノ木坂学院の制服?まさか昼間の全校集会で見かけた例の共学化試験生?いや、今はそれどころじゃないわ。問題なのは、なぜあなたが今、ここにいるのかよ!」

 

 つり目がちな紫色の瞳がギリリとますます鋭くなっていく。隠しきれない程の敵意が込められているのが見てとれた。

 

「答えなさい!」

 

 少女は太腿のホルダーに収まっている黒い拳銃に手を掛け、そしてーーー

 

「やめなさい西木野さん」

 

 反対側の物陰から別の少女が姿を現す。淡い月光だけが頼りのこの世界でもはっきりと存在感を示しているポニーテールで纏めた金髪にキラキラと輝く蒼い瞳。静流も既知の人物だ。

 

「警戒する必要は無いわ。彼は私達の新しい仲間よ」

 

 絵里は興奮気味の赤毛の少女を宥めるように言った。

 

「新しい仲間?」

 

 味方であると教えられたにもかかわらず、それでも赤毛の少女は形の整った眉毛を不可解と言わんばかりに歪めた。

 

「そんな……だってこの人は男……!」

 

「そうよ。つまり世界最初の男性のペルソナ使いってことね」

 

 静流と赤毛の少女の視線が一瞬交差する。本当に一瞬だった。少女はすぐに目を逸らす。そして、拳銃のトリガーから手を引っ込め、不機嫌そうに腕を組んだ。それを皮切りに静流は口を開く。

 

「2年の天宮 静流です。よろしく」

 

 相変わらず目を合わせないままではあるものの、赤毛の少女も渋々といった様子で口を開いた。

 

「……1年の西木野 真姫……です。よろしくお願いします」

 

 そこで静流はようやく少女のリボンの色が自分やクラスメート達のそれとは違うことに気づく。

 

「1年生か……」

 

「西木野さんは中3の受験間近の時期に能力に目覚めててね。それから進路を急遽音ノ木坂学院に変えてもらったの。1年生とはいえ、実戦に関してはあなたより1日の長があるわよ」

 

「実戦経験ありと言っても、あの塔から出てきたはぐれシャドウを狩ってただけです。会長に比べたら大したことありませんから」

 

 謙遜してる、という風には見えない。事実を正直に言ったまでなのだろう。外見同様に言動もまた、高校1年生らしかぬ大人びた少女だ。

 

「ええっと……真姫ちゃん?西木野さん?」

 

 静流としてはなるべくフレンドリーに接しようと試みているわけだが、眉間に寄ったシワを見る限り逆効果だったようだ。

 

「……初対面で馴れ馴れしくされるのは正直苦手です。それとだけど、さっきだってこっちは本気で緊張してたんですよ。悪い冗談はもうやめてもらえますか」

 

 眉間にしわを寄せたまま不機嫌そうに言った。

 

「はは……ごめんね西木野さん。僕としても脅すつもりは無かったんだけどね」

 

 ようやく警戒は解けたようだが、静流に対する不信感は消えていないようだ。あまり理想的なファーストコンタクトとは言い難かったのは確かだが、あからさまなまでのつっけんどんな態度に思わず乾いた笑いが漏れてしまう。

 赤毛の少女、真姫は壁に寄り掛かると、癖っ気の強いもみあげを回すように弄り始めた。

 

「2年に共学化モデルケースの転校生が来たって聞いてたけど、まさか自分と同じペルソナ使いだとは思いませんでした。いや、そもそも共学化モデルケースってのがただの建前で、本当は世にも珍しい男性ペルソナ使いだから呼び寄せたってとこかしら」

 

 腕を組んだまま自分の癖毛をクルクルと指で回す真姫。まるで映画やドラマのキャラのような少々芝居掛かった仕草だが、不思議とこの少女の場合は様になっている。

 

「察しが良いわね西木野さん。流石は今年度新入生の首席なだけはあるわ」

 

 新たな人物が姿を現したことで、三人全員の意識がそちらに向かう。灰色のスーツを着た女性が姿を見せる。

 音ノ木坂学院の生徒なら誰もが知る、南理事長その人だ。

 

「理事長、ただ今希に可能な限りの範囲を索敵させています」

 

「そう、ご苦労様です。私もあの二人を連れてきたわ」

 

 そう言って首だけ後ろに向けた理事長の背後で、二人分の影が月の光に照らされ全貌を現した。

 

「初めまして、2年の南 こと……」

 

「2年の園田 海未と申します。どうぞよろしくおね……」

 

 昼間に新たな旧友となった少年の姿を目にしたことりと海未の二人は口を押さえながら絶句した。

 

「やあ」

 

 静流は努めて平静をアピールしたつもりだった。だが、混乱してしまっているのか、海未とことりの唖然とした表情は一向に解かれない。

 

「天宮君⁉︎」

 

「なぜあなたが⁉︎」

 

「何故って、まあこういうこと」

 

 そう言いながら静流は制服の上着をハラリとめくる。腰のベルトに固定されたホルダーに収められている、召喚器と呼んでいた大型拳銃を見せつける。事情を知る者なら、これだけで全てが理解可能なはずだ。

 

「あなたはあんまり驚かないのね」

 

 理事長室で言っていたサプライズとはこのことだったのだろう。意外と反応が薄かったのが不満なのか、若干面白くなさそうな顔をしている。

 

「まさか。これでも内心動揺してますよ。動機が激しすぎて息が詰まりそうです」

 

「ふーん、そうは見えないけど」

 

 少々大袈裟な表現で返したわけだが、どうも信じてはもらえていないようだ。昼間のやりとりからも察するに、この理事長は他人の反応を見て楽しんでいる節がある。真面目そうに見えて意外とお茶目な一面があるのかもしれない。

 

「お母さん……もしかして」

 

 そんな理事長の娘であることりは静流よりよっぽど度肝を抜かれていたらしく、恐る恐るといった様子で尋ねてきた。こちらこそ期待通りの反応だったからか、理事長の口元がつり上がっているように見える。

 

「そうよ。彼が新しく入った仲間よ」

 

「まさか……ですが……」

 

 ことりと同じく、未だ驚きを隠せない海未はこめかみに手を当てて深く考え込むポーズをとっていた。竹を割ったかのような言動の彼女も今はどうにも歯切れが悪い。

 

「この時期に仲間が増えるというなら、てっきり西木野さんと同じ新入生の誰かだとばかり思っていました。なぜなら……」

 

「ペルソナは本来、具象化に必要な因子であるアニムスを持つ女性にしか使えない。私もそう決めつけていたわ。彼が現れるまではね」

 

 海未以外の全ての少女達も真剣な面持ちで耳を傾けている。

 

「ではいったいどうして?」

 

「さあ?」

 

 理事長は笑顔を崩さないまま首を傾げた。

 

「さあって……わからないのですか?」

 

「それは僕こそ聞きたいくらいだよ」

 

 代わりに答えたのは静流だった。

 

「理由はわからないけど、とにかく彼はあなた達と同じ力が使える。今はそれだけで充分よ。少しでも戦力が欲しい今は……ね」

 

 そう言うと理事長は燦々と輝く満月へと目を向ける。この話はもう終わりだ、ということなのだろう。

しかしながら、海未としては納得出来たわけではなかった。ポーカーフェイスを苦手とする彼女は不服であるという感情を表に出したまま、もう一度問い詰めようと口を開く。

 

「なんや、騒がしいようやね」

 

 だが、それは新たな登場人物によって妨げられた。

 今度は校舎側ーーー今は校舎など影形も残っていない白銀の巨塔に変異しているのだがーーーから一人の少女が姿を現したからだ。関西弁が特徴的なその少女はふうっと深い息を吐くと背中に流しているおさげを掻き上げる。

 

「おー、集まっとる集まっとる。ずいぶんな大所帯になったなー。うちとエリチの二人きりだった春前に比べたら大躍進や」

 

「希?調査はどうしたの?さっき始めたばかりでしょ?」

 

「調査も何も、いつもと全く変わらないよ。ウチの『ウラーニア』の索敵範囲の限界まで探ってみたけど、特に異常は無いみたいやなあ。これ以上は時間とウチのプラーナの無駄使いと思うんよ」

 

「そう、ありがとう希」

 

 希と呼ばれた少女は肩を竦めて疲労をアピールする。

 

「あー、肩こったなー。誰か肩揉んでくれへんやろうか?出来たら特上60分コースでやってくれたら嬉しいんやけどな〜」

 

 場にいる全員にチラチラと視線を送りながら、わざとらしく肩をコキコキと鳴らす。

 

「そういう軽口を叩く余力はあるのね。まだ元気ならもう一働きしてもらおうかしら?」

 

「冗談や、じょーだん♪」

 

 呆れたように見おろす絵里に対して、希は白い歯を見せながらシッシと笑った。それからしばし肩をグルグルと回すと、今度はその穏やかさに満ちた瞳を新参者へと向ける。

 

「君が新しく入ってきた子やね。昼間にも会ったの覚えとるかな?」

 

「はい、僕は天宮 静流です。よろしく」

 

「ふーん」

 

 希は品定めするように静流の全身をジロジロと眺めている。今日一日だけでも学校中の女生徒から観察されていただけにもう慣れたと思っていた静流だが、ここまで真正面から見られていると流石に恥ずかしくなってくる。

 

「……どうしました?」

 

「エリちが言ってた通り……やっぱりなんだか頼りなさそうな子やねえ」

 

「ちょ、ちょっと希!もう……」

 

 あの絵里が、冷静沈着で厳しい生徒会長と影で恐れられている絵里が顔を赤らめ、軽く取り乱している。あまりにも珍しい光景に、ニヤニヤと薄ら笑いを浮かべている希を除いた全員が目を丸くした。

 

「んんっ……関係無い話は置いといて……」

 

 場の雰囲気がおかしくなったのを察した絵里は、仕切り直しのつもりなのか、コホンと咳をする仕草で空気を誤魔化す。

 

「天宮君、最後のメンバーを紹介するわ。私と同じ3年の東條 希よ。この子はちょっと変わった能力を持っててね。今は戦闘には参加させずに索敵と支援を頼んでるわ」

 

「これでも一応生徒会副会長としてもエリちのサポート役をやらせてもらってるんよ。よろしゅうね〜」

 

「……東條先輩、関西出身の人じゃないですね」

 

「あ、わかった?」

 

 ほんの僅か、ほんの一瞬だが、希の余裕に満ちていた笑顔が僅かに崩れたように見えた。口元は軽く吊り上がったままだが、瞳が曇ったのだ。

 

「僕は小さい頃から日本各地を転々してたので。イントネーションが違えばわかります」

 

「へー……なるほどね」

 

 手に顎を載せて考え込む希。既にさっきまでと同じ余裕のある笑みに戻っている。

 

「これで全員揃ったわね」

 

 コツコツとハイヒールで足音を鳴らしながら、理事長は6人の少年少女達の中央に移動する。街の喧騒も、虫の鳴き声も、風の音すら聞こえないだけに足音は著しく響き渡っていた。

 

「我が校に所属するペルソナ使いは天宮君を含めて6人。ほんの数ヶ月前までは絢瀬さんと東條さんの2人しかいなかったことを考えれば充分すぎる数に増えたわ。よって明日より、この天へと続く塔『エリュシオン』の攻略を開始します!」

 

 理事長はウインクしながら新入りの少年に微笑んだ。

 

「頼りにしてるわよ、天宮君」

 

 静流は何も答えず、雲を突き抜ける程に空高くそびえる白銀の塔へと目を向けた。楽園と名付けられた謎の巨大建造物。待ち受けるのはその名の通り楽園か、冥界からの使徒か。少年少女達の行く末は、誰も知る由も無かった。

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