Fate/melt a close   作:アクタ

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3DAYS「魔女と愚者」

 ポール・グゲイジャンの十八年の人生はひどく退屈であった。

 グゲイジャン家の五代目として生を受けた。

 魔術属性は五大元素(アベレージ・ワン)という希少な才能を持った為に、両親達はそれに見合った素晴らしい魔術師として育てようと奔走した。

 だがポールには五大元素(アベレージ・ワン)の他にポールすらも知らぬもうひとつの要素を持って生まれた。

 それは起源「独創」であり、この起源の為両親の意志を反して斜めの方向へと成長していく。

 厳格な魔術家系であったグゲイジャン家の子にも学校へ通う日が来た。

 家庭教師の方がいいのではという意見もあったが、父の計らいであえて学校へ行かせたのだ。

 世の見聞を息子に広めさせる為に。

 最初は様々な事を知り、時に魔術師らしかぬ発言もしたがまだ幼かったので抑止ができた。

 そして十四歳――――ポールをサブカルチャーの道を引きずり込ませるできごとが起きる。

 それが大友克洋の『AKIRA』である。

 退廃的でありながら独特の世界観にすっかり惚れ込んでしまい、長編短編作品も制覇しとうとうハリウッド映画に派生しやがて日本のアニメやアメリカンコミックなど、親に内緒で二年間すっかり染め上がっていた。

 何故、親に内緒にしていたのか。

 魔術には全く関係なく、おまけに電子機器を使って鑑賞するものなのできっと壊されるとポール自身そう思っていた。

 だが十七の冬でとうとう親に発見され、全て捨てられたのだ。

 由緒正しき魔術師はこんなものは必要ない、あの時家庭教師に勉学を習わせるべきだったと言う父親は感情が籠っていなかった。

 そこでポールは察した、自分は人間ではなく単なる道具として見ているのだと。

 五大元素使いとう希少な才能を持って生まれてしまった為に、親は子の人間性ではなく機能性を愛している事を――――

 ポールは二つの事実にひどく悲しみ、仕返しとして親の口座でカードを作って金銭面を確保した後家から逃げるように時計塔へ単身向かった。

 けれどもポールはその独創的な考え方は古くからの魔術師達に敬遠され、周囲の冷ややかな視線を浴びつつも数々の科に所属したが馴染めず気がつけば追放されては出禁処分を受け、最後の逃げ場として現代魔術科に所属しなんとか留まっている状態だった。

 今では友人も増え、現代魔術科の講師とオンラインゲームをプレイするほど馴染んでいた。

 彼はバーサーカーを触媒で召喚した理由は「強そうだから」であり、出会い頭に父親を暗殺したのか? マクシマスはどうだったのか? と質問攻めしたのが聖杯戦争のはじまりであった。

 

 

 ペトラは駐車場へと入る。

 魔術師が仕掛けた罠がある場所に入る事は死を意味するので普段のペトラなら入りたがらないが、入らないとランサーよりも太く筋骨隆々のバーサーカーが自身を半殺しに襲いかかるのだから。

 ランサーはクーフーリンよりは劣るものの英霊として見ればその格は同格、クーフーリンよりその息子より弱いと見下し襲いかかった人間は首を狩られる。

 あんな長い間責務を放棄し剣闘士として生きたがっていた愚帝に常に強さの証である首を狩り続け、時に参謀として戦場を馳せていたランサーが負ける筈はないと、ペトラはそうゆっくりと歩いて思っていた。

(だから皇帝特権がマイナスついていたのね、コンモドゥス帝――――あの皇帝、ネロ帝と違って政治介入なんてほんの少ししかしていないんだもの)

 本当に哲人皇帝からあんな息子が生まれてしまったのだろうかと、部下に息子と助け合ってローマを盛り立ててくれという誓約(ゆいごん)を遺したのを見るときちんと息子を愛していたので、少なくとも親が原因ではなさそうだ。

 ならばバーサーカーをあんな風にしたのは、長女の姉ルキアなのだろうか。あれを機にバーサーカーの性格は猜疑に蝕まれ、ローマ帝国史上名高い暴君と化してしまったのだろうか。

 そんな推測をしながらも地下一階、ペトラは固唾を飲みその入口に足を運ぶ。

 アルヴィンの手によるものなのか、車は一台もなかった。薄暗く無機質なコンクリートの空間はペトラを待っていた。

「……」

 微弱ながら魔力を感じる、周囲に罠らしき物体はない、一体何を仕掛けているのかと警戒しながら奥へ進んでいく。

 進みながらペトラは黒いストールを強く掴もうとするが、天井のスピーカーから陽気で無邪気な声が鳴り響く。

「アルヴィンの人形ってアンドリューみたいなのいたらいいよね。とボクはあの家に訪れた時そう思いましたー」

 その声を皮切りに懐中電灯に灯りが点った。

 ポールはこの駐車場の管理者ではないのに、スピーカーのスイッチが入り電気が点いているのだ。

「……本当に何言っているのか分からないわこの子」

 映画は詳しくないペトラにとって、不可解な単語を並べるポールが別の種族の人間と話しているように感じている為頭痛が来たような表情でげんなりとペトラは態度を取った。

 ペトラは気づいていないがその様子を捉えた防犯カメラのレンズは見逃さないと代弁するかのように光る。

「絶対ボクの悪口言ったよね! いいじゃんか! ボクが好きなのを例えたっていいじゃないか!」

 音割れするスピーカーにペトラは心底どうでもよかった。

 興味のない物を熱烈に話されてもペトラからすればそんな話題なんてどうでもよかったのだから。

「というワケで地下一階へようこそ! 本当は五階ぐらいまでやりたかったんだけど、アルヴィンに怒られちゃったんで一階限定になりました! なので落ち込まないでね」

 誰が落ち込むかとペトラの伏せ目がちな双眸はますます冷え込んでいく。

「ボクの(トラップ)用意した(トラップ)は二種類、設置型と可動型!! おっとこれ以上は言わないぜ!! イェーア!!」

 ラジオのMC(司会者)気取りの口調がまたペトラの心を苛立たせる。

 この調子を抱える少年が大人になったら一体どんな人間に育つのだろうかと、ペトラはポールの親や家族ではなくて本当によかったと思っていた。

「それじゃあ、ボクは地下一階にいるからよろしく!!」

 そこでスピーカーの音が切れ、ペトラはため息ばかりがこぼれる。

 命狙われていなかったら付き合ってられるかと、投げ出したくなる。

 黒いストールを再び掴むと、後ろから金属がぶつかり合う音が耳をつんざいた。

 ランサーとバーサーカーが戦っているのか、ならば早くこのふざけた遊びを攻略しなくてはならない。

「―――――」

 ペトラはその音を聞いて、ランサーが時間を稼ぎ仕留めるまでに急いで進まなくてはと思っていると前から獣型使い魔の唸り声が聞こえた。

「早速お出ましね」

 獲物がやって来たと豊潤な唇を歪ませると、自身を纏っていた黒いストールを広げれば黒靄が漂い獣の様な赤い眼光が埋め尽くされていると獣に見せつけると、果敢に向かった時ペトラは命じた。

「さあ―――――行きなさい」

 メエと吠えた黒靄は赤い血管のような物を浮かべ上がらせた山羊の形に変貌すると獣に突進し、黒い靄となり獣を包むと対魔力がない獣はか細い声で悶えペスト患者のように、黒い斑点をいくつも作りやがて真っ黒に蝕まれ黒山羊がペトラの元へ戻ってきた頃には動かなくなっていた。

 贖罪の山羊(ゴーストスケープ)は旧教にある人々の罪を山羊に背負わせる儀式であり、時代が下るつれ身代わりという意味を持つようになった黒魔術の一種でもある。

 ネヴァン家は女系黒魔術師家系であり、数々の黒魔術の中で贖罪の山羊に特出した家系であった。

 だがネヴァン家にとって第二の難関がペトラの代で訪れていた。

 それは――――ペトラの代で廃れ初めている事が判明したのだ。

 女性の方が呪殺に向いているという理由で、ネヴァン家は男性が生まれたら分家に赤ん坊のうちに養子に入れる風習のせいで親より優秀な跡取りはネヴァン家にはいなかった。

 だからペトラはランサーが駆けた戦車の車輪の破片を媒体を持ち、もう一度ネヴァン家に威光を取り戻すために聖杯戦争に挑んだのだから―――――

 今獣に行使したのは、背負わされた呪詛をその獣に蝕ませる術であり魔術耐性がない一般人ならば、黒死病(ペスト)のような遺体となり衰弱死するという効力を発揮する。

 脅威なのはあくまで一般人。魔術師となれば体は黒くならないものの腕前が生半可者な程精神汚染され、運悪ければ精神病院送りレベルの精神を病ませる事が可能である。これはサーヴァントも同じで、精神系の魔術をシャットダウンするスキルさえなければ対魔力のランクが低い程、気高い精神も一気に陥落させることが可能である。

因みにランサーはこちらに召喚に応じる際、誓ったある誓約によって女神の呪いをも打ち勝つある保有スキルを手に入れた事により、現代魔術師達が行使する呪術は一切効かないので味方にして正解だったとペトラは安堵していた。

 生前背負わせた呪詛(どく)を使い魔を蝕ませ、呪殺した事に満足したのか飼い主に甘えるように寄り添ったので、ペトラは毛の感触はないその頭を撫でた。

「いい子ね。よくできました」

 そして黒い炭と化した遺体を見下ろして通りすぎると、ストールからもう一頭出現させ自分より前へ行かせていた。

 周囲を警戒しながら、時には使い魔を呪殺し大分奥へ奥へと進むと突如前へ行かせていた黒山羊の脚元から文字のような物が浮かび上がったと思えば、熱量をペトラは肌で感じ思わず後ろに飛び下がると、蒼い火の玉が大きく膨張し爆発した。

「な――――」

 電気が突如消された為、よりはっきりと浮かぶ焼き殺される黒山羊の悲鳴を聞きながらペトラの赤褐色の双眸は何が起こったのか分からなかった。

 だが今の爆発を見てペトラは下を見下ろすと、簡易な円形が大小重なりその円形の中には英字が記された物が幾数もびっしりと書かれていたのを見ると、靴音を立てながらポール・グゲイジャンが現れた。

 首には、かつては文字を打つ道具として活躍したのを物語る金色のタイプライターにUSB端子のコードと、どこの家電メーカーが取り扱っていないような見たことがない端子のコードがついた古今が同居したような妙なデザインをしたものを垂れ下げていた。

「仕込み武器はロマンだよね! バサッバサッとストールあげて山羊を出現って痺れるね!!」

 青い目を輝かせながら興奮するポールと対照的に、赤褐色の目は冷たく孕ませていた。

「……そっちこそ、何よ今の爆発、あんな術見たことないわ」

 足下の図柄を文献で探しても見当たらないだろう図柄を描いて、術を行使するポールをペトラは言い放つ。

「こんな出鱈目な芸当できる癖になんでそんな人間になったのか……私には理解できないわ」

 そんな才能と見合わない性格がもったいない、ペトラの代で廃れてきた魔術師からすれば大金を溝に捨てているような態度に、苛立ちを募らせていた。

「んー、トーコ・アオザキのルーンについての論文全部読み漁った結果って言って欲しいな。

 この下の術式は英字ルーンと言ってね、ほらルーンはパソコンで言うならばアプリケーションを構成するコードみたいなものじゃない、だからアンティーク屋さんで売られていたタイプライターを魔術礼装として、コードという名の概念を打てるように改良したんだ。

 あるコードによって術者の魔術属性によって扱えるコードは限られるけど、文字配列さえ覚えれば簡単お手軽魔術地雷も作れるし、USB端子をパソコンに差し込めば空間支配のコードを打ち込めば魔術的にパソコンをハッキングできちゃったんだよねこれ!」

 ペトラは何を言っているのかさっぱり分からないので絶句した。

「これ知ったエルメロイ先生はなんだか知らないけどセルフ・ギアス・スクロール書かされちゃってさー確か協会側の人間の前で術を披露するなって内容のをサインしろってすごい顔で睨んできたから仕方なく書いちゃったよ」

 ペトラはとりあえずこれだけは分かった。

 この少年は下手すれば封印指定されるような魔術を扱っているという事だけは理解した。

「それはご丁寧にありがとう、それにしてもあなたはずるいわね……前に進めないって分かっていて顔出したんでしょう?」

 穢れない表情を浮かべるポールに毒を吐くとさらに馬鹿なのか賢いのかと付け足そうとするが、ポールは先に話していた。

「そうやって学科のみんなは仲間外れにするんだよね。

 お前は魔術師として大切なものが抜けているだとか、魔術師の癖に科学に傾倒してだとかさ……ボクにはさっぱり分からないよ、ボクはやりたい事を好きなだけやっているのに変だとかキミみたいな冷たい目でボクを笑うんだよ」

 まるで捨てられた子犬のような表情で語り、さらに話は続く。

「バーサーカーは触媒だけどさ、こんな経験しているからこそなんとなく分かるんだよね。

 バーサーカーがどうしてああなっちゃったか、好きなような事をしたけどお父さんが死んでから、誰も真剣に見てくれないバーサーカーの気持ちがね」

 寂しそうに語るポールを見たペトラの表情は無関心に染まっていた。

 皇帝の責務放任してまで遊び呆けていたら、国の存亡に危機を感じて暗殺を企むのは必然ではないかと冷静に思っていた。

「――――」

 そしてペトラは後ろに下がったのでポールは言う。

「あれ? 確保(タッチ)しないの? 残念だなー」

 ペトラは返す。

「残念はあなたの方よポール。あの子のお陰で、あなたを確保(タッチ)できるようになったから!」

 その言葉を皮切りにペトラは走り出すと、踝まであるドレスを着ているとは思えないほど器用に走りやがて魔術地雷の列を飛び越えてポールが立っている地点目掛けて着地しようとしたので、ポールは焦燥の色を見せた。

 ようするに踏まなければいいのだ、そしてポールが立っているという事は地雷は仕込んでいないと考えたのだ。

「おっぱいお姉さんって案外アクティブだった!」

 叫ぶ蒼白に染まるポールとペトラは向き合うと、妖艶に笑った。

「フフ、私は花カマキリと呼ばれた女よ。私に誘われた獲物は補食されるのがさだめわ」

 そしてストールを広げれば、黒靄が立ち込め禍々しい山羊の鳴き声と赤い山羊の目玉で埋め尽くされた図柄をポールに見せると、陽気を気取っていたポールの体は後退りしていた。

「……お姉さんボクを殺す気なのかい? 約束が違うじゃないか!」

 ポールが提示した勝利条件はポールをタッチする事であり、殺せとかは言っていない筈なのに眼前の風景は殺意に満ちたものであった。

「何を今さら、あなたが誘ったからいけないのよ。ネヴァン家の崩壊が始まった今、私が勝たないと魔術回路の灯火が消えてしまうから」

 そう聖母のように慈悲深い笑みを浮かべると同時に十頭もの黒山羊が一斉にポールに、呪い殺さんと襲いかかった。

 ポールはにこりと笑って、タイプライターを打ち込むと、半透明な盾のようなものを出現させまずは一頭目の突進を防ぐと反復横飛びの横領で、黒に染めゆく砕け散った盾の破片を見送りながら、二頭目は距離があったのでまたタイプライターを打ち込めば先程の地雷の模様を出現させて消滅。三頭目は四頭目が打ち込む隙を与えず挟み撃ちにしようと襲いかかろうとしたので、絶体絶命のピンチに追い込まれたポールを見たペトラは不適に笑う。

 確かにあのタイプライターは厄介だが、打ち込まなければ魔術行使する仕組みならばその隙を与えなければいい話だ。

 術式を聞けば大抵の魔術師は複雑怪奇に見えるが、実際目にすれば発動する仕組みは極めて単純明快な仕組みだという事がペトラには感じた。

 やはり経験の違いだろうかそれとも担い手の能力の差であろうか、今ここで一番魔術を理解しうまく使いこなせているのが明白になっているのが分かる場面であった。

主君(マスター)!!」

 仕留めようとした瞬間、背後からランサーの声が聞こえたが止めさせない。

 ランサーは多分、約束ごとを破ってまで勝つ事を嫌う性分でもあろう、令呪を使って金縛りを食らわせるのもいいがこんな馬鹿げた遊戯に三画しかない貴重な令呪を賭けていいかと問われれば、賭けるに値しないとはっきりと答えられる。

 なのでポールはここで重い病を患いゆっくりと死ぬ運命だとペトラは思っていたが、ポールは右腕を天空に掲げ二画目の令呪を命じた。

来て! バーサーカー(、、、、、、、、、、)

「令呪……! ちょっとランサーあなたなんで仕留めなかったのよ!! 前だってライダー達も逃すしああ……もうこの役立たず!」

 令呪があるという事は即ちバーサーカーが生きている証なので、ランサーに振り向いたペトラは怒声を浴びさせた。

「うるせえな! バーサーカーが急に士気削ぐことしたり武器捨てたのがいけねえんだよ!!

 言った筈だぞ俺は"ただ勝った"ではなく"どう勝った"かを重視する戦士(おとこ)だって事をな!」

 ランサーは魂喰いはいやだとはっきり言った日の事を言い出すとペトラは容赦なく切り捨てる。

「そんな思想捨てなさい! 本当に伝承通り口だけは達者ねこの合金男!!」

 空間転移で現れ光に包まれたバーサーカーが現れると、もう二頭の山羊がポールに襲いかかろうとしていたので、ポールのワイシャツの襟を掴んで持ち上げて、上空に飛び上がると黒い弾幕から逃れた。

 ペトラはランサーと口喧嘩していたせいで、着地したら追わせる筈だった山羊達は黒靄になって素早くペトラのストールまで帰還した。

「全く女というヤツは、男のプライドというヤツを理解できない生き物じゃのう」

 バーサーカーはランサーの矜持について否定するペトラを見て、打算的に生きていなそうなランサーの気持ちを代弁した。

「なんだかものすごく仲悪いねえ」

「そりゃあランサーのマスターからすれば、戦果を上げてないランサーは使えぬ兵士と見ている様だしのう……余程苛立ちを抱えていると見る」

「そういえばさっき仕留めなかったって言っていたね」

 会った敵は殺す前提で参戦しているペトラの方針と、会った敵を情けをかけたり時には殺すより生かした方がいいと判断してしまうランサーの方針は反りが合わないのだろう。

 だからこそ、ペトラはバーサーカーを仕留めなかったのかと言ったのだ。

 いつかは決別してしまうのではとバーサーカー達は口喧嘩するランサー達を眺めてその場を立ち去ろうとしたのを見逃さなかったペトラは、山羊を出現させて攻撃しようとするがバーサーカーの槍で貫かれ消滅させた。

「ちょっと、まだ確保(タッチ)していないわよ」

 不満げな表情を浮かべるペトラに対してポールは呆れた表情で返す。

「ボクを確保(タッチ)どころか、呪い殺そうとするでしょうお姉さん。

 やだなールールはきちんと守りましょう、ボクはタッチしたらこのゲームはおしまいだって言ったのに、なんの為にバーサーカーを生かすよう令呪で頼んだか分からなくなっちゃったよ」

 ペトラはポールを睨み付け氷柱のように冷たく鋭い口調で返した。

「なんでも優れたあなたとは違って、私は遊びに付き合っている暇はないの……私はネヴァン家の威光を絶やさぬ様聖杯戦争に参加したのよ」

 ドレスの裾を強く握りしめ初めてランサーの前で口にした願望を紡ぐと、ランサーの表情は暗くなりポールの表情は少々驚いていた。

「ってきり世界を支配したいみたいな願望かと思っていたよ」

「どんな願望よ! あなたは私に対してなんのイメージ沸いたのかしら!!」

「中盤辺りに出てくるボスに心酔するヴィランみたいな感じ」

 ふとランサーは唐突にばつの悪い表情でペトラに言った。

「申し訳ない主君よ……手前の参戦理由聞いたら、俺が生かすか殺すか贅沢言ってられない状況で参戦していたんだなそこは悪かった。

 というかなんで出会い頭にそれを言わなかったんだよ、言っていればライダー達に接触していなかったんだぜ俺は」

 流石にランサーは自分の弱さを自覚しているので、もしそんな参戦理由だと知っていたら、ライダーではなくマスターを選んで立ち去っていたのだろう。

 サーヴァントとして呼ばれた以上マスターに仕える者として申し訳ないと目を真っ直ぐ向け真剣な表情でペトラを見てきたので、ペトラは今までにないランサーの真剣な態度に思わずペトラは本音を漏らした。

「……別に願望言わなくても、事は順調に進むと思っていたのよ。けれども、予想を反してあなたはライダーを助けるどころかセイバーとサーヴァントのマスターに託すし、バーサーカーだって殺さないし……なんなのよランサーは」

 ペトラは目を反らして恨めしそうにランサーを見るがランサーはマスターの反応を見て豪快に笑い飛ばした。

「フ……ハハハハ!! じゃあ何かい? マスターは俺の事をただの道具と見ていたワケだな!! アハハハハッ!! コイツは傑作だな!!」

「そこ笑うとこなのかい!?」

 体を俯かせ膝を叩くランサーを見たポールは珍しくつっこむと、しおらしい態度からいつもの態度にペトラは戻った。

「何よ! 笑わないでちょうだい!! 誰だってサーヴァント従えたらそう見るでしょう!」

 ランサーの笑いがひとしきりやむとペトラの顔を再び見た。

「急にしおらしくなって、らしくねえな! いやな、サーヴァントは確かに使い魔だ。そう見るヤツも少なくねえ。

 サーヴァントは都合のいいよう造られた使い魔じゃねえ、サーヴァントってのは生前を再現した使い魔だって事を肝に命じねえまま、勝ちに行こうとする主君もなかなかの無鉄砲ぶり!」

 痛快痛快とランサーはペトラの過ちを愉快そうに指摘すると、ペトラはまんまとその煽りに乗ってしまう。

「肝に命じなくてもいいじゃないのよ! どうせあなたは聖杯戦争だけの付き合いだけじゃない! そこが何がいけないのよ!」

 バーサーカー達はさっきの余裕ある態度はなんだったんだろうなと思いつつ、ランサーはこう返した。

「全く俺を選んで良かったな、主君(マスター)よ。俺はこうやって笑い飛ばせるが、人によっては道具としての扱いに嫌悪するヤツ中にはいるんだ。ま、少なくとも召喚したサーヴァントに殺されるって醜態は回避しているのは確かだと思うぜ」

 ランサーは主殺しはしない主義である。仕えた者が死ぬまで傍にあり続ける、この思想はクーフーリンにも受け継がれているのだろうか。

 道具と酷に扱われても主君死ぬまで臣下として仕えるのがランサーのサーヴァントとしての長所であった。

「その言葉本当なのかしら」

 ペトラは主殺しをしないと言い張るランサーに問うと、ランサーは言った。

「俺は一度交わした約束は果たすし、破らねえよ。伝承もう一回読み直すか?」

 愉快げそうに割らすランサーは答えた所で、ポールは満面の笑みで話を大団円と言わんばかりにしめたのだった。

「それじゃあーこのゲームはおしまいっと、バーサーカー後でランサーと戦った話聞かせてね!」

 ポールは地雷を解除すると、バーサーカーと共に立ちさらんとした時ランサーは叫んだ。

「おい手前ら! その首級(くび)洗って待っていろよな!」

 バーサーカーの地雷原も判明したので、ようやく真剣に殺し合いが出来るなとランサーの表情は粗野で不敵な表情を浮かべるとバーサーカーも似たような笑みで答えた。

「フハハハハハハハ!! こちらこそ楽しみにしておけ! 勝利の巨狼よ!!」

 バーサーカーは満面の笑みで返すとバーサーカー達は闇の中へと消えて行った。

 

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