Fate/melt a close   作:アクタ

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3DAYS「獅子と我狼、咆哮す」

 夜闇を歩くは男女一組。

 一人はストールを纏うイブニングドレスを着て栗毛の長い髪をシニヨンにして纏めた黒ずくめの女性。

 一人は燃えるような赤髪を三つ編みにして後ろに結わえ、見事に鍛え抜かれた体を上半身だけ晒し、下半身は灰色の皮製防具を着用し右腕にはおびただしい数の古傷がある長身の男性。

 ランサーとランサーと契約したペトラ・ネヴァンである。

 黒いヒールの音を立てながら、羽飾りのピアスを揺らしながら夜街を歩いていた。

「よお、主君ようやく(おもて)に出やがったな。前線目の当たりにしてちびんなよ」

 ランサーは不敵な笑みでアサシン出現から、ランサーと共に歩くようになったのである。

「馬鹿にしているのかしらランサー。私は贖罪の山羊使いよ、呪術を嗜んでいるもの使い魔同士の戦いに怯える程精神的に未熟だと思って?」

 ペトラは赤褐色の双眸を涼しげにランサーに向ける。

 黒魔術は生贄を扱う魔術であり、術者の腕もそうだが何よりも生贄を殺す時己を律する精神的な強さが大切だった。

「そうだったな。本当に悪趣味な魔術だよなー……山羊に呪詛を背負わせて殺すなんてむごくありませんかね」

 ランサーはそんな事を口にするとペトラはくすくすと肩をすくめ微笑む。

「あら? ケルトの儀式もなかなかむごいわよね、神を無力化する為に人の命と等価交換で贄を捧げるんでしょう? 樽で溺死させたり、串刺しにした生贄を木に吊るしたり、ワイン樽で溺死、焼き殺したり、背中を剣で突き刺して苦悶する様子と内蔵で予言したり、生贄の首を大釜の上で切って血を盆に受けるとか。

 そしてなんで私が説明しなくちゃならないのかしら、あなたのおばあさんトルイドでしょうに……」

 ペトラは本場のプロが身内にいるランサーの発言に一端の黒魔術師が指摘しなくてはならないのかと思っていた。

「トルイドの術は戦いにも使えるが……儀式もそうだが、一方的に人殺すのはあんまり好かねえからな俺はよお」

 右腕を欠損した仇敵すら自らの右腕を縛り、半日にも及ぶ激闘を繰り広げたランサーらしい発言である。

「……このヘタレランサー」

「あ゙あん? なんだと? 今の言葉は聞き捨てならねえな、いいか一方的に嬲って殺す事は戦士としてどれほど不名誉な事だか分かるか? そんなのは戦いじゃねえただの弱い者いじめだ主君(マスター)

 流石のランサーも弱腰呼ばわりすると、眉を寄せるらしい。

 ペトラを睨み今にも胸ぐらを掴みそうな程の迫力であった。

 そんな迫力に気圧されずペトラはただ一言紡ぐ。

「そう」

「そうってな……」

 ランサーにとってとても重要な事を話したが、淡白な対応されたランサーは何とも言えぬ表情でペトラを見下ろしていた。

 ランサーから見たペトラは愛人であり誅殺されたコノートの女王メイヴを重ねるらしく、少々苦手意識が芽生えていた。

 だがランサーはその程度では離反しないし、重要な命令だけは無視しない。

 主人に仕える為に呼び出された以上、例え周囲から悪と呼ばれようが生前のように忠義を貫き通すのがアイルランドの巨狼というサーヴァントであった。

 二人は街中を歩いていると追い求めたサーヴァントの気配元にようやく辿り着いた。

 地下駐車場を背にした金髪の少年、ポール・グゲイジャンが仁王立ちして出迎えてくれた。

「どうもお姉さんとキミはランサーだね、うわあ大きいし筋肉すごいね! まるでアメコミ(マーベル)の主人公みたいだ!!」

 目を輝かせてそう語るポールを見たランサーとペトラは二人で顔を見合わせ呆れた表情を作る。

「なあ主君コイツの例えが分からん」

 聖杯が与える知識は作者の名は知ってるが、本の内容までは知らない為マーベルは分かるがなんでマーベルの主人公なのかが分からなかったランサー。

「ようするに漫画から飛び出してきたヒーローそのものと言いたいのよあの子は、私は読んだことがないけどいくつか映画化されてるしね」

 するとランサーの鋭い目付きが柔らかくなり分かりづらいがはにかんだ顔になって、照れ臭そうに頭を掻いている。

「そうかそうか坊主、なんもぶら下げてねえ俺を強いって事を見抜くとは大した目じゃねえか」

 ペトラは説明が悪かったかと内心思っていたがポールがそれを代弁し、ペトラが読んだ空気を笑顔で壊していく。

「んーキミが強いって言いたいんじゃなくて、体つきがヒーローみたいだなって思っただけだよー」

「なんだよ、見てくれの話だけかよ。てっきり俺を強者(つわもの)だと見抜いたとぬか喜びしちまったじゃねえかよ……チクショウ」

 ランサーは肩を落とし過度に解釈した事を落胆する。

 ポールは不思議そうに見ているが、そう落ち込む程ランサーは自身の武勇を誇りに思う証拠であった。

「それでポール、早くあなたのサーヴァント見せてちょうだい? あなたのサーヴァントは何かしら? キャスター? それともバーサーカー?」

 ペトラは落ち込むランサーを労わずに微笑むとポールは変わらぬ笑顔で隣にいるであろうサーヴァントに視線を向ける仕草をすると、その巨躯――――バーサーカーは現れた。

 上半身裸で今にもはちきれんばかりの肉体を持ち、よく見れば整っているが第一印象は蛮族という顔つきでギリシャ彫刻を彷彿させる鼻が特徴で、青い澄んだ目は狂気を孕んでいるように見えた。

 服装は剣闘士が軽装した様なものを着用し、何よりも目立つのは金髪の巻き毛に被られた獅子の毛皮が目を引いた。

「ハハハハハ!! まっこと両者いい体つきしているのう、女はルキア姉上に似て豊胸で色香があるし男は生前にいたら銀貨を与えていたわい!」

 あまりにも大きな声だったのでペトラはうるさそうに顔をしかめて、ランサーは絶句していた。

三本足の彼(、、、、、)みたいに? ランサーは二本足(、、、)だけどね、それとさキミの上のお姉さんと言えばさー映画だとラスボスじゃなくて人妻ヒロインになってたよね」

「フハハハハハハ!! あの映画は実に心地よい!! 心地よかったぞ!! フハハハハハハ!!」

「なんだかご満喫なんだけどさ、バーサーカーはシスコン悪役として書かれてたけど……それでいいのかい?」

「あんなに弱く描かれたのは気に食わんが、良い、良いぞ! 余の偉大さが伝わるだけでも十分だわい!!」

 完全についていけない、ランサー達は二人のやり取りを聞くしかなかった。

 そして沈黙の間、ランサーは口を開く。

「あのな……何、人前でいちゃこらしてんだできてんのか(、、、、、、)? 手前ら」

 ポールは首をかしげるがニヤリと笑うバーサーカー。

「余の嗜みなめるなよ! この場ではなかったらそなたらを小間使いとして食うておるぞ!」

 不敵な笑み浮かべランサーは赤い三つ編みを揺らし、槍と盾を出現させて構え戦闘体勢を取る。

「女に飽きたら男を貪り食うと聞くが――――生憎、俺は男まで食おうとは思わんがね」

 それを見たバーサーカーは全長二メートルある豪奢な飾りが施された槍を出現させる。

「フハハハハハ!! そう言われると意地でも貴様を食いたいし、互いの技量を語りかけたいものだ。生前はどいつもこいつも意地なしだったからのう萎縮する連中ばかりでつまらんかったわい」

 二人の笑みは飢えた野獣そのものであった。激戦で研ぎ澄まされた殺気で空気が一変する。

「はいはいバーサーカー、戦う前にボクが作った遊びをお姉さんに伝えていないよ」

 ペトラでさえ気圧された空気を前にポールはいつものように陽気に振る舞う。

「お姉さんレベル百五十七ごっこをしようよ」

 ペトラは「ごっこ?」と聞き返すと、ポールは地下駐車場の入口を見せるように体を横に移動しながら遊びを誘う子供の態度で返した。

「地下十五階でもなく英国特殊部隊(SAS)じゃないし、嫉妬を意味する殺人犯じゃないけど、後始末しやすいかなと思ってボクがアルヴィンに許可を得た駐車場でボクを犯人確保(タッチ)したらお姉さんの勝ち。

 お姉さんがバーサーカーにやられたり(トラップ)に引っ掛かったら負けというごっこだよ」

 ポールは無邪気に言った後、この場にいる皆に言い残し駐車場を目指して駆け出し、一画令呪に命じる。

「じゃあはじめるよー、お願いバーサーカーお姉さんは殺さないでね(、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、)練習相手でも手を抜かないキミなら殺しちゃうからさ」

「ぐっ……たく、あまいのうおぬしは」

「人を殺してまで願いは叶えたくないからねー」

 それを聞いたランサーは皮肉を吐いた。

「はっ、おい坊主サーヴァントだって元は生きていた人だぞ、ある意味人殺しだと抵抗感じないのか?」

 傍から見れば普通の人なのにとランサーは言うが、ポールは満面の笑みを浮かべてコンクリートジャングルの奥に消えた。

「違うよボクは連続殺人鬼(シリアルキラー)じゃない、幽霊狩人(ゴーストバスターズ)だよランサー、じゃあ後はよろしくねーバーサーカー!」

 そう言った時戦いの火蓋が切られ、再び殺気に満ちた戦場へと変わりペトラはその空気に若干気圧され顔を強張らせていた。

(これが――――サーヴァント同士の戦い、流石最強の使い魔と讃えられるだけあるわね、ランサーに至っては英霊として格が高いから、尚更敵意が肌に感じる程鋭い)

 現代人の敵意を百人束ねた様なランサーの敵意を生身で感じるペトラはそう思っていた。

 そしてバーサーカーのマスターについて推測していた。

 バーサーカーは狂う事により強化させるサーヴァントであり、その分魔力消耗量が加担される両刃の剣だがマスターポール・グゲイジャンという少年は、当たり前のように動き回り映画鑑賞しあう仲になっている様子を見ると魔術師としては余程優秀な部類に入ると見る。

 人間性は魔術師としては間抜けなのに、機能性は魔術師としては破格である事に気づいたペトラの心はなんと勿体ないと嘆いていた。

 そしてペトラは厄介な相手に決闘を受けてしまったと悔いていると戦場は進展していた。

「さあ、天にいる民衆達よ! もう一度この『ローマのヘラクレス(ヘルクレウス・ローマヌス)』を讃えよ!

 "陛下は支配者、誰よりも幸運なる御方、勝利者"とな!!」

 槍を月に捧げて、口上を名乗るバーサーカーを見たペトラはローマのヘラクレス(ヘルクレウス・ローマヌス)の単語に「まさかあなたは―――――」と固唾を飲むと、ランサーはペトラの前へ出てバーサーカーの口上の感想を返す。

「貴様も勝利者(ケルナッハ)と名乗るのかい? 暴君さんよ―――――勝利者の名を持つモンはこの聖杯戦争において一人だけでいい。

 本来なら口上せず襲い掛かっていたが、王が直々に名乗ったならこちらも名乗るが礼儀ってもんだ。我はコンホヴォル王率いる赤枝の騎士―――――名を『勝利の巨狼』。我に挑んだ勇者よ、その敬意として貴公の首級(おんくび)貰い受ける」

 ランサーはペトラに小声で「行け、主君よ。俺に任せな」と告げると、ペトラは黙って頷き駐車場に行かせた。

 そして静寂に包まれるとランサーとバーサーカーは互いの矛先を向き合っていた。

 ペトラの足跡が消えても、二人の膠着状態が続く。

 どちらが先に出るのか、伺いながら青と(あお)の視線は交わされる。

(バーサーカーの癖に待てできるんだな……ざっと見た限り狂化も言語能力失わねえ程の恩恵みてえだし、予測外の動きは少なくともしないだろうな)

 狂戦士の名を授かったサーヴァントにしては意外だとランサーはそう思いながら最初の一歩を警戒していると、やはり狂戦士の呪いには勝てなかったのか最初の一歩はバーサーカーだった。

「この戦い、ミトラとゼウスに捧げる――――っ!! 贋・焼殺す百頭(ナイン・ライブズ・コンモディアナ)!」

 バーサーカーの宝具真名開放されると、その槍は数秒も足らずに炎に包まれランサーの体焼き抉らんと神速の槍をランサーに浴びさせた。

 バーサーカーの剣闘士の記録は七百三十五勝、猛獣を一撃で仕留める事約千頭に及ぶ。

 半日で熊を槍で正確に百頭も仕留め、獅子も百頭全て一撃で仕留め、さらに弓で走り回る駝鳥の首や両足を縛られた障害者を蛇に見立てて射抜いた等の記録が残っており闘技場に国財の大半を費やした男が磨き上げた技の集大成であり自身の過度の信仰と誇大妄想の象徴でもある宝具は赤く炯々と輝く。

 ミトスは民草と軍兵に信仰を受けた太陽神の名で、バーサーカーはギリシャの大英雄ヘラクレスの他に友愛の観念と善の為闘争を吹聴する教義を信仰していた。赤き炎はその加護の証だった。

 まずは一撃、これはランサーの盾で受け止められる、だが猛攻は止まらない続いて二撃は(かぶり)を狙う、だがランサーは盾を上にスライドし、その縁で槍ごと弾き返す。その衝撃でバーサーカーはよろけなかったのでランサーはやるなと感心しつつも、その盾をバーサーカーの腹を押そうと一歩出たが三撃目、バーサーカーは抱きかかえる形でランサーを包み込み右肩を狙われたので、急いでその猛進を右腕に握られた槍を縦に持ち受け止め、仕切り直しスキルで後ろに跳躍し初期状態に戻すがバーサーカーの猛撃は止まらない。

(周囲の人間達に怯えた坊ちゃんが、少しはやるじゃねえか――――なあ、コンモドゥス帝よ! 貴公の願いは一体なんだ?)

 バーサーカーの正体は第十七代ローマ皇帝。本名はルキウス・アウレリウス・コンモドゥス。

 ローマ帝国史上初の生まれながら将来の帝権を約束され実際に登位した人物でもあり、歴史家カッシウス・ディオは「ローマにいかなる悪疫罪悪にもまさる災いをもたらした人物」と評した、父は「自省録」の著者であり哲人皇帝と呼ばれ五賢帝の一人マルクス・アウレリウス・アントニヌスである。

 晩年は自身の事をゼウスの息子と自称し剣闘士として明け暮れたが、その最期は暗殺と言う最期を迎えている。

 人生の大半は人々に流されるだけだった男が今、自らの意志で戦場に立ち強敵として立ち塞がる眼前(げんじつ)に、ランサーの表情は好敵手と戦いに歓喜する笑みを浮かべていた。

 何に突き動かされて炎槍を振るうのだ―――――

 狂戦士として何を思って炎槍を振るうのだ―――――

 ランサーは久しく会った強敵に歓喜していた。自身に向き合える(つわもの)にまた出会えた歓喜に高揚していた。

 手を抜かれて不満げに話していたバーサーカーの表情を見れな同じ気持ちなのだろうか、ランサーが思考する猶予など与えないと言わんばかりの速さで間合いを詰めてきたので、ランサーの羽飾りのピアスは静かに揺れて再び戦闘待機の構えに入る。

 これで四撃目、バーサーカーはランサーに向かいながら何を思ったのだろうか炎に包まれた槍は真っ直ぐと投げられた。

阿呆(あほう)が! 自らの武器を捨てるとは!」

 自身は盾を持っているのだ、投擲槍との相性は絶望的である。ランサーは赤い光線弾を受け止める為盾を掲げると、凄まじい轟音と熱風を膨張するように生み出すと、その衝撃波で周囲のコンクリートは氷の如く砕け散り、受け止めたランサーの巨躯は押し出され電車道を作る。盾で跳弾した槍は空中へ舞い回転させやがて地面に落下させた。

 バーサーカーは体にブレーキをかけて停めさせると、遠くに落下した自身の得物の様子を見て豪快に笑った。

「むう、余の渾身の投槍でも後ろに下がらせるだけ(、、、、、、、、、、)か―――――余程頑丈だなその青銅盾は! 属州人の癖になかなかやるわい!」

「その言葉―――――成程、愚策ではなかったワケだな(、、、、、、、、、、、、)? 俺の盾、血濡れ青銅盾(ブリクリウ)をカチ割ろうとしたその度胸いいねえ、だが残念ながら愚策になっちまったようだな!」

「フハハハハハハ!! 良いぞ! 良い剣闘士と巡り合ったわい!」

 つまりバーサーカーは自慢の腕力で投げた槍でランサーの盾ごと貫こうと考えていたらしい。

 確かに生み出した破壊力は普通の盾など紙切れ当然だが、ランサーの宝具『血濡れ青銅盾(ブリクリウ)』は百五十本の槍でようやく半壊させた盾(、、、、、、)なのだから。

 この盾を全壊させたいのならば、一流の軍隊を呼ばなくてはならない。

 バーサーカーの読みは、どうやら外れたらしいが両者互いに命を削り合う高揚に酔いしれる笑みを浮かべ先手を取ったランサーは、盾を正面に持ちタックルを食らわせようとした。槍を向けていないのはそのまま得物を持たぬ敵兵に対しての慈悲であった。

「改めると確かに余の愚策だったわい宝具(やり)が無いのならば―――――――」

 拾いに行く時間が惜しい、けれども拾ってもランサーに殺されない自信はある。何せ右腕を失った仇敵にでさえ右腕を縛った男だ、得物を握らない限り攻撃はされないだろう。

 ならば―――――

 バーサーカーは勝利者(ケルナッハ)と名乗ったランサーの真名を信頼し、タックルしてきたランサーの体をそのまま受け止め猛進するランサーに押されている間、槍を拾うと計画していたのだ。

 迷いも無く自身の攻撃を真正面から受け止めた、バーサーカーを見たランサーはその胆力を見て思わず叫んでしまった。

「本当に実の姉貴に殺されかけた坊ちゃんか手前ッ!」

 煽る様に喧嘩を売る様に不敵に荒々しく笑うランサーの言葉に、バーサーカーの顔が歪んだのを見たランサーは、猛進を急遽止めて退却した後怪訝そうに見たが俯いたバーサーカーの体が起き上がりその顔は何かにとり憑かれたような表情で、恐怖に蝕まれていた。

「余は、余は、余は……殺されたくない、殺されたくない、殺されたくない、ルキア姉上にだけは、殺されたくない、殺されたくない、元老院も嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ……ッ!」

 さっきの威勢はどこへいったのやら頭を抱えすっかり縮みこむバーサーカーを見た、ランサーは呆れた表情を浮かべた。

「あー……何コイツ面倒くせえな、よくコイツが即位してる時のローマ帝国は持ったな」

 バーサーカーは政務を当時は近衛隊長官のペレンニスに任せ淫蕩した生活を送った結果、長女の姉ルキアが暗殺未遂を起こし運よく逃れられたが、暗殺を関与したルキアを含む人々を処した後バーサーカーはますます政務の関心を失くし、元老院を恨むようになり引き籠る様になった。

 それでも軍や民達の人気が潰えなかったのは、父の威光とある誓約、そして国民達の逆鱗を経て父の様な善政を目指し剣闘士として活躍していた事が大きかった。

 バーサーカーが狂ってしまった原因(トラウマ)を見事に触れてしまい、それを知らぬランサーはあまりの激変ぶりに顔を引きつらせていたのだった。

「おい。どーすんだよこれ……どう収集付けりゃあいいんだよ」

 さっきまで士気がうなぎ上りだったのに、パンドラの箱を開けてしまった為に士気が下落したランサーは武装を解除し溜息を吐く。

「手前、メソメソと泣くな! それでもローマのヘラクレス(ヘルクレウス・ローマヌス)かよ! ヘラクレスはそんなんで怯えねえぞ坊ちゃん!」

 まるで体の大きい赤ん坊だとランサーは、あまりの豹変ぶりに唖然としながらその背中を叩いて一発慰めようとした途端、ゆらりとバーサーカーの巨躯が揺れたのでランサーは慌てて後ろに下がろうとしたが、遅かった。視界を捉えるは我武者羅にランサーを追うバーサーカーの顔が狂気に歪む姿だった。

「殺す、殺ス、ころす、コ、ロス、■ロス、■■ス、■■す、■■■■■――――――ッ!!」

 敵にも情けを掛けてしまうランサーの性格が裏目に出た瞬間である、段々とバーサーカーの様な咆哮に変わる雄叫びを上げて二メートルあるランサーの体を跳び上がった勢いで押し倒し、バーサーカーはランサーの首元を両手に掴み、絞首を超え首元を折ろうとしていた。

 地面に判を押すように強く叩きつけられ溺れる感覚に陥るランサーは苦悶の表情を浮かべ、微かに呻き声を漏らしながら自身のミスを心の中で悔しがった。

(あーあー。またこのザマだ、コンラの時もあの饗宴の時もそうだった……俺ってなんでこんな時に毎回ドジるんだ―――――)

 誓約の影響で何も語らぬコンラに警戒し襲い掛かったが、投石器の余波で吹き飛ばされ呆気なくやられてしまった事。

 魔術で出されたこの世の物では思わぬ程恐ろしい姿をした魔猫(まびょう)達に怯え、垂れ木に登ってしまった事が脳裏に過った。

 "そうねえクーちゃんは黄金で、コーちゃんは合金、ローちゃんは青銅ってところかしら"

 あの我が友フェグルスをアルスターから奪い、裏切り者へと変えてしまった女王の言葉と渡された杯を思い出す。

 確かに、ランサーはクーフーリンに劣ると心のない者に言われ続けてきた。

 けれどもランサーは気にしなかった、自身が育て上げた弟分(むすこ)が祖父の予言通りアルスターの名を馳せる大戦士に成長しただけでも誇らしかった。

 ランサーは弟分(むすこ)の仇敵の首級をいつものようにベルトにぶら下げた時、近くの街に立ち寄った際仇敵を失わせた歓喜よりも――――――大英雄が失われた悲哀を選んだのだから。

「■■、■■、■■、■■、■■、■■、■■、■■!!」

 まるでバーサーカーの最期を実感している気分だった。

 霞んでいて読み取れないがバーサーカーの表情を見ると、狂化の咆哮がまるで駄々をこねる幼子の様であった。

 信頼し慕っていた姉に殺されかけた事がどれだけ深い傷だったのだろうか。

 極度の人間不信から生まれ落ちた暴君は、猜疑が生まれた臣下を殺し続けて行ったのだろうか。

 市民権という名の自由を求め、剣闘士に憧れたのだろうか。

 ランサーはそう感じながらもおぼろげな意識の中でなんとか槍を出現させ、相手の首元に狙いを定めると弱々しくても構わず、その槍を振りかぶった。

 かつてクーフーリンを師事していた時、二人の祖父の予言を聞いて「早死にすんの分かっているのに、なんで戦士になったんだ」と問うた事がある。

 "――――――何言ってんだアニキ。大英雄としてアルスターに名を刻んで死ねるんなら本望だ"

(ここでこんな醜態晒して死んじまったら、アイツらに会わせる顔がねえ――――――っ!)

 そう解いて無邪気に笑うセタンタと、立ち往生したクーフーリンの死に様の記憶をこの魂の叫びと共に乗せると、バーサーカーは槍に反応し躱し致命傷とはいかなかったが、軽症を食らわせ首元は解放され、体制が崩れたところを狙って盾を出現させるとその巨躯を押し出し、上空高く打ち上げたと同時に額に浮き出た汗を月光に輝かせながら、素早く起き上がりマスター達が立ち去った地下駐車場まで駆け出し、ビルの壁を駆け登って蹴り上げて飛躍し、そのままバーサーカーまで一気に到達すると槍の石突を胴に向け、まるでビリヤードの玉を撃つかのように轟音と共に突くとめり込まされたお返しに地面にバーサーカーを叩き付けた。

 勝負は決まったようである。責務を放棄し才能あった趣味に転じて戦う者となった皇帝とアルスターの三本指に入るまで鍛え抜かれた戦士の差は歴然であった。

 ランサーは華麗に着地すると、めり込んだ地面にまるでトルコ石が埋め込まれた鋭い(まなこ)を静かに向けた。

「たく……首元跡くっきり残るほど握りやがって、手前の首絞め――――――ちと効いたわ」

 苦虫を潰した表情でくっきりとのこった赤い掌を見ながらふうと息を整えると、めり込ませた地面から声が響き渡った。

「……ランサー何故、余の首を取らぬ? おぬしと敵の首と共に眠る程好いているのだろう?」

 頭を強く打った衝撃が影響なのか、バーサーカーの声は狂気から解放されているのでランサーはいつもの調子で喋り出す。

「ようやく目が覚めやがったな。はっきり言ってな、手前……情緒不安定過ぎるだろう坊ちゃん。

 そんなんでどうやってローマ帝国を持たせていたんだよ」

 まるで歩く爆弾だとランサーは思いながら、地下駐車場へ向かおうと後を立ち去ろうするとバーサーカーは答えた。

「クレアンデルと違って、ペレンニスは余を堕落させたが善き為政者だったからのう……元老院の媚や賄賂など一切受け取らんかったわい、父上の慧眼は本当―――――畏れ入る」

 ランサーの歩は止まる。

「……親を否定していたヤツがそんな事言うなんてな、どうやら俺が想像していた手前と違ったらしい」

「フフハハハ、もう二度ローマ国民を怒らせたくないクレアンデルのようになりたくはないと、必死に父上とペレンニスの背を追い、己が出来る最大限の奉仕で国民に尽くし父上のように長く即位したいと願っていたが――――――何もかも手遅れだった」

 表情が分からないがその口調はきっと泣き出しそうな顔であろうとランサーは冷やかさず、背を向けたままただその話を聞いていた。

「それで話に戻るが、何故(なにゆえ)おぬしは余の首を取らん?」

 本題に戻りバーサーカーは何故殺さないのかと訊くとランサーは間を置き、そう言い残して赤毛を揺らしながらマスターの元へと赴いた。

「……何って、俺は主君(マスター)を生かした手前のマスターに見習っただけだ阿呆(あほう)

 その口調を聞いたバーサーカーは台詞の内容と違っていたのでおかしそうに笑って呟いた。

「まったく素直じゃないのう」

 月光はその言葉に同意するかのように戦場を静かに照らしていた。

 




◆サーヴァント情報
マスター:ペトラ・ネヴァン
クラス:ランサー
真名:コナル・ケルナッハ
性別:男
身長・体重:215cm・150kg
属性:秩序・中庸

・ステータス
筋力:B 魔力:A 耐久:C 幸運:C 俊敏:B 宝具:B

・クラス別能力
「対魔力:B」
 魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
 大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。

・固有スキル
「■■■」


「護国の戦士:A」
 あらかじめ陣地を確保しておくことにより、特定の範囲を"防衛戦に特化"するスキル。
 この範囲内の戦闘において、境界線の守護者であるランサーが前衛に立てば、範囲内に立つ自身を含めた味方の被ダメージ値を半減させる。
 Aランクとなれば不落の要塞に相応しい陣地である。
 ランサーは古い時代のアルスターおよびタラの国境神としても崇拝されていた事から。

「威圧:D」
 魔物と対峙しただけで、魔物と敵対する事なく服従させるスキル。
 Dランクならばただ野生の勘を働かせるだけである。
 ランサーは財宝を持つ巨大な蛇の砦を襲撃した時、その蛇はベルトの下に逃げ込ませた事から。

「仕切り直し:C」
 戦闘から離脱する能力。
 また、不利になった戦闘を戦闘開始ターン(1ターン目)に戻し、技の条件を初期値に戻す。

「カリスマ:D」
 軍団を指揮する天性の才能。団体戦闘において、自軍の能力を向上させる。
 カリスマは稀有な才能で、一軍の首魁としては破格の人望である。


・宝具
「■■■■」
種別:■■■
ランク:■
レンジ:■■
最大捕捉:■■

血塗れ青銅盾(ブリクリウ)
ランク:C+
種別:対軍宝具
防御対象:1人
 ダ・デルガの戦いにて150本の槍を受け止めても半壊したいつも血塗られている盾。
 普段はBランク以下の攻撃および魔術を無効化できるが固有スキル『護国の戦士』と合わせれば、Aランク以下の攻撃および魔術、対軍宝具以下の宝具を無効化できる鉄壁の盾である。
 ただし150本の槍でようやく半壊できた逸話を持つ為、前述以上のダメージを食らえば破壊されるのが弱点である。

・詳細
アルスター神話に登場する赤枝の騎士団の戦士であり、アルスターの戦士で三本指に入る強さを誇る。それを証明するかのようにコナルはいつも第一級戦士の首をベルトにぶら下げていた。
 父は高名な詩人アマーギン・マク・エキド・ザリク母はコンホヴォル王に仕えているドルイドの母を持つフィオンフェエヴの子で、クーフーリンとは乳兄弟の関係であった。
 「フロイヒの牛捕り」「エーダルの戦い」「マク・ダトーの豚」「ダ・デルガの館」等戦士との名声を得た後、同時まだ幼かったクーフーリンの養い親兼師として育て上げ、互いに「どちらかが討ち取られたら絶対に仇を取る」と誓い合い、共に成長し時に陰険なブリクリウにそそのかされて誰がアルスターで第一の戦士かどうかの争いで競い合いもしたがその友情は潰えなかった。
 クーフーリンがコノートの女王メイヴにより、窮地に立たされているという情報を私用の旅の途中で聞くと、真っ先にアルスターへ帰還したが、後の祭りであった。
 弟分の遺体を見て、すぐさまコナルは南方へと向かいメイヴの軍を不意打ちし、アルスター全土に復讐を戦き、メイヴの同盟者達を皆殺しにした後仇敵レウィと対峙する。
 レウィはクーフーリンを殺した際右腕を切り落とされていた為、コナルは公平ではない思ったのか右腕を縛って一騎打ちに挑む。
 勝負は約半日間経ってもつかなかった。だが、コナルの名馬である赤き露がレウィの脇腹に噛みついた隙を見てレウィの首を撥ね、決着がついたのであった。
 コナルはレウィの首をいつものように腰に携え近くの街へ帰還したが、意気揚々ともせず勝利の凱旋らしい事もしなかった。何故なら――――「クランの猛犬」は既にこの世にいなかったのである。
 この戦いにおいてコナルは「勝利者(ケルナッハ)」という異名を持つ事となる。

 コナルの数々の武勇伝を持つがそれと同じぐらい数々の失敗談を持つ、二枚目半の戦士でもある。
「ブリクリウの饗宴」では名誉ある人を騙し陥れる事を好むブリクリウは、最も勇敢な戦士が宴会に招かれた際豚肉の最上部位腿の肉を得られる「勇者の分け前」の仕組みを利用し、戦士達の争いを見たいと思いつく。
 実行当日クーフーリン、コナル、ロイガレ・ブアダハに「勇者の分け前を得る資格がある」と3人に囁くと、絶大な武勇を誇る3人は当然だと権利を主張ついには取っ組み合いの喧嘩に発展してしまう。
 だがこの様子に心を痛めた詩人で調停者でもあるシェネハ・マク・アレラが中立な視点から裁定して貰おうとコノートのアリル王に事態収拾を依頼し、その喧嘩を治めたがブリクリウは満足してはいなかった。
 次にブリクリウは宴会場に入ろうとする喧嘩をした3人の妻達に「宴会場に一番最初に来たら、アルスターの全ての女の頂点に立つ女王と称えよう」と唆す。
 すると、それを聞いた妻達は我先と宴会場に向かい互いを意識するうち威厳も剥がれ落ち、その様子は50台の戦車が戦場を駆ける勢いだったという、それに驚いた男達は敵襲と勘違いし、扉を閉ざしてしまう。
 最初に宴会場に辿り着いたクーフーリンの妻エメルはブリクリウの話を伝え扉を開けて貰おうとする。いち早く反応したコナルとロイガレは柱を引き抜き妻達を入ようとしたが、クーフーリンは宴会場ごと持ち上げ妻を中に引き入れたが、残りの妻達も中に入ってしまい勝負は引き分けとなる。
 仕切り直しとしてアリル王は自身の館に三人を招き、幻術を用いた試験を行う。食卓がある部屋にまるで悪魔の様な恐ろしい魔猫を送る、あまりの恐ろしさにコナルとロイガレは垂木に登り一晩中怯えていた中、クーフーリンだけは剣を抜いて魔猫を斬りかかり、残りの魔猫達は夜明けに姿を消したという。
 この結果と三人の評判を考慮したメイヴは相応しい杯を贈る。クーフーリンは黄金、コナルは合金、ロイガレは青銅。その持ち物こそが最上と思いつつ、ブリクリウの館へ帰還する。
 だがコナルとロイガレはこの試験が公平ではない、クーフーリンによる不正が行われたと主張。続いてマンスター王クー・ロイ・マクダーリによる試験。魔術を使うと伝えた上で三人に、外の見張りに立た樽の巨木を槍の様に操れる巨人を送り込むが、翌日コナルとロイガレは攻撃に耐え切れず中庭まで吹き飛ぶが、クーフーリンは何とか耐え切ったのだ。
 これを見たクー・ロイ王は追試として飛竜を送り込むが、クーフーリンは鮭跳びで飛竜の口に突っ込み心臓を握りつぶし、その勢いで巨人も倒しその報酬として「アルスター最高の英雄の地位」、「勇者の分け前」、「妻の名誉」の願いを叶える約束を巨人と交わしたのだった。
 それでもこの裁定に不満を持つコナルとロイガレ。その時、赤枝の騎士の本拠地である赤枝の館に醜い巨人が現れたとの報告を聞く。
 巨人は「勇敢な者は余の首をこの斧で落としてみよ、ただし次の日に自分の首を斬らせるという約束でだ。これに応じる者がいなかったら、お前達は腰抜けの集まりだと広めてやる」と笑いながら、その斧を振りかざしていると一人の赤枝の騎士が巨人の首を斬り落としたのであった。
 しかし巨人はその首を拾い立ち去った次の日、健全な姿で現れたのでそれを見た戦士は腰が抜け首を差し出す勇気がなかった。
 巨人はアルスターを罵倒しはじめ、それに怒ったコナルとロイガレも巨人に挑むが結果は変わらなかった。窮地に立たされた赤枝の騎士、その現状でクー・フーリンが館に現れ巨人の挑戦を挑む事となった。
 クーフーリンは不穏な空気の中「2人と違い巨人の反撃を受ける」と宣言し、コンホヴォル王に暇を貰い巨人の元へと赴く。巨人は「命が惜しいのか」と尋ねクーフーリンは「早く首を落とせ」と要求し、その首を差し出したのだ。振り下ろされた巨人の斧はクーフーリンの首ではなく地面を打った。それに驚いた人々の前で巨人の姿は消え、その場に現れたのはクー・ロイ王であった。クー・ロイはクーフーリンの勇気を称え、城で対峙した巨人との約束を与えると宣言したのであった。

 クーフーリンとコンホヴォル王の死後コノートに1年程滞在していたところ、メイヴの恋人となるがその愛を与える為に浮気したアリル王を暗殺を持ちかけコナルは殺害するが、夫を殺された名目でメイヴに暗殺されるという最期を迎えている。

――――――

マスター:ポール・グゲイジャン
クラス:バーサーカー
真名:コンモドゥス
性別:男
身長・体重:185cm・95kg
属性:中立・狂
・ステータス
筋力:A 魔力:E 耐久:B 幸運:D 俊敏:A 宝具:C+

・クラス別能力
「狂化:E-」
 凶暴化する事で能力をアップさせるスキル。
 ……が、バーサーカーは理性を残しているのでその恩恵はほとんどない。
 筋力と耐久がより“痛みを知らない”状態になっただけである。

・固有スキル

「精神異常:B」
 精神を病んでいる。
 通常のバーサーカーに付加された狂化ではない。
 信頼していた者に裏切られた事により、常に苛烈な猜疑心を抱え周囲の空気を読まず、マスターを殺してしまう危険性が高い。
 精神的なスーパーアーマー能力。

「千里眼:B」
 視力の良さ。遠方の標的の捕捉、動体視力の向上。また、透視を可能とする。
 さらに高いランクでは、未来視さえ可能とする

「獣殺し:B」
 猛獣や魔獣または獣属性を持つ英霊に対してダメージ向上及び追加ダメージが加算される。
 追加ダメージ値はランクが高い程威力を増す。

「■■■」

「皇帝特権:B-」
 本来持ち得ないスキルも、本人が主張する事短時間だけ獲得できる。
 該当するスキルは騎乗、剣術、芸術、カリスマ、軍略、等。
 ただし政治家としての権限を求めず、剣闘士としての能力しか求めていないので普段は封じている。
 使わせるならば令呪で命じる他ならない。

・宝具
贋・燃殺す百頭(ナイン・ライブズ・コンモディアナ)
ランク:C+
種別:対人宝具
レンジ:2~4
最大捕捉:1人
 元はヘラクレスを盲信するあまり、闘技場にてヘラクレスの十二の試練を再現した時に観客に魅せた技が宝具として浄化した物。
 通常時は見栄えがいい理由でローマ式の短槍ではなく、ケルト式の長槍で全長は2m近くある荘厳な模様が彫られた槍。
 ヘラクレスの盲信に加え、太陽神ミトラの信仰も合わさった為か真名開放すれば炎を纏わせる事が可能。
 9つの突いて爆発する技か、9つの赤の斬撃を相手に食らわせ焼き殺す宝具。
 つまるところこの宝具は、自身の過度の信仰と誇大妄想の象徴でもある。
 因みにクラスに応じて変化する、セイバーならば炎の斬撃と盾、ライダーならば戦車、アーチャーならば矢として効果を発揮する。
 ただでさえ生前は人の域から外れた腕前を持っていた彼が英霊化する事により、その技は神速に達するまで磨きかかってしまった。

・詳細
 自称「ヘルクレウス・ローマヌス」即ち「ローマのヘラクレス」と名乗っている。
 第17代ローマ皇帝。本名はルキウス・アウレリウス・コンモドゥス。
 ローマ帝国史上初の生まれながら将来の帝権を約束され実際に登位した人物で「ローマにいかなる悪疫罪悪にもまさる災いをもたらした人物」と評された暴君。
 父は「自省録」の著者であり哲人皇帝と呼ばれ五賢帝の一人マルクス・アウレリウス・アントニヌスである。
 15歳の頃マルコマンニ戦争真っ只中に「アウグストゥス」に昇格させられ、二人皇帝制を再建。
 親子は敵勢力に対して総攻撃をして敵地占領に成功する。
 父は国境をドナウ川からカルパチア山脈にと押し上げようとしたが、58歳で陣没する。
 これを機にコンマンニ戦争は泥沼状態、何を思ったのか彼はせっかく占領した敵地から撤兵し、国境線をドナウ川に戻すことを独断。義兄ポンペイアヌスの説得にも応じず、ゲルマン諸部族に「部族間の戦争とドナウ川の接近禁止、部族集会の規制、帝国軍の兵士排出」を条件に講和締結を引き換えにローマ側は敵側に援助金まで提供し首都へ撤退。
 当時は批判されたが、遠征が原因で疫病が流行しただけではなくローマに負担が掛かると見たのではないかと見られる。
 ここまでは10代でただ1つの功績、18歳で即位すると悪代官に堕落を教わり見事に悦楽を貪り食らう青年に変貌する、歓楽街を徘徊して酒と女を食らう。
 パラティウム宮の宴会や浴場で美貌により人妻や娼婦の中から集められた300人の妾、趣味により民衆や貴族の中から300人の放蕩児らと共に悦楽に浸った。
 その様子は『ヒストリア・アウグスタ コモンドゥス伝』五節目にこう記されている。
「両性との性交渉で、体のどの部分も、口さえ穢していたのだ」
 尚政務は近衛隊長官ペレンニスに任せきりだった。
 愚弟を見た長女ルキアは、ここぞとばかりに権威を狙い暗殺を企てるが、未遂に終わる。
 その時刺客が叫んだ言葉「元老院の贈り物だ!」よりも、好いて信頼していたルキアが殺しに来る方が余程ショックだったのかこれを機に精神を病む事となる。
 ルキアを追放しますます政務への関心をなくし、元老院の事を憎むようになる。
 それからスコットランドの諸部族が侵入。
 その処遇を不満に思ったペレンニス軍は1500人もの兵士を率いて首都に押し掛けて、直訴してペレンニスが暗殺を企て息子を推薦せんと申し立てる。
 当時侍従であったクレアンデルもその直訴に肯定したのを見て、彼は不安になりペレンニスを兵士達に引き渡して殺させてしまう。
 そしてペレンニスの代行をクレアンデルに任命した。
 ペレンニスは父が人選しただけあって政治家としては一流の人物だった為国政はある程度安定してたが、クレアンデルは権力を乱用し私腹を肥やす最悪の臣下として表す事件が勃発する事となる。
 189年伝染病により一日に2000人の死者が出て深刻な食料危機に陥るが、犯人はクレアンデルの買い占めであり貧しい者に給付する分の古い麦も市場の上質な麦も高騰し、民衆は怒りデモ隊を結成するが彼は粛清。
 この騒動を報せれていなかったコンモドゥスだが姉のファディラが錯乱したのでそれを知り、肝を潰して自ら彼を槍で処しデモ隊に遺体を掲げて後に晒し首、遺体は市中引きずり回された挙げ句下水に放り込まれた。
 この一件でコンモドゥスは深く反省し彼なりの親政を始める事となる。
 大火災での迅速な復興、屈強な剣闘士として国民達には娯楽を与える等とした結果軍や民衆の支持を得た。
 だがその最期は愛妾とプロレスの教師の共謀により、風呂上がりに毒入りワインを飲まされたが解毒剤を常飲してた為、吐いただけに済んだがその隙に教師に絞首されて暗殺された。
――――剣闘士としての試合記録は735勝、これが彼の最初で最期の負け試合であった。

 病弱だった父は死ぬ間際家臣に向けてこう誓約を遺した「息子を助けて帝国を盛り立ててくれ」と。
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