機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズ異伝 ~死の戦記~ <完結> 作:二円
MWによるエドモントン市内突入に成功し、
MW隊は三つの組に分かれて行動していた。
一つ目は橋を防衛する組。
二つ目は本命からギャラルホルンの目を逸らすための
撹乱組。
そして三つ目は本命である蒔苗を護送する組だ。
護衛組はオルガが指揮しタカキが搭乗するMWと、
蒔苗とクーデリアが乗車している装甲車、
そして護衛役のMW二台の計四台で構成されている。
蒔苗を議事堂に送り届けた際は、
全体通信で皆に知らせる事になっていた。
そのため全体通信が届いた時は、
作戦が成功したと思った。
しかし、
届いた内容は予想だにしないものだった。
「私はギャラルホルン地球本部、
地球外縁軌道統制統合艦隊司令官カルタ・イシュー。
鉄華団に告げる。
諸君が護送していた蒔苗東護ノ介及び、
クーデリア・藍那・バーンスタインの身柄はこちらが押さえた。
我々が要求するのは、
諸君等との決着である。
鉄華団に対し、
MS三機同士による決闘を所望する。
我々に勝てば、
身柄を解放しよう。
しかし負ければ、
大人しく縛に就いて貰う。
三十分。
此処に来るまでの時間を考慮し、
三十分待とう。
今から位置情報を送信する。
そこにMS三機来て貰いたい。
この決闘を受けてくれる事を願う」
通信が終わると、
位置情報が送られてきた。
そこは禁止区域内にあった。
オルガのMWから流れる通信の内容を聞いて、
俺は幻聴じゃないかと疑った。
内容が事実ならば、
護衛組は壊滅している事になり、
送られた位置情報には、
ギャラルホルンのMSが三機いる事になる。
しかも目的が決闘と聞いては、
何を言ってるんだと言いたくもなる。
幻聴かどうか確かめようと思い、
思わず近くにいたバルバトスとグシオンリベイクの顔を見る。
両者も同じ事を考えていたようで、
こちらを見ていた。
三機のMSがお互いの顔を見合わせているというのは、
実にシュールな光景だろう。
だがこれで幻聴でない事がハッキリした。
次に俺がした事は咄嗟だったが、
バルバトスの肩を掴む事だった。
あの通信を聞いて三日月が黙っているとは思えなかったからだ。
「離してよシノ」
三日月から声を掛けられる。
その声は冷たく底冷えするものだった。
明らかに殺意を抱いている。
もしかしたらオルガが死んだと思っているのかもしれない。
「落ち着け三日月」
「手を離してよシノ。
オルガの仇を討つんだから」
「オルガを殺すなよ。
オルガはまだ生きている筈だ」
「生きてる?」
生きているという言葉に反応したのか、
三日月の殺意が薄れた気がした。
だがあくまでも予想で確実じゃないがそこは黙っておこう。
「殺したなら、
殺したと伝えれば良いんだ。
その方が士気が下がるからな」
「……そっか」
一応納得してくれたようだ。
だが安心出来る状況ではない。
「それでどうすんだ?」
昭弘が聞いてきた。
「行くんじゃないよ!
これは罠だよ」
アジーさんが声を掛け、
俺達が決闘に参加しないよう注意してきた。
「けどよアジーさん!」
「市内でMSの決闘なんて出来る訳がない」
「そうよ。
そもそもギャラルホルンが、
MSを市内に持ち込む訳ないじゃない」
アジーさんとラフタさんが、
MSの決闘に参加する事の危険を訴え、
決闘が偽りだと答える。
だが全体通信をした事から、
蒔苗とクーデリアが捕らわれた事は否定しなかった。
確かに、
ギャラルホルンがMSを市内に持ち込み、
決闘場所にするとは普通考えもしないだろう。
そんな事をすれば、
世論が黙っている筈がない。
アジーさんとラフタさんの考え方は間違っていない。
だが俺は決闘が偽りではないと考えていた。
根拠は無い。
強いて言えばカルタ・イシューだからと答えるべきだろうか?
どちらにしても、
送られた位置情報にMWの偵察を行えばハッキリする。
幸いというべきか、
ビスケットは拠点で、
撹乱組や偵察している団員から送られてくる情報を纏め、
それを必要としている所に送るという、
オペレーターのような役を引き受けている。
ビスケットに位置情報の偵察を提案しようとした時だった。
まるで計っていたかのように、
ビスケットからの通信が入った。
「皆、
さっきの通信を聞いた?」
「ビスケット!
オルガが……」
「三日月、
落ち着いて聞いて。
撹乱組が周囲を捜索して、
襲撃を受けたと思われる場所を発見したんだ。
そこには大きな陥没跡と、
ひっくり返され無力化されたMWが二台あったのみだったんだ。
幸い乗員は生きていたから、
状況を聞いてみたらとんでもない事が分かったよ」
「おい、
とんでもない事ってまさか……」
「うん、
昭弘の想像の通り、
護送中にMS三機が降り立ったらしいんだ。
それに巻き込まれて、
護衛のMWがひっくり返ってしまったらしい。
MSは装甲車に蒔苗さんとクーデリアさんがいるのを確認すると、
近くに止まっていたオルガのMWと共に掴んで移動したそうなんだ。
どうやらオルガのMWを連絡用に捕まえたみたいだ。
向こうはオルガが鉄華団のリーダーだって事に気づいていない。
知っていたらその事を伝えるだろうしね」
「そんな馬鹿な!
有り得ない!」
ビスケットからの報告で、
護送組がMSに襲われたと聞かされ、
アジーさんはそれを強く否定した。
信じられない気持ちは分かる。
白昼堂々とMSを市内に投入するギャラルホルンの行動は、
悪手以外のなにものでもない。
絶海の孤島のミレニアム島なら兎も角、
代表選挙を控え、
市民の注目を集めるエドモントン市内では、
ギャラルホルンお得意の情報操作も不可能だろう。
「信じられないですけど本当なんです。
実際市内にエイハブ・ウェーブの波動が検知されているんです。
その場所が、
先程送られた位置情報と一致しています。」
「嘘でしょ?
ギャラルホルンの奴等、
何考えてんのよ!
信じらんない!」
ギャラルホルンの行動に、
ラフタさんも困惑を隠せない。
「撹乱組から位置情報の偵察結果が出て、
やっぱり三機のMSが立っていたそうだよ。
それと蒔苗さんとクーデリアさんが乗っている装甲車と、
オルガの乗っているMWが、
MSの隣のビルの屋上に乗せられているんだ」
「ビルの屋上だぁ?」
昭弘も俺もこれには驚かざるおえなかった。
人を乗せた車両をそのまま屋上に乗せるとは、
大胆というべきか大雑把というべきか。
「うん。
勿論屋上の入り口は壊された状態でね。
MSに睨まれている状況で迂闊に動く事は出来ないんだ。
撹乱組にオルガの救出に向わせたいんだけど、
MSが立っている限りそれは出来ない。
だから……」
ビスケットが何を言おうとしているのか分かった。
三機のMSがお互いの顔を見合わせて頷く。
「決闘に参加して、
MSをオルガ達がいるビルから遠ざければいいんだな?」
「うんお願い。
現状それしか手立てがないから」
「へっ、
問題ねえよ」
「必ず殺してやるから」
昭弘と三日月の返事が非常に頼もしい。
「アジーさんとラフタさんには済みませんが……」
「分かってるよ。
その間に襲ってくるギャラルホルンを、
私達二機で凌げって事だろ?
問題ないよ」
「そうそう。
奇襲が成功したから、
数はそんなに多くないだろうしね」
アジーさんとラフタさんは何事も問題ないかのように承諾する。
いくら奇襲で数を減らしたからといって、
それでも大きな脅威である事に違いない。
それに別の部隊からの応援として現れる可能性を考えれば、
二人に掛かる負担は相当なものになると考えると、
早めに決闘を終わらせ合流する必要がある。
「こっちは問題ないからさ、
さっさと終わらせてきな」
「負けるんじゃないよ!
特にピアスのアホは!」
出発前の激励を受ける。
未だにアダ名が変わっていないのが少し傷つくが、
こればかりは仕方がない。
「二人とも先に行くよ」
「あっ、
おい三日月!」
バルバトスが既に動き出した。
顔を見合わせる際に掴んでいた手を離していた事を忘れていた。
慌ててグシオンリベイクも後を追う。
ここで遅れるわけにはいかない。
「直ぐに戻って来ますんで、
此処はお願いします!」
タービンズの方々に此処の防衛を託して、
俺はローラーユニットを起動して地上走行を開始。
三日月と昭弘の後を追った。
送られた位置情報に向う俺達は終始無言だった。
オルガは無事なのか?
三日月はそれが気になってしょうがないようで、
バルバトスの動きに必死さが見え、
グシオンリベイクも同様で、
急加速して少しでも早く到着しようとしていた。
俺は二人に離れないようについていくのがやっとだった。
ブースターやスラスターを全開にすれば良いのだが、
長期戦に備えてあえて抑えていた。
そのため別の意味で必死になっていた。
市内に入った後は、
二機についていくのが大変だった。
角を曲がる時は二機はスピードを緩める事無く曲がるので、
見てるこっちがヒヤヒヤする。
問題はこちらが曲がる時には既に、
二機が別の道の角を曲がっているので、
急がないと見失ってしまう事だった。
最短ルートを設定しているので迷う事は無いが、
だからといって大幅に遅れるわけにはいかず、
早すぎると文句を言うわけにはいかない。
抑えなければ良かったかと少し後悔していた。
やがて二機のスピードが落ちてその差が縮まってくる。
目的地に着いたのだ。
必死に追いかけていたので気づかなかった。
こちらもスピードを落とし、
二機の間に並び立つ。
目の前には三機のMSが立っており、
その姿に俺は驚いていた。
三機とも明らかにグレイズリッターではなかったのだ。
一応真ん中のMSは胴体がグレイズリッターのようだが、
その他のパーツは黒いパーツを使用しており、
特に腕部は大型の肩シールドが取り付けられており、
妙な威圧感を与えており、
改造されたグレイズリッターというよりも、
様々なパーツで組み立てられたツギハギの機体というべきかも知れない。
左肩のシールドに決闘の印を意味する赤い布がつけられており、
恐らくカルタが搭乗していると思われる。
こちらから見て右側の機体は、
威圧という意味では三機の中で最も高く見えた。
目に付くのは持っている武器だろう。
右手には自身を超える高さを誇る槍らしきものを持っていた。
その槍らしきものは螺旋を描いており、
ドリルといってもいいかもしれない。
そして左手には大型の円形のシールドを持っており、
イナヅマシールド以上の大きさで、
完全な円ではなく、
穴が開けられたかのように欠けていた。
恐らくドリルのような槍をそこに嵌める事で、
突撃と防御を同時に行うためと思われる。
武器だけではなく、
見た目にも目を引く所がある。
まずフロントアーマーが大型化しており、
MSの太ももが隠れて見えない程だった。
見ればスラスターがついている。
そしてリアスカートは更に大きく、
もし後ろから見れば機体の足が隠れて見えない程だ。
鈍重そうに見えるが、
フロントアーマーのスラスターから推測して、
リアスカートにもそれ以上のスラスターがついていると予想出来る。
そうなると見た目に反して機動力の高い機体といえるだろう。
最後の左側の機体は、
二機と比べて割と普通に見える。
とはいっても、
脚部は四本の爪に支えられる形になっており、
異形さはあるが、
二機と比べてしまうと、
やはり普通に見えてしまう。
しかし両手に持っている武器が普通ではなかった。
ハサミのようなものを持っており、
MSを両断できそうな大きさだった。
そのMSの右手に持つハサミが、
近くのビルの屋上に向けられる。
その先には、
装甲車とMWが乗せられていた。
おかしな事をすれば攻撃するという事だろう。
「三日月……」
「分かってるっ」
迂闊に動かないように注意するが、
明らかに三日月は怒っている。
飛び出さないだけでも、
よく我慢していると褒めたくなる。
もしも一機だけならば、
レンチメイスを投げたりして飛び出していただろう。
しかし三機もいては流石に飛び出す訳にはいかないと、
自制しているようだ。
こちらが三機そろって来た事を確認したのか、
真ん中のMSが一歩前に出た。
そして通信ではなくスピーカーで宣言を始めた。
「よく来てくれた。
諸君らの決断に感謝する。
私は地球外縁軌道統制統合艦隊司令官カルタ・イシュー。
そして……」
「御託はいいからさっさと始めろよ」
「貴様!
カルタ様のお言葉を……」
「よい、
無作法の野蛮人に礼儀は不用のようだ」
右側のMSがドリルらしき槍を、
バルバトスに向けて抗議するが、
カルタはそれを不問に処した。
通信ではなく、
スピーカーで話し合う事に俺は違和感を感じた。
「では決闘を始めよう。
ここでは手狭ゆえ、
場所を変えよう」
カルタの乗るMSが上昇し、
移動を開始した。
それを見たバルバトスが、
後を追う。
「逃がすか!」
我慢の限界だったらしい。
出力全開で動き出し、
直ぐに見えなくなった。
意外にも二機のMSは後を追わなかった。
カルタが勝つと信じているのだろうか?
次はどう動くのか?
待っていると今度は右側のMSが一歩前に出た。
「次はこの『ロスヴァイセ』と戦って貰おう。
誰が戦う?」
ドリルのような槍と大型円形の盾を持つMSが、
ドリルのような槍を構え、
スピーカーで決闘の相手を尋ねてきた。
どうやら三機同士のチーム戦という訳ではなかったようだ。
一対一の戦いを離れた場所で三箇所同時に行う形式のようだ。
……それにしてもロスヴァイセか。
『ニーベルングの指輪』に登場するヴァルキリーの一人で、
確か白馬を意味するんだったか?
という事はあのMSは、
『ヴァルキュリア・フレーム』を採用している事になる。
厄祭戦後期に開発された非常に古い機体だ。
しかし同時期に開発された『ガンダム・フレーム』を使用した、
バルバトスが活躍しているので、
決して使えないわけではない。
重装備高機動性のMS相手にどう闘うべきか?
そう考えていた時だった。
「俺が相手になるぜ」
何と昭弘が名乗りを上げた。
グシオンリベイクが一歩前に出る。
「貴様が相手か。
良いだろう、
ついて来い」
構えを解くと、
ロスヴァイセの両足は後ろに倒れ、
リアスカートに格納された。
変形機構を備えたMSだったのだ。
フロントアーマーとリアスカートのスラスターが吹かしているお陰か、
機体が浮いていた。
その状態を維持したまま、
ロスヴァイセは移動を開始した。
グシオンリベイクはその後を追う。
「悪いなシノ。
先にやらせて貰うぜ。
戦うならデカイ方が良いからな」
「気をつけろよ昭弘。
あのMS、
見た目に反して早いぞ」
「ああ分かってる。
それより俺よりもお前の相手の事を気にしとけ」
昭弘からの忠告の通信を受けた。
有難く受け取っておこう。
残るは両手に大型のハサミを持ったMSだ。
ビルにハサミを向けたままで顔をこちらに向け、
スピーカーで話しかけた。
「貴様が残ったか」
ハサミの向きをビルからイナヅマ号に変えた。
「感謝するがいい。
この『オルトリンデ』で、
貴様を刻んでやるのだからな」
……オルトリンデというのか。
確か『ニーベルングの指輪』に登場するヴァルキリーの一人で、
剣の切っ先を意味する。
この機体もヴァルキュリア・フレームを使用した機体のようだ。
何処で戦うのだろうか?
そう考えているや否や、
突如オルトリンデが突撃してきた。
まさか此処で戦う心算か!
それにしても意外と早い!
オルトリンデはハサミを開き突き出した。
イナヅマ号を切断されるわけにはいかない。
ホイールユニットを起動しバック走行する。
すると先程イナヅマ号がいた空間が、
オルトリンデのハサミで切断された。
危うく難を逃れたようだ。
それにしても危なかった。
相手を刺激しないようにと、
武器を構えていなかったので、
突然の攻撃に対応出来ていなかった。
「おいおい、
場所を変えないのかよ」
まさか移動せずに戦うとは思わなかった。
その事に一応スピーカーで抗議する。
「その必要はない。
カルタ様が仰った。
無作法の野蛮人に礼儀は不用と。
貴様のような卑怯者に、
態々場所を変える必要などない!」
「貴様のようなって、
何処かで会ったっけ?」
「惚けるな!
ミレニアム島での貴様の悪行!
私は忘れん!」
どうやらパイロットは、
ミレニアム島での戦闘で、
カルタ機のグレイズリッターを抱えての撤退した一人のようだ。
おそらくロスヴァイセのパイロットもその一人だろう。
「貴様の卑劣な行為で、
カルタ様は瀕死の重体に見舞われたのだ!
特に脳の損傷が酷く、
再生医療技術で傷は回復しても、
意識は回復しなかった!
回復する見込みは絶望的と医者は言っていた!」
「……ちょっと待て。
そんな人間がどうして戦える?」
嫌な予感がした。
最初はMSを改造しただけと思っていた。
雪辱に燃えるあまり、
周りが見えてないと考えていた。
ミレニアム島での独断行動の件があるから、
MSを市内に持ち込むのも、
それ程おかしく思わなかった。
だが疑うべきだった。
いくらカルタでも、
MSを市内に持ち込むという禁忌を破るのはおかしいと。
イシュー家の名声を、
更に地の底に落とすような真似をする筈が無いと。
「阿頼耶識よ!
人類の禁忌である阿頼耶識システムを、
カルタ様のお体に施されたのだ!
そのお陰で、
カルタ様の意識は戻られた!
しかし人である事を捨てる結果となってしまった!」
何という事だ!
俺は叫びたくなった。
マクギリスの奴、
重体のカルタに阿頼耶識システムを施しやがった!
恐らくカルタは生体パーツとして組み込まれている!
その影響か、
自身の行動が間違っていると認識していない。
原作では、
重体で回復が見込めないアインを助けるめ、
ガエリオが彼に阿頼耶識システムを施していたが、
そうするように言葉巧みに誘導していたのがマクギリスだった。
阿頼耶識システムを施されたアインは、
驚異的な戦闘力を発揮。
アジーさん、ラフタさん、ノルバ・シノの乗るMSを撃破していた。
それを知っていたからこそ俺はアインを殺した。
捕虜として捕らえるという選択肢は無かった。
地球降下の状況で、
捕虜として連れて行く事は出来なかっただろう。
もしあのまま放置していたら、
ガエリオの敵討ちとしてマクギリスに、
自身に阿頼耶識システムを施してくれるよう、
懇願していた可能性がある。
だから俺はアインを殺した。
阿頼耶識システムを施された敵と戦う事は無いと思っていたが、
まさかカルタが、
阿頼耶識システムを施された敵として現れるとは思ってもみなかった。
その原因が俺にあるのだから笑えない。
「復讐か?」
「違う!
完全な決着だ!
カルタ様はそれを望まれた!」
「だからって市内で決闘する事もないだろう」
「カルタ様がそれを望まれた事だ!
我々はそれに従うのみ!
だからこそ我々も人の身である事を捨てたのだ!」
「人の身である事を捨てた?
……まさか阿頼耶識か?」
「その通り!
人の身では無くなったカルタ様を支えるため、
我々も人の身である事を捨てたのだ!」
誇らしげに叫ぶが、
俺はそれを聞いて頭を抱えたくなった。
マクギリスの奴、
カルタの部下にも阿頼耶識システムを施しやがった!
どうやって説得したんだ?
カルタを守るためとか言ったのだろうか?
カルタのためなら喜んで命を捧げそうな彼等なら、
引っ掛かるかもしれない。
市内にMSを持ち込むという問題を起こすカルタを、
嗜めることが無かったのはそういう事だったのか。
通信ではなく、
スピーカーで話し掛けてきた理由もこれで説明がついた。
「全ては貴様が元凶よ!
この手で貴様を刻んでくれる!」
オルトリンデが突撃を再開した。
此処で戦う訳にはいかない。
オルガがいるビルが巻き込まれる恐れがある。
バック走行でこの場を離れた。
後部カメラで道を確認する。
この先はT字になっている。
進行方向を右に曲がる。
そして曲がり角に待機し、
サブマシンガンを構えた。
姿を見せれば容赦なく弾丸を叩き込んでやる。
オルトリンデが来るのを待つ。
エイハブウェーブの波動が強くなっており、
徐々に近づいているのが分かる。
突如大きな物音がした。
オルトリンデが突撃した際に発した音に近い。
突撃するのだろうか?
だがその場合、
前のビルに激突しかねない。
ならば激突前に足を止める可能性がある。
狙うならその時だろう。
狙いをT字分岐の前ビルに変えようとした時だった。
イナヅマ号の前のビルは鏡張りだった。
イナヅマ号の姿が映っている。
そしてイナヅマ号の真上から、
オルトリンデがハサミを振り下ろそうとしている姿が映っていた。
危ない!
慌てて肩のブーストを吹かし平行移動した。
それを合図にしたかのように、
オルトリンデが真上から強襲してきた。
丁度イナヅマ号がいた場所に、
オルトリンデのハサミが振り下ろされ、
地面には隕石が落ちたかのような破壊跡が出来た。
攻撃の隙を突き、
サブマシンガンの引き金を引く。
バースト射撃モードにして放たれた三発の弾丸は、
振り下ろされたハサミによって弾かれた。
どうやら盾としても使えるようだ。
効果が薄いと判断しイナヅマチョッパーに切り替える。
懐に潜り込めば勝機はある。
そう判断し今度はこちらが突撃を開始する。
それに対しオルトリンデは、
右手のハサミを薙ぎ払う。
かわすか逸らすか。
どうするか考えていた時、
急にハサミの振るう速度が上がっていた。
まずい!
咄嗟にイナヅマシールドをアッパーの要領で打ち上げ、
ハサミの薙ぎ払いの軌道を逸らした。
よく見れば、
ハサミの外側にはスラスターがついている。
恐らく振るう途中で吹かして加速させていたのだろう。
これでは近づくのも難しい。
一旦距離を取るためバック走行する。
大きな武器を持っている相手は近づくのが難しい。
簡単には懐に潜り込めなかった。
今度は大振りになった隙を突くべきか、
とにかく相手の動きを見てからだ。
ハサミを地面に叩きつける形となったオルトリンデは、
ハサミを上げる事無くこちらを睨みつける。
どう動くのか?
回り込むのか?
そのまま直進するのか?
オルトリンデの動きに注目する。
するとオルトリンデはその場でしゃがみだした。
見れば足の四本爪が開いている。
倒れるのではないかと思ったが、
よく見れば足の中心にスプリングが立っていた事に気づいた。
オルトリンデは四本爪と一本のスプリングで機体を支えていたようだ。
……スプリング?
それがどのような効果があるのか?
それはオルトリンデの動きで明らかになった。
しゃがんでいたオルトリンデが跳躍したのだ。
スラスターやブースターを一切使用せず、
スプリングを利用しての脚力のみで、
大きく跳躍したのだ。
ビルを易々と飛び越える程の跳躍に俺は唖然とした。
先程の強襲も、
この跳躍でビルを乗り越えていたのだろう。
このままジッとしていれば、
ハサミの振り下ろしで叩き潰されかねない。
そう思いバック走行していた時だった。
イナヅマシールドに手放しかねない程の大きな衝撃を受けた。
何かに当たったようで、
それはイナヅマシールドに弾かれ、
隣のビルに当たった。
何があった?
オルトリンデを見れば、
右肘辺りから噴煙跡が見える。
肘に射撃武器が装備されていたのだ。
両手にハサミを持っていたので、
射撃武器は無いと思い込んでいたのが間違いだった。
上から射撃してくるとは思わなかったが、
それなら着地後に攻撃を仕掛ければ良い。
そう思っていた俺だったが、
それが甘い見通しだと知る事になる。
何とオルトリンデはビルの屋上に着地して、
その勢いでまたも跳躍したのだ。
跳躍の衝撃を受けたビルは、
見るも無残に崩壊した。
そして跳躍したオルトリンデは、
別のビルの屋上に飛び移り、
またも跳躍してこちらに近づいていく。
まずい。
これでは常に上を取られたままだ。
何とかしなければ。
バック走行を再開し、
武器をサブマシンガンに切り替え、
オルトリンデから距離を取る事にする。
地図を開く。
このままバックで移動しても、
暫くは行き止まりにならない事を確認する。
しかし問題は、
禁止区域を抜けるまであと四百メートルを切っているという事だ。
禁止区域を抜けても恐らくオルトリンデは攻撃を止めないだろう。
市民を巻き込んでの戦闘は何としても避けなければならない。
途中で道を曲がって、
禁止区域内を移動し続ける内にどうにかするか?
それとも直進したまま禁止区域を抜ける前にどうにかするか?
禁止区域を抜ける五十メートル前付近が十字路になっているので、
その時に考えれば良いだろう。
とにかくビルの上を飛び跳ねて移動するオルトリンデを、
如何にかしなければならない。
あと三百メートル。
オルトリンデの右肘から弾頭が発射される。
何度もイナヅマシールドで防ぐわけにはいかないと考え、
肩のブースターを吹かし右横に避ける。
弾頭はイナヅマ号に当たらず地面に着弾。
その衝撃でコンクリートの破片が飛び散り、
周辺のビルの窓ガラスが割れるのが見えた。
あと二百五十メートル。
次も同じくオルトリンデの右肘から弾頭が発射された。
肩のブースターを吹かし左横に避け直撃を逃れる。
あと二百メートル。
今度も同じくオルトリンデの右肘から弾頭が発射された。
肩のブースターを吹かし右横に避け直撃を避ける。
……おかしい。
先程から左肘からの射撃がない。
交互に撃たないのは何故だ?
何か作戦があるのか?
こちらから射撃して反応を見るべきか?
しかし、
ピョンピョン飛び跳ねて移動するので狙いがつけにくい。
しっかりと狙いをつけようとすると、
移動のスピードが落ちるので、
今度はこちらが射撃の的になる。
撃つのなら向こうが撃った後が効果的だろう。
あと百五十メートル。
オルトリンデの左肘から弾頭が発射された。
今度は肩のブースターを吹かして左横に避けようとした。
ところが、
ある程度まで進んでいた弾頭が炸裂し、
中からジェル状の何かが撒かれた。
あれに触れるのはまずい。
そう考えた俺は、
肩のブースターを全開にして全力バック走行をした。
その直後だった。
広範囲に何かが撒かれた辺りが、
突然燃え出した。
あの弾頭はナパーム弾だったのだ。
どうやら、
右肘は通常の弾頭が放たれ、
左肘はナパーム弾が放たれるようだ。
ナノラミネートアーマーは、
衝撃や熱による一定時間持続する攻撃に弱いので、
この攻撃は非常に有効だ。
危なかった。
ナパームの炎は消化が困難だ。
ナパームの炎を浴びていた所に、
右肘の弾頭の直撃を受けていれば、
かなりのダメージを受けていただろう。
「おのれ!
ジッとしておれば、
地獄の業火に焼かれこの手で敗北を刻めたものを!」
やたらと悔しがっている所をみると、
どうやら渾身の策だったようだ。
飛び跳ねながら悔しがる姿は実にシュールだ。
あと百メートル。
そろそろ禁止区域を抜ける。
ここでオルトリンデを引き摺り下ろす事に決めた。
ここまで移動している内に、
ようやく攻略方法が見えてきた。
オルトリンデが射撃する前に何とかしないと。
あと七十五メートル。
サブマシンガンをオルトリンデの跳躍方向に向けて引き金を引く。
何度も跳躍移動を見ていたので、
動きを掴むのは簡単だった。
弾丸三発がオルトリンデの胴体に向うが、
両手のハサミを交差し盾にする事で、
弾丸は弾かれた。
問題は無い。
狙いはオルトリンデではないからだ。
本命はここからだ。
サブマシンガンをビルの屋上に向けて引き金を引く。
放たれた三発の弾丸はビルの壁を貫通し、
屋上を破壊した。
「何ぃ!」
これにオルトリンデは慌てた。
何故ならそこは次のオルトリンデの着地場所だったからだ。
普通ならスラスターを吹かして着地地点をずらす事が出来ただろうが、
ハサミを盾にした事で、
こちらの射撃が見えていなかった事が致命的だった。
スラスターを吹かそうにも間に合わず、
オルトリンデは着地に失敗しビルに激突。
ビルは崩壊し、
辺り一面に白煙が上がる。
それに巻き込まれる形でオルトリンデは落下した。
チャンスだ!
体勢を整える前に懐に潜り込む!
バック走行を停止し、
武器をイナヅマチョッパーに切り替えて、
ブーストを全開にして一気に近づいた。
白煙で前が見えないが、
落下位置は掴んでいたので問題はない。
目標位置まで進むと、
そこに膝をついたオルトリンデが、
右手のハサミを杖のように刺して立ち上がろうとしていた。
その隙を俺は逃す心算は無かった。
肩のブースターを全開にして急加速する。
こちらに気づいたオルトリンデは、
咄嗟だったのだろう、
左手のハサミを開いて突き出してきた。
それに対し俺は、
イナヅマシールドを突き出し、
ハサミを挟み込ませ、
イナヅマシールドを手放した。
「何だとぉ!」
まさかハサミをそのように止めるとは思わなかったのだろう。
動きが止まっていた。
「知ってるか?
ジャンケンでは、
グーはチョキより強いんだよ!」
突き出した腕の関節目掛けて、
イナヅマチョッパーを振り下ろした。
刃は関節部分に食い込み、
スラスターによる追撃を行う。
慌てて左腕を引っ込めようとするも、
それはあまりにも遅すぎた。
追撃による圧壊と引っ込めようとする腕の動きで、
腕の関節が引き裂かれ、
イナヅマシールドを挟んだハサミは千切れた腕と共に地面に落ちた。
「馬鹿なぁ!」
腕が切断された事に驚いたのか、
オルトリンデは跳躍し、
イナヅマ号を飛び越えた。
後ろに振り向くとそこには、
着地したオルトリンデが切断された左腕を見て、
ワナワナと震えていた。
「ナンという事だ!
キザまれるのは貴様の方だ!
ワタシではない!
メにものを見せてくれる!
ケンガイケンの野蛮人めぇ!」
言葉が一瞬機械調になって叫んでいる。
ダメージを受けた事で、
システムに異常が生じたのだろうか?
「キサマを絶望に刻んでくれるぅ!」
オルトリンデが前傾姿勢をとった。
見れば足の四本爪が開いている。
跳躍する気だ。
前に跳ぶという事か?
いや違う、
前に跳ぶのにその体勢になる必要はない。
跳躍した後でスラスターで調整すればいい。
これは跳躍力を利用した急加速によるダッシュをする気だ。
それに気が付くのとオルトリンデが動くのは同時だった。
急加速によるダッシュで突撃を仕掛けてきた。
この勢いでハサミを振るわれれば、
イナヅマチョッパーをぶつけても弾き飛ばされるかもしれない。
避けるか?
いや、
ここで敵の勢いを食い止めるべきだ。
そう考えた俺は、
イナヅマチョッパーをオルトリンデに向けて投げた。
「ナヌゥ!」
まさか武器を投げるとは思わなかっただろう。
咄嗟にハサミを振るい、
イナヅマチョッパーを弾いた。
しかし無理にハサミを振るった事で体勢が崩れ、
ダッシュの勢いが止まった。
その隙を突いて懐に潜り込もうと
肩のブースターを全開にして急加速する。
しかしオルトリンデの方が早かった。
ハサミを薙ぎ払ってきたのだ。
後ろに避けるわけにはいかない。
折角此処まで近づいて離れては、
また近づくのが更に難しくなってしまう。
だからイナヅマ号をしゃがませた。
しゃがんだイナヅマ号の上を、
振るったハサミが空を切る。
今度はこちらの番だ。
両肩ブースターを別々の方向に吹かしてのターンブーストを行い、
さらにローラーユニットを起動しての超旋回を行った。
その勢いを利用して蹴りを繰り出す。
足払いという奴だ。
勢いをつけたイナヅマ号の蹴りに、
オルトリンデの足は耐えなれなかった。
バランスを崩し、
頭部が潰れるかの勢いで転倒した。
ここでオルトリンデが起き上がるまで待つ心算は無かった。
オルトリンデの右腕の間接を踏みつけて動きを抑える。
これでハサミは振るえない。
しかしオルトリンデは何とか足をどけようと、
ジタバタと腕を動かし抵抗を続けていた。
「オノレェ!」
それは何に対しての叫びだろうか?
何故こんな目にと言いたいのか?
何をする気だとでも言いたいのだろうか?
俺はそれを聞く心算は無かった。
トドメを刺す、
それだけだ。
何の武器も持っていないから、
まだ逆転できると思っているのだろうか?
だとしたらそれは甘い考えだ。
イナヅマ号は手ぶらじゃない!
「イナヅマナックル!」
久しぶりの技名を宣言し、
必殺の一撃を叩き込んだ!
左手のナックルガードを振るい、
オルトリンデのコクピットに叩き込み、
ナックルガードの先端から高電圧の電気ショックが放たれた!
「ギャリュダジャマアァァ……!」
青白い光はコクピットに流れ、
中のパイロットの絶叫がスピーカーを通して辺りに響き渡るが、
直ぐに聞えなくなった。
電気ショック放出を終え、
ナックルガードを退かす頃には、
既にオルトリンデは事切れたかのように動かなくなっていた。
更に細かく見れば、
コクピットの開閉部分の隙間から煙が漏れている。
殴った事で隙間が生じたようだ。
コクピット内から漏れた煙は、
電気ショックによってコクピット内の機器がショートしたものだろう。
それは阿頼耶識システムも例外では無い筈だ。
パイロットの神経と機体を直結させて、
機体の情報処理を脳内で行い、
高い操縦性を引き出す阿頼耶識システムにとって、
高電圧の電気ショックは最悪の攻撃だろう。
機体に流れた電気がパイロットの神経に流れれば、
命が停止する事は間違いない。
生体システムと化した事が仇となった訳だ。
最早オルトリンデは動く事は無い。
何とか倒す事が出来た。
その事に俺は安堵したが、
それは長くは続かなかった。
その要因が、
後方の道路で起きているナパーム火災だった。
オルトリンデが発射したナパーム弾の着弾地点は、
辺り一面が燃え上がり、
黒煙で周囲の景色が見えなくなっていた。
きわめて高温で燃焼しているためか、
周囲の空気が歪んで見える。
禁止区域内のために人がいないのは幸いというべきか。
この火災を放置する事は出来ない。
下手をしたらエドモントン市内全域に広がる可能性があり、
そうなれば流石に選挙どころではなくなるだろう。
この町の消防署に任せるという手もあるが、
MSが市内に持ち込まれた影響で、
ライフラインの機能が停止している状況では、
消火活動が上手く機能せず、
手遅れになる恐れがある。
どうやって鎮火するべきか?
ナパーム弾は可燃剤に増粘剤を添加する事で、
ゼリー状になったものを装填した油脂系の焼夷弾だ。
水をかけても簡単には消火出来ない。
どうすれば良い?
全く良い方法が浮かばない。
ビスケットに連絡して指示を仰ぐべきか?
それにしても面倒な事を引き起こしてくれたものだ。
思わず倒れているオルトリンデに悪態をつきたくなった。
オルトリンデを見て、
リアスカートに何かのタンクが懸架されている事に気づいた。
何のタンクだこれは?
それは赤く大きなもので、
放出口が見える。
燃料タンクとは考えづらい。
オルトリンデがスラスターやブースターを多用している場面が見られなかった。
そもそも放出口がある時点で、
何かを放出するものと考えるべきだ。
……もしかしたら。
俺はある可能性に気づき、
それに賭けてみる事にした。
イナヅマ号で、
オルトリンデのリアスカートに懸架されている赤いタンクを強引に取り外し、
サブマシンガンを装備しつつ、
射撃を単発射撃モードに設定した事を確認すると、
赤いタンクを持ったまま火災現場に近づいた。
広がる黒煙で前が見えないが、
着弾地点は覚えていた。
そこに目掛けて赤いタンクを投げた。
それが落下地点に落ちる前に、
サブマシンガンの引き金を引く。
発射された弾丸は、
赤いタンクの放出口に命中し、
大きな穴が開き、
赤いタンクはそのまま黒煙の中へ消えた。
反応を待つ。
暫くすると黒煙の中から、
何と大量の泡が現れた。
先程炎に包まれていたのが、
今度は泡が包み込んでいく。
それに伴い黒煙が晴れていき、
やがて燃え上がる炎は全て泡となって消えた。
どうにか鎮火出来たようだ。
その事にホッとした。
予想が当たって本当に良かった。
あの赤いタンクは、
予想通り消火タンクだったのだ。
恐らく万が一、
自機にナパーム弾の炎を浴びてしまった場合に備えて消火出来るよう、
保険としてつけていたのだろう。
辺り一面は泡に包まれているが、
燃え広がるよりはマシだろう。
そろそろ此処を出た方がいい。
決闘の結果をあえて知らせない。
市内に突入する前に決めた事だった。
実は市内突入前に、
ビスケットから指示を受けていた。
全体通信を流していた際に、
鉄華団の通信チャンネルを入手している可能性があり、
それは通信の傍受可能を意味する。
そのため、
敵に出来るだけ情報を与えないようにしたいというのが、
ビスケットの考えだった。
なので敵に与える情報、
つまり流して良いのは、
オルガからの作戦の成功の知らせのみ。
それが流れるまでは、
可能な限り通信は控え、
決闘の勝利後は速やかに市内を離脱し、
アジーさんとラフタさんが戦っているであろう更地に合流する。
それがビスケットから受けた指示だった。
三日月と昭弘はどうしているだろうか?
既に決着がついて、
合流しているかもしれない。
あの二人が敗北しているとは欠片も思ってはいない。
多分俺が一番遅いだろう。
ラフタさん辺りが、
遅いとか言って怒ってそうだ。
消火活動で遅れてしまったが、
ビスケットに話せば許してくれるだろう。
それで十分だ。
とにかく急いで合流しないと。
落とした武器と防具を回収した後、
ローラーユニットを起動させ、
走行移動を開始。
決闘場を離れた。
後は時間まで生き残るだけだ。
次回予告「カルタからの決闘第二戦は、
グシオンリベイク対ロスヴァイセ。
重武装一撃離脱を得意とするロスヴァイセに、
グシオンリベイクはどう戦うのか?
三人称でお送りする次回の話は、
『リベイク』。
お楽しみに」