機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズ異伝 ~死の戦記~ <完結>   作:二円

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第八話 狙うべき場所

 オルガからの緊急呼集により、

ブリーフィングルームで緊急の会議を開く事になった。

 

 その内容はギャラルホルンが蒔苗に、

鉄華団とクーデリアの引き渡し勧告をし、

それを拒否もしくは指定期限を過ぎた場合は、

武力による強硬手段に訴えるというものだった。

 

 今後の方針として、

オルガはクーデリアと蒔苗を連れ、

選挙会場であるエドモントンにある議事堂まで連れて行く事を宣言。

ギャラルホルン迎撃作戦を練る事になった。

 

 蒔苗の話によれば、

敵はカルタ率いる地球外縁軌道統制統合艦隊。

先の地球降下を阻んだ部隊であり、

停戦命令を無視して地球を降下した反乱分子を捕らえるという名目で、

今回の強硬が行われたという。

 

 考えられる敵の戦術としては、

戦艦の艦砲射撃による支援砲撃の合間に、

MSを投入し島を制圧するというものだ。

 

 島の地図をディスプレイに映し、

敵が何処から攻めるか予測し、

どのように対応するかそれぞれが話し合う。

やがて話が纏まり、

迎撃作戦が立てられようとしていた。

 

 その内容は、

原作の通りの内容になっていたが、

俺は幾つか変更しようと考えていた。

それがビスケットの死を回避すると信じて。

俺は幾つかの変更箇所をオルガに提案した。

 

「変更したい所があるんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺の変更案は受け入れられ、

迎撃作戦が立てられた。

その案に沿って皆行動していく。

 

 俺は格納庫に向かい、

イナヅマ号の状態を確認していた。

 

 そこで俺は大きな問題が発生していた事を知った。

イナヅマ号地上戦仕様換装が、

中途半端な形で行われていたのだ。

 

 バルバトスの修理が優先され、

イナヅマ号の換装が後回しとなっていたので、

てっきりイナヅマ号はそのままの状態だと思っていたのだが、

何と修理は終わり、

後はセッティングを終えるのみなので、

余った人員で、

イナヅマ号地上戦仕様換装を始めてしまったのだ。

 

 俺が格納庫に来た時には、

下半身の換装を終え、

肩の換装をするために、

可動式肩ブースターが両肩共に外され、

分解された後だった。

 

 今組み立てても間に合わない。

予備のパーツでどうにかするしかなかった。

 

「ごめんシノ。

まさかこんな事になるなんて」

 

「ヤマギが謝る必要ないだろ。

やる事を全力でやるだけさ」

 

 まさかこんな事になるとは思わなかったと言うべきは俺だ。

イナヅマ号の換装作業を明日に延期するように、

ヤマギに伝えなかった俺のミスだ。

バルバトスを万全の状態にするためと言えば、

怪しまれる事もなかっただろうに。

 

 悔やんでも仕方がない。

新たに生まれ変わったイナヅマ号、

『イナヅマ号第二形態』のコクピットに入り、

機体チェックをする事にした。

 

 イナヅマ号の全体像をモニターに映す。

両肩の可動式ブースターの代わりに、

予備の肩パーツが取り付けられているが、

予備といっても、

露出しているフレームを被せている程度のもので防御力は低い。

総合的に見て防御力、

機動力が低下した形となる。

 

 全体的な性能が低下しているが、

向上している点もある。

 

 足先と踵を大型化し、

遂に腰部スラスター換装を実現したのだ。

 

 これにより接地面の拡大による安定性が向上。

腰部スラスターの機能もあり、

安定性向上による阿頼耶識による操作負担が軽減されたおかげで、

システムチェックがスムーズに行われ、

予想よりも早くチェックが終了した。

 

 機体チェックを終え、

コクピットから出るとヤマギが話し掛けてきた。

 

「どうだった?」

 

「軽く感じたよ。

後は実際に動かしてみるだけだ」

 

「大丈夫かな?」

 

「武器は変わってないから問題なく戦えるさ」

 

「そうじゃない」

 

「え?」

 

 どういう事だろう?

換装が中途半端なイナヅマ号で戦えるかという質問かと思ったが。

 

「ギャラルホルンを敵に回して、

俺達火星に帰れるのかなって」

 

 ヤマギは不安を抱いていた。

この島を出る事が出来ても、

ギャラルホルンに狙われ続ける事になる。

その状況で宇宙に出られるとは思えないのだろう。

 

「それは違うぞ」

 

「え?」

 

「ギャラルホルンが狙っているのは、

お嬢さんだ。

俺達じゃない。

この仕事を成功させて、

お嬢さんとアーブラウとの交渉が開始されれば、

ギャラルホルンが狙う理由も無くなる。

俺達は帰れるさ」

 

「だといいけど……」

 

 ヤマギは納得してはいなかった。

ギャラルホルンの報復の可能性を考えているようだ。

それはありえないという根拠を俺は示す事が出来なかった。

 

「食事を持ってきました!」

 

 格納庫からアトラの声が響き渡った。

見れば大きな鍋と沢山の皿が置かれていた。

アトラが皆のために夜食を作ってきてくれたのだ。

 

「飯にしようか」

 

「そうだね」

 

 ヤマギもそれに同意した。

アトラからスープの入った皿を受け取りその場を離れ、

辺りを見渡す。

 

「どうしたのシノ?」

 

 ヤマギが不審な目で見ている。

それを無視してあるものを捜し続けていると、

お目当ての人物が見つかった。

 

「ビスケット……」

 

 思わず呟いてしまった。

その呟きを聞いたヤマギは、

俺の視線の先にいるビスケットを見つけた。

 

「あれビスケットさん、

MWに乗るんだ」

 

 ヤマギが驚いていた。

ビスケットの背中に、

阿頼耶識デバイスが接続されていたからだ。

 

 それは彼がMWに乗る事を意味していた。

どうやら彼にMWを乗せない作戦は失敗したようだ。

 

 俺は急いでスープを飲み干し、

空となった皿を元に戻し作業に戻る事にする。

 

 この後イナヅマ号を試運転し、

地上操作に慣れておき、

そして沖に展開しているギャラルホルン艦隊の監視を、

ローテーションを組んで行わないといけないからだ。

 

 指定期限まで残り半日を過ぎている。

準備は整っている。

後は原作通りの流れになる事を祈るばかりだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一夜明け指定期限を過ぎても、

オルガは返答をしなかった。

 

 これに対してギャラルホルンは引き渡し勧告を無視したと判断し、

掃討作戦を開始。

武力による強硬手段に出た。

 

 これに対し鉄華団は、

蒔苗の別荘周辺に防衛陣地を設置し、

沖に展開する水上戦艦を前にMSを待機させ、

迎撃の構えを見せていた。

 

 砂浜に待機しているラフタさん、アジーさん、

その後ろの森に待機している昭弘は、

上陸してくるであろうMSを叩き、

俺と三日月は突破してきたMSを叩く事になっていた。

 

 俺はイナヅマ号で格納庫前で防御体勢を取りつつ、

チラリと隣のバルバトスの持つ大型武器を見る。

 

 それはまるで肉食恐竜の頭部みたいなフォルムをしている、

特殊大型メイス『レンチメイス』だ。

その異様さに目を引く。

 

「何?」

 

 俺の視線に三日月が気づいた。

 

「いや、

凄い武器だなって思って」

 

「貰ったコンテナに入ってた。

アレより良いのがあって良かった」 

 

 アレとは刀の事だろう。

三日月は刀を気に入ってなかった。

 

「刀がそんなに嫌だったか?」

 

「刀って言うんだアレ。

だって突き刺すの面倒だし」

 

「言っておくが、

刀は切る事も出来るぞ。

叩き潰す武器じゃないからな」

 

 一応刀のフォローをする。

とは言っても刀を扱うには技量が必要で、

扱った事がない俺が振るい方等を教える事が出来ないので、

強く薦める事は出来なかった。

 

「始まった」

 

 三日月の声を合図にしたかのように、

ギャラルホルンの水上戦艦からの砲撃が響き渡った。

思わずイナヅマシールドを構える。

砲弾はイナヅマ号に直撃する事無く、

遥か後方に着弾した。

着弾地点は蒔苗の別荘の周辺だった。

 

 そこには防衛陣地が設置されていた。

軌道衛星による島の偵察で確認したに違いない。

 

 ギャラルホルンには、

蒔苗の別荘の周辺に設置している防衛陣地が、

水上戦艦の砲弾やミサイルで破壊されていくように見えただろう。

実は設置してある防衛陣地は全てダミーだ。

 

 穴を掘って、

使えないMSパーツの残骸をそこに放り込んで、

網を被せる事で衛星から見れば、

穴に入って網を被せて身を隠すMWを、

防衛陣地として活用しているように見えただろう。

見事に引っ掛かったようだ。

 

 後は全てのダミーの防衛陣地が破壊される前に、

水上戦艦の砲撃が止まるのが望ましい。

 

「昭弘、

そこから狙えるか?」

 

 オルガが昭弘に水上戦艦に砲撃を指示する通信が聞えた。

 

「やってみる」

 

 グシオンリベイクが二門の滑空砲を構え、

狙いを定めて引き金を引き、

二門の滑空砲から轟音が響き渡った。

 

 こちらは森に囲まれた所にいるので、

向こうの様子がどうなっているのか見えない。

そのため命中したのか分からなかった。

昭弘の反応を待つ。

 

「ちぇっ、

外し……」

 

「ちゃんと狙え馬鹿!

そんなんじゃ、

姐さんにどやされるよ!」

 

 どうやら命中しなかったようで、

ラフタさんが怒っていた。

 

「あ、

いや、

だってよ……」

 

 昭弘が弁明しようとしていた。

確かに弁明したくもなる。

初弾で命中させろというのは無茶にも程がある。

 

 宇宙では真っ直ぐに飛んだ滑空砲も、

地上では放物線を描き上から落ちるので、

それを計算して撃たなければならないのだ。

狙えば当たるという訳ではない。

 

「地上では大気の影響を強く受ける。

データの修正急いで」

 

 アジーさんが射撃データを修正するようアドバイスするが、

滑空砲は放物線を描き上から落ちるので、

大気や気流そして重力を計算する必要がある。

修正するのは容易ではない。

昭弘の慌てようが目に浮かんだ。

 

「さっきの感覚、

まだ残ってるだろ?

それに合わせて撃てばいいんだよ」

 

「……成る程な!」

 

 三日月からアドバイスが送られてきた。

それを頼りに、

二度目の轟音が響き渡った。

今度は命中か否か反応を待った。

 

「……感覚だけで照準を補正するとはね」

 

「阿頼耶識って、

やっぱずっこい!」

 

 アジーさんやラフタさんの反応を聞くに、

命中したようだ。

 

 これで敵戦艦の砲撃が止まる。

だが安心出来なかった。

エイハブ・ウェーブの波動が検知され、

接近しているのがレーダーで確認出来たからだ。

それはMSが上陸しようとしている事を意味していた。

 

「モビルスーツ出てきたぞ!

出来るだけ海上で叩いてくれ」

 

 オルガが上陸阻止を命じた。

 

 上陸してくるMSは、

外付けのブースターユニットを使用しての突入が予想された。

そのため、

外付けのブースターユニットを破壊すれば、

バランスを崩して海中に没する事になる。

 

 直接見る事が出来ないが、

レーダーで消えていく反応を見て、

MSが海中に没しているのが想像出来た。

 

 そろそろ来る頃だろう。

俺は上空を見上げていた。

そこに何かか落下しようとしているのが見えた。

 

「三日月!

上から何か来る!」

 

 三日月に警告しつつその場を離れる。

イナヅマ号のいた所に、

弾丸が降ってきた。

 

「上か」

 

 三日月も上の存在に気づいた。

上空にいたのはMSだった。

サーフボードのような鉄板らしきものに乗って降下してきた。

 

「ラフタさんとアジーさんは

海から来る敵を頼んます。

お前らはあれを撃ち落とせ!」

 

 オルガもその存在に気づき、

撃墜するよう指示した。

 サブマシンガンを単発射撃モードにして引き金を引く。、

弾丸は鉄板らしきものに当たるだけでMS自体に当たらず、

これ以上は無駄撃ちと判断し射撃を中断する。

 

 やがて落下してくるMS部隊は、

鉄板らしきものをこちらに向けて蹴り飛ばす。

 

 凄い勢いで落ちてくるそれは、

まるで隕石の落下のようだった。

当たるわけにはいかないので、

イナヅマ号は全力で回避に専念していた。

 

 全て落ち終わったのを確認する頃には、

MS部隊は滑走路末端に着地していた。

 

 MS部隊の数は七機。

動かしているMSは『グレイズリッター』。

地球外縁軌道統制統合艦隊が運用するMSで、

彼等が地球外縁軌道統制統合艦隊のMS部隊である事は間違いない。

宇宙にいた彼等はわざわざ、

地球に降下して来たのだ。

 

「整列!」

 

 攻めてくるかと思いきや、

鶏冠アンテナが赤いグレイズリッターがスピーカーで宣言し、

グレイズリッター部隊は皆奇麗な横一列に並んだ。 

そして皆手に手していた大剣を地面に突き刺す。

 

「私はギャラルホルン地球本部、

地球外縁軌道統制統合艦隊司令官カルタ・イシュー」

 

 列の真ん中にいたカルタの搭乗する、

赤い鶏冠アンテナのグレイズリッターが名乗りを上げていた。

この作戦の指揮官カルタが、

自らMSを駆って現れたのだ。

 

「我ら!

地球外縁軌道統制統合艦隊が!

貴様ら鉄華団に対して……」

 

 滑空砲が響き渡り、

カルタの名乗りが中断された。

俺から見て左から二番目のグレイズリッターの頭部パーツが吹っ飛んでいた。

 

「撃っていいんだよな……?」 

 

 困惑する昭弘の声が聞えた。

グシオンリベイクが砲撃したのだ。

 

「当たり前じゃん」

 

「で、

出来れば、

真ん中の指揮官を狙ってほしかった」

 

「わ、

悪い……」

 

 思わず昭弘に文句を言っていた。

というより黙っていられる自信がなかった。

あのままでは噴出していた自信がある。

何か言って誤魔化したかった。

 

「なんという……不作法な!」

 

 カルタは激怒していた。

挨拶は大事な作法であり、

それを邪魔する事は失礼にあたると思っているのだろう。

戦いに必要なのは戦技であって礼儀ではない。

 

「圏外圏の野蛮人に鉄の裁きを下す!」

 

 カルタ機のグレイズリッターが大剣を構えた。

 

「鉄拳制裁!」

 

 カルタの部下達が一斉に宣言し、

同じように大剣を構えた。

 

「鋒矢の陣!

吶喊!」

 

 グレイズリッターの部隊が横一列から矢印の形に変更し、

カルタ機のグレイズリッターは矢印の先端部分に配置され、

ブースターを噴かしての突撃を仕掛けて来た。

 

 遂に来た!

俺はこの行動を狙っていた!

イナヅマ号をカルタ機のグレイズリッターに向けて、

ブースターを全開にして突撃を仕掛けた。

 

「おいシノ!」

 

 昭弘の声が聞えたが無視した。

鋒矢の陣は強力な突破力を持つ反面、

側面に回られ後方を狙われると脆いが、

あえて迂回せず真っ直ぐに進んだ。

 

 カルタ機のグレイズリッターと切り結ぶまで、

後三百メートル。

武器をイナヅマチョッパーに切り替える。

 

 後二百メートル。

両者共に動きに変化なし。

 

 後百三十三メートル。

突如カルタ機のグレイズリッターの足元で、

地面が陥没するほどの大きな爆発が起きた。

 

 突然の爆発に、

部下のグレイズリッターは動きを止め、

カルタの乗るグレイズリッターはバランスを崩して転倒してしまった。

この隙を俺は逃す筈がなかった。

 

 起き上がろうとしているカルタ機のグレイズリッターのコクピットに向けて、

イナヅマチョッパーを振るった。

 

 そのまま何もなければコクピット直撃の斬撃。

しかし、

こちらの攻撃に気づいたのか咄嗟にカルタ機のグレイズリッターは、

腕でガードしようとしていた。

 

 その結果、

拳部分がイナヅマチョッパーに当たり、

軌道が逸れてコクピットの僅か隣のリアクター部分に直撃。

引き抜こうと思ったが、

スラスターによる追撃を行った。

 

 その勢いでリアクターが損傷し、

カルタ機のグレイズリッターが吹き飛んだ。

その途中でコクピットが変形していたのが見えた。

 

「ちっ!

外した!」

 

 思わず舌打ちしてしまった。

コクピットが損傷しても、

パイロットが無事な可能性がある。

もう一度攻撃を仕掛けようとした時だった。

 

「貴様!」 

 

 カルタの部下のグレイズリッターがスピーカーで大声を上げ、

大剣を振るってきた。

追撃を諦め、

イナヅマシールドで敵の斬撃を逸らす。

 

「お前達はカルタ様を連れて撤退しろ!」

 

 後ろの二機のグレイズリッターに、

カルタ機のグレイズリッターを連れて撤退を促す。

 

「魚鱗の陣!」

 

 二機を除く四機のグレイズリッターが、

前方に張り出し両翼を後退した形に陣形を整え、

こちらに向かって攻撃を仕掛けてきた。

 

 まずい、

四対一は不利だ。

どう戦う?

そう考えていた時だった。

 

 魚鱗の陣の左翼にいたグレイズリッターの背面が爆発し、

その勢いでバランスを崩し、

ヘッドスライディングするかのように滑り込んだ。

 

 昭弘が援護したのだ。

 

 それに驚いた他のグレイズリッター全機は動きを止め、

砲撃した方向に目を向けていた。

 

「貴様等!

後ろから撃つとは!

卑怯にも程がある!」

 

 何故か抗議の通信が届いた。

無視しようかと考えていたが、

 

「だから何?」

 

 三日月の声に気がつけば、

バルバトスがレンチメイスを振るって、

右翼のグレイズリッターを吹き飛ばしていた。

どうやら三日月が駆けつけてくれたようだ。

 

「おのれえ!」

 

 目の前のグレイズリッターが、

大剣を構え突き出してきた。

 

 俺はイナヅマシールドを斜め上に傾け、

大剣がイナヅマシールドに触れるかどうかの距離まで近づいた時、

イナヅマシールドを上げた。

 

 斜めに傾けたために、

刺さる事はなく、

イナヅマシールドを上げた事で、

大剣の軌道が上に逸れた。

大剣はイナヅマシールドに乗っている形となった。

 

 その隙にイナヅマチョッパーを薙ぎ払う。

普通なら回避出来たかもしれない。

しかし、

目の前のイナヅマシールドが目を塞ぐ形となり、

こちらの攻撃に気づいた時には、

既に回避するには遅すぎた。

 

 目の前のグレイズリッターは、

コクピットの直撃を受け、

そのまま地に伏し棺桶と化した。

 

 あと何機か。

辺りを見渡そうとした時、

 

「天誅!」

 

 別のカルタの部下の叫びに顔を向けると、

先程グシオンリベイクの攻撃で倒れていたグレイズリッターが、

こちらに近づき大剣を薙ぎ払ってきた。 

 

 構えるには遅すぎると考え大きく後退。

幸いにも斬撃をかわす事が出来た。 

 

 イナヅマシールドを前に構える。

どう来るか?

 

 ジッとしていると、

グレイズリッターが大剣の切っ先を、

左斜め下に向けた下段の構えで、

ジリジリと近づいてきた。

 

 逆袈裟斬りを仕掛けるのか?

そう思い警戒していると何と、

グレイズリッターがイナヅマ号の脚部を狙って振り回してきた。

 

 思わぬ攻撃にまた大きく後退して回避した。

そしてまた先程と同じ構えをして近づいてきた。

 

 狙いは脚部を損傷させて、

身動きが取れない所を叩く心算か?

 

 下への攻撃は盾で防ぎにくい。

盾で防がれるのなら、

防げない所に攻撃すれば良いという考えらしい。

地味に厄介だ。

 

 足を狙うなら、

こちらも足を使わせて貰おう。

 

 イナヅマ号をすり足で近づき、

グレイズリッターの足先を見た。 

 

 今度は後退しても斬撃が届くように、

更に一歩踏み込んでくるだろう。

そこを狙う。

 

 大剣の間合いに入った。

グレイズリッターの足先の動きが変化した。

足先に力を込めていた。

踏み込む気だ。

 

 今だ!

イナヅマ号の右脚部を勢いよく高く上げ、

足先をグレイズリッターの頭部に命中させた。

上段回し蹴りというやつだ。

安定性を高めていたのが功を奏した。

 

 まさか蹴りを放つとは思わなかっただろう。

見事に蹴りを喰らい、

グレイズリッターはバランスを崩して倒れた。

その隙を逃す心算はなかった。

 

 起き上がる前に、

イナヅマチョッパーを振り下ろす。

その刃はコクピットに勢いよく突き刺さり、

スラスターの追撃によって、

コクピットは破損。

グレイズリッターは大剣を構えたまま、

二度と起き上がる事はなかった。

 

 最後の一機は?

辺りを見渡せば、

倒れたグレイズリッターに、

レンチメイスを振り下ろし、

トドメを刺しているバルバトスの姿があった。

 

 どうやらこれで、

四機のグレイズリッターは全て撃墜されたようだ。

もう一度辺りを見渡す。

カルタ機のグレイズリッターが見えない。

 

「ごめんシノ。

三機逃がした」

 

 イナヅマ号の動きに気づいた三日月が謝罪した。

どうやら二機のグレイズリッターは、

カルタ機のグレイズリッターを抱えての撤退に成功したようだ。

カルタの生死を確認できなかったのは残念だったが、

撤退しただけでも十分と思うべきだろう。

 

「みんな良くやった!

ギャラルホルンの艦隊が撤退した。

船は既に手に入れた。

この隙に島から出るぞ。

合流ポイントに移動してくれ」

 

 オルガからの通信が入った。

どうやらもう一つの作戦が成功したようだ。

 

 ギャラルホルンが島の施設を砲撃しなかったのは、

クーデリアと蒔苗の身柄を取り押さえたいからだ。

そのために上陸船を使う筈。

 

 島から出るには船が必要になるので、

その船を手に入れるため、

わざと島の反対側を手薄にして、

ギャラルホルンの部隊を上陸させた。

 

 そしてクーデリアと蒔苗がいると思われている別荘に、

ギャラルホルンの部隊を引き入れさせ、 

制圧させた後に、

予め屋敷に仕掛けておいた爆薬で敵を殲滅。

 

 蒔苗とクーデリアに怪我は無く、

無傷で船を手に入れる事が出来た。

 

 それで沖まで行けば、

クーデリアが手配させたモンタークの用意した船で島を出られる。

 

 作戦は見事に成功した。

俺は思わずガッツポーズしてしまった。

ビスケットの死を回避する事が出来たからだ。

 

 やはり作戦変更をしておいて良かった。

俺が変更したのは、

原作でもあったトラップの設置箇所の変更だった。

 

 地雷と爆薬を組み合わせたもので、

設置箇所に踏み入れると、

その重みに感知して地雷が爆発し、

周囲に仕掛けた爆薬が連鎖反応を起こし、

設置箇所周囲の地面を陥没させるという仕組みだ。

 

 そのトラップを、

カルタが部隊を引き連れて、

鋒矢の陣で突撃を仕掛けていくルート上に仕掛けたのだ。

 

 これにより、

見事トラップに掛かったカルタを撃退する事が出来た。

 

 問題だったのは、

何故滑走路の末端に仕掛けるのかという理由を説明する事だった。

俺は基地の外側に仕掛けることで、

敵に突入を躊躇わせるので迎撃しやすいと言って説得させた。

 

 他にも問題はある。

トラップ付近に降下しない可能性があった。

戦闘が長引き、

ビスケットの乗るMWを見つけ攻撃を仕掛ける可能性があった。

それを防ぐべくカルタを止める心算だったが、

抜けられる可能性がある。

 

 そこでMWが逃げられる時間を稼ぐために、

原作でカルタがビスケットが乗るMWを追うルート上に、

同じトラップを仕掛けていた。

 

 既に罠はないと判断した敵の油断を誘うためと説明して、

仕掛けるのは大変だった。

 

 だが、

原作通りのルートを通るとは限らない。

今回は完全に運任せだった。

もし外れていたかと思うとゾッとする。

 

 昨日ビスケットに、

運だけで此処まで来たわけではないと言っておきながら、

運に頼った作戦を仕掛けて、

ビスケットの死を回避させるなんて皮肉な話だ。

 

 何がどうあれ目的を果たせた。

苦労に見合った成果だ。

悲劇を回避出来て本当に良かった。

 

「どうしたのシノ?

行くよ」

 

 三日月の呼びかけに気づき、

慌ててイナヅマ号を動かし、

問題がない事をアピールする。

急いで合流ポイントへ行かないと。

 

 さっきまで晴れていた空は曇り、

雨が降っていた。

原作を変える事が出来ても、

天候を変える事は出来ないらしい。

 

 そんな馬鹿な事を考えながらも、

イナヅマ号は進んで行く。

外は雨だが、

心の中は目的を果たせたという達成感で晴れ渡っていた。

 

 




次回予告「俺が目標を定めたのは、
半分は生き残るためだった。
残りの半分は何かって?
知りたかったんだ。
悲劇を回避した後のその先を。
でもまだだ。
まだ仕事は終わっていない。
最後まで気を抜いちゃいかんよな。
次回『最後の答え』」
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