真・女神転生デビルサマナー ~時と世界と魔法を超えて~ 作:ナベリウス
2013 7/24 19:35 誤字,脱字を修正
2013 7/28 8:25 改行の修正
巨大植物の一件から更に数日が経過した。海鳴の市街地の一部の機能はほぼ完全に麻痺してしまい、復旧の見通しも立たない様子。メディアは挙って海鳴市に突如出現した謎の巨大植物による被害を連日の様に報道している。
私はあの後、匠真と共に帰宅するとはやてちゃんに泣き付かれ、晃祐には「無茶し過ぎだって!幾ら絶対無敵って言われても、世の中に絶対なんて無ぇんだよ!!」と怒られてしまった。話を聴くとどうやら3人にも"あの光子砲"は見えていたというのには本当に驚かされた。 私の子だから晃祐と匠真に"葛葉の血"が流れているのは当たり前の事だけれど、修行もせずに悪魔や光子砲を見たというのには衝撃を受けたのだった。一方ではやてちゃんは、その身に間違いなく闇の書の影響が及んでいるのだという事も確信が持てたのだった。
「……士郎君、晃祐と匠真は予想以上に葛葉の血を継いでいるみたいなのよ」
「それは喜ぶべき事なのか悲しむべき事なのか複雑な所ですね……心中ご察ししますよ」
「私がもし那緒実さんの立場なら、絶対に3人には後を継いで貰いたいとは思いませんね。でも恭也なら無理やり「俺が母さんの後を継ぐ!」とか言ってきそうですけど」
葛葉の里とヤタガラス本部に送る調査書のための実地調査を終えた私は、今後の打ち合わせのために翠屋に来ていた。あんな事があったもんでここの所街に出ている人の数はごく僅かで、多くの人々が"また同じ事が起こるのではないか"という恐怖心に駆られている事が窺い知れた。そんな中でも翠屋は通常通り営業しているけれど流石に客の影はなく、あからさまな開店休業状態だということが目に見えて解る。
「……きっと晃祐君も恭也と同じ事を言いそうですね。彼も責任感が強そうですし、はやてちゃんを間近で見ているだけに余計」
「でも晃祐が今のまま悪魔召喚師になると、間違いなく早い内に命を落とす事になるわ。なんでも独りで背負い込もうとする所があるし、いつも強がってるけどそれは精神的に脆いという事の裏返しでしかない。一方で匠真は晃祐に比べて年齢の割には柔軟な考え方が出来るけれど、身体が弱いからきっと長く保たないわ」
「那緒実さん、彼も来年高校生なんですからちゃんとした判断は出来るでしょうし、もう少し信じてあげましょうよ?」
「基本的に2人が決めた事には反対はしないけれど、コレばっかりは命が掛かってるから迷うのも仕方ないと思っているのよ。私の大切な子どもだし……」
重い空気が店内全体を覆う中、奥のドアが開けられはやてちゃん位の女の子が出てくる。
「お父さん!お母さん!すずかちゃんの家に遊びに行ってくるの~~……って那緒実さんこんにちはなの~!」
「ああ、なのはちゃん。こんにちは(あの肩のフェレットっぽい動物……)」
「なのは、気を付けて行ってきなさいよ?」
「車に注意するんだよ」
「は~い!行ってきま~す!!」
なのはちゃんは元気良く出て行った……けれど、私は彼女の肩に乗っていた小動物がただの動物じゃない気がして、それを素直に2人に訊いてみる事にした。
「ねぇ2人共、なのはちゃんの肩に乗っていたのってフェレットよね?」
「ああ、"あの子"の事ですね?あのフェレットは今月の初めになのはが怪我をしているのを道端で見付けて拾ってきたんですよ」
「何か"変わってる"と思わない?」
「まさか悪魔召喚師の勘ってヤツですか?確かに何となくそう思うんですけど、悪魔が化けているとかそんなんじゃないと思うんで大丈夫でしょう、きっと」
「アナライズしてみたの?」
「ええ……確かに悪魔とも人間とも違う"波長"が検出されたので、恐らく何者かがフェレットに擬態しているのは間違いないですね。だからといって危険な存在だとすぐに断定するのは良くないと思うんです。子どもを信じてあげるのも親の使命ですから」
「那緒実さん、なのはだってもう9歳ですもの。言えない事の1つや2つ位あってもおかしくありません――私も士郎さんもヤタガラスの事を話していないのは同じなんですし、何時かお互いの心のわだかまりが解ける日が来るのを待つ以外無いんです」
「解った。そこまで言うならもう私は何も言わない。でも万が一士郎君でも手に負えない様な事態になりそうだったら連絡して頂戴ね」
「了解しました」
「桃子さんもお願いね?士郎君は何かにつけて無理しようとするんだから」
「それはもう、重々承知してますよ」
なのはちゃんのフェレットの事は一先ず2人に任せよう。幾ら先輩とは言え、無闇矢鱈にしゃしゃり出るのは良くないもの。
「あ、そうだ!那緒実さん、今度の土日に海鳴温泉で1泊して来ようと思うんですけど、ご一緒にどうですか?」
「あー……ごめんなさい。土日は珠�瑠に行って知人に会わないといけないの」
「じゃあ代わりに晃祐君と匠真君、それとはやてちゃんはど「それも難しいわね」何故です?」
「匠真とはやてちゃんが何時酷い発作を起こすか解らないし、晃祐は部活があるから」
せっかくのお誘いなのに申し訳ないと思う。でもウチは高町家と違って一筋縄でいかないくらい複雑な家庭事情があるから仕方ない。
「桃子、こればっかりはどうしようもないよ」
「そうね。ごめんなさい那緒実さん」
「いやいや、こっちこそ本当にごめんなさいね」
その後2時間程翠屋で会話をして自宅へ帰るのだった。恭也君の彼女の事、美由希ちゃんの事、色々なことを2人から聴いた。つくづく高町家は幸せだな、と思う。
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「……母さんが"アレ"に向かってから2,30分位経って、急に何処からか"ピンク色のビーム"が飛んできたんだ。そうしたらあっという間に消えちゃってビックリしたよ」
「ソレって那緒実さんの仲魔が撃ったんやないの?」
「そもそもそんなビームを撃てるのなんて悪魔以外いないだろ」
「それがどうも違うみたいで別の悪魔召喚師の悪魔でも無いらしいよ?」
「ほな一体誰がやったんやろねぇ」
「母さんでも解らない何者かの存在、正体不明の謎の巨大植物。それを含めた怪奇現象……本当に何が起きちまってるんだよ」
「まさかはやてちゃんの闇の書が」
タッ君が私の手元にある闇の書に目を向ける。幾ら冗談やからってそんなこと言うたら怒るで!
「何アホな事言っとるんや!那緒実さんも士郎さんも闇の書は関係あらへんって言っとったでー。"コレ"でシバき倒したろか!?」
「そうだ匠真、もしそうだったとしたらこんな回りくどい事なんてしないだろ!」
兄ちゃんが何か庇う事を言っとるみたいやけど、イラッと来とったから闇の書を持って背表紙でシバき倒そうと振りかぶる。
「ご、ごめん!ちょ、ちょっとやめて!やめてって死んじゃうよ〜」
「タッ君がッ!泣くまでッ!シバくのをッ!やめへんッッ!!」
「おいはやて!?マジで死ぬから勘弁してやれよっ」
私とタッ君の間に兄ちゃんが割って入って来よった時に、思わず振りかぶった闇の書を振り下ろしてもうた。アカン!!「アッーーーーーーーーーーー!!!!」
「兄ぃぃぃさぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」
ガスッ
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「兄ちゃんっ!ホンマぁ、ホンマ堪忍してぇなぁ~」
「へんじがない ただのしかばねのようだ」
「もータッ君は変な事言わへんの!」
兄ちゃんは頭から煙を上げて倒れとる……エライ事になってもうたわ~と、タッ君と2人で狼狽えとると兄ちゃんが徐ろに立ち上がって、
「はぁやぁてぇぇェ」
兄ちゃんは突然私の両肩を鷲掴みにする。アカン、兄ちゃんにシバかれてまう!
「お兄ちゃんは感動したぞッ!!」
「えっ?」
「何言ってんのさ!?」
「はやてが自力で立ち上がれる様になったのに感動したッ!!」
私のせいで兄ちゃんの頭がイカれてもうた!
「(!)はやてちゃんはやてちゃん、闇の書を振りかぶった時の事をよーく思い返してみて?」
タッ君に言われて思い出してみる……
「……………あ」
わ、私、自分の力で立ててもうた~~~~~!!
「母さんは"闇の書がはやての身体を侵食している"って言ってたけどそんな事無いだろ?偶然とはいえ、立つことが出来たのははやての努力の賜物なんだよ」
「漸くスタート地点に"立てた"って事かな?」
「誰が上手い事言えと。って、はやて?」
私、私……
「うぇぇぇぇぇぇん!良かったぁ!ホンマ良かったぁぁぁぁぁぁ!!」
「お、お!?」
「ただいま~、って晃祐!?何はやてちゃんの事泣かしてるのよ!」
「ち、違うって母さん!コレには深イイ訳がっ」
「兄さんの話を聴いてあげてよ!」
「問答無用!」
「ちょっ、まっ(ズルズルズル)」
「兄ぃぃぃさぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」
〈いぃぎゃあああああああああああああああああああああ!!!!〉
お父さん、お母さん……私やっと立てたで……次は歩けるように頑張るさかい、天国から見とってや!
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「……ほな、タッ君。兄ちゃんはどうしたん?」
「……兄さんなら多分、"地獄"に落ちたんじゃないかな」
「???」
次回に続く
ほんの少しだけでしたが漸くなのはが登場しました。
今回は第1期の4話、フェイト初登場回の裏という設定です。
次回は一気に日付が飛んで以前から第1章の山場のひとつと決めていた、匠真の誕生日4月27日の出来事を投稿したいと思います。
それでは悪魔に身体を乗っ取られぬよう、お気をつけて……