真・女神転生デビルサマナー ~時と世界と魔法を超えて~   作:ナベリウス

17 / 23
第16話です。
頭の中で展開が出来ていたので意外と早く完成しました。
しかし左腕一本は辛い。ついついEnterキーなんかを右手で押して激痛にのた打ち回る事が何回か……




2013 8/17 4:34 誤字,脱字を修正
2013 8/17 23:09 一部文章を改訂


第16話 決意の時

「――敵?まさか、前に言ってた"組織"って……」

 

「……ええ。なのはちゃんと艦長のやり取りを聴いていて確信したわ。彼女達時空管理局の目的が、なのはちゃんとユーノ君が求めているジュエルシードの様なロストロギアならば、はやてちゃんの闇の書もその類に含まれていてもおかしい事じゃない」

 

「ほな、此処に来たっちゅうことは私が目当てなん?」

 

 

 母さんの言葉に俺は耳を疑った。横にいるはやても不安そうな顔をしてるけど、母さんはそれをまるで無視するかのように言葉を続ける。

 

 

「いや、それは無いわね。もし最初から闇の書を目標に定めているのなら、今さっきまで居たアースラの様な戦艦が艦隊を組んで現れていると思う。オーパーツの名前を晃祐が出した時にあの2人は全くその事について知らない素振りをしていた。あんな技術を持っている位だもの、オーパーツについては愚か"闇の書の主"位簡単に調べられると思わない?そう考えると時空管理局は"偶然此処に現れた"と考えるのが自然だわ」

 

 

 偶然出没したとは言え、此処に居座られて万が一バレた事を考えると……俺はその事について母さんに投げかけてみる。

 

 

「でもさ……さっきは大丈夫だったけどいずれはバレちまうんじゃねぇの?」

 

「艦長は"魔力が無い"という理由で私達を危険視しなかった。つまり万が一闇の書の封印が解けて内に秘められた"魔力"が覚醒しない限り、時空管理局はこちらに手出しして来る事は無い……と、思って良いんじゃないかしら」

 

「したっけ闇の書が覚醒しようがしまいが、どちらにしろはやての命に関わる事には変わり無いんだな……ふざけやがって!」

 

 

 俺は沸き上がってくる苛立ちからメッセンジャーバッグを地面に叩きつける。

 

 

「兄ちゃん八つ当たりはアカンよ。で、那緒実さん。私等はどうすれば良いん?」

 

「おい!?なんでお前はそこまで落ち着いてられんだよ!!」

 

「晃祐は少し冷静になりなさい!……はやてちゃんをウチで引き取ってから、ヤタガラスの技術班がMAGを使った代替手段で闇の書にエネルギーの供給を行い、かつ暴走が起こらないようにするための技術研究を、時空管理局の存在を私達に知らせてくれた"ある人"の主導で行なっているわ。でもこの状況じゃあ彼女達にバレるのが先になるか、代替手段が先になるかというのは正直微妙な所だと思う」

 

「っちゅう事は、その研究が完成するまで静かにしとくしか無いんか……なんかもどかしいなぁ」

 

 

 俺は心の中で行き場の無い怒りとやるせない気持ちがぐちゃぐちゃに混ざり合って、頭がどうにかなってしまいそうになった。その時、背中で今まで気を失っていた匠真がもぞもぞと動き出したんで振り向くと、

 

 

「――――ぅ、ううん……あ、あれ……?僕、死んで……無い?」

 

「た、匠真ッ!」

「匠真!」

「タッ君!?」

 

 

 意識を取り戻した匠真は半ば呆然とした表情で俺達の顔を見回すと、生きている事を実感したのか声を上げて泣きだした。母さんは安堵の表情を浮かべ、はやては嬉しさの余り涙を流して喜んだ。俺も普段は憎い部分があるけれど、何だかんだ言って兄弟だ。嬉しく無い訳が無かった。

 俺と母さんは匠真とはやてが落ち着くの待つと、夜も遅いと言う事でそのまま家に帰って匠真には到着後に、匠真が撃たれてから気が付くまでの一連の流れを話すという事にした。それと誕生パーティーは士郎さんへの報告も含めて翠屋で行うという事になった(どうやら母さんは士郎さんに電話した時にその事についても話をしていたみたいだ)。

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

 

―翌日(4月28日)午後2時 喫茶店翠屋―

 

 

 

「ほな行くで~?……1日遅れやけどタッ君誕生日おめでとぉ~~~!!」

 

「「「「「「おめでとう!!」」」」」」

 

「皆さん、ありがとうございます!」

 

 

 クラッカーの音が店内で一斉に鳴り響く――翌日昼過ぎ、俺達は翠屋に行って匠真の1日遅れの誕生日パーティーをしている。"昨日の今日"とは思えない位、場の空気は明るくお祝いムードで満ちている。この場には俺達相原家4人と士郎さんと桃子さんの他に、高町家の長男の恭也さんと長女の美由希さん、そして恭也さんの彼女ではやての友達のすずかちゃんのお姉さんだと言う月村忍さんの8人がいて、各々が匠真に対して声を掛けている。しかしなのはちゃんはどうやらアースラに出向いたみたいで姿は見えなかった。

 ……そんな事をかく言う俺は、独り窓際の椅子に座ってその光景を複雑な心境で見ている。

 

 

「やあ、初めまして晃祐君。何時も父さんと母さんが世話になってるね」

 

 

 ふと横を見ると恭也さんが俺の横に来て声を掛けてきた。

 

 

「ども……此方こそ母さんがご迷惑をお掛けしてます」

 

「君の弟の誕生日だと言うのに浮かない顔をしてるけどどうしたんだ?」

 

「恭也さんは昨日俺達が遭った事は聞いてるんですよね?俺、匠真を助けるために初めて悪魔召喚なんてしちゃったんですけど……」

 

「弟妹を守るためには仕方の無い事さ。それが年上の、兄貴の務めだよ。それに君は結果的にではあるけれどなのは達の事も守ってくれた。俺も美由希も感謝してるよ」

 

「なのはちゃんからも話を聞いてるんですね。でも俺は邪魔をしただけで「でも無益な戦闘は防げた」」

 

「――なのはと一緒にいたと言う"金髪の子"……なのはその子と友達になりたいと思っているらしい。でも向こうは一方的に敵として認識して取り合ってくれない……君の"勇気ある行動"は2人の今の関係を変えるには充分な行為だった思う」

 

 

 俺は周りに悟られない様に窓の方に身体を向き直すと、恭也さんも椅子に座って窓の方に身体を向けようとすると、突然背中に気配を感じて直ぐに振り返ると、そこには女性が2人立っていた。

 

 

「恭也ぁ~?」

「恭ちゃ~ん?」

 

「何こんな目出度い時にシリアスな空気全開にしてんのよ~」

 

「ごめんね~恭ちゃんの話に付き合って貰っちゃって」

 

「いえ……俺の話に恭也さんが乗ってくれたんで俺が悪いんです」

 

 

 その後は忍さんと美由希さんも加えた4人で、内心非常に申し訳無いと思いながらも昨日の話をした。

 

 

「はぁ~……ったく、晃祐君は深刻に考え過ぎじゃないかな」

 

「まあ、私も長女だから解らない事は無いわ――で、君はどうしたい訳なの?」

 

「正直、苛立ちだけが募ってどうすりゃいいか解らないんです。俺なんて特に秀でた才能もクソも無いですし」

 

「……うん。それがいけないんだと思う。晃祐君は自分自身を卑下し過ぎてる」

 

「君は大きな思い違いをしてるな……才能なんてのは努力で補えるのさ。人には得手不得手があるけれど、悪魔召喚や自分の身を顧みずに化け物に立ち向かうという精神は立派な才能なんだ。それに才能が無いというのは"ゼロ"なだけであって決して"マイナス"なんかじゃない。これから幾らでも伸ばしていけるもんだよ」

 

「そういうもんなんすかねぇ……」

 

「そういうもんだよ。恭也だって美由希ちゃんに比べて剣術の才能が無いって言われてたけど、それを努力でカバーして今までやって来たんだから!」

 

 

 さも自分の事の様に誇る忍さんを見て恭也さんは苦笑いを浮かべる――ああ、俺は近くに自分の事を認めてくれる人がいなかったんだ。俺ははやてが家に来るまで、あのクソ親父から穀潰しだの何だのって言われてボコボコにされてたから、性根がクソ親父に似てひん曲がった人間になっちまってる……正直言って羨ましくもあり妬ましくもある。そう思いながら俺は言葉を口にする。

 

 

「確かに今までは悪態をついたりネガティブな事を言ったりしてました、でも何時だかはやてに言われて気付いたんです――俺は何もかも始める前から既に諦めてたって事を。だからこのまま傍から黙って見てなんていられません。はやてが俺や匠真、そして相原家を必要としなくなる日が来るまで……俺はアイツを守りたい」

 

 

 俺の言葉を聴いた3人は顔を合わせて微笑んだ後、俺に語りかけて来た。

 

 

「立派な理由じゃないの。私達はそれをバカになんてしない」

 

「もう晃祐君のやる事は決まってる様なもんじゃないの?」

 

「晃祐君は背中を誰かに押して貰いたかったんじゃないのか?なら俺達が君の背中を押して上げるよ。君は君の思った道を進めば良いさ。俺達は一応ヤタガラスの先輩だし、色々アドバイスをしてあげられる事も有るだろうしな」

 

 

 一瞬、恭也さんの言葉に耳を疑った……ヤタガラスだって?

 

 

「まさか、3人ともヤタガラスに参加しているんすか?」

 

「俺と忍は正規の構成員、美由希は訓練生なんだ。俺も美由希も父さんから事実を聴いた時に父さんの代わりにはなれなくても、御神流の剣士としてやれることが有るんじゃないかと思って志願したのさ」

 

「私は2人と違って、月村家が代々ヤタガラスのシャーマン――つまり呪術師を輩出する家系だからどっちみち"影の家業"を継がなきゃいけなかった。恭也がヤタガラスに志願してくれたお陰で今でもこうして公私共にパートナーとして居られるのがとっても幸せよ~」

 

「もう忍さんったらこんな時にノロケるのは止めてくださいっ!」

 

 

 忍さんが恭也さんに腕を絡ませるとすかさず美由希さんが突っ込みを入れる……ま、まぁ"末永く爆発しろ(おしあわせに)!!"としか言い様が無いな。

 

 

「……コホン!兎に角、恭ちゃんの言った様に晃祐君が素直に思った通りの事するべきだと思うよ?自分に嘘を付いたって自分自身のためになんてならないし!!」

 

「あ、ありがとうございます……皆さんのお陰で踏ん切りがつきました。俺、何処までやれるか解りませんけど、母さんに打ち明けてみたいと思います」

 

 

 よし!そう決めたら帰る途中に言ってみよう……"言うだけタダ"だからな!!

 

 

「――兄ちゃ~ん!こっち来ぃへんとケーキ無くなってまうで~~~!?」

 

「兄さんっ!僕が全部食べちゃって良いのかなぁ~!?」

 

「おっ?今行くからちょっと待ってろっっ!」

 

 

 俺ははやてと匠真の声を聞いて、急いでカウンターに向かう。すると皆がその光景を見て笑い出した。恥ずかしいという思いよりも、今の俺は恵まれた環境にいる事に対する思いの方が強かった。

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

 

―4月28日午後5時 海鳴市路上―

 

 

 

 パーティーは最後、それまでの雰囲気と打って変わって"現状の再確認"と"時空管理局への今後の対応"なんかを話し合った。それが終わると解散になって私等は歩いて家に帰る事にした。そういやなのはちゃんとユーノ君は最後まで姿を見せてくれへんかった……個人的にはめっちゃ寂しかったなぁ。せっかく友達になれるかと思っとったのに。

 

「――結局なのはちゃんは来なかったね……」

 

「うん……ホンマ残念や。すずかちゃんとアリサちゃんが来ぃへんのはヤタガラス絡みの事もあるから解っとったけど」

 

「ねぇはやてちゃん。はやてちゃんはなのはちゃんが時空管理局に付いたと思う?」

 

 

 私がタッ君と話しとると車椅子を押しとる那緒実さんが後ろから声を掛けてくる。

 

 

「今なのはちゃんの頭ん中は、あのフェイトちゃんって子の事で一杯なのは解っとる……せやけどやっぱパーティーは1人でも多い方がエエし、これからの事を考えると"敵"になるなんて絶対考えとう無いで」

 

「そうね……私も彼女と戦う事なんて想像したく無いもの。士郎君達のためにもそうなる前にどうにかしないとね」

 

「なのはちゃんに言って止めるように出来ないのかな?」

 

「匠真の気持ちも解るけど……それは難しいわね。もしなのはちゃんが時空管理局に付いてしまっていたとしたら、恐らく何らかの方法で彼女の行動が監視されている可能性もあるし」

 

 

 私は那緒実さんの言葉を聞いて更に気持ちが沈んでもうた。横のタッ君を見ると辛い表情をしとって私とおんなじ事を思っとる事に直ぐに気付いた……ホンマ何とかならへんのかな。

 ふと前を歩いとった兄ちゃんが立ち止まってこっちに身体の向きを変えとった。何かあったんかな?

 

 

「なあ母さん。俺、悪魔召喚師になりたいんだけど母さんは賛成してくれるか?」

 

「……兄ちゃん?」

「……兄さん」

 

「俺ははやてを守りたいんだ!あんな奴らに負けない力が欲しい!!もしダメでも"言うだけタダ"だろ!?」

 

 

 兄ちゃん……あん時の約束を……

 

 

「晃祐?その言葉に偽りは無いわね!?」

 

「ああ!」

 

「――――解った!その心意気に免じて一応考えておくわ」

 

 

 那緒実さんはまた私の車椅子を押して、兄ちゃんの横を顔を前に向けたまま素通りしていきおった。私が後ろを振り返ると肩透かし食ろうて唖然としとる兄ちゃんの顔が見えた。

 

 

「ちょ、えっ?即答してくれないのかよっ!?」

 

「さ~て2人共、今日の晩御飯は何が良いかしら~?」

 

「お、おい!待ってくれよ~!!」

 

 

 私は上を向いて那緒実さんの顔を伺うと"何とも言えない複雑な表情"をしとって、家に着いた後もその表情がずっと気になって夜遅くまで眠れへんかったのやった。那緒実さんは何て兄ちゃんに返すんやろ……

 

 

 

 

 

 

 

 

次回に続く




恭也も美由希も忍もヤタガラスの一員でしたの巻。
月村家が夜の一族だという公式裏設定を応用して、忍をシャーマンという事にしました。
これで高町家は管理局側のなのはを除いて全員がヤタガラスという事が判明した事になります。この件については以前から何度か言っている、"この作品の裏テーマ"の重要な要素となります。
当初は士郎に諭されるという内容にするつもりだったんですが、個人的に恭也達を"頼れる存在"として書きたかったので変更しました。

さて、遂に悪魔召喚師になる事を志願した晃祐の願いは那緒実に届くのでしょうか?次回をお楽しみに。






それでは悪魔に身体を乗っ取られぬよう、お気をつけて……
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。