真・女神転生デビルサマナー ~時と世界と魔法を超えて~ 作:ナベリウス
前回のラストに少し出ていましたが、プレシアとアリシアのテスタロッサ親子に、『真・女神転生デビルサマナー』より葛葉キョウジとレイ・レイホゥ,マダム銀子が新たに登場し、彼らと那緒実を加えた6人がメインとして今回と次回の前後編が展開されます。
2013 8/30 20:30 誤字,脱字を修正
2013 8/31 17:42 誤字,脱字を再度修正
-地球時間5月11日午後11時 時の庭園-
「――私は向かわねば!アルハザードで過去も未来も、そして"この子の命"も取り戻し今度こそ何者にも縛られない真の幸福を得るのよ!!」
私の足元が崩れ、アリシアの入ったポッドと共に玉虫色の虚数空間へと身体が落ちていくのが解った。上を見るとフェイトが何かを叫んでいるけれど、私の耳にはもう届かない。
「アリシア?今度はもう、絶対に離れない様に……」
私は残された魔力を使って、ポッドの元に寄って抱きしめる。解っているの……本当はアルハザードなんて存在して無いかも知れないという事なんて。でも、今更フェイトの母親面をすることは絶対に許されない。それに私が一緒に居れば、"あの連中"は必ずあの子の命を狙ってくる。"口に出せぬ存在"の名の下に許されざる命を許す訳が無い。
私はアリシアのため、フェイトのため、そして何より自分自身のために道化を演じなければいけなかった事に何の後悔もしていない。
(フェイト……どうか何時までも元気で…………)
意識が段々と朦朧になっていく。次に両目を開けた時は、アルハザードに居られたら…………
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〈――めよ〉
(…………ん、ぅん……?)
〈目覚めよ。彷徨えし魂を持ちし者よ〉
頭の中に声が響き、私は次第に意識を取り戻す。気付くと真っ逆さまに落ちていた筈の私達は宙に浮いているのが解った。すると目の前には金色の光に包まれ、緑色の衣装を身に纏い翼を持った巨大な人の形をした何かが現れる。
『――プレシア・テスタロッサよ』
「貴方は何者……」
『私は"
その存在は私に自らの事を紹介した。
「その"預言者"が私に何の用かしら」
『……私の"兄"やかつての仲間達は"裁き"の名の下に、ありとあらゆる世界を邪な存在として破滅させ、自らの都合の良い世界へと作り変えんとしている。私はそれに反発したが故にこの空間へ幽閉された』
「それが私と何の関係が有ると言うの?」
『私はずっとお前達人類をここより見続けてきた。お前の過ちも病の事もそして娘達の事も……お前の下の娘は例え世界の理に叛く"許されざる命"だとしても、この世に生まれて来た輝く一つの命だ。本来ならば看過出来ぬ邪悪なる行為であるが、今となっては最早何も言うまい』
預言者と名乗る存在の全てを知っているかの様な口振りと、人智を遥かに凌ぐその威圧感に"大魔導師"と謂われたこの私が一瞬たじろいでしまった。だけど彼はそれを気にかける事無く言葉を続ける。
『私は様々な文化や考え方そして信仰等があり、それらがぶつかってこそ人類はより善い世界を作り出すことが出来ると考える。しかし強大な力を有する者が、その者達の理によって一方的に弱者を蹂躙する事は絶対に有ってはならないのだ』
「そんなもの今となっては私に関係の無い事よ。アリシアと幸せに暮らせるなら世界がどうなろうと知った事じゃ無いわ!」
『お前が下の娘を遣った世界には"闇に生きて闇を討つ者達"がいる。その者達の願いは唯一つ、"その世界に暮らす人々の安寧を乱さんとする不条理なる存在を討伐する事"だ。"大魔導師"と謳われたお前が"その者達"――"ヤタガラス"に力を貸し、次元世界を覆う悪意より人々の安寧と均衡を保つ一助となると誓うのであれば、今一度お前達が人間として全うに生きられる機会をもたらしてやろう』
「機会……?まさか貴方、私の身体は愚か、死んでしまっているアリシアまで治すと言うの!?」
『それはお前の選択次第――このままこの空間で実在するかも解らぬアルハザードに辿り着くまで延々と彷徨い続けるか、それとも私の提案を呑むか。もし私の言う事を聞くのであれば、今言ったと通りお前達を救おう。選択肢は二つに一つだ……さあ選ぶが良い』
……最初から一つしか答えの無い選択肢を選ばせるだなんて、本当にふざけているわね。
「――なんだか馬鹿にされている気がしないでもないけれど、まあ良いでしょう。その話に乗らせて貰うわ。さあ、アリシアを蘇らせなさい!」
『良いだろう。それでは……』
預言者がポッドに手をかざすと光に包まれ、暫くしてその光が収まったけどアリシアが目を覚ます気配が全くと言って良い位感じられない。
「どうしたの!?まさか私を騙したというんじゃ――ぐぅっ!」
『そう怒るな……身体に障るぞ。今の私の力では霊魂を肉体に戻すのが精一杯なのだ。では次にお前を蝕む病を軽くしてやろう』
今度は私の方に手をかざすと、淡い光が私を覆う。発作で胸を押さえその場にうずくまっていた筈なのに、不思議とその苦しさが無くなって長年全身を支配していた気だるさと重さが、幾分軽くなった様に感じられた。
『――うむ、これで良い』
私を覆っていた光が消えると、杖を軽く振るってみた。幾ら預言者が力を失っているとは言え、ここまで私を回復させられるのだから、きっとアリシアもその内に息を吹き返すのだろう。
「ふう……貴方の力の凄さは理解できたわ。信用してあげても良いでしょう。さて、"第97管理外世界"にはどうやって転移すればいいのかしら?」
『心配は要らない……お前達の転移も私が行おう。転移した際にヤタガラスが検知出来る程度の反応を起こしてお前達が保護される様に仕向けるから大丈夫だ、問題ない』
預言者は両手を天に掲げると、再び私とポッドが光に包まれた。
『――この者達に大いなる祝福を。では、さらばだ』
次の瞬間、私の意識は途絶えた。
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-5月12日午前8時 平崎市・葛葉探偵事務所-
日付が変わって間も無く、海鳴市郊外の山中に空間転移の反応を検出して私とキョウジ,そしてマダム銀子の3人でそこに向かうと、紫色のドレスを着た30代~40代位の女性とカプセルの様な物が倒れていて、キョウジがカプセルのボタンを弄ると中から5,6歳位の少女が出てきた。2人共衰弱していたけれど、助かる見込みが有る事が解って急いで事務所に引き返して1時間交代で持ち得るだけの魔石等を使って回復させ続けた。(因みにカプセルから出てきた少女は全裸だったもんで、事務所に行くまで私のコートを羽織らせて到着次第バスローブを着させた)
そして私の2回目の番を終えると、最終手段として海鳴のナオミに連絡をしてこの場に来るように言い、店舗の方に出て到着するのを待つ……アイツの使役するソーマの力があれば!
「――レイ?来たわよ!」
「ナオミ!?ホント朝早くにゴメンね!先ずはこっちに来てくれない?」
ナオミを連れて裏の仮眠室へ行くと、表の事務室に行っていたキョウジも丁度戻って来た所だった。
「――!」
「あらナオミ!意外と早かったじゃないの!?」
「お久しぶりね葛葉キョウジ。それとマダム銀子。早速だけど事情を説明していただけませんこと?」
「…………」
キョウジはナオミに転移反応に始まり現在に至るまでの一部始終を伝えた。その途中で私とマダムが補足し、出来るだけ解り易くかつ正確に説明をする。
「そういえばこの女の子、まだ大分幼いけれど先月末に海浜公園で見た女の子に本当にそっくりね」
「そっくり?」
「ええ……直に話したわけじゃないわ。でも髪の毛の色や顔立ちがその子――確か時空管理局の人間が言うにはフェイト・テスタロッサと言うらしいのだけど、姉妹にしては余りにも似過ぎている」
「カプセルの中に入れられていたというのも気になるわよね……」
ナオミとマダムの言葉に私の頭の中で"ある可能性"がよぎる。いや、でもまさか……この地球上で"その技術"は、最近になって漸く医療分野での利用が認められる様になったというのに!?
「――レイも同じ事を考えた様ね」
「……はっ!?まさかそんな事って!」
「……??」
「マダムも私の報告書を読んでいただいたと思いますけど、時空管理局は私達の予想を遥かに上回る技術力を保有していますわ。それに彼らの言う通りなら、数多く存在するという次元世界において"あの技術"が一般的に普及していたとしてもおかしくありませんもの」
ナオミの台詞を聞いても尚、キョウジには理解出来ないみたいで「全く話に付いて行けない」という表情をしている……全く、長年探偵をやってきているのにどうしてこういう時に頭が回らないのかしら!?
「キョウジにも解る様にハッキリ言うわね。私達はこの子がナオミの見た少女、フェイト・テスタロッサのクローンじゃないかと思ったの!」
「――!?!?」
「……とりあえず真実はこの女性が目覚めた時に訊き出すとしましょう。今からは私が様子を見てますので、皆さんは帰宅して朝食をとるなりシャワーを浴びるなり睡眠を取るなりしてくだないな。もし晩までに目覚めなければ、最悪ソーマの力を使って無理矢理にでも起こさせますわ」
私達はナオミの申し出に甘えて一旦休む事にした。一体あの女性からどんな事を聴き出せるかしら……?
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3人が仮眠室から去っていくと、私はフェイトちゃんに良く似た少女が横になっているベッドの隣に行って中腰になると彼女の頭を撫で、聞いていないのにも関わらず言葉を掛ける。
「もし貴女が意識を取り戻したとしても、真っ当な生活は送れそうにないわね……もしもクローン人間だとしたら、この世界にとって貴女は"許されざる命"という事になってしまう。そして下手をすればクローンの存在を許さない人間達によって、命そのものが危ない目に晒されるでしょう。だけど私達ヤタガラスは決して貴女の存在を否定なんてしないわ。貴女もまた、幸せになる権利を持った一人の人間なんだもの」
10分,20分程彼女の顔を眺めてから台所に行ってコーヒーを入れ、再び仮眠室に戻りここに来る途中にコンビニで買ったパンをソファーに座って食べ、スマホにイヤホンを挿してラジオのアプリを起動させて2人の意識が戻るまでラジオを聴きながら様子を見守ることにした。その後5時間程経った頃、レイが事務所へと戻って来た。
「ありがとナオミ……2人の様子はどう?」
「いいえ。相変わらずね……」
レイは私の隣に座るとペットボトルの烏龍茶を袋から取り出して一口飲む。
「ふぅ……。そういえば聞いたわよ!アンタんとこの息子、悪魔召喚師目指すんだって?」
「ええ。今日は午前中の部活が終わったら午後から士郎君の所で戦闘訓練よ」
「引き取った"闇の書の子"といい召喚師志望の息子といい、アンタも悩みが絶えないねぇ」
「でも充分幸せよ。私も頑張らなきゃって気持ちになるし、晃祐が自発的に召喚師になりたいって言ってくれたのは正直不安では有るけれど、とても嬉しかった」
彼女は何とも言えない顔をして私の方を向き、
「すっごい今更なんだけどさ……昔のアンタを知ってる身としては、本当に敵同士だったのか?って位変わったよね~。以前は反吐が出るくらい嫌いで憎くて憎くてどうしようもなかったけど、今のアンタはヤタガラスの仲間とか以前に同じ人間として女性として尊敬出来るわ!」
「ファントムソサエティの片棒を担いでいた暗黒召喚師"白鐘那緒実"は、二上門の地下遺跡でアプスーと一緒に死んだわ。今の私はヤタガラスの悪魔召喚師"相原那緒実"よ?あとついでに言っておくけど、そんなに私を褒めたってなんにも出ないから!」
「ふふっ……」
「あはは……」
なんだかおかしくなって2人して笑い出した。かつての怨敵とこうして笑い合うなんて20年前じゃ到底考えられない事だ。"時間が傷を癒してくれる"というのは正にこういう事を言うんだろう。私が恩讐の彼方に見付けた物は、かけがえの無い家族と親友だった。
「――ん。ふあ~~~~っ…………アレ?ここどこ??」
(!!)
笑っていた私とレイの目の前でベッドの上の少女が目を覚まし、上半身を起こして大きく伸びをする。私達は咄嗟に不審感を与えない様、出来るだけ柔らかい表情を作る。少女は隣のベッドで横になっている女性に気付くと、
「あっ!おかーさん?おかーさんっっ!?……きゃっ!!」
「――ほら、無理しちゃダメだよ?」
少女はベッドから立ち上がろうとしてバランスを上手に取れず、ふらついて床に倒れかかった所を急いでレイが彼女の元に行って身体を支える。しかしこの女性を母親と呼ぶなんて……見た目も雰囲気も全然親子らしくない。髪の毛の色が方や女性が黒、方や少女が金色という事もあるからかもしれない。
「おばさん誰?」
「私はキミと、キミのお母さんが林の中で倒れていた所を"偶然"見付けて、ここまで運んで来たんだよ」
「お、おかーさんはだいじょーぶなの!?」
私も少女の隣に行って片腕を持ってレイと一緒にベッドへ座らせる。
「――貴女のお母さんはとっても身体が弱ってるから、起きるのはまだまだ時間が掛かるでしょうね。でも心配しないで。死ぬような事は無いから大丈夫よ」
「グスッ……よかったよぅ~~~!」
彼女は安心感からか眼から涙を零して喜んだ。それが落ち着くまで待って、改めて名前を名乗る。
「じゃあ自己紹介するね。私はレイ・レイホゥ。ここ葛葉探偵事務所で助手をしているの」
「私はレイの友達の相原那緒実よ。よろしくね?」
「わたしはアリシア・テスタロッサ!おかーさんのなまえはプレシアっていうんだ!!」
アリシアちゃんはレイが着させたと思わしき大人用のバスローブの袖をパタパタと動かしていて、その動きの余りの可愛さに笑みが零れた。
「うーん。何時までもその姿なのもアレだし服でも買って来るわ!ナオミはその子の面倒を見てて。冷蔵庫の食料は好きに使って良いから」
「解った、お願いね。さあアリシアちゃん、お腹も空いてるでしょうしご飯でも食べましょうか?」
「うん!アリシアおなかペコペコだよぉ~」
台所に行って私は自分と彼女の2人分のご飯を作る。途中マダム銀子と葛葉キョウジに電話をして、アリシアちゃんが先に目覚めた事と彼女に不審がられない様に、敢えて彼女の母親が意識を取り戻すまでは年端もいかない少女には"キツい風貌"をしている2人には事務所には来ない様に伝えた。即席でパスタを作りパンをトースターで焼いて食器に盛り付けると仮眠室に持って行き、アリシアちゃんを椅子に座らせてバスローブの袖を折ってその細い腕を出してから私も席に着く。
「うわ~おいしそーーー♪いただきま~す!」
「お母さんには敵わないでしょうけど、どうぞ召し上がれ♪」
彼女の美味しそうに食べる姿を見て、再び自然と笑みをうかべてしまう。でも内心ではプレシア・テスタロッサが目覚めてからの事で頭の中が一杯なのだった…………
次回に続く
他の二次創作だと、「チートな主人公がチート能力を使って2人を助けだす」という展開が多い様な気がしますが、その"ある種のお決まり"を破りたかったのでこういう内容にしました。
サンダルフォンは預言者エリヤ(英名ではイライジャ)が生きながらにして昇天したと謂われる存在です。旧約聖書に登場するエリヤは「主(=YHVH)は神なり」を意味するその名の通り、熱烈なYHVH信仰の守護者及びバアル信仰に対する熾烈な迫害を行った人間として描かれていますが、この作品では敢えて"逆の役割"を担わせる事にしました。
虚数空間に幽閉されていたのは、サンダルフォンが「罪を犯した天使達を閉じ込める幽閉所の支配者」という事を応用し、その「幽閉所」を虚数空間に見立てたからです。
それでは悪魔に身体を乗っ取られぬよう、お気をつけて……