真・女神転生デビルサマナー ~時と世界と魔法を超えて~   作:ナベリウス

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第20話です。
プレシアさんの懺悔の時間です。
それではどうぞ……




2013 9/1 0:48 誤字,脱字を修正
2013 9/1 23:30 一部文章を改訂
2013 9/11 17:50 誤字,脱字を修正


第20話 Heaven Is A Place On Earth(後)

-5月12日午後2時 平崎市・葛葉探偵事務所-

 

 

 

「――ご馳走様でした」

「――ごちそーさまでした~!」

 

「ただいま~」

 

 

 私とアリシアちゃんは昼食をとり終わるのとほぼ同時に、レイが子供服と下着を買って事務所に帰ってきた。

 

 

「あっ!レイさんおかえりなさい~」

 

「おかえりなさいレイ。昼食は?」

 

「外で食べてきたから良いわ。はいアリシアちゃん!おばさん達からのプレゼントだよー!」

 

 

 レイは袋から子供服を取り出すと、それを広げてソファーに並べてアリシアちゃんに見せた。

 

 

「うわ~どれもかわいいな~♪どうもありがと~~~~~~!」

 

「どうたしまして♪さあ、お母さんが目を覚まさないうちに着替えて驚かせちゃおう!」

 

「うんっ!!」

 

 

 服を見たアリシアちゃんはヒマワリの花の様にぱぁっと満面の笑顔になると、レイに支えられながら更衣室に行き、10分程して着替えて戻って来た。彼女は白地にオレンジやピンクの柄の入ったTシャツに黄色のパーカーを羽織り淡い緑色のフリルスカートを履いていて、

 

 

「どうかな~にあう~?」

 

「うん……明るいアリシアちゃんにピッタリだわ!」

 

「えへへっ♪」

 

「この服を選んだのは私なんだから、ついでに私の事も褒めてくれたって良いのよぉ~♪」

 

「あー……サスガ、レイサンデスネー」

 

「ちょっとなんで棒読みになってんの!!」

 

 

 私はレイの事を放っておいて、アリシアちゃんの前に行って頭を撫でてあげた。

 

 

「お母さん、早く起きると良いわねぇ~」

 

「うん!絶対ビックリするよ!!」

 

 

 その後は私とレイはソファーでアリシアちゃんの話を聴いた。2歳の頃に両親が離婚して父親の顔を知らない事、母親の仕事先である研究所に遊びに行ってはその同僚達に遊んで貰った事などなど……このプレシア・テスタロッサという人は、一見した感じだと気を失っていても尚、禍々しいオーラを放っている様に見える。しかし彼女の話では家庭と仕事を両立する"出来る女性"というイメージを抱いた。

 

 

「――ところでおかーさんはなんであんなカッコをしてるの?アリシアはじめてみたよ~」

 

「えっ!?」

「えっ!?」

 

「おかーさんは"けんきゅうじょ"ではたらいてたから、いつもはくいをきてたんだもん!こんなおとぎばなしにでてくる"まじょ"みたいなカッコなんてしらないよ!!」

 

 

 アリシアちゃんの言葉に私達は絶句する。どういう事なの……

 

 

「……アリシアちゃん。ちょっと訊きたいことがあるんだけど」

 

「なぁに?」

 

「ひょっとしてアリシアちゃんにお姉さんっている?」

 

「ううん……アリシアはひとりっこだよ?」

 

 

 予想の斜め上を行く答えが帰ってきて更に絶句した……自身と母親の話を聴いていて、クローンにしては妙に"話が出来過ぎている"と思っていたけれど、これは想像以上に複雑な事態があったのかもしれない。

 

 

「ねぇ。お母さんの歳って解る?」

 

「うーー…………んっと、たしか33さいだったかなぁって、どうして?」

 

「い、いや何となく訊いてみただけだから……(ナオミ、ちょっと)」

 

「(……解ったわ。)おばさん達ちょっとお話があるからいい子にしてなさいね?」

 

「う、うん」

 

 

 私の隣に来たレイが耳打ちをして来たんで2人で事務所の方に行き、アリシアちゃんに聞こえない様、小声で話し始めた。

 

 

「(プレシア・テスタロッサって衰弱しているのもあるだろうけど、33歳にしては妙に老け込んでると思わない?)」

 

「(そうね……私達と同じ位の歳と見て良いかもしれない)」

 

「(アリシアちゃんの話を聴いていてしっくりこない部分もあるし……一人っ子ってのがそもそもおかしいよね)」

 

「(もしかしたら、アリシアちゃんがクローン人間だという当初の予想を改めないといけないかも知れない。コレは間違いなく裏があるわ)」

 

「(謎はアリシアちゃんとフェイトちゃんという、まるで"双子の様にそっくりな2人の人間"の関係性にありそうね……)」

 

 

 私達は見えない"真実"に揃って溜息をつく。そもそもこの親子自体、何処から飛んできたのかすら解らない。全てはプレシア・テスタロッサが目覚めるのを待つしか無いんでしょうね……

 

 

「――あっ!!おかーさん!!!!」

 

 

 仮眠室からアリシアちゃんの大声が聞こえてきたんで、急いで戻ると運が良い事に丁度私達が目覚めるのを心待ちにしていたプレシア・テスタロッサが意識を取り戻した所だった。

 

「ア……アリシア……なの?」

 

「どーしたのおかーさん?なんかうまくあるけないけどアリシアはげんきだよ!」

 

「あ、ああっ……」

 

 

 私は咄嗟にアリシアちゃんを母親のベットへと連れて行ってそこに座らせ、直ぐ様離れた。プレシア・テスタロッサは眼に大粒の涙を浮かべている事が離れた場所からでも解り、内心とても驚いてしまう。

 

 

「アリシア……私のアリシア……ごめんなさい。本当にごめんなさいね……」

 

「どーしてないてるの?どこかいたいばしょでもあるの??」

 

 

 むせび泣く彼女はアリシアちゃんの身体を抱きしめ、嗚咽混じりにひたすら謝っていた……しかし当のアリシアちゃんは、何故自分の母親が泣いているのか解らないみたいで頭の上にクエッションマークを浮かべている。 彼女が落ち着くまで待っている間、レイは葛葉キョウジとマダム銀子を事務所へ呼び寄せ、私は事情聴取のために手帳に質問項目をまとめる事にした。

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

 

-5月12日午後4時 平崎市・葛葉探偵事務所-

 

 

 

「ごめんなさい。みっともない所を見せてしまって……私はプレシア・テスタロッサ。この子は私の娘のアリシアです。アリシアにこんなに良い洋服を買っていただき、本当に感謝の言葉もありません」

 

「いえいえ、お二方に喜んでいただき光栄です。私は葛葉探偵事務所の助手、麗鈴舫(レイ・レイホゥ)です。こちらが所長の葛葉キョウジ」

 

「――!」

 

「私はマダム銀子と呼ばれている者よ。表向きはスナックの経営者だけど裏ではキョウジとレイのお目付け役をしているわ」

 

「……私は麗鈴舫の友人の相原那緒実です。以後お見知り置きを」

 

 

 彼女の上半身をベッドから起こさせて各自名前を名乗り、早速事情聴取を開始する。因みにマダム銀子が来た時、アリシアちゃんはその姿と声に顔を引き攣らせて泣きそうになったのをプレシア・テスタロッサがどうにかなだめすかせていたりする。

 

 

(BGM:葛葉探偵事務所)

 

 

「早速ですがプレシアさん。貴女が何故海鳴市の山中に倒れていたのか、何故娘さんがカプセルの様なモノに入っていたのかをお聞かせ願えないでしょうか?」

 

「そうですね。その前に……アリシア?」

 

「なぁに?」

 

「これからお母さんは"とっても難しい話"をしなくちゃいけないの。お願いだから終わるまで隣の部屋に行っててくれないかしら」

 

「いやだっアリシアもここにいる!!」

 

「アリシアちゃん……これからする"お話"はアリシアちゃんには聞かせられない、とっても大変なお話なの。だからどうか隣の部屋に……ね?」

 

「アリシアだっておかーさんにききたいことあるもんっ!だからここにいる!!」

 

 

 散々駄々をこねるアリシアちゃんに、ついにプレシアさんは観念したのか表情を険しいものにして語り始める……その内容はアリシアちゃんを除いた私達を驚愕させるものだった。彼女の話を要約すると、

 

○出身は"ミッドチルダ"という次元世界で、時空管理局の本局もそこに存在している。

○アリシアちゃんが言っていた通り、プレシアさんは元々新型動力システムの開発にあたっていた研究者だったが、ある時重大な欠陥を発見したものの上層部がそれを握り潰した挙句の果てに完成した動力炉は大事故を起こしてしまった。しかし上層部は時空管理局と結託し、すべての罪をプレシアさん一人に擦り付けた。

○大事故の影響で不治の病に冒されたものの、研究所より得た賠償金を元に"時の庭園"と呼ばれる、時空管理局の使用する魔法技術と同じ物で作られた移動式庭園を購入、更に地方での閑職にありながら"独自の研究"を進め、ある"成果"を造り出した。

○臨海公園で私が晃祐を経由してフェイトちゃんに渡した"ジュエルシード"は、彼女がフェイトちゃんに集めさせていた物で、ジュエルシードは力を開放することによって持ち主の願望を叶える力がある。

○巨大樹や人面樹等が海鳴市に出現した一連の"現象"はジュエルシードによるもの。"願望を歪んだ形で叶える"という事はプレシアさん自身知らなかった。

○プレシアさんは時の庭園が崩壊した時に"虚数空間"という一種の亜空間の様な所に投げ出され、そこに現れた"預言者"と名乗る何者かによって、"ヤタガラスに協力する事を条件"に海鳴市山中に転移して来た。

 

 他にも元時空管理局員だった"あの人"が、私達の前に現れた時に得られた数多くの"情報"が彼女の証言によって改めて裏付けられる事となった。

 

 

「ありがとうございました。お身体の方は大丈夫ですか?何でしたら休憩でも」

 

「いいえ。大丈夫です」

 

「……解りました。さて、此処からは私とナオミの個人的な質問です。ナオミお願い」

 

 

 レイの言葉に、遂に来たか!と思って更に気を引き締め、質問を口にした。

 

 

「実は先程、アリシアちゃんから一人っ子だという事を聞いたんですが、実は以前フェイトちゃんにも会った事がありまして……」

 

「何故アリシアとフェイトが似ているか……でしょう?」

 

「おかーさん。さっきからずっとおもってたんだけど、フェイトって……だれ?」

 

「アリシア良い?これからお母さんが話す事はきっとアリシアの訊きたい事だと思う。でもこの話を聴いたら、アリシアはきっと私の事を嫌いになるかもしれない……」

 

「そんなコトぜったいないよ!アリシア、おかーさんのこときらいになんてならないっ」

 

「ありがとう――ではお話しましょう」

 

 

 彼女の語り出した内容は、私とレイの疑問を解決させるには充分なモノだった。しかしそれは先程の話を遥かに凌ぐモノで、幾度の修羅場を潜り抜けて私達ですら身震いする戦慄の内容だった。同様に要約すると、

 

○アリシアちゃんが生まれたのは12年前で、7年前の動力炉の事故に巻き込まれてアリシアちゃんは僅か5歳で死亡した。(即ちプレシアさんの現在の年齢は40歳という事になり、本来ならアリシアちゃんは匠真と同じ12歳になるはずだった)

○事故後の"独自の研究"とは、管理局が秘密裏に行っていた人造生命体製作プロジェクト"F.A.T.E."の成果を応用し、4年前にアリシアちゃんの細胞を使って彼女と寸分違わぬ素体を造り上げ、その記憶を移したものの完全なコピーにならなかったために記憶を消去し、プロジェクトの名前からそのコピーを"フェイト"と名付けた。

○完全なコピーにならなかったが故に、最初はフェイトちゃんを人形扱いをして虐待していたが、ある時彼女の余りの献身振りと自身の余りの狂乱振りに気付いてしまい母親としての自我を取り戻した。しかし既にジュエルシードを収集させ始めた後だったため、引くにも引かれなくなって以前同様の扱いをし続けてしまった。

○ジュエルシードを集めさせたのは、アルハザードでアリシアちゃんを蘇らせるためだった。

○虚数空間で遭遇した"預言者"によってプレシアさんの病は軽くなり、アリシアちゃんも蘇生した。

 

 

「――私は人間として、母親として最低な事をやってしまったんです」

 

「…………お気持ちは解りますわ。私にも子どもがいますから」

 

「――!!――――!!!!」

 

 

 葛葉キョウジが両手でテーブルを強く叩くと、プレシアさんの所に行って大声で怒鳴り散らし、罵声を容赦無く浴びせ掛ける……確かに幾らアリシアちゃんのコピーが出来なかったからと言って、曲がりなりにも一人の人間を"人形"扱いしたり虐待をしたりした事は許されるべきではない。それにしても大人気ない事をして……

 

 

「おじちゃんやめてぇ……やめてよぉ……っ!」

 

「アリシア……」

 

 

 アリシアちゃんが泣き叫び始めてハッとなった彼は、いたたまれない顔をして直ぐに仮眠室から出て行ってしまった。私は顔をベッドの方に戻すと、顔を涙でグチャグチャに濡らしたアリシアちゃんが、

 

 

「――おかーさんもっ!」

 

 

――パチン!

 

 

「……っ!?」

 

「なんでっ……なんでそんなことしたのっ!なんでフェイトのことをっ、アリシアの"いもうと"としてみてあげなかったのっ!!そんなの……ちっともうれしくなんかないよぉっ!!」

 

 

 ああ……アリシアちゃんはなんて優しい子なんだろう。まだ5歳だというのに自分のクローンを妹と呼ぶなんて。頬を平手打ちされて呆然としていたプレシアさんは我に返ると、胸元で泣き付くアリシアちゃんの頭を撫でてあやしながら語り掛ける。

 

 

「ごめんなさい……私は結局、自分の事しか考えて無い最悪な人間だったわ。これからは絶対にこういう事をしないし、もしフェイトに会う機会があったら今迄の事も謝るわ……だからもう泣かないで。この地球こそが天国(アルハザード)だと思う事にしたから」

 

「ひっく……ぐすっ……やくそくだよ?」

 

 

 2人は小指を立てて互いに絡ませる。

 

 

「――指切~りげんまん嘘付いたら雷千回落~とす♪指切った!」

「――ゆびき~りげんまんウソついたらカミナリせんかいお~とすっ♪ゆびきったっ!」

 

 

 親子の一連の言動に私はその光景が微笑ましくなり、自然と笑みを浮かべてしまう。レイも同様に笑みを浮かべ、一方でマダム銀子はヤレヤレという表情をしていた。

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

 

「――では、貴方達の身柄は私達ヤタガラスが責任を持って保護させていただくわ」

 

「万が一時空管理局にお2人が生きている事を察知されては双方共に困りますので、暫くはご不便をお掛けしますがどうかご了承ください」

 

「ええ。アリシア共々宜しくお願いします。私に出来る事なら何だって協力しますので」

 

 

 テスタロッサ親子の処遇は、時空管理局の脅威が去るまで平崎市内のヤタガラス支部で保護する事で決まり、プレシアさんは念のために、半年程支部附属の療養所で治療とリハビリを受けて貰い、また私の家に"闇の書"とその主が住んでいる事から、彼女には最初に闇の書関連の研究に参加して貰う事になった。因みにアリシアちゃんは現在、泣き疲れてぐっすりと眠ってしまっている。

 

 

「ふむ……那緒実さんの予想通り、管理局は暫く地球に居座りそうですね。もしその間に闇の書が覚醒し、中から"守護騎士"達も現れると非常に厄介な事になります」

 

「"守護騎士"とは……?」

 

「――闇の書には"雲の騎士(ヴォルケンリッター)"という、闇の書を守護する複数の魔法生命体がプログラミングされているらしいんですけど、聞いた話によると騎士達は感情の無い戦闘マシンの様な存在で、闇の書によってもたらされた被害の大半は彼らによって引き起こされたものだそうです」

 

「それってとんでもなくマズい事じゃあ……」

 

「それじゃ当面の目標は闇の書の覚醒を阻止する事になるわね。"あの人"にも訊いて方策を練らないと」

 

「こちらにも闇の書を知っている人がいるんですか?」

 

「え、ええ……その方は元時空管理局の高官で、これまで私達に色々な情報を提供していただいてますわ。闇の書の主であるはやてちゃんを私の家に引き取ったのも、その方の助言が有ったからなんです。なんでも11年前の覚醒の際に部下を失ったらしいんですけど、上層部は事件後に遺族に何ら保険金を払ったりする事も無かったみたいで、全てその方が肩代わりに生活保障を行ったと聞きました」

 

 

「……それで管理局に嫌気が差して辞めたと。つくづく奴等はふざけた事をしますね」

 

 

 その後もプレシアさんから管理局の腐敗した側面を聞かされた。はやてちゃんのためにも万が一武力衝突をした場合、あんな連中に絶対に負けてたまるもんですか!

 

 

 

 

 

 

 

 

次回に続く

 




最初から度々出ていた元管理局員の"あの人"について少し表に出て来ましたね。
"あの人"が誰かというのは、勘の鋭い方ならもう気付かれたと思います。
これからプレシアさんの魔法技術力とヤタガラス、もとい地球の科学技術力が合わさって管理局に対抗するための様々なトンデモ発明が生まれていく事になります。







それでは悪魔に身体を乗っ取られぬよう、お気をつけて……
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