真・女神転生デビルサマナー ~時と世界と魔法を超えて~ 作:ナベリウス
2013 9/8 1:14 誤字,脱字を修正
2013 9/11 17:52 一部文章を改訂
高町家で訓練を始めて4日が経った。士郎さんとの訓練は今の所、"ひたすら檜の木剣で木人を打ち込む"という単純なものだ。士郎さん曰く「中体連の試合も視野に入れつつ今一度、腕の動きを見直してより確実に、より鋭く強力な振りを修得する」との事だった。しかしながら打ち込む対象が硬い木人だけあって、2,30回位打つと木剣から伝わる衝撃で腕が痺れて来て、初回の訓練はマトモな事が出来ないまま終わってしまったという……自宅の庭で更に素振りをしないとイカンなぁ~
ってな事で、俺は授業が終わると、急遽部活が休みになったんで直ぐに稽古場へ向ったのだった。
-5月15日午後3時 高町家稽古場-
「こんちわ~相原で~す!!今日もヨロシクお願いしますっ!!!!…………って、アレ?」
何時もなら士郎さんが稽古場で待ってくれているはずなのに、今日は誰も居ないみたいだ。
「こんちわ~!!士郎さ~ん!?恭也さ~ん!?美由希さ~ん!?誰か居ませんかぁ~~~~~!?!?」
俺は大声を張り上げて呼んでみるけど、一向に反応が無い。店の方が忙しいのかなぁ?一応そっちの方にも顔を出してみるか……と思って稽古場を後にしようとすると、足元に何時ぞやのイタチが立っていたんで、しゃがみ込んで言葉を掛ける。
「お?ユーノじゃねぇか。何時の間に戻ってきたんだ?」
『どうも晃祐さん。僕達は今朝アースラから帰って来たばかりです』
「アースラってぇと……あの時空管理局の戦艦みたいなヤツか。故郷の世界には帰らなかったんだな」
『なのはがもっと魔法の事を勉強したいと言っていたので、暫くこちらでお世話になる事にしたんです……でもここ1ヶ月で恐ろしい位の成長を遂げてますから、多分半年と経たずに帰る事になるでしょうね』
"巨大樹をブチ抜く位のビーム"を撃てんのに更に成長したとかマジ無ぇわ~……って、コイツに会えたら訊きたい事が有ったんだった。
「で、お前もなのはちゃんも時空管理局に味方するにしたのか?」
『一応僕達は、ロストロギアとそれに関わる事件の当事者ですからね。正直言うと、故郷の一族から管理局に関する良い話は大して聴いたことが無いので、個人的には余り関わりたく無いんですけど……』
「――なのはちゃんがノリノリだと」
『"ごく普通の生活"に戻るって考えは無いみたいですね。中学校を卒業したら管理局に正式に志願すると言ってましたし』
(……こりゃ"敵"に回す可能性が高くなっちまったなぁ。俺達が戦って果たして勝てる相手なんだろうかねぇ)
『どうしたんですか?気難しい顔をして……』
あ、やべぇ。ついつい顔に出ちまったか!こういう所が俺の悪い所だよなぁ。
「い、いやなんでもない。こっちの事さ!ハハ、ハハハハハ……はぁ……」
ユーノが小首を傾げて俺の様子を見ている。コイツ、歳の割にはかなりの洞察力があると見た。こりゃヘタな事を顔や口に出せねぇなぁ~
『そういえば、どうして稽古場の方にいるんですか?』
「あ?……ああ。士郎さんは母さんが悪魔召喚師だって事、学生時代から知ってたみたいでさ。母さんの言付けで最近"色々と"稽古をつけて貰ってんだよ。元々剣道をやってるってのもあるけど、ちょっと"思う所"もあってなー」
『――やっぱり"公園での件"ですか?』
「母さんの事見たろ?あんなにチートなのに、この間"身体の衰えを感じてきているからそろそろ後継者が欲しい"って言ってたんだよ。俺もあの時初めて悪魔を召喚しちまった手前、本気で母さんの後を継いで悪魔召喚師の道を歩んでみようと思ってさ。来年高校受験があるけど、どうにか両立して訓練して行くつもりだよ」
俺は"真の目的"を隠しつつ本当にあった事を言った――嘘は吐いてないから問題無いだろ?そういや翌々考えてみたら、傍から見たっけ俺が"イタチに向かって独り言を呟いている"という、なんともシュールな光景に見えるんだろうな……と感じて内心苦笑いをする。すると、
「ユーノく~ん!何処なの~~~~~~!?」
「お、ほら"魔砲少女"がお呼びだぜ?」
『なんか……とっても違う"感じ"に聞こえたんですけど』
「気にすんなってば……オラ行った行った!俺の訓練なんざ見たってクソも面白く無ぇぞ~」
俺はユーノに"しっしっ"とやると、仕方なしになのはちゃんの方に向かって走っていった。どうやら士郎さんも全然出てくる気配が無いから、勝手に上がらせて貰って勝手に打ち込みでもやってるとするか!
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「――疲れている所すまない。なのはは稽古場の方に行って見て来てくれないか?きっと彼の事だから既に自主練習をやってるとは思うんだが。あと、一応スポーツドリンクでも持って行ってくれ」
「う、うん」
お店でお父さんとお母さんの手伝いをしていると、お父さんから稽古頼まれ事をされて、私はユーノ君を肩に乗せて家に戻り、廊下を歩いて行くと向こう側から叫び声と共に、"強く何かを叩く音"が何回も聞こえてきたの。稽古場の前に来ると襖を少しずらして中の様子を伺うと、以前公園で会った晃祐さんが木刀を持ってお兄ちゃんとお姉ちゃんが練習に使う木人に向かってひたすら打ち込みをしていた。
[凄い真剣な表情をしてるね……]
[うん……ああ言うのが鬼気迫る顔って言うんだろうね]
晃祐さんは汗だくで息も絶え絶え、腕も痺れて木刀の振りが遅くなっても打ち込みをやめようとしない。晃祐さんの姿を見ていると、魔法を使ってる私はなんだか申し訳無い気持ちになるの……
[――良いかいなのは。世界には晃祐さんみたいに、血の滲む様な努力をしてでも"遥か上"を目指そうとする人がいる。なのはの魔法の素質は天才と言っても良い。けど、得てして天才というのは努力を軽視する傾向があるんだ。将来管理局で高官になったとしても、ああいう人達の事を絶対に忘れちゃいけないよ]
[解ったの。絶対忘れないっ!]
木刀が床に落ちる音がしてまた中を見ると、晃祐さんが床にへたり込んで肩で息をしていた。私はスポーツドリンクを差し出そうと襖を開けて近付いて行く。
「こんにちは晃祐さん。コレ持って来たんでどうぞ!」
「んあ?こんちわなのはちゃん……ごめんな、勝手にやらせて貰ってるよ」
「いえいえ」
晃祐さんにスポーツドリンクを手渡すと、少し離れて私も床に座った。
「そういえばどうして私の家で練習してるんですか?」
「あれ、ユーノから聴いて無いんかい?」
えっ?いなくなって探しに外に出たら庭の方から来たけど、ユーノ君あの時晃祐さんと話してたんだ……私がユーノ君を見ると、『その、ごめん』と言って晃祐さんから聞いた事を話してくれたの。
「なのはちゃんがアースラに行っている間にこっちだって色々あったんだ。俺の事で士郎さん達を責めたりしないでくれよ?」
「……はい。私が家に居ないと言える訳無いですもんね」
晃祐さんが大の字になって床に寝そべると、ふぃ~と言って目を瞑って身動きしなくなる。
「あっ、あの~。あんまり無理しちゃダメですよ?"ヘロヘロになって練習してても全く意味が無い"ってお兄ちゃんが前に」
「それ、恭也さんと士郎さんにも結構口酸っぱく言われてるよ。でも何と言うか、早く戦士としての能力を上達させたいっていう焦りが出ちゃってなぁ。解っちゃいるけどやめられないってヤツかな。ほら、俺はなのはちゃんと違って"ビームを撃つ才能"なんて無いから、命を張ってフルコンタクトの戦闘をしなくちゃいけないんだ」
「(ビームって……)あ、でもでも焦りは命取りって!」
「全くだよ耳が痛ぇぜ畜生!剣道部で"本番に弱い"っていっつも言われて、それが解ってるからこそ返って焦っちまうんだよなぁ。どうにか"死ぬ前"に修正してある程度冷静な判断が出来る様にしないと」
晃祐さんの"死ぬ前に"という言葉に私はハッとなる。バリアジャケットのある私と違って、悪魔召喚師は戦争に行ってる兵士と同じで、常に"死"というモノと戦わなくちゃいけないんだ……サポートもしてくれるデバイスなんて無いし、全ては自分自身の判断だけで戦いを潜り抜けなくちゃいけないの。
「――さて!また全身全霊で頑張るとしますかね!!」
そう言って晃祐さんは木刀を持って立ち上がり、再び木人に打ち込みを始めたのを私はそのまま後ろで黙って見てる事しか出来なかった。
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「――すまないねぇ晃祐君……ってなのはもいたのかい?」
「あっ、お父さん!」
打ち込みを一旦止めて後ろを振り向くと士郎さんがいて、こちらに近付いて来ていた。
「すんません。勝手にやらせて貰ってますよ」
「いや、むしろ勝手にやって貰ってないと困る位だよ。これから先は地獄の様な訓練が待ち受けているんだからね」
「はい!」
「よし、それじゃあ試しに出来る所まで打ち込みをしてみてくれ」
俺は言われた通り、打ち込みを行った……しかしここ数日の打ち込みで腕にガタが来ていたのか、20回を超えた辺りから右肘に激痛が走って、
――ガタンッ!
「ぐっ……肘が」
俺の手から勝手に木剣が落ち、酷い痛さにうずくまって右肘を押さえる。すると何時の間にか士郎さんとなのはちゃんが俺の前に来ていた。
「だ、大丈夫ですかっ!?」
「ちょっと肘を見せてくれないだろうか」
俺は士郎さんに肘を見せると、
「晃祐君が打ち込みを始めてから数日、私は大して指導らしい指導をしないで見ていたけれど、今やっと50回も行かずに疲弊する理由がハッキリとしたものになったよ――君は一振り一振り全力で打ち込みをしているね?」
「そりゃあ……剣道なんかと違って常時100%の力を込めないと悪魔なんて倒せないでしょうよ。それでこそ"一撃必殺の精神"で臨まないと逆にこっちが殺られちまいますって」
士郎さんは俺の言葉を聞くと、急に顔付きが険しいものへと変わった。何か変な事言ったか?
「それは大きな間違いだよ。君は恭也と美由希から何を教わったんだ?今君に必要なものは攻撃技術よりも防御・回避技術だぞ。冷静に敵の行動を見極めも出来無いクセに無闇矢鱈に仕掛けようとする事の方が命を捨てる可能性は高い」
「晃祐さん……やっぱり焦ってるの。牽制もしないで最初から本命の攻撃を繰り出すなんて」
士郎さんはまだしも、なのはちゃんにまで言われるとか――っざけんじゃねぇぞクソが!!
「じゃあどうすりゃ良いんだよ!!黙って後ろから見てろって言うのかよ!?俺ァそんなの嫌だね!幾ら仲魔がいたとしてもトドメは俺が刺さないと無意味じゃねぇかよ!!んなん"俺が守ってる"内に入らねぇぜ!!「――晃祐君」」
「少し、頭を冷やそうか……」
――次の瞬間俺の身体は宙を舞い、頭から床に叩き付けられていた。
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「――――ッ!!」
「気が付いたようだね」
意識を取り戻して辺りを見回すと、外はすっかり日も落ちて薄暗くなっていた。
「士郎さん、俺は……」
「すまない。まさか頭から落ちて失神するとは思ってなかったよ。打ち所が悪ければ半身不随になっていたかもしれない」
「こっちこそ出過ぎた真似をしてすいませんでした……ダメダメっすね、俺」
打った頭と痛めた右肘を左手で触って確認しながら士郎さんに謝った。すると俺の肩を軽く叩いて、
「晃祐君の気持ちも解らん訳でも無い……しかし君は自分自身を追い込み過ぎていて、それが余計な焦りを生んでいる様に思える。確かに緊張感も大事だけど少し心に余裕を持たないとダメだな」
励ましてアドバイスをくれているみたいだけど、俺は益々惨めな気持ちになってしまう。
「余裕って……それじゃ手を抜いてるのと変わらないじゃないっすか」
「余裕が出来る事で視野も広くなるし、戦いにおいても様々な作戦を取る事だって出来る。君はそこの所を履き違えている様だね」
「したっけどうすりゃ余裕が出来るって言うんですか……俺、何がなんだかサッパリ解らなくなっちまいましたよ……」
すると士郎さんは、「ふむ」と言って腕を組み考えだした。
「あの~?」
「よし!……こうなったら晃祐君には実戦で本当に死線を超えてもらうしか無いだろう。荒療治どころの比じゃないが自分自身の欠点も痛感出来るし、それを経験してからここで訓練をした方がより身に付く可能性が高い。それまで訓練は休みだ」
「…………は!?」
突然何て事言い出すんだこの人は!ド素人の俺に死ねって言ってる様なモンじゃねぇか!!
「"バカは死ななきゃ直らない"とは違うが、私は人間というものは死ぬ間際が一番冷静になれるのだと思っている。"あの時ああすれば良かった"という後悔の念が湧いて来て初めて、自身の愚かさに気付くんだ。それに――人間死にそうになれば何だってする生き物だ。晃祐君に仲魔がいる事の"ありがたみ"を身を持って知るべきだろう。藁にもすがる思いで生きて再びここに来てみせろ!!」
――俺は士郎さんの強い言葉に、ただただ頷く他無かった。
次回に続く
娘がやるなら親だってやっててもおかしくは無い……今回はそんな話でございました。
自分の考え方やスタンスを変えようと思っても、これがどうして中々変えられないのが男のサガですよね。「俺はこうだ!」と思い込んでいるなら尚更の事です。
『男だったら一つに懸ける』と云います。しかしそれは武士道精神の"美徳"でもあり"悪癖"でもあると思うのです。見方ひとつで視野も考え方も大分変わるのですが、大体"痛い思い"をして文字通り"痛感"しないと変わらないというのが実情だと思います。
次回は"悪魔との"初戦闘です。
それでは悪魔に身体を乗っ取られぬよう、お気をつけて……