真・女神転生デビルサマナー ~時と世界と魔法を超えて~ 作:ナベリウス
2013 12/4 21:47 誤字,脱字を修正
-5月17日午後5時 海鳴市某所-
「ふぅ~終わった終わったぁ~」
「アリサちゃんも発表会の課題曲ほとんど全部弾ける様になったね!」
「お疲れ様でした」
「お疲れ様~」
あたしとすずかがバイオリンのレッスンを終えると、すずかんトコのノエルとファリンが外で待ってくれていた。何時もは鮫島が迎えに来るけど、今日は所用でここまで来れないから2人が代わりに迎えに来てくれたみたいね。
「それではすずかお嬢様、アリサお嬢様。参りましょうか」
「うん!」
「はーい」
「参りましょ~!」
ふとアタシ達の後ろに付いて歩く2人をチラ見すると、いつもすずかの家にいる時のメイド服じゃなくて私服だったのが気になった。どうしてなんだろ?
「(ねぇすずか、2人共何でメイド服じゃないの?)」
「(実は私、メイド服の2人を連れて歩くのがちょっと恥ずかしくなっちゃって、"外を出歩く時は私服で来て欲しい"って言ったからだよ)」
……まあ、市井の人間にしてみれば、メイドなんて"そういう喫茶店"のイメージが強いだろうから普通に街を歩いてたっけギョッとするのは間違いないし、あたしにも何時でも燕尾服の鮫島がいるからすずかの気持ちも解らない訳じゃない。
そんな事を考えている内に何時の間にか駐車場まで来ていて、後ろにいたはずのファリンが車の後ろの座席のドアを開けてあたし達が乗るのを待っていた。ノエルもそうだけど、これくらい何時もの事だしもう慣れたからいちいち驚く事も無くなったわ。
「さあどうぞどうぞ~」
「ありがとうファリン」
「お2人ともシートベルトはなさいましたでしょうか?」
最後に助手席にファリンが乗り込むのを確認すると、ノエルは車のエンジンをかけて発進させた。でも今の時間はちょうど帰宅のラッシュで大通りはどこも混雑していたり、運悪く信号に引っかかったりして中々車が前に進まない。
「はぁ~~ったくホントにツイてないわー……コレじゃあ何時まで経っても帰れないじゃないの!」
「アリサちゃん落ち着いて。コレばっかりは仕方無いよ」
「あ!もう6時ですよ。ちょっと急がないとマズいかもです」
「では、少々強引ですが車通りの少ない中通りに入って近道する事に致しましょう」
ノエルがショートカットを提案して中通りに車を進めていく。その後、私はすずかやファリンと世間話をしていると突然急ブレーキが掛かって、危うく前の座席に頭をぶつけそうになった。
「ちょっ!なにやってんのよ危ないじゃないの!!」
「あう~ビックリしたーー!」
「どうしたのノエル?」
「申し訳ございません。今何かが目の前を横切ったので、ついブレーキを踏んでしまいました」
ひょっとして犬が飛び出してきたとか?だったらさっさと見付けて、二度とこんな危ない事をしない様に私がお説教しないといけないわね!なんて事を思ってると、
「飛び出してきたのって、ひょっとして猫だったりして?」
「違うって犬に決まってるじゃない!あたしが確かめてくるから待ってなさいっ」
「あっ、アリサちゃん私も行くよ!」
「ふ、2人共待ってよぉ~」
路地に入り込んで少し歩き回っていると、塀の影に何かがいるのが見えて、あたし達3人は驚かさない様に慎重に近付く……すると、ゴミ収集場に置いてある"大きなポリバケツみたいなヤツ"に、紫色をした"何か"が頭を突っ込んでその中のゴミを漁っていた。
「な、なんなのよアイツ……」
「猫でも、犬でも……ない?」
"ソイツ"はポリバケツから頭を出して地面に経つと、身体よりも大きい頭を細かく震わせながら左右に振ってあたし達を見た。
『ウルゥァァ……エモノいたぞぉぉぉ!』
そう何とも言えない奇怪な声で叫ぶと、曲がり角の塀の影から同じ姿をしたヤツがもう1匹現れて同じ様に、
『エモノ?うぉれのエモノキタァァァッ!!』
そう叫ぶと、2匹はジリジリとあたし達に向かってにじり寄って来て、今にも襲い掛かって来そうな感じだ……でも見た目からしてそんなに足も速そうな感じじゃないし、今の内に逃げればどうにかなりそうね。
「……ねぇ2人共、コレひょっとしなくてもヤバいんじゃない?」
「は、早く逃げようよぉ~」
「え?ええ、そうね!」
あたし達3人は、直ぐに元来た道を走って引き返そうとした……けど、
『――ニガスカ!ニガスカ!!』
後ろを振り向くと逃げ道を塞ぐ様に3匹目がいて、あたし達は文字通り"袋の中のネズミ"になってしまった。でも全ッ然ッッ!諦めてなんか無いんだから!
「嘘……そんな事って」
「こんなひ弱そうなヤツ等、体当たりしても逃げれば良いじゃない――行くわよッ!!」
「ア、アリサちゃん!?」
あたしはカバンの中から"いざと言う時に"と、鮫島から渡されていた護身用のスタンガンを取り出してスイッチを入れ、正面の"ヤツ"に全速力で体当たりを仕掛ける。
『ウォ?ウルォァァァァッ!?!?』
「やったぁ!さあお嬢様、早く行きましょう!!」
「う、うんっ!」
アタシの体当たりで吹っ飛んだ"ソイツ"がスタンガンの強烈な電撃ですぐに立ち上がれないみたいで、それを見たすずかとファリンはあたしに続いて車の止まっている方に向かって走り出した……
「はぁ……はぁっ……」
「ひぃ……ふぅ……」
「ふぅ……ふぅ…………もうダメぇ~~」
「ど、どうにか撒いたみたいね……」
「はぁ……はぁ……あれ?車が止まった場所と全然違うような気がするよ?」
あたしは近くの電柱に背中を預け、ファリンはしゃがみ込んで休もうとした時、すずかの言葉を聞いて辺りを見回すと元来た道と全く違う道でしかも路地の行き止まりに来ていた事が解った。もしこんな所で見付けられでもしたらタダじゃ済まないわね……
『……ケタ!ミツケタ!』
『ユルサン!ユルサン!!』
『エモノォォォ!!』
「へ?嘘ぉ!もう見付けられたのっ!?」
「大丈夫ファリン?」
「あ、はい。お嬢……うわわわっっ!!」
あたしがヤツらの方に身体を向けようとすると、ファリンがフラついて立たせようとしたすずかと一緒に倒れ込んでしまった……全速力で走ったから疲れるのも無理ないけど、おかげで絶対絶命の大ピンチになっちゃったじゃない!
「2人共大丈夫なの!?」
「痛たた……捻挫しちゃったかも」
「はわわ……お嬢様申し訳ございませんですぅ!」
『イマダ!イケェェェ!!』
「――あ!、アリサちゃんっ!!!!」
「……ん?」
2人の方に走り寄った事が結果的に"ヤツらに背中を向ける格好"になったのをすずかの叫びで気付きすぐ振り返った時には、もう既に"ヤツ"らの内の1匹があたし達目掛けて飛びかかって来ていて、あたしはそれに対して全く身動きが出来ずに眺めているしかなかった…………
「い、イヤアァァァァァァァァッッ!!!!」
――ヒュン!!
「面妖な怪物共め、そこまでだ!」
「へ……?」
ハッ、と我に返ると飛び掛って来ていた"ヤツ"が、何時の間にか身体にナイフが突き刺さった状態で悶絶していた。それを見たあたしは声のした方に顔を向けると、塀の上で何本ものナイフを両手の指に挟んだノエルが立っていた。
「ノエル!」
「お姉ちゃん!」
「ご無事ですか?アリサお嬢様!」
「あ……う、うん」
『ヨクモ……ヨクモ……ウルィィィ……シネェ!シネェェェ!』
悶絶していた"ヤツ"が立ち上がって身体に突き刺さったナイフを抜くと、他の2匹がそいつの横に並び立ち、塀の上からあたし達の前に飛び降りたノエルも"ヤツら"に対して構えを取る。
『クワセロ!クワセロォォォォ!』
『エモノォ!うぉれのエモノォォ!』
「お嬢様達とファリンをやらせはしない……!」
「大丈夫なの?」
「ご心配要りませんすずかお嬢様。私はお嬢様方をお守りするための様々な鍛錬を致しておりますので……例えこの命に代えてでもお嬢様をお守り致します。さあ……怪物共、このノエル・K・エーアリヒカイトが相手だ……!」
「お姉様……」
『『『ウルゥァァァァァッ!!』』』
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-同時刻 海鳴市路上-
「相原、肘の具合はどうだい?」
「ごめん健さん。地区予選まであと1ヶ月だってのに迷惑掛けて……」
部活が終わって家に帰ろうと歩いていると、後ろから部長の高倉健太郎が声を掛けてきた。俺は肘を痛めているんで昨日から見学するだけという事になっている。こんな大事な時に穴を空けてしまうだなんて、つくづく俺自身の事が嫌になった。健さんが俺に追い付くと、2人並んで歩き始める。
「なぁに、大丈夫さ。万が一予選に出られなくても試合会場に居てくれるだけでありがたいよ」
「ホントごめんな……」
「で、ここ最近部活が終わったら翠屋の稽古場に行って、また練習をしてるって聞いたんだけど本当なのか?」
「ああ……それでこのザマだ」
俺はジャージを捲って、健さんに右肘のテーピングを見せる。
「相原……お前、周りに色々言われてるからって気負い過ぎるのもどうかと思うぞ?やる気は認めるけど、どうも空回りしてる様にしか見えないぜ」
「昨日今日と見学してて良く解ったよ。普段の俺自身がどんだけバカだったかって事がさ」
"焦りは命取りになる"、か。焦ったせいで剣道をする上で"命"とも言える肘を痛めただけじゃなく、剣道部の皆にも迷惑を掛けちまった事を激しく後悔する。でも返ってこうなってくれたお陰で、見学しつつ頭の中で自分自身を冷静に見つめ直すことが出来た。健さんを始めとする他の3年生が俺の穴を埋めようと必死になって練習に打ち込む様子や、後輩達が度々俺の様子を伺いに来たりアドバイスを求めて来たりする姿に、初めて俺自身どれだけ周りが見えてなかったかという事に気付かされたのだった。
「相原。個人的な事を言うと、予選前までに十割とは言わない。でもせめて七割位までには肘の状態を戻しておいて欲しい。やっぱり団体戦には副部長のお前がいないと」
「……それは噛ませ犬って意味でか?」
「そんなバカな!お前は周りが言う程弱くなんてない。副部長に指名されたのも、先生や俺達がちゃんとお前の実力を解っているからさ――おっと、ここまでだね。それじゃあ」
「すまん。気ぃ付けてな」
大通りの交差点まで来ると、健さんは横断歩道を渡って向こう側まで行くと振り返って俺に手を挙げ、俺もそれを見て手を軽く振り右に曲がって家に向かって再び歩き出した。ふと何となく少し進んだ所の路地に入ってリュックからGUMPを左手で取り出し、徐ろにコンソールを展開させた。
「――!?」
俺が右半面のスクリーンを見ると、普段は青く光るはずのEAIが赤く点滅していて、近くに悪魔の反応がある事を知る。でもこの右肘の状態じゃマトモに戦う事なんて出来ないだろうし、いっその事ここは母さんを呼ぶべきなんだろうかと考えを巡らしていると……
〈い、イヤアァァァァァァァァッッ!!!!〉
女性のものと思われる悲鳴が辺りに響き渡った。畜生!躊躇っている暇は無いってのかよ……もうこうなったら一か八か左腕一本でやってやるしかない!!
俺はリュックを路傍に置いてGUMPを左手で取り出すと、物音を立てないように慎重に進んで曲がり角まで進み、建物の影から悲鳴の聞こえた方を伺ってみた。
『――ウルィィィ……シネェ!シネェェェ!』
『クワセロ!クワセロォォォォ!』
『エモノォ!うぉれのエモノォォ!』
「お嬢様達とファリンをやらせはしない……!」
外国人女性が3体の頭でっかちでチビな悪魔と相対していて、その後ろ側には2人の少女が怪我をしてしまったのか、袋小路にへたり込んで身動きがとれなくなってしまっていて、その側でもう1人の少女が2人に付き添っていた。俺は暗がりにいる少女達を目を凝らして見てみると、その内の2人が髪型や顔つきから以前会ったすずかちゃんとアリサちゃんだという事が解った。それから再び建物の影に身体を引っ込めると、次にGUMPを開いてデビルアナライズを起動させて悪魔の情報を調べる。
◇幽鬼 ガキ/Chaos/相性:呪殺無効,火炎・衝撃・破魔弱点/特技:ひっかき,吸血
火炎弱点か……でもここでケルベロスを呼んでファイアブレスを吐かせても、万が一かわされて辺りが火事になったら目も当てられないから、ここは敢えてジャックフロストを出すしかないだろうな。俺はアナライズを終わらせるとコンソールを閉じてトリガーに指を掛け、いつでも召喚出来る様に構え、気持ちを落ち着かせるために深呼吸をする。すると、
『『『――ウルゥァァァァァッ!!』』』
ガキ共が一斉に奇声を上げて今にも飛び掛らんとしていた――やるなら今しか無ぇ!!
「行けぇ!ジャックフロストぉぉっ!!」
俺は建物の影から飛び出すと同時にGUMPを相手に向けて、渾身の力でトリガーを引き絞ったのだった……
今回は初の敵悪魔という事で真1でも最初に出没したガキを登場させました。
次回は晃祐&仲魔とガキ3体の戦闘が開始されます。
それでは悪魔に身体を乗っ取られぬよう、お気をつけて……