真・女神転生デビルサマナー ~時と世界と魔法を超えて~   作:ナベリウス

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主人公はドツボにハマると何処までも落ちていくタイプです。
今回は突き付けられた事実に、独り苦悩します。





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5/10 11:04 サブタイトル変更


第5話 苦悶の日々

 "世界を一変させる出来事"から1ヶ月が経過した。

 

 

 期末試験と春休みを終え、遂に中学3年へと進級したが未だに俺は頭の中で"あの事"について一杯だった。数ヶ月後には中体連があるというのに、ここの所部活の練習に全く力が入らず練習試合でもほとんど勝ち星を挙げる事が出来ないでいる。この事は勉強でも同じで、授業に集中出来ていない状態を見かねた担任からは、このままだと1年後に志望校への進学は絶望的だとも言われた。また教師の伝手を使ってその事を訊いた父さんからは、いつも以上に教え子や匠真と比較されて罵倒された。

 あの時母さんは「はやての側にいるだけで良い」と言ったけれど、そんなんじゃ駄目だ。でも陰で"相原家の穀潰し"と言われる無能で無力な俺に一体何が出来るっていうんだよ……

 

 

 今日も今日で夕食後、部屋に戻った俺はまた"あの事"について頭を悩ませていた。すると、

 

 

「兄さん。ちょっと良い?」

 

「あ?ああ……」

 

 

ドアがノックされ匠真が中に入ってくる。

 

 

「最近全然元気が無いみたいだけどどうしたの?」

 

「……匠真には関係ない事さ」

 

「テストや部活の成績が良くないって父さんが言ってたし、土曜日にはやてちゃんが図書館に行く時もここの所付いて行ってあげてないから心配だって母さんが……」

 

「だから匠真に関係無ぇ事だって言ってんだろ!それならがオメェが付き添ってやりゃあ良い事だろうが!!」

 

「兄さん……ひょっとして、"闇の書"の事でずっと悩んでる?」

 

「(!!)なんでそう思うんだよ」

 

 

 母さんといいコイツといい、どうしてここまで人の思っていることをズバズバ当てて来るんだよ。特に匠真は小学生で普段は呑気なクセに無駄に鋭い所があるし、何より優等生なだけあって全てが平々凡々な俺が陰からバカにされる。本当に腹が立つぜ全く。

 

 

「兄さんは思っていることが顔に出やすいんだよ。幾らいつも"呑気だ"と言われてる僕でもそれくらい解るよ」

 

「流石は天才少年、凡人の考えなんざ全部お見通しってか?流石だねぇ~」

 

 

 俺はいつもの調子で戯けてみせるが、逆に匠真の顔が険しいものになる。

 

 

「兄さんは自分自身を見下し過ぎだよ。どうして僕が兄さんよりも先に"事実"を知ったのにこうしていると思う?」

 

「知るか」

 

「僕は身体が弱いし、何よりいつも通りはやてちゃんの側にいてあげれば、それだけであの子が幸せそうな顔をしてくれるからだよ」

 

「身体なんざヤタガラスで治して貰えば良いだろ。そんで"組織"とやらからはやてを守ってやれば良いじゃねーか。お前みたいな頭脳明晰・容姿端麗な男が悪魔召喚師をやったらさぞかし画になるんだろーな」

 

「全く、兄さんは父さんと同じだね」

 

「あ?お前もう一回言ってみろや!!」

 

「父さんと同じで変に頑固で責任感が強いんだよ!嫌いなら嫌いでああならない様に気を付ければ良いのに最近ますますそっくりになってきた!!」

 

「いい加減にしやがれ畜生!」

 

 

 俺は匠真の「父親に似てきた」という言葉で怒り心頭に発した。

 

 

「兄さんこそいい加減にしてよ……そんなことでウジウジ悩んでないで少しは周りの事も考えて!どれだけ迷惑掛けてると思ってるのさ!!」

 

「周りの事考えてっからこうして悩んでんじゃねぇかクソが!!」

 

 

 怒りの余り襟首を掴んで殴り飛ばそうとして椅子から立ち上がったその時、突然しゃがみ込んで苦しそうにしだした。感情が昂ったのが災いしたのか発作が起きてしまった様だ。その姿を見た俺は、それまで全身の血液が沸騰していたのが一転して瞬く間に凍りついて行くのが解った。

 

 

「お、おい!大丈夫か?」

 

「だ、大丈夫……酷いものじゃないから」

 

「横になってな、薬取ってくるわ」

 

 

 急いで匠真の部屋に行くと薬の入った袋を出し台所でコップに水を汲みに行く間、大人気なく怒鳴り散らした事を悔やんだ。俺を怒らせたあいつも悪いが、穏便に済ませようと一切考えなかった自分に一番の責任がある。本当に俺はどうしようもない人間だ。

 頭が良くて将来はイケメン確定,性格も良くて友達も多いが、唯一天から与えられなかったのが健康な身体だった。天は二物を与えずとは上手く言ったものだと思う。

 

 

「……持ってきたぞ」

 

「うん」

 

 

 薬袋とコップを乗せたお盆を、ベッドの横にある本棚の上に置くと身体を起こして薬を口に含み、水と共に飲んでいく。その後落ち着くまで2人の間に言葉は無かった。

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

 

「……すまん。大人気なかった」

 

「いいよ……ただでさえ中学3年になってピリピリしてるのに、あんな事があったらそれどころじゃ無くなるってのも解るし。でも本当に兄さんは自分自身を見下していると思う。それって絶対良くないよ」

 

「卑下してる件については触れないでくれ。お前に絶対解る事じゃないからな」

 

「……そうするよ。それじゃ、部屋に戻るね」

 

 

 匠真は結局、俺に詳しい事も訊かずに薬袋を持って部屋から出て行った。その後お盆とコップを片付けに台所へ戻り、頭を冷やそうと冷蔵庫の麦茶をガブ飲みする。

 あーあ、なんか全てにおいてやる気も情熱も消え失せちまったな……考えるのも面倒臭くなっちまったから、明日は部活バックレてゲーセンか何処かに行くとするかぁ~などと考えていたら徐ろにリビングのドアが開かれ、ゆっくりとはやてが入ってきた。

 

 

「兄ちゃん、明日剣道の練習終わって家に帰ってきたら何処にも行かへん?」

 

「あ?ああ……」

 

「ほんなら久々に図書館まで付いて来て欲しいんやけど」

 

「ああ……」

 

「んで、その後"翠屋"に寄って行きたいんや。27日はタッ君の誕生日やろ?那緒実さんからバースデーケーキの予約を頼まれてん」

 

「ああ……」

 

「……兄ちゃん?私の話ホンマに訊いとるん!?」

 

「ああ……」

 

「なんて言ったか言い直してみてや」

 

「ああ………………図書館に行った後、翠屋でケーキの予約をするんだろ?」

 

「なんや……心配して損したわ。もし聴いてへんかったら"これ"でどついたろと思っとったのに」

 

 

 はやては背中から俺が苦悩する原因となった"闇の書"を出して俺に見せる。こんな分厚い本の背表紙(しかも鎖付き)で殴られた日には病院行き確定だな。

 

 

「兄ちゃんがずっと私と"この本"の事で悩んどったなら、それは要らん心配やで。」

 

 

 いつもの様に優しい顔付きで俺にそう言ってくる……けど、それじゃダメなんだ。でも力も才能も無い俺にどうしろと?

 

 

「……ほなダメ元で那緒実さんに『悪魔召喚師になりたい!』って言ってみたらどうなん?」

 

「……は?」

 

 

 再度悩み始めた俺に向かって予想の斜め上を行くセリフを言ってきた。コイツ何考えてやがるんだ!

 

 

「私は兄ちゃんとタッ君と3人で色々喋ったり遊びに行ったりするだけで十分やけど、それじゃ兄ちゃんは納得出来なさそうな顔をしよったからなんとなく言ってみただけや。"言うだけタダ"やで!」

 

「お前なあ。それは匠真に言ってやってくれよ……あいつは身体が弱いのを除けば完璧だろ。あんな将来イケメンになるのが確定している様なヤツこそ悪「兄ちゃんのチキン!」」

 

「兄ちゃんはあの日、地下室に行く前になんて私に言うたか覚えてる?『此処でやらねば男が廃る』って言うたんやで。周りを見返すんならそれくらいやらなアカンで」

 

 

 まさか俺より6歳も下(6月の頭で9歳になるから実質5歳下)の子に説教されるとは思いもしなかった。確かにそうだ。今まで現状から抜けだそうとする格好だけつけて来たけれど、実際は何一つとして行動に移して無かった。始まる前から無理だと諦めていたんだ……

 

 

「解った解った。少し考えさせてくれよ」

 

「ホンマやな?怖気付いて言わんかったら今度こそ"これ"でどついたるからな!」

 

「ちょ、それだけは勘弁……ってもうこんな時間かよ。寝ないと部活に遅れるな。」

 

「解ったわ。ほな兄ちゃんおやすみな~」

 

「おう。おやすみ」

 

 

 はやてがリビングから出て行くのを見届けると、麦茶を飲んだグラスを洗って部屋に戻り、部活の準備をしてベッドに入る。なんだか心の支えが少し取れかかった気がしてなんとなく眠りにつけそうな気がした。

 

 

 

 

 

次回に続く




ようやく主人公に悪魔召喚師フラグが立ちました。

主人公はこの時点では自己評価が著しく低く、才気溢れる弟に対し「お前が悪魔召喚師になればいい」という言葉を投げつけますが、これは裏を返せば「力(=才能)があれば俺がやる」という事に他なりません。世間一般的には"ごく平凡"なのですが、弟が余りにも優秀過ぎるが故に"ごく平凡"でも周囲から冷たい目で見られているという現実から脱却したくて心の奥底ではひたすらにもがき続けているのです。
中学生という多感な時期はどうしても視野が狭くなりがちなもので、その視野の狭さを感じ取っていただけたら幸いです。


次回は翠屋のあの夫婦が登場します。

それでは悪魔に身体を乗っ取られぬよう、お気をつけて……
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