真・女神転生デビルサマナー ~時と世界と魔法を超えて~ 作:ナベリウス
本来は一気に翠屋まで行くはずでしたが、体調の関係で2分割しました。
それではどうぞ。
「胴ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!!!」
「そこまで!どうした相原?昨日より少し動きが良くなったぞ!?」
「……ふぅ、そりゃどうも」
はやてに説教されてから一夜明けた。今日は午前中は剣道部の練習があるんだが、学校の体育館が他の部の練習試合で使えないために近くの市民体育館に来ている。あの事があってからというものの練習に身が入らず何もかもがボロボロだったけれど、今日は何故か身体全体の動きが良くなった気がする。
「3年になってから副部長として、ようやくマトモな打ち合いを見せてくれたな。後はこれがどんな状況でも出来るかが中体連までの課題だ。いつまでも"本番に弱い"だなんて言われないようにしろよ!」
「はい!」
久々に顧問の先生からお褒めの言葉をいただく。面と小手を外すと後輩が、
「先輩お疲れ様です!飲み物持ってきたんでどうぞ」
「ありがとよー」
近付いてきて手に持っていたスポーツドリンクを渡してくれた。すると先生が俺の方を見て、
「よし相原、少し休んだら最後に高倉と部長・副部長対決でもしてもらおうか!」
「ええ~流石にソレは無いでしょうよ~」
「今度の大会は高倉が次鋒でお前を大将にする予定だ。あいつは海鳴あたりでは5本の指に入るくらいの実力なのは誰もが知ってる事、敢えて次鋒に置くことで相手にプレッシャーをかけられる」
「ちょっと待って下さいよ。俺が"本番に弱い"って事知らない訳無いでしょう!」
「中体連までの期間でお前のその弱点を克服させるって事もある。それにお前には地力があるんだ。その力を見込んでの大将だ。相原、解ってくれるな?」
「はぁ~……どうなったって知りませんからね?」
先生と俺がこんな会話をしていると、隣に剣道部部長の"高倉健太郎"が来て声を掛けてきた。
「相原、俺が勝てばお前が当たる事はないんだ。余程のことがない限り大丈夫さ!」
「健さんや……それ思いっきりフラグだって」
「フラグとは圧し折るもの!さあやろうか!!」
結果だけ言うと、瞬殺だった。健さんは胴や小手を狙いに行く事が多く、その動きに気を付けていたら面を食らわされてしまった。本当に面食らって唖然としたよ全く!(因みに面食らうは本当は"麺食らう"と書いて"橡麺棒を食らう"の略なんだぜ!!)
「今日の練習はこれまで!来月頭には大会があるからそれまでに各々の弱点や悪い癖を少しでも克服・修正するように。解散!!」
「気を付け!ありがとうございました!!」
「「「「「ありがとうございました!!」」」」」
シャワールームでシャワーを浴びた後、はやてと図書館に行くために直ぐ様帰宅しようとする。すると数人が寄ってきて、
「おい相原!今日暇だったら帰りにゲーセン行かね!?」
「悪い。今日用事があるんだ。」
「また"義妹ちゃん"とどっか行くんだろ?このシスコン野郎~」
「うるせぇわ!弟の誕生日が近いからケーキの予約しに行ったりするんだよ!!」
「はいはい解った解った。せいぜい仲良くなぁ~」
「……こん畜生め!」
クラスメイトや部活の仲間から、はやてと俺が一緒に図書館や買い物に出掛けている所を度々見られて以降、何故か"シスコン野郎"と呼ばれるようになる。最初はもの凄く嫌で神経質になった時もあったけれど、はやてが車椅子に乗っている事が次第に皆へ知られてくると、"嫌味とも取れる励ましの言葉"を掛けて貰うようになった。以降は話をする時の一種の"お決まり"になっている。
よし、さーて帰りますか!
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今日は久々に兄ちゃんとお出かけや。私は時計を何度も見ながら帰りをまだかまだかと待ちわびる。
「……何時帰ってくるんやろ」
「それもう7回目だよ?」
「ここんとこずっとウジウジしとって構ってくれへんかったから、ホンマに楽しみなんやもん!」
「そういえばお昼ご飯はどうするの?」
「朝ご飯の残りの豚汁もあるしご飯も冷凍してるのがあるはずやから、後はお漬物とか煮物で十分やろ?」
「張り切りすぎて無理はしないようにね?」
「タッ君だって人の事言えへんとちゃう?」
「……僕は今日は家にいるつもりだから大丈夫だよ」
「ただいまー」
「あっ、兄ちゃんお帰り~!」
「お帰りなさい。僕が迎えに行くからはやてちゃんはご飯の準備をしてて」
「ほな頼むわ~」
タッ君がリビングを出て玄関に行くのを見ると、私は台所で鍋に火をかけつつご飯を電子レンジで解凍したりし始める。鍋の中の豚汁をおたまでかき混ぜてると、戻って来たタッ君は解凍できとるご飯とお漬物,煮物を盛ってテーブルに並べてくれる。そうしていると着替えた兄ちゃんが入ってきた。
「昼飯も豚汁とご飯か」
「なんや兄ちゃん。嫌やったなら食べさせへんで?」
「俺が何時嫌だと申したか!?」
「2人とも冷めるから早く食べようよ。いただきまーす!」
「いただきまーす!」
「いただきます」
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昼飯を食い終わると早速出かける準備をする。図書館でははやてが本を探している間、俺は勉強をしていることが多い、勿論高くて届かない場所にあるものなんかは呼ばれたら取ってあげているけれど、高校受験が近付いている事もあってそっちに集中して気付かない事もこれからは出てくるかもしれない。
「兄ちゃん準備できた~?」
「おう、何時でも出られるぜ」
「気を付けてね」
「したっけ行ってくるわー」
「ほな行ってきまーす」
図書館は歩いて3,40分位掛かっていたけれど、最近は低床のバスが増えたこともあってバスを使って行けるようになった。時間に余裕があったんで1つ隣のバス停まで行くと、そこにはやてくらいの年頃の女の子が既にいた。
「あ!はやてちゃん。こんにちは」
「おぉ~すずかちゃんや~!こんにちわ~」
はやてが"すずか"と呼んだ少女は紫色のウェーブがかった髪で、日本人とは思えない紅い瞳をし、どことなく不思議な雰囲気を纏っている。少女は車椅子を押している俺に気付くと、
「初めまして。あなたがはやてちゃんのお義兄さんですね?はやてちゃんから常々お話は聴いています。私は"月村すずか"と言います。どうぞよろしくお願いします」
「こちらこそ初めまして!俺は相原晃祐です。はやてが何時もお世話になってるみたいでホントすいません」
「あれ~兄ちゃんとすずかちゃんって初めて会ったんか?そんなはず無いと思うんやけどなぁ」
「いやマジで初めてだし。ちょっと待てよ……"月村"てあの"Moonlight Industry"の?」
「そうや~」
「マジか……お前こんなお嬢様と何時の間に仲良くなったんだよ!?」
「図書館で知り合うたんやでー」
「あの~二人共?もうバスが来たんですが……」
「やっべいけねぇ!」
「おおきに!」
すずかちゃんに言われて気付いた俺は、急いで車椅子を押してバスに乗り込む。車椅子用の空きスペースに停めるとベルトで固定して一息ついた。
「そやけどすずかちゃんって、いっつもめっちゃ凄い車で送り迎えしてもろうてるけど今日はなしてバスなん?」
「今日は私がわがまま言ってバスに乗る事にしたんだ~何時までもノエルやファリンに迷惑かけていられないし」
「んで今日もヴァイオリンの教室なん?」
「ううん。今日はお休みだから図書館に行こうと思って。はやてちゃんも図書館に?」
「そや~。それにしても偶然やねぇ」
「えっと、すずかちゃん。だっけ?お嬢様にこんな事お願いするだなんてアレだけど、俺来年高校受験があるから勉強しなくちゃいけないんだ。もし良ければ代わりにはやてが取れない高い所にある本を取ってくれると嬉しいんだけど……」
「そんな事気にしないでください。はやてちゃんと図書館で会うと何時もしてあげている事なんで大丈夫ですよ」
「ホントごめんね。よろしく頼みます」
「お任せください!」
はやては学校の友達が良く家に遊びに来ているのを見るけれど、図書館の繋がりで別の学校の子とも仲良くなれるのは天性の才能だと思う。しかも私立海鳴聖祥大学付属小学校(略して海聖小)という、俺ら市井の人間にしてみればお坊ちゃま・お嬢様の行く"山の手の学校"の子とだなんて、世の中人間の繋がりってのは解らない部分も多いなぁ。
「――次は中央図書館前、中央図書館前です。お降りの方はお知らせください」
「それじゃあ降りましょうか。晃祐さん、お荷物お持ちしますよ?」
「いやいや流石にソレはマズいっしょ!それなら先に行って運転手に待って貰える様に言ってくれる?」
「ほな、私が持っててあげよか?」
「ちょっと重いかも知れないけど頼むわ」
俺は鞄をはやての膝の上に乗せると、ベルトを外す準備をする。その直後バスが停まるとすずかちゃんはお願いした通り運転手の所に先に向かい、俺が固定ベルトを外している事を伝えてくれた様だ。ベルトを外し終えると下り口に向かい、はやてが2人分の運賃を払うとなるべく衝撃が少なくなるように注意して車椅子を歩道へ降ろす。最後に振り返って3人で、
「ありがとうございました!」
「ホンマおおきに~」
「ありがとうございましたー」
ドアを閉める時に運転手が笑みを浮かべ、はやてに向かって手を振ってくれた。やっぱこういうのって良いよな。何時までも忘れないようにしたい。
俺は図書館の入り口のホールに来ると、車椅子のハンドルをすずかちゃんに託し小声で、
「俺ら4時くらいになったら別の場所に行くからそれまで頼むね」
「解りました」
「ずずかちゃん、ほな行こか?」
2人は小声で話をしながら小説コーナーに向かっていった。本棚で姿が見えなくなるとラウンジの読書スペースに出て、ノートと教科書に参考書と筆記用具を取り出す。
「はぁ~今日はイイ天気だなぁ。よっしゃやりますか!まずは英語からだ」
……勉強を始めて10分と経たずに頭を抱え込んでしまったのは此処で言う事ではない。
次回に続く
今回は日常シーンのみです。
2分割したことで文量が減ったため、急遽高町夫妻より先にすずかを登場させました。
あと私は地方在住なのでバスのシーンは、「後ろから乗って前から降りる」方式を想定して書いています。前から乗って前から降りるだなんて長距離バス以外乗ったことがない……
主人公が悪魔召喚師になる事を決意するのは、匠真の誕生日である4月27日に起こる"ある事"が直接的な切っ掛けとなるのでまだ先になりそうです。
ヴォルケンリッターの登場を心待ちにしている皆さん。本当にスミマセン。
それでは悪魔に身体を乗っ取られぬよう、お気をつけて……