真・女神転生デビルサマナー ~時と世界と魔法を超えて~ 作:ナベリウス
それではどうぞ。
2013 5/14 21:03 一部内容を変更
2013 9/17 16:29 誤字,脱字を修正
勉強に没頭していると、マナーモードにしていた携帯のアラームのバイブレーションが作動して、もう4時になったことに気付く。
「あ、いけね。もうこんな時間か」
ラウンジの席から立ち上がって、机の上に広げていた道具一式を鞄に入れると、はやて達を探しに向かおうとするが、カウンターの前で2人が俺の事を待っているのに気付く。
「兄ちゃんここやここ~」
「ああ、待たせてごめん。ここで立ち話もアレだし出ようか」
3人で外に出ると、心地良い風が吹いている。梅雨前のこの時期は暑すぎもせず寒すぎもせず、ちょうどいい気温と湿度なんで個人的は好きだったり。
「はやてちゃんから翠屋に行くって訊いたんですけど、私もこれから翠屋に行くつもりだったのでご一緒していいですか?」
「マジで?全然構わないよ」
「2人ともはよ行くでー!」
俺達3人は翠屋に行くまでの間、互いの家族についての事を話しながら歩いていた。すずかちゃんの家はやっぱり大企業のお嬢さんなだけあって、お付きの使用人がいたり猫をたくさん飼っていたり……と一般人の俺には考えられないような浮世離れした世界に住んでいる事を思い知らされた。その事を素直な感想として告げると、
「私は晃祐さんやはやてちゃんみたいな生活の方が羨ましいです」
と返され、はやてには
「お互い様なんやって!」
と言われてしまった。なんか納得いかねーなぁ……なんて考えていると横を黒塗りの如何にもお金持ちが乗ってそうなお高い車が通り過ぎ、少し離れた所で路肩に停車した。すろと、中からはやてやすずかちゃんと同じ位の外国人の少女が降りてきた。その全身から醸し出す雰囲気は、まさしく強気といったものだった。
「すずか!アンタ何ちんたら歩いてんのよ!?」
「アリサちゃん!」
すずかちゃんはその子の所に駆け寄って何やら話を始めた。その間に俺ははやてに向かって、
「……はやて。あの子も友達?」
「ううん。でもすずかちゃんが"アリサちゃん"って言っとったって事は、多分"アリサ・バニングス"ちゃんやと思う。私すずかちゃんの友達の話は色々と聞いとるから」
「へぇ~。まあ見た感じからしていいとこのお嬢様なのは間違いないよな。」
「お淑やかなすずかちゃんと、強気そうなアリサちゃん……お金持ちのお嬢様のテンプレやなぁ」
「全くだぜ」
こんな事を言い合ってる内に2人が俺等の所にやってきた。
「はやてちゃん、友達のアリサちゃんだよ」
「アリサ・バニングスよ。アンタがすずかの言ってた"車椅子の子"?すずかが色々世話になってるみたいね」
「八神はやてや!私もすずかちゃんから話は聞いとったでー」
アリサちゃんという子は金髪で本当に整った顔立ちをしている。お嬢様だけあって将来は引く手数多なんだろうな……同い年位なら一目惚れしてるかも知れん。すずかちゃんも中々可愛いけれど外国人ってのはポイントが高い。
「……で、こっちの冴えないヤツは誰?」
……前言撤回。なんだコイツ強気を通り越して傲岸不遜じゃねーか!幾ら平民とはいえこっちは年上だぞゴルァ!!
「あ、アリサちゃん!この人ははやてちゃんのお義兄さんの晃祐さんだよ……ゴメンなさい!アリサちゃんって結構優しい所もあるんですけど、初めて会った人にはキツく当たってしまうみたいで」
「(……兄ちゃん抑えてぇな。年下の子にホンマに怒るなんて情けないで)」
はやては俺が青筋立てて拳を震わせているのが解ったのか、小声でなだめてくる。
「アリサちゃん!初めて会う人にそんな事言っちゃダメでしょ!?」
「あたしは本当の事を言っただけよ」
「ア~リ~サ~ちゃ~ん~!?」
「う……解ったわよ。謝れば良いんでしょ謝れば。ゴメンね!」
「チッ、わーったよ。俺は相原晃祐だ。よろしく」
彼女が俺に謝ってきた(反省しているようには見えなかったから内心更にイラッと来たのは秘密)んで、こっちは名前を名乗る。ふと車の方から誰かが近付いて来る気配がしたんでそっちに目線を向けると、燕尾服を纏った初老の男性がいた。
「すずか様……と、見慣れない方々ですがご友人の方でございますかな?」
「鮫島さん。車椅子の子は私の友達の八神はやてちゃんで、後ろの方ははやてちゃんのお義兄さんの相原晃祐さんです。」
「はじめまして~」
「……ども」
「お初にお目に掛かります。私、アリサお嬢様の運転手を命じられている、"鮫島"と申します。以後お見知りおきを」
「鮫島!こんな所で立ち話もなんだしどうせだから翠屋まで車で送ってあげなさい!」
「いや良いよ……すずかちゃんだけ先に行ってたら?はやてと俺はゆっくり向かうし」
俺はさっきのお返しとばかりに若干皮肉を込めた口調で言い放つ。善意はあるんだろうけどなぁ。
「兄ちゃん、その言い方はなんや?さっきの"冴えないヤツ"って言われたのまだ怒っとるん?」
……バレてーら
「……ま、アリサちゃんの善意に甘えたいのはやまやまなんやけど、見たら解るよーに車椅子やし迷惑かけられへん。そやから私と兄ちゃんは遠慮しとくわ」
「あっ……ご、ゴメン」
「そんな謝らんくてええよ。全然気にしとらへんし」
はやてが車に乗れないことにやっと気付いたのか、アリサちゃんは困惑の表情を浮かべ俺の時とは反対に本気ですまないと思って謝ってきた。
「じゃあこのまま皆で歩いていこうよ?」
「……そうね。仕方ないわ!鮫島、時間が来たら電話するからそれまで家に戻ってなさい」
「承りました。皆様、道中お気をつけて」
「ええっ!?それで良いのかよ!少なくともお嬢様なんだから歩くのは色々と問題じゃねーの?」
「何?アンタはあたし達が歩いちゃダメだって言うわけ!?」
「あのねぇ、少しは自分の立ち位置ってのを考えたらどうなんだよ。それくらいの歳になったら少しは解るはずだろ?」
「晃祐さんのお気持ちも解りますが、私の両親もアリサちゃんのご両親も過保護にならないようにしてくれているんです。世間一般的なお金持ちのイメージには合わないんでしょうけど……理解していただけませんか?」
「こんな事しとったら翠屋閉まってまうで!」
「……はいはい。じゃあ行きますかね」
4人で翠屋に向かっている間、俺以外の女の子3人は色々な話をして盛り上がっていた。10分程更に歩くと目的の翠屋が見えてきた。入り口の目の前に着くと突然アリサちゃんがドアの前に来て、
「ちょっと待って、あたしがドアを開けてあげるからその間に入りなさい」
「アリサちゃん?おおきになぁ」
「意外だなぁ、我先にと入って行きそうな感じだけど。まぁありがとな」
「こ、これくらい当然じゃない!あたしを何だと思ってるのよ……」
「ふふふ……アリサちゃんったら照れちゃってぇ」
「そか~アリサちゃんってツンデレさんなんか~」
「照れてなんか無いわ!それにツンデレって何よ!?入らないなら置いてくんだから!!」
「ゴメンゴメン。ほなよろしくな~」
アリサちゃんがドアを開けると、俺は車椅子の前輪を上げて中に入る。続けてすずかちゃん、最後にアリサちゃんが中に入ってドアを閉めた。すると目の前には信じられない光景が……
「桃子さ~ん!マンゴープリンとタピオカ追加ねー。あ、それからタルトもお願い♪」
「母さん!!!!」
「那緒実さん!!!!」
「あら、2人ともどうしたの?」
「どーしたじゃないよ!何で母さんがここにいるんだよ!!??」
「いらっしゃいま……ってアリサちゃんとすずかちゃんじゃない!ちょっと待ってね、今なのはを呼んでくるから」
俺とはやてが母さんに唖然としていると、店内にいたメガネを掛けた店員らしき女性がアリサちゃんとすずかちゃんを見て中に入っていった。その代わりに店長らしきガタイの良い優しそうな男性が出てきて、
「いらっしゃいませ。何か「士郎君!2人に何か出してあげてくれない?」」
「ん、そうですか。解りましたよ那緒実さん」
この男性が母さんの後輩だって?なんか見た目に似合わず全身からもの凄い貫禄が出てるんだけど……って事は悪魔召喚師関係の人なのか!?
「2人とも中に入って良いって!」
「それじゃあ私達はこれで」
「じゃあね。今度時間があったら遊びに行ってあげる!って別にあたしが遊びに行きたい訳じゃないんだから!!」
「へ……?ほ、ほなな~」
「あ……?したっけな~」
すずかちゃんとアリサちゃんは店の奥へと消えていった。きっと"なのは"という子がその友達なんだろう……って今はそんな事思ってる場合じゃない!
「母さん!だから何でいるんだよ!?」
「そや!那緒実さん今日は仕事でいないって言っとったやないか!?」
「その仕事が一段落したからいるんじゃない。それに匠真の誕生日も近いしケーキを予約しようと思ってたから」
「おいおい、それは俺とはやてに任せるって言ってただろ!」
「あれ?そうだったかしら……」
「いい加減にしてくれよ母さん……これじゃ意味がないじゃないか」
「そやそや~」
「うーん。何かこの会話の流れ、どこかで聴いた気がするんだけど……ああ!」
突然スプーンを持ったまま右手を顎に当てて考え出した母さんは何かを思い出し、
「あら?ケーキの件については以前、お話したはずですわよミスター。自業自得じゃなくて?」
「ミスターって何だよ!しかも自業自得じゃねーし!!」
「ほんでなんやねんその死亡フラグ的な節回しは!?」
「意味解んねーし!」
母さんの意味不明な言動と、はやての謎のツッコミにまた唖然とさせられる。
「今はお客さんがいないから良いけれど、普段は静かにしてくれると助かるなぁ」
「那緒実さん。追加のマンゴープリンとタピオカ、それとタルトね」
後ろから声を掛けられたんでビックリして後ろを振り向くと、さっきの男性と中に入っていたのとは別の女性が立っていた。い、何時の間に……
「2人ともそんな所にいないで早くこっちに来なさいなー」
母さんの声に呼ばれてカウンター席に座ろうとする。っとその前に、はやてのために椅子を退けてあげる。
「はい、君達にはチーズケーキとモンブラン。飲み物はカフェオレで良かったかな?」
「……ありがとうございます」
「おおきに~」
「まずは自己紹介を。私は翠屋のマスターの"高町士郎"。こっちは妻の"桃子"だ。那緒実さんの学生時代の後輩にあたる」
「初めまして。パティシエをしてる"高町桃子"よ」
「俺は相原晃祐です。母がいつもお世話になってます」
「私は八神はやてや」
俺にはチーズケーキを、はやてにはモンブランが出されたので一口。うん、やっぱり翠屋のチーズケーキは最高だ。はやてを見ると幸せそうな顔をして頬張っている。
よし、一息入れたから聞きたいことを訊いてみよう。
「で、母さん。この人達とはどういう関係?」
「だからただの後輩よ」
「嘘だ。絶対ただの先輩後輩じゃないね。はやてが店内に入ってきた時、士郎さんの表情が少し変わった気がしたから……それに母さんは大学なんて行ってないはずだ」
俺が言葉を発すると、士郎さんの眉間が動いた。すると何かを察したのか桃子さんは入り口に行って札をひっくり返し、閉店の準備を始めた。その直後、
「これから話す事はどうか内密に頼むよ。美由希!なのは達がこっちに来ないようにしてくれ!」
「うん……解った」
「え?え?なんやどうしたんや!?」
場に緊張した空気が流れるとほぼ同時に閉店準備を終えた桃子さんが戻ってきた。
「士郎さん、那緒実さん。いいわよ」
士郎さんはそれまでの優しい眼差しからから一変して刃物のような鋭い眼光を放ち、俺達に向かってこう告げた。
「私は表向きこそ、この翠屋のマスターだが裏では那緒実さんと同じヤタガラスに所属している」
次回に続く
今回はアリサと鮫島、高町夫妻と美由希が初登場しました。
「士郎さんの"御神流伝承者"という設定を見て、ヤタガラスの一員として使わないわけにはいかない!」
しかし士郎さんって、第1期の年齢(37歳)を見ると18歳位の時に恭也が生まれてるんですよねぇ……まぁ「原作」の高町家の設定ならばおかしい所は無いのですが。
あと那緒実にどうしてもあの名台詞を言わせたくて早々に言わせてしまいました。
それでは悪魔に身体を乗っ取られぬよう、お気をつけて……